1月8日、アメリカ・ラスベガスで行われている家電の見本市、CES 2018においてRolandが新製品を3つ発表しました。1つはR-05以来8年ぶりとなるリニアPCMレコーダーの登場で、Bluetoothでスマホとの連携も可能なR-07。2つ目は、BOSSブランド製品で、世界初の完全ワイヤレスとなるギターアンプのKATANA-AIR。
そして3つ目はiPhone/iPadアプリで、とりあえず無料で使える4XCAMERAです。これは「歌ってみた」、「演奏してみた」などで活用可能なビデオ撮影アプリで、最大4トラック・4画面の多重録音・多重録画が可能なビデオ版MTRともいえるもの。それぞれ、どんなものなのか速報記事ということで紹介してみたいと思います。
RolandがCES 2018で3製品を新たに発表
まず、8年ぶりとなるリニアPCMレコーダー、R-07は簡単、確実、高音質でスタイリッシュというコンセプトの製品で、最高で24bit/96kHzのWAVでmicroSDにレコーディング可能なコンパクトなレコーダー。最大の特徴はBluetoothでiOSおよびAndroidのスマートフォンからリモートコントロールができる、という点。
ブラック、ホワイト、レッドの3つのカラバリで発売される8年ぶりのリニアPCMレコーダー、R-07
無料の「R-07 Remote」というアプリをインストールすることで、スマホからR-07の録音/停止操作や録音レベルの調整や各種設定の変更が可能となっています。赤外線の一般的なリモコンと異なり、これはBluetoothを使った双方向通信となっているため、スマホ画面上でリアルタイムに動くレベルメーターをチェックしながらレベル調整したり、録音時間の確認ができるのがポイント。たとえば、高い位置など手が届かない場所などにあっても、確実な操作ができるわけですね。
リモートコントロール用のアプリ、「R-07 Remote」(画面は開発中のもの)
またBluetoothは単にコントロール用というだけでなくオーディオ転送にも対応しているのも面白いところ。つまりBluetooth対応のヘッドホンやスピーカーで、レコーディングした音を再生可能となっているため、録ったらすぐにみんなでその結果を確認するといった使い方ができるのです。オーディオ送信プロトコルはローレイテンシー・高音質なaptXに対応しています。
マイクにはXY型ではなくAB型が採用されている
また、トラブルのない録音を実現するという意味では「リハーサル機能」および「デュアル・レベル・レコーディング機能」というものが装備されているのも重要な点。
机などに置いた場合、マイク部がやや上を向いているのもポイント
リニアPCMレコーダーでいい音で録音するための秘訣は「レベルオーバーしない範囲でなるべく大きな音でレコーディングする」ということ。ただ、慣れないと、適切の録音レベルにするのがなかなか難しいところですが、リハーサル機能を使うことで、本番録音前に実際の音をR-07に聴かせて適切なレベルに自動で設定してくれるのです。
リアには再生用内蔵スピーカーがある。また三脚用の穴は金属製になっているのもポイント
それでも場合によっては、本番でより大きな音量が入ってレベルオーバーしてしまうこともあるでしょう。レベルオーバーするとクリップノイズというものが発生して、せっかく録音が台無しになってしまうのですが、デュアル・レベル・レコーディング機能というものを使うことで、そうしたトラブルを避けることができるのです。つまり、設定した録音レベルより小さいレベルで、同時に別録音しているので、いざというときは、そちらを採用することが可能なのです。なかなか良く考えられてますよね。
さまざまなシーンで利用可能なリニアPCMレコーダー、R-07
R-07の発売は3月の予定で、実売価格は25,000円程度になる見込みです。
2つ目のKATANA-AIRはケーブルを一切接続することなくギターの演奏を楽しむことができる世界初のギター・アンプです。「でもステージなどでギターをワイヤレスで飛ばすシステムは昔からあるじゃん!」と思う方も多いはず。確かにメイン部分はワイヤレスだけど、ギターの出力からストラップに取り付けたトランスミッターへはケーブルで繋いでますよね。でも、このKATANA-AIRはギターのジャックに小さなプラグのようなものを取り付けるだけ。これがバッテリー内蔵のトランスミッターなんですね。
世界初の完全ワイヤレスのギターアンプシステム、KATANA-AIR
このトランスミッターは1回の充電で最大12時間の連続使用が可能で、一定時間演奏しないと自動的にスタンバイ状態になる省電力設計。しかもスタンバイ状態になっていても、ギターを持ち上げるなど、少し動かすとトランスミッター内のセンサーが振動を感知して、即座にワイヤレス接続を再開するというなかなか賢いシステムになっています。
ギターのジャック部分にコードのないトランスミッターを取り付けて使う
一方、そのトランスミッターからの信号の送信先は定評のあるBOSSのKATANA Amp。ACアダプタ使用時で30W(15W+15Wのステレオ)、アルカリ電池使用時で20W(10W+10W)の出力を持つアンプなんです。そう、この出力からも想像できるように、このKATANA-AIRはステージ用というよりも、自宅環境やスタジオ内で使うためのアンプです。
