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Earsonics (イヤーソニックス)というフランスのイヤモニメーカーをご存知ですか?正直なところ私は全然知らなかったのですが、フランスでは非常に著名なメーカーで、David Guetta などフランスのミュージシャンの大半がこれを使っているのだとか!? 価格的にみると、エントリー機種のES2 で5万円前後、新製品の上位機種ES5 だと15万円弱と、なかなかなお値段ではあります。
このEar Sonicsの製品、国内では面白いことにヤマハミュージックジャパン が扱っており、「She in the haze」などのバンド系のアーティストがユーザーとして活用しているのだとか。先日、そのヤマハミュージックジャパンから「DTM用途のモニターとしてもかなり使えるはずなので、ぜひ少し試してみて」と言われてEarsonicsを代表するモデルES2 、ES3 、ES5 の3機種をお借りすることができたのです。ちょうど「DTMステーションEngineering 」でご一緒しているレコーディングエンジニアの飛澤正人 さんと、これから新レーベル(後日、改めて紹介します)を立ち上げるための打ち合わせをしていたので、この3機種をちょっと試してもらいました。プロのエンジニアから見て、モニターとして使えるイヤモニなのか、チェックしていきましょう。
レコーディングエンジニアの飛澤正人さんに、Ear Sonicsのイヤホン3機種をチェックしてもらった
まずはEarsonics社について、簡単に紹介してみましょう。同社は、ミュージシャンでベーシストだった「フランク・ロペス」によって2004年に設立されたイヤモニ専業のメーカーで、当初はプロミュージシャンのライブモニター用、音楽制作用として設計をしていたそうです。しかし、その高音質で、かなりこだわった音作りだったことから、数年前からオーディオファンにも注目されるようになり、リスニング用としても広まっていったようです。
今回チェックしたイヤホン3機種、手前からES2、ES3、ES5
Earsonics社の技術者によれば「フランスのミュージシャンの90%はEarsonics社のイヤーモニターを使っている」とのこと。話半分だとしても、フランスにおいては、それなりの実績があるメーカーのようですよね。フランス南部のカストルという場所で誕生したEarsonics社は、音質はもちろんのこと、部品にもこだわりをもっていて、フランス国内で調達できない一部の特殊な部品以外は、すべてフランスで製造しているのだとか。
今回使った上位機種のES5。いずれもカナル型のBAタイプのイヤホンになっている
今回試した3製品、ES2、ES3、ES5は、いずれもカナル型=インナーイヤー型のイヤモニ。バランスド・アーマチュア構造のイヤモニとなっているのですが、実際どんな音がするのでしょうか?今回、ご協力いただいた飛澤正人さん、ご存知の方も多いと思いますが、Dragon AshやHY、Gacktなどを手掛けるエンジニアで、レコーディングからミックス、マスタリングもこなし、プロデューサとしても活躍されている方。最近はVRミックスという、日本でも珍しいお仕事をされていますが、この辺の詳細はまた改めてレポートしますね。
VRミックスができる飛澤さんのPENTANGLE STUDIOでチェックしてもらった
今回、試聴していただいたのは、飛澤さんが、VRミックスができるようにと、昨年新たに東京・渋谷に作った、ご自身のスタジオ「PENTANGLE STUDIO」。このスタジオでいつも使っているCRANE SONG AvocetというD/Aコンバータ搭載のスタジオモニタコントローラーのヘッドホン端子からの出力を使ってチェックしてもらいました。
一方で、私が手元で使っていたTASCAMのリニアPCMレコーダー、DR-2dでもチェックしています。というのも、飛澤さんから「インピーダンスの低いプレイヤーで試したい」と突然言われ、16bit/44.1kHzでも、24bit/96kHzでも再生できるものとして、これを使ってみたのです。かなり違う2つの再生環境ではありますが、結果的に面白い事実も浮かんできたので、紹介していきましょう。
リニアPCMレコーダーからの音も併せてチェック
前述の通り、今回チェックしたイヤモニは、ES2、ES3、ES5の3つ。ES2は2Driver 2Way、ES3は3Driver 3way、ES5は5Driver 3wayという仕様になっています。見た目の違いは、ハウジングに印字された数字だけのように見えますが、構造的には、結構違うわけですね。
耳に引っ掛ける形で装着
装着は、いわゆる「Shure掛け」のようになっていて、耳に引っ掛ける形で付けるのです。飛澤さんの耳に合うサイズのイヤーピースを選んでもらったうえでES2から順にチェックしてもらいました。
発売されたばかりの新機種ES2、ES3のパッケージ
「ES2は、中域に少し癖のあるように感じます。Avocetのヘットホンジャックから聴くとインピーダンスが合ってなくて、本領を発揮できていないように感じます。ローインピーダンス用に設計されているようので、スマートフォンやポータブルプレイヤ-などのコンシューマ機器での使用が一番パフォーマンスがいいですね。実際、リニアPCMレコーダーで試したところ、音の質感が断然良くなりました。低音の大きな鳴りを求める人にとっては、やや方向性が違うように思いますが、中域がガツンと来るのが好きな人にはおすすめですね。」と飛澤さん。
ES2は、こんなパッケージの中に収められている
