9月21日、iPhone XSおよびiPhone XS Maxが発売されました。価格がますます高くなったこともあり、これまでのように大ヒットで品薄というわけではなさそうですが、今年も近所のauのお店で予約をして、発売日に購入してみました。私が選んだのはiPhone XSの256GBのシルバー。手が小さいからか、以前iPhone 6 Plusを買った時に持ちにくくて仕方なく、「今後絶対、Plusは買わない!」と決めたので、今回もMaxではなく、小さいほうにしたわけです。
まだ入手してから1日で、細かな点まで完全なチェックができているかどうか怪しい点はありますが、DTM関連のアプリ、またMIDI機器やオーディオインターフェイスなどのハードウェアがうまく動作するのかチェックしてみました。音質性能など細かなチェックは後日AV Watchのほうで記事にしていくつもりですが、まずはざっくりとしたファーストインプレッションということでレポートしてみましょう。
iPhone XSがDTMで問題なく使えるか、いろいろ検証してみた
それにしても、この新しいiPhone高いですよね…。このiPhone XS 256GBという中間のモデルで146,740円。かなり高級なPCが買えちゃう値段じゃないですか……。こんな仕事をしているので、やっぱり最新機種は持っておかないと、と購入してますが、よくみなさん、こんな高いものを買いますよね……。
iPhone XS 256GB、一括払いで146,760円はやっぱり高すぎる……
ただ、購入手続きをしているときに、お店の人に聞いて、ちょっと驚いたのは、これまで使ってきたiPhone Xを下取りに出せば63,720円(正確には現金でもらえるのではなく、63,720円相当のポイントですが)になるのだとか。しかも、バックアップ作業とか引っ越し作業などを十分した上で、10月末までに渡せばOKとのことだったので、その形にしようかなと考えているところ。これなら146,740-63,720=83,020円でのバージョンアップということになるので、ある程度の許容範囲内に入るかな、と。
iPhone X(左)とiPhone XS(右)。まったく見分けがつかないほど見た目は同じ
そんなわけで、手元にはiPhone XSとiPhone Xの2つがあるわけですが、並べてみても大きさは一緒で、同じケースも使えます。重さは177gとiPhone Xより3g重くなったそうですが、持ってみても違いはわからない程度なので、変わった感じはまるっきりなし。
ひっくり返すとこんな感じ。iPhone X(左)とiPhone XS(右)。カメラ部分がやや長くなったらしい…
いろいろな記事などを読むと、カメラ性能が上がったのが大きな進化点らしいですが、個人的にはiPhone Xで十分すぎるものだったので、いまのところ、あまりありがたみは感じていないのが正直なところです。
輝度を揃えてみると、若干赤身が増している!?iPhone X(左)とiPhone XS(右)
ただ並べてみて気になったのは液晶の色味の違い。同じ輝度で表示させているのですが、iPhone XSのほうが若干赤身が強く感じられます。ただ白を表示すると、iPhone XSのほうが、真っ白に見えるので、こちらが正しいのかもしれませんね。
ちなみに、あえてiPhone XのほうはiOSのアップデートはせずにiOS 11.4.1のままにしています。新たに購入したiPhone XSは12.0ですね。iPhone XのバックアップをiCloundからiPhone XSにリストアしたこともあって、UIを含めてほとんど違いが判らないほどです。ただ唯一(?)気に入ったのは、バックグラウンドで起動しているアプリを、片っぱしから落としていく操作がiOS 12になって、昔のように上にフリックしていく形に戻った点。
バックグラウンドで動いているアプリを落とす方法が昔に戻ったことは歓迎
1年使ってある程度慣れたとはいえ、ホームボタンがない操作体系はあまり好きになれないし(iPadも使っているので、2つの操作体系になるのが気に入らない)、何よりDTM系アプリの場合、画面が横位置のものが多く、その場合アプリによって、左向きのものと右向きのものがあるから、縦に持っていると落とし方が違うのが納得いかないところですね。
※2018.9.23追記
iPad ProをようやくiOS 12にアップデートしたところ、アプリの終了の仕方はiPhoneと同じ方法がとれるようになっていました。