アンプの設置場所や電源の確保、配線に手間取ることなく、すぐにギター演奏を楽しむことができ、ケーブルで部屋が汚らしくなることもないというわけです。
ほかのKATANAシリーズと同様、さまざまな音楽スタイルにあったサウンドを作り出すことができるのが特徴。クリーン・サウンドから、ハイゲインのブラウン・サウンド、エレアコに最適なサウンドなど、実用性の高い5種類のアンプ・タイプが搭載されています。またステレオ・スピーカー・システムに合わせて最適化されたモジュレーション、ディレイ、リバーブなど、計50種類以上のエフェクトもここに搭載されているのです。
こうしたアンプ・タイプやエフェクトの切り替え、設定はKATANA-AIR本体での操作に加え、iOS/Android対応の専用アプリを使うことで、GUI画面で分かりやすく操作できるようになっています。このアプリはBluetooth接続なので、音色変更も本体を触ることなく手元で可能ということですね。しかも、このアプリを使うことで、本体だけではできない、細かく緻密なエディットまでできるのも重要なポイントです。
KATANA-AIRをコントロールするアプリ(画面は開発中のもの)
さらに、スマホ側からKATANA-AIRへBluetoothでオーディオを飛ばすことができるのも大きな特徴です。この場合、いわゆるBluetoothスピーカーとして機能するため、再生する音がギターアンプで歪んだり、エフェクトで音が変わってしまうことはありません。もちろん、このオーディオを再生しているときも、それに重ねる形でギターを鳴らすことも可能ですから、手持ちの楽曲やYouTubeなどのビデオを再生しながらのギター練習用にピッタリというわけです。
このKATANA-AIRの発売は4月の予定で、こちらは40,000円前後になる見込みです。
そして3つ目は、本日からAppleのApp Storeでダウンロード可能になった、iPhone/iPadだけで画面分割の本格的な演奏動画を簡単に作成できるアプリ、4XCAMERA(フォーエックスカメラ)です。
iPhoneおよびiPad用のアプリとしてリリースされた4XCAMERA
これは1人で複数の楽器を演奏したり、1人で複数パートを歌ったり、ネット仲間とのセッションするのを画面分割の形で1つのビデオ作品に仕上げられる、非常に便利なアプリです。音だけであれば、DAWを用いて多重録音していくことで作品を作っていくことは可能ですが、ビデオにするとなると、なかなか難しく、従来かなりの手間がかかりました。
でも、この4XCAMERAは、そうしたビデオをiPhoneやiPadだけで撮影・録音し、1つの作品にしてくことができできるのです。
ビデオというと難しそうに思えるかもしれませんが、使い方は至ってシンプル。まずはこのアプリを使って1つ目の演奏を撮影・録音していきます。これができたら、いま録ったものを再生しながら、合わせて2つ目の演奏を行い、それを撮影・録音するです。必要に応じてさらに3つ目、4つ目と撮影・録音していけばいいのです。ビデオ撮影という行為は入るものの、基本的には単純なMTRと同じです。
録画した映像をレイアウトしていく
この撮影・録音が完了したら、アプリに用意されている10種類の画面レイアウト・パターンを選択した上で、どのビデオをどの位置にするかを指定していけばいいのです。もう、これだけで4分割画面のビデオ作品が完成しちゃうんですね。
アプリ内課金により4画面が利用可能になる
もちろん、音は上書きではなく、それぞれ別々に録音されていますから、各パートの音量バランスを調整することも可能ですよ。
この4XCAMERA自体は無料アプリなんですが、無料版の状態だと画面分割は2つまで、つまり2パートの作品までしか作ることができません。しかし480円でのアプリ内課金を行うことで、アップグレード版にすることができ、4分割、10パターンの作品作りが可能になるのです。
無料版 | アップグレード版 | |
料金 | 0円 | 480円(アプリ内課金) |
録画時間 | 制限なし | 制限なし |
画面分割 | 2画面まで | 4画面まで |
「Roland」ロゴ表示 | 画面上に表示 | 表示なし |
面白いのはアプリ内でiPhoneやiPad上の曲にアクセスできるため、これをガイドトラックとして利用できるという点です。つまり原曲をヘッドホンで聞きながら、自分の演奏やボーカルを動画撮影することができるのです。この場合、動画には自分の演奏しか録音されませんから、原盤権を侵害するという心配もないわけですね。
できあがった映像作品はYouTubeなどにアップすることができる
このようにして作成したビデオ作品は、YouTubeやニコニコ動画、Instaなどへアップロードすることが可能なので、今後面白い作品もいろいろ出てきそうです。ちなみに画面比率は、一般的な16:9のほかに、Instagramなど適したスクエア(1:1)を選ぶことが可能になっています。
Rolandが本日発表したのは、以上の3製品です。とりあえずは速報版ということで紹介してみましたが、また近いうちに、実際に使ってみての詳細レポートもしてみたいと思ってます。
【関連情報】
Roland Music Connect
【ダウンロード】
◎App Store ⇒ 4XCAMERA