9月29日に発売された待望の機材、Roland Boutique TR-08。すでに多くの方がご存知の通り、これは1980年に発売されたRolandのリズムボックス、TR-808、通称ヤオヤをRoland自ら今の時代に復刻させたもの。RolandのACB(Analog Circuit Behavior)テクノロジーという技術を用いて、アナログ回路を完全に再現させたものだけに、音はまさにホンモノです。
もっともTR-808は、3年前に発売されたRoland AIRA TR-8で、すでに復刻済ではあったものの、新たにチューニングするとともに、なんといってもグッとくるのがこのデザイン。まさに当時の機材のデザインをそのまま踏襲するとともに、コンパクトなサイズに収めているんですね。Roland Boutiqueシリーズは、私もJUNO-106を復刻させたJU-06、モノフォニックシンセ機能を搭載したA-01など、いくつかを個人的に購入していましたが、TR-08も数量限定生産ということだったので、予約して発売日にGETしました。これ単体でも十分楽しめる機材ではありますが、DAWと連携させることで、よりTR-08の威力を引き出すことができることが確認できたので、その手順、方法などを紹介してみたいと思います。
Roland Boutique TR-08をDAWと連携させてみた
TR-808がどんな機材なのかについては割愛しますが、TR-08はRoland社内に残っている機材や回路図、設計に関わったエンジニアの記憶なども頼りに、正確に復元させた最新機材です。使い方や実際の音もオリジナルに忠実に復元する一方、小さい機材なので、それに合わせた使い勝手も実現させた機材となっています。
さらにオリジナルのTR-808にはなかったさまざまな機能もTR-08には搭載されており、それこそがDAWとの連携させるためのさまざまな機能となっているのです。順に見ていきましょう。
TR-08のmicroUSB端子をACアダプタに接続すれば電源供給できるがPCと接続すればさらにいろいろなことが…
まずはTR-08にはmicroUSB端子が搭載されており、ここにACアダプタを接続すれば、単3電池4本を入れなくてもUSBバスパワーで駆動することが可能です。もちろんACアダプタでなく、WindowsやMacと接続してもOKであり、これらPCと接続するとさらなる威力を発揮してくれるのです。
ドライバをインストールすると、まさにオーディオインターフェイスとして見える
そう、電源だけでなく、MIDIそしてオーディオの入出力が可能になる設計となっているんですね。つまり、PC側からTR-08を見ると、これがオーディオインターフェイスとして使える形になっているんです。したがって、TR-08とPCがあればDTM環境が整ってしまうわけで、ほかにオーディオインターフェイスなど必要ないのです。ただしドライバーはインストールしておいてくださいね。Windows 10の場合は、接続すると自動的にドライバをダウンロードして認識してくれる仕様になっていました。
オーディオインターフェイスとしてTR-08を選択する
接続したらDAWを起動し、オーディオインターフェイスとしてTR-08を選びます。MacならCoreAudioとして、WindowsならASIOドライバで使っていく形になります。どのDAWとでも連携可能ですが、ここではCubase、Studio One、Ability Pro、SONARなどを使って試してみました。
サンプリングレートは44.1kHzか96kHzが選択できるが44.1kHzがお勧め
まずプロジェクトとしてサンプリングレートを設定しますが、TR-08で利用できるのは44.1kHzと96kHzの2つです。どちらで使ってもOKですが、どちらかというとお勧めは44.1kHz。というのもTR-08は内部的に44.1kHzで動作しているので、下手にサンプリングレートコンバートをかけず、そのままの音が入ってくるのでいいんですよね。
トラックに録音すれば、TR-08の音がデジタルのまま入ってい来る
ここでオーディオのステレオトラックを作成し、TR-08を演奏させている状態で録音すると、TR-08の出力がそのままレコーディングされていきます。この際、完全デジタル接続だから音質劣化なく録音できるのが嬉しいところです。ただしそのままだと、ややレベルが小さいので、必要に応じてTR-08のMENUからGAINを選んで調整してみてもよさそうです。このGAINは0~200で設定でき、デフォルトの設定が100になっているんですね。これを120~150程度にすると、ちょうどいいように思います。
TR-08のGAINをデフォルトの100を120~150程度にするといい感じ
しかし、この方法で録音するだけならTR-08のOUTPUTからの音を録音するのと何も変わらないわけですが、面白いのはここから。実は、TR-08からPCへの信号は、この各音をミックスした信号だけでなく、キックだけ、スネアだけ、カウベルだけ……とそれぞれ個別にパラで送ることができるようになっているのです。
TR-08全体のミックス音のほか、モノラルで10chでパラでオーディオ信号が届く
通常、各DAWで、オーディオI/Oの設定・割り当てが必要になると思いますが、このミックスの信号はステレオで、それ以外はそれぞれモノラルで入ってくるので、これを割り当てます。具体的にはBD、SD、LT、MT、HT、RS、CP、CB、CY、HHの計10種類。これらのレコーディングができるようにモノラルトラックを作成して、TR-08から音を出せば、パラで録音することができ、個別にエフェクトを掛けたり、EQ調整をするといったことも可能になるわけですね。
基本的にはモニタリングはオフにする
ここで「おや?」と思ったのが、モニターの方法です。普通のオーディオレコーディングだと、一度DAWに入った音をモニターするので、エフェクトを掛けた状態でモニターすることが可能ですが、TR-08のメイン出力およびヘッドホン出力からは、TR-08の音がそのまま出ちゃうんです。そのため、DAWのトラックをモニターするとダブルで音が出てしまうわけです。
たとえばスネアにディレイをかければ、ディレイ効果をリアルタイムにモニターはできるものの、そもそもの音がダブルで出ているので、あまり好ましい状況ではないわけです。そのため基本はモニターオフにするか、ダイレクトモニタリングをとります。エフェクトを掛けるのなら、リアルタイムではなく、レコーディングをしてから、というのが良さそうです。
なお、TR-08にはMIX INという端子があり、外部からの音を入力して、TR-08の出力とミックスした上でOUTPUTから出力するということができるようになっていますが、DAW側から見ると、これも一緒に入ってくる仕様になっていました。つまり、TR-08の音を出さないようにすれば、まさにオーディオインