Shure(シュア)とブランド名を聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?DTMユーザー、ミュージシャンであれば、やはりSM58やSM57といったダイナミックマイクではないでしょうか?世界中どこにいってもある高音質ながらも頑丈で、多少乱暴に扱っても壊れない、まさに業務用のマイク。しかも安いから、誰もが使うマイクとして長年プロの世界で愛用され続け、SM58は昨年で50周年だったんですよね。
Shureは音の入口であるマイクで長い実績を持つ一方で、音の出口であるヘッドホン、イヤホンでも、いま高い評価となっており、気づくとかなり多くのラインナップが揃っているんですよね。個人的にはエレドラ用のモニターヘッドホンとしてSRH440、電車の中で使うBluetoothイヤホンとしてSE215 Wirelessを愛用しているのですが、意外とShureのヘッドホン、イヤホンについて知らないDTMユーザーも多いようです。そこで、改めてモニター用として使える製品としてどんなものがあるのかについて、紹介してみたいと思います。
DTMのモニター用として非常に使いやすく高性能なShure製品群
SM58やSM57を筆頭にプロオーディオの分野で数多くの名機を生み出してきたShure。近年、その技術と経験をヘッドホン、イヤホンに注ぎ込み、さまざまなプロフェッショナル・モニタリング製品を出してきています。どちらかというと、現時点においてShureは、DTMの世界よりも、一般的なポータブルオーディオの世界での認知度、人気が高いようですが、音楽制作用のモニターとしてもなかなかいい製品なんです。
DTM用途にもピッタリなShureのヘッドホン、3製品。SRH940、SRH840、SRH440
ヘッドホンのほうはSRHシリーズ、イヤホンはSEシリーズとしてさまざまな製品がありますが、DTM用として使いやすい機種をピックアップするとSRH940、SRH840、SRH440、SE846、SE425、SE215のあたりでしょう。たとえばSRH840をDTM用のモニターヘッドホンのデファクトスタンダードともいえるSONYのMDR-CD900STと比較してみるとその違いが分かりやすいかもしれません。
SONYのMDR-CD900STと比較すると、違いがクッキリと見えてくる
CD900STの場合、軽くて着けている感じがしないというのがメリットであり、高域の音の分解能が優れているというのが特徴です。それに対しSRH840は、もっとしっかりとホールドされる感じの着け心地の密閉型で、周りの音もかなり遮断されるために、より集中してモニターすることが可能です。高域での解像度はCD900STより明らかに高い一方で、中域、とくに低域が断然ハッキリと出るのが最大の違いでしょう。もちろん、低域と高域ばかりが強いドンシャリというのではなく全体的にフラットであり、変な味付けもされていないシンプルなサウンドだからこそ、モニターとしての威力を発揮してくれるのです。
SRH940はイヤーカップが90度回転するスイベル機構。専用ハードケースも付属
そのSRH840の音の解像度をさらに高め、高域がグンと伸びた感じなのが、SRH940です。同じモニターヘッドホンでも、SRH840が演奏者用・レコーディングエンジニア用となっているのに対し、SRH940はよりエンジニアに向けられた設計となっており、「スタジオレコーディングやクリティカルリスニング用」として売られているものなんですね。このSRH940はイヤーカップが90度回転するスイベル機構を採用しており、専用のハードケースも付属するため、スタジオなど現場に持ち運びも安心してできるのもポイントです。
SRHシリーズのケーブルは脱着式になっている
いずれもケーブルは脱着式となっていて、差し込んで回すとカッチっと固定される機構になっています。SRH840がカールコード付属となっているのに対し、SRH940はカールコードとともにストレートコードも付属しているので、「カールコードは扱いづらくて……」という人でも、気持ちよく使うことができそうです。
SRH440はエレドラ用のヘッドホンとして普段から愛用してる
一方で、前述の通り個人的にエレドラ用として6、7年使っているのがSRH840の下のグレードとなるSRH440です。個人的にこれが気に入っているのは、CD900STなどと比較して頭にしっかりフィットするため、ドラムを叩いていても外れにくいこと、またキックの音もしっかりと聴き取れるからいいんですよね。細かな音をモニターするミキシング用途ならやはりSRH840やSRH940のほうがいいのですが、すごく安いのに、結構いい音であったので、これを購入し、ずっと使っているわけなのです。比較的乱暴に扱っているものの、長年まったく壊れずに使えているのも、さすがShureクオリティーだ、と感じるところでもあります。
当たり前ではあるけれど、ステレオミニジャックに直接接続できるのは結構便利
ちなみに、SRHシリーズは、いずれもコネクタが金メッキされた3.5mmのステレオ・ミニプラグ。同じく金メッキされた標準プラグアダプタが同梱されているので、これを使って6.3mmの端子に接続する形になっています。CD900STの場合、標準プラグだけなので、ステレオミニ端子に接続するのが面倒というネックもあるんですよね。
ところで、再生系デバイスではヘッドホンのSRHシリーズよりも、イヤホンのSEシリーズのほうが、断然知名度も高く幅広いユーザーが使っているので、DTMと関係なく普段から使っているという人も少なくないと思います。いわゆる「Shure掛け」というスタイルは、耳から外れないイヤホンの装着方法としてステージでも広く使われていますからね。
DTM用途にお勧めなShureのイヤホン3機種。SE215、SE425、SE846
ちなみにインイヤーモニターシステムは1997年にShureが世界で初めて開発したもので、そのときの製品がE1。その後発売されたE3は日本でも大ヒット製品となったので、使った方も多いのではないでしょうか?
各イヤホンには専用のキャリングケースも付属している
現在のSEシリーズはEシリーズを引き継ぐ形で2006年以降に発売されたもので、現在はエントリーモデルのSE112から4基のBA(バランスド・アーマチュア)ドライバを装備するSE846まで、幅広いラインナップが揃っています。
ダイナミックドライバ1つで全音域を鳴らすSE215
その中で、DTMのモニター用途としてピックアップするとしたら、SE215、SE425、SE846といったあたりでしょうか。個人的には、DTM用というよりも外でiPhoneで音楽を聴くために、低価格ながらもフラットな音であることからSE215が気に入って使っていたのですが、iPhone 7でヘッドホン端子がなくなってからやや遠ざかっていました。が、先日Bluetoothで使えるSE215 Wirelssが登場したので、これを愛用しているんです。
個人的にはSE215のBluetooth接続モデルであるSE215 Wirelessを愛用
まあ、どうしてもBluetooth接続なので音質劣化するためDTM用であれば、有線のSE215をお勧めしますが、音を確認する上でスピーカー、ヘッドホンに加え、イヤホンでもチェックしてみるのは重要なポイントだと思います。
SE215がダイナミック型のドライバ1つで全音域を鳴らすシンプルな構造なのに対し、さらに高域の解像度を高めるためにBAドライバ2つで構成されたSE425は、モニター用としてより使えると思います。高域だけでなく、低域までしっかり出すことができ、ベースの響きを確実に捉えられるという点でも良くできています。
スケルトンのSE846の中を覗いてみると4つのBAドライバが入っていることが分かる
価格的には、今回取り上げる機材の中でもっとも高くなりますが、とにかく細かな音までクッキリ捉えることができるのがSE846です。小さいボディーの中に4つものBAドライバが納まっているのですから、驚きですよね。ドライバとは、実際に音を発するスピーカー部のことなので、4ドライバーの3Wayスピーカーに相当する製品というわけなのです。手元にあるSE846は中身が見えるスケルトンタイプだから4基のドライバが見えるのも面白いところです。
これらSEシリーズは、持ち運び用のケースも付属しているのも嬉しいところ。これならカバンやポケットにしまっても、絡まったり、壊れたり、なくしたりしないですからね。
ヘッドホンとイヤホンでは、やはり用途は異なってきますが、共通するのはDTM用として、しっかりとモニターすることができるという点。マイクだけでなく、モニター用にもShureを試してみる価値は大きいと思いますよ。
なお、SEシリーズは2018年1月14日までの購入者に対して「2017 SHURE イヤホン サンクスキャンペーン」というものが実施されているそうです。応募すると抽選で1000名にShureグッズが当たるとのことですから、せっかくならこの機会に買ってみるとよさそうですね。
【関連情報】
SRH940製品情報
SRH840製品情報
SRH440製品情報
SE846製品情報
SE425製品情報
SE215製品情報
2017 Shure イヤホン サンクスキャンペーン