一世を風靡したDOTEC-AUDIO(ドーテック・オーディオ)のマキシマイザ、DeeMax。レバーをグイっと持ち上げるだけで音圧を思い切り上げることができるDeeMaxはDTMの世界に大きな影響を及ぼしました。そのDOTEC-AUDIOは、その後、マスタリング専用の高音質マキシマイザDeeMMax、SNSや音楽ストリーミングサービスでカッコよく音を聴かせるマキシマイザDeePopMaxと、さまざまなキャラクタを持つマキシマイザをリリースしてきましたが、この度、そのDeeMaxシリーズのフラグシップモデルにあたる、史上最強ともいうべくマキシマイザ、DeeMaximizerがリリースされました。
これまでのDeeMaxシリーズはいずれもレバー1つで使える簡単操作だったのに対し、DeeMaximizerは見た目もちょっと違います。真ん中の大きなノブがあり、これを動かすだけでいい感じに音圧を上げられるとのは従来のコンセプト通りではありますが、ほかにもさまざまなパラメーターが追加されたことで、より多くの楽曲に最適化することが可能となっているのです。内部的には32バンド処理をしていることで、史上最強の音圧を稼ぎ出せるようになっているのですが、他社製品を含め既存のマキシマイザと組み合わせることでも威力を発揮できるものとなっています。そのDOTEC-AUDIOの新兵器をさっそく試すとともに、開発をしたDOTEC-AUDIOのフランク重虎さん、飯島進仁さんにお話しを聞いてみました。
過去最強の音圧を実現!DOTEC-AUDIO DeeMaxシリーズのフラグシップ、DeeMaximizerが爆誕
DOTEC-AUDIOは、シンプルなUIで初心者でも扱えるものでありながら、裏ではその技術力でカッコいい音を出力するプラグインを得意とする日本のプラグインメーカー。音をいい感じに太くしてくれるDeeFat、知識不要で機能してくれるDeeEQ、音像を思いきり広げてくれるDeeWider、曇った音をクリアにし抜けのいい音に変換してくれるDeeCrystal……など、ユニークでありながら、即現場で使える強力なエフェクトを次々とリリースしています。
DOTEC-AUDIOのお二人、フランク重虎さん(左)、飯島進仁さん(右)にオンラインお話を伺った
中でもマキシマイザのDeeMaxシリーズは、DOTEC-AUDIOを代表する製品群。DeeMax、DeeMMax、DeePopMaxと、これまで3種類の異なる性格を持つマキシマイザがありましたが、いずれも、最終段となるマスタートラックに入れて、レバーをグイっと持ち上げれば、音圧をドカンと大きく上げることができるのが特徴。とはいえ、ミックスした音源によってはどうしても上手くいかないケースがあったのも事実です。もちろんこれは、DOTEC-AUDIOのマキシマイザに限らず、他社のマキシマイザでも普通に掛けただけでは音圧が上がりきらない場合があるのです。
そんな問題を解決できるプラグインとして、DOTEC-AUDIOが開発した最終兵器ともいえるのが今回のDeeMaximizerなのです。単独で利用できるのはもちろん、DeeMax、DeeMMax、DeePopMaxとの併用することで、これまでの音の雰囲気はそのままに、音圧をさらに極限まで上げることができるというものなのです。
これまでのDeeMaxシリーズ。左からDeeMax、DeeMMax、DeePopMax
この併用は、DeeMaxシリーズに限らず、他社のマキシマイザでもOK。これらマキシマイザの後段にインサートして使うという形になりますが、従来のマキシマイザをさらに底上げし、狙った音圧へ整えることができるとのが、DeeMaximizerの特徴なのです。
従来のマキシマイザの限界を超えてしまうのが、日本が誇るDOTEC-AUDIOの技術力。どうやってもプロ作品のようにカッコよくならなかった音源もDeeMaximizerを使えば、プロと同様、さらにはそれを超えるものを作ることができるというのです。本来、音圧をギリギリまで上げていくには、プロの微細なテクニック、職人技が必要で、それを身に着けるには、何年もかかるといわれていますが、DOTEC-AUDIOのプラグイン開発者、フランク重虎さんによる天才的なアイディアと技術によって、プロをも超える音圧を、より手軽に実現できるようになっているのです。以下にDeeMaximizerを紹介するビデオがあるので、ご覧になってみてください。