もともと、ステージでのモニタリングを目的として開発されたイヤモニを作る会社なので、ボーカルなど中域を重視した作りになっているのかもしれないですね。実際に日本のミュージシャンでもES2をステージ上で使っている方がいるので、音のチューニングはライブでのモニタリングを意識しているということかもしれません。
インピーダンスが低いプロ用のレコーディング機器だと、インピーダンスが合わない可能性がありますが、iPhoneやAndroidなどのスマホやポータブルプレイヤー、また一般的なDTM用のオーディオインターフェースなどであれば問題なく使えるはずですよ。
続いてES3をチェック
次にES3です。
「今回の3機種の真ん中ということですが、全体的なバランスが良く、これもインピーダンスマッチングという観点からポータブルプレイヤーでの使用の方が本領を発揮していますね。音の質感は原音にとても近い感じがしました。いいヘッドアンプで聴いたときは、もちろんとっても良く再生してくれるのですが、安価なアンプでもうまく音を補ってくれて結構な質感で再生してくれる優秀なイヤモニです。基本的にフラットですが中域が少し強調されていて、1.2~1.5kHzぐらいがやや盛り上がっていますね。低音もちゃんと出ているので、中域の強めな部分も気にならない。『あ、バランスいいじゃん』と感じさせてくれるものがありますね。高域の再生の質感もよく、バシッと来る感じがします。すごくキレイな高域の伸びも相まって、バランスよくモニターできるイヤホンだと思います」とのこと。
44.1kHzの音は、ラックに収められたCDプレイヤーからコンソールを通じて音を出してチ ェック
このシリーズに共通することは、中域が特徴的だということ。人それぞれ好みの音はありますが、ボーカルをしっかり出したいという人にとっては、すごくマッチするイヤモニのように思いました。ES2とES3の価格差は約1万円ほどですが、ただ単に上位互換というわけではなく、それぞれの使用用途やさらに細かい好みにフォーカスしたものになっているみたいですね。
ES2はステージ上でも使いやすいように、低音を抑えつつタイトに仕上げ、中域のモニターに優れているのに対し、ES3は楽曲制作やリスニング時に使いやすいようにバランスの良い出音になっているんですね。よく考えられていると思います。ミュージシャンの経験を経て、サウンドエンジニアになったフランク・ロペス氏のこだわりなのでしょう。そして、最後にES5です。
最後にチェックしたのがES5
「ES5は、一言でいうとすごく優雅な音ですね。ES3と同様、中域に少し強調されている感じですが、ES3と比べるとさらに奥行き感を感じられるイヤモニですね。全体のレンジ感と質感は一番キレイに再現、再生できています。音場の再現性も素晴らしいですね。モニター用として見ると高域が少し物足りなく思う点はありますが、リスニング用として見るとピッタリと言えると思います。もちろん、この辺は好みの問題になってきますね。もしかすると、これでミックスすると高域が少し強めなミックスになるかもしれないですが、そこさえ注意すればとても使えるイヤモニだと思います」
ES5にはこんなキャリングケースが付属している
「すごくいいイヤモニなので、再生機器の質感まで再現してくれます。いい再生機でなければそれが分かってしまうほどに。こういうことって、高いヘッドホンでもあることなんですよ。ヘッドホンアンプとヘッドホンがベストマッチしないと力を発揮してくれない、まさにそういうタイプですね。なので、ES5で聴くのであれば、ちゃんとしたヘッドホンアンプとマッチングさせてあげると最高のパフォーマンスを発揮します。Avocetで再生したときは、すごくふくよかで優雅に再生してくれました」と飛澤さんは語ってくれました。
ES5はすごく、ふくよかなサウンドだと言う飛澤さん
ES5なら再生機の質感までハッキリ分かってしまうというわけですね。15万近いイヤモニですから、それに合わせたD/Aやヘッドホンアンプが必要だ、ということですね。ES5はES2、ES3とはまたターゲットの違うプロユースということなんですね。一貫していえることは、それぞれに個性があって他社の製品とは違う魅力があるということ。いずれも楽曲制作からミックスダウンまで使えると思いますが、やはりそれぞれの用途や環境に合ったものを選ぶことで、最大の効果を発揮できそうです。
ここまで、音に関して重点的に話してきましたが、装着感も大切なところです。実際につけたときの感覚は、しっかりフィットして使えるということ。ライブなどでの使用も視野に入れているからか、何かの拍子に外れるということはなさそうです。耳にかけるワイヤー部分が少し硬めに作られているので、新品だと少し装着時に違和感を感じますが、ものの数分使っているうちに馴染んできました。フランスのメーカーだからといって日本人の耳に合わないということもなさそうです。イヤーピースがコンプライ2種類とシリコン2種類付属しているので、好みによって変えられるようにもなっています。ケーブルも交換可能なので、断線したときに簡単に変えられるのも嬉しいところです。
装着性の面でも非常によかったEar Sonicsのイヤホン
見た目にもこだわりがあり、シェル部分と呼ばれる一番外側の部分の仕上げは手作業で、歯医者で使用するものと同じような道具を使っているそうです。耐久性や耐水性に配慮しながら見た目も美しく清潔感のある製品作りを心掛けてるとのこと。最後の工程では、半透明にするために磨きをかけ、違和感なく装着できるようになっているそうですよ。
飛澤さんのコメントももちろん購入の参考になりますが、試聴可能なお店もあるので、この機会に試してみてはいかがでしょうか?
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