縦に持った場合、アプリによって向きが違うのも納得いかないところ
と、文句ばかり言っていても仕方ないので、実際の検証に入っていきましょう。まずアプリのほうからです。Garagebandが動くのは当たり前として、FL Studio Mobile、MultiTrack DAW、AUM、KORG GadgetなどDAW系はどれも問題なく使うことができました。
またソフトシンセ/ソフトウェア音源系もbs-16i、DXi、SampleTank、Cassini、CrystalSynthXT、Argon、Redshrike、KQ MiniSynth、KQ Dixie、SOUND Canvas、Vogel CMI、Animoog、Super Manetron、TANSU Synth、Handy Harp、miniSynth 2、Magellan……と手元にあるものをかたっぱしから起動してみましたが、とくに不具合を感じるものはありませんでした。大丈夫そうですね。
いつも、すべてにいち早く確実に対応するbs-16iは安心して使える
あえて上記音源とはフォルダを分けて管理しているKORGのアプリであるiDS-10、iELECTRIBE、iWAVESTATION、iMono/Poly、iKaosilatorもすべて問題なく動作してくれました。
そして、YAMAHAのMobile VOCALOID Editorも普通に動きますし、フリーなのにかなり強力に使えるFM Essentialなんかも大丈夫ですね。
Mobile VOCALOID Editorもバッチリ動作
一方、エフェクトのほうもそれぞれ起動して確認してみました。IK MultimediaのAmiliTube系はAmpliTube、AmpliTube CS、AmpliTube Acoustic、AmiliTube Orange……といろいろありますが、いずれも問題なく使えるし、同じくギターエフェクト系のJamUp Pro、Mobile PODなどもOK。さらにAuto-Tune Mobile、iConvolver、M/S Procなどなど、どれも大丈夫そうでした。
AmiliTubeシリーズも問題なくOK
もちろん、Audiobus 2およびAudiobus 3で使える各種エフェクトもバッチリ動いてくれたし、InterApp-Audioとしても動いてくれたので、この辺はすべて心配なさそうです。
Audiobus3も従来通りに動いてくれた
では、ここでハードウェアのほうに行ってみましょう。まずはオーディオインターフェイス系から、手元にあるものをいろいろと接続してみました。
まずMFi認証をとっているTASCAMのiXRはもちろん確実に動いてファンタム電源を使うマイクでも利用することができましたし、IK MultimediaのiRig Pro DUO、LINE6のSonicPort VXなども問題なく使うことができました。
iRig Pro DUOもしっかり使うことができた
個人的にいつも持ち歩いているSHUREのM/SマイクであるMV88も使うことができました。もっともこいつはヘッドホン端子を装備しておらず、あくまでもマイクとしての入力だけなので、ヘッドホン端子がなくなったiPhone X以降、モニターできないという難点を抱えたままではありますが……。
ヘッドホン端子がないという仕様上モニターはできないけれど、MV88も使うことができた
Lightning端子に直接接続できないオーディオインターフェイスイスはLightning-USBカメラアダプタを使って接続する形になるわけですが、こちらも試してみました。
Lihgtning-USBカメラアダプタ経由でRolandのRubix 24も動作した
USBクラスコンプライアント対応のデバイスに限られますが、YAMAHAのUR22mkII、RolandのRubix 22およびRubix 24、またネット放送用オーディオインターフェイスのTASCAM MiNiSTUDIOなどもしっかり動作してくれました。
TASCAM MiNiSTUDIOもLightning-USBカメラアダプタ経由で動作
続いてMIDIインターフェイスのほうも見てみましょう。こちらも、まずはMFi認証の取れている機材から見ていきます。定番であるIK MultimediaのiRig KeysやMIDIインターフェイスであるiRig MIDI2などはしっかり動作してくれます。