なんとなく雰囲気はつかめたと思います。「このDeeMaximizerは、内部的には32バンド処理をしており、これまでのDeeMaxシリーズに比べDeeMaximizerは、バンド(区分帯域)数が圧倒的に多くなっている、というのがポイントです。今までは、低域のある部分で、中域のこの音で……というように、どこかの帯域で飽和することで限界が来ていました。しかし、DeeMaiximizerでは、32バンドあるので、飽和するバンドだけを避け、それ以外の周波数帯域をドカンと上げることで、限界の音圧レベルをさらに上げることができるようになっているのです」(重虎さん)。
しかも、DeeMaixmizerの操作画面上にはバンドに関するパラメーターが一切出てこないので、ユーザーはバンドに対する意識をする必要はゼロ。重虎さんが開発したシステムが裏側ですべてをこなしてくれるから、職人技を自動でこなしてくれるのです。さらに実質ゼロレイテンシー設計のために音の遅れは皆無というのも重要なポイントです。そうした処理をするだけに、PCへの負荷はほかのMaxシリーズに比べ大きくなっているそうですが、それでも世の中の多くのプラグインと比べて動作は軽く、第3世代(現時点の最新は第11世代であり、第3世代が出たのは2012年)のcore i5(ノートPC用=省電力版)でも動くようになっています。
DOTEC-AUDIOのフラグシップ・マキシマイザ、DeeMaximizer
「開発した元々のアイディアは、これまでのDeeMaxシリーズで上がりきらなかった音圧をさらに上げる補完的意味合いを持つマキシマイザ兼ユーティリティを作ろうということでした。しかし、そうしたことを実現するには、根本的に優れたマキシマイザでないと無理。そこで、単体でも使える最強のマキシマイザを目指して開発していきました」と重虎さん。
したがってDeeMaximizerの使い方は、大きく分けて2つ。まずは、単体のマキシマイザで使う方法。もう1つは、Maxシリーズをはじめとするマキシマイザで、ある程度音圧を上げ、キャラクターを付けた上で、DeeMaximizerでそれを強化するという方法。DeeMaximizerのキャラクターは、ほかのシリーズに比べフラットなので、こういった使い方が可能となっています。
※2021.10.22追記
一般的なマキシマイザとDeeMaximizerでの波形を見比べたのが以下の画像です。どちらも-7.5LUFSと同じ音圧、音量感に持ち上げているのですが、一般的なマキシマイザだと波形が海苔状態になってしまっているのに対し、DeeMaximizerだと音も波形も音楽状態をしっかり保っているので、聴感上も圧倒的に高音質。だから必要に応じてさらに音圧をガンガン上げることもできる、というわけなのです。
一般的なマキシマイザでの結果(左)とDeeMaximizerでの結果(右)を波形で比較したもの
※2021.10.23 0時 追記
先ほど追記の形で掲載した図について時間軸が左右それぞれが同じではないのではないか、という指摘をTwitterでいただきました。フランク重虎さんに確認したところ、時間軸を入れるとともに、拡大しても見やすい図を作り直して送っていただいたので、そちらに差し替えました。なお、上記のデータをRMSヒストグラム(LUFS計測値は別メータなので前画像とは異なる)で表示させると以下のようになるとのことです。明らかに分布が変わっていることが見えてきます。
一般的なマキシマイザの結果(左)とDeeMaximizerの結果(右)をRMSヒストグラムで比較したもの
一般的なマキシマイザで音圧を上げた場合(左)とDeeMaximizerで上げた場合(右)の波形の状況
実際にDeeMaximizerを使う場合は、マスタートラックの最終段にインサートします。起動して画面を見てみると、大きな中央のノブの周りに複数のノブが搭載されているのが確認できます。これまでのDOTEC-AUDIOプラグインに比べるとパラメータが多めですが、他社のプラグインに比べるとパラメータは少なく、簡単に使えるのもポイント。まあ、DOTEC-AUDIOのマキシマイザがレバー1つなので、これまでが異常だったわけですが……。DeeMaximizerの操作は、一般のマキシマイザに関する最低限の知識があれば使えるので、初心者にもおすすめなプラグインとなっていますよ。
立ち上げたデフォルトの状態で、DeeMaximizerのMAXIMIZEのパラメータを操作すれば、いい感じに音圧が上がるようになっているので、まずはこれを操作して音圧を上げていきます。
MAXIMIZEをまずは上げていく