またLihgtning-USBカメラアダプタ経由であればKORGのnanoKEY2やMiDiPLUSのX4 mini、また先日のワイヤレスタイプのショルダーキーボード、AlesisのVORTEX WIRELESS 2も使うことができました。
MiDiPLUS X4 miniもLightning-USBカメラアダプタ経由でバス電源供給だけで動作した
一方で最近着実にユーザーが増えてきているBluetooth接続のMIDIキーボードであるKORGのmicroKEY Airも試してみました。こちらは、最初にKORG GadgetやGarageBand、bs-16iなどMIDI over Bluetooth LE(BLE-MIDI)に対応したアプリを使って接続しなくてはならない、という面倒さはあるのですが、一度接続してしまえば、普通のMIDIキーボードとして利用でき、Lightning端子がふさがっても問題なく使えるという点では非常に便利。これもiPhone XSでトラブルなく使うことができました。「iOS 12になったら、BLE-MIDI側の電源を入れなおしたら自動で再接続してくれるのでは…」なんて淡い期待をもって使ってみましたが、残念ながらその点については今までと変わりなしです。
microKEY Air 37もBluetoothでバッチリ接続することができた
しかし、ここまで触れてこなかったiPhone XSの新機能で、一つすごく期待していたものがありました。それはiPhone XSのビデオ機能にステレオ録音というものが搭載された点。普段、私がSHUREのMV88を持ち歩いているのは、iPhone単体だとマイクの音質も低いし、モノラルでしか録音できないから。そこまで音質がよくなくても、ステレオマイクが搭載されるなら、かなり良さそうだな、と。
設定画面に「ステレオ音声を録音」という項目が追加されている
iOSの設定画面にも、カメラのところに「ステレオ音声を録音」というのが加わっているので、とりあえずこれをONにして試してみました。
結論から言っちゃいましょう。ステレオのマイクが搭載されたわけではありませんでした。iPhone Xでも上と下、裏側の3か所にマイクが搭載されていたのですが、今回もマイク位置は同じであり、基本的な性能、機能も同じ。やはりモノラルでしか録音できないですね。
マイクはiPhone Xと同様3つ内蔵されているけれど、モノラルでしか録音はできない
ビデオでのステレオ録音というのは、iPhone XSにステレオマイクを接続すればステレオで録れるというだけであり、標準のビデオ機能で撮影するにしても、iPhone XS単体だとモノラルにしかなりませんでした。試しに優秀なアプリであるMultiTrack DAWを使うと、iPhone XS内蔵の3つのマイクを切り分けて使うことは可能です。これはiPhone Xでも同じだったのですが、組み合わせてステレオにということはできないようですね。ステレオ対応のマイクやオーディオインターフェイスが接続されている場合は、Stereo Sourcesという項目が現れるのですが、それがないですからね。
MultiTrack DAWでは、3つのマイクを独立して選択することが可能
ほかの各種レコーディングアプリでも試してみましたが、やはりiPhone XS単体でのステレオ録音はできませんでした。
※9月30日追記
その後、AV Watchの記事用に、iPhoneの標準のカメラ機能で録画テストをしてみました。その結果、モノラルのように聴こえたけれど、わずかながら左右でマイクの拾う音が異なるステレオであることが判明しました。ただし、現時点でステレオで録れるのは、標準のカメラのビデオ機能のみとなっており、CoreAudioのシステム的にはステレオ対応はしてないようです。
以上、iPhone XSについてDTM的アプローチでレポートしてみました。ここまで見てきたところ、トラブルはないけど、進化点もなく、iPhone X & iOS 11とiPhone XS & iOS 12で何も変わりがなかった、というのが実際のところです。もし、ほかに気になる点、調べてほしい点などありましたら、下記のコメント欄にいただければ、試してみたいと思います。
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