左上のパラメータから見ていくと、RELEASEではリリースの長さを設定でき、値を小さくするほど音圧が上がりやすく、長いほど歪みにくくなります。たとえば、アタック感の強いEDMやロック、ポップス系の曲であれば、リリースは短めに設定すれば上手くいきますが、ピアノ単体のリバーブが多い曲はこの設定だと歪みが出できてしまうケースがあります。そんなときには、リリースを長めに設定することで、歪みを防ぎつつ、音圧を上げることが可能です。
RELEASE
SOFTKNEEでは、圧縮する音量の範囲を調整します。これは、値を大きく設定するほど波形の変化を少なくして、歪みを減らすことができます。一方、音圧をもっと上げたい場合には、値を小さくしていきます。ただこの場合歪み波形も変化するので、聴きながら調整していきます。
SOFTKNEE
CH LINKは、値が大きいほど 左右またはミッドサイド間の同期が強くなり、CHANNEL MODEで選択したL/R、MID/SIDEによって聴こえ方が変わります。たとえば、LRでマキシマイザを使ったときにLだけ歪みやすい音源の場合、MID/SIDEに切り替えることで、これを回避することが可能だったりするわけです。ほかにも、MIDとSIDEの差を少なくすることで、結果的にステレオ感が増し、イヤホンで聴いたときにより迫力が出るようになっています。最近では、ワイヤレスイヤホンでの普及によるとこも視野に入れ、これを搭載しているとのことです。このように特にMID/SIDEとCH LINKのパラメータの関わりが密接で、リンクの値が小さいほうがステレオ感が増すようになっています。
CH LINKとCHANNEL MODE
SOFTCLIPでは、自分好みに味付けを行うことができ、音を丸くしたり、エッジを立たせたり、最終的なクリップ調整ができます。
SOFTCLIP
ほかには、INPUTとOUTPUTのパラメータ、それぞれのメータが搭載されています。またMONITORをオンにすると、音圧が上がっても聴感上の音量を保ち、音質の変化や歪みを判別しやすくなります。
MONITORをオンにすることで、聴感上の音量を保ち、音質の変化や歪みを判別できる
また、中央のノブの下にある表示をクリックすることで、パーセントとdB表示を切り替えることができます。
これまでのDeeMaxシリーズと同様%とdB表示の切り替えが可能
なお、DeeMaximizerの価格はフラグシップモデルなので、DeeCompと同じく13,200円(税込)。ただ年内は、リリース記念で5,500円(税込)で発売されます。また、10月22日(金曜)~31日(日)までの期間は、DOTEC-AUDIOのほかの製品もM3特価となっています。
「今回のM3-2021秋にDOTEC-AUDIOも個人ブースで参加します。M3にいらっしゃった方には、お釣りの観点もありDeeMaximizerを税込み5,000円で発売し、ほかの製品についてもお品書きの価格で販売します。なので、Webより10%割引での発売になります。当日は、各種クレジット、電子マネーにも対応し、交通系やPaypayでの支払いも可能です。直接、DOTEC-AUDIO製品の解説も行いますので、よかったらぜひ、会場まで足を運んでみてください」と飯島さん。もっとも会場に来れない方でも、オンラインでM3特価販売はされているので(この場合は消費税が乗ります)、ぜひアクセスしてみてください。
M3特別割引のお品書き
M3におけるDOTEC-AUDIOのブースは第一展示場のGー11。実は我々DTMステーションCreativeもM3に参加する予定(詳細は「10月31日開催のM3-2021秋に参戦!今回は朗読劇『空の欠片の深いあお。』のサントラにチャレンジ。劇伴制作の裏舞台公開」を参照ください)で、同じ第一展示場のT-23だから、すぐご近所。ぜひ一緒に遊びにいらしていただけると幸いです。
DOTEC-AUDIOのプラグインは、デモ版もあるので、DOTEC-AUDIOの集大成でもあるDeeMaximizerを試してみてはいかがでしょうか?またSONICWIREでも同じ価格でプラグインが販売されています。こちらもぜひチェックしてみてください。
【関連情報】
DeeMaximizer製品情報
DOTEC-AUDIOブログ「DeeTips」
【価格チェック&購入】
◎DOTEC-AUDIO ⇒ DeeMaximizer
◎SONICWIRE ⇒ DeeMaximizer , DeeMaximizer (M3価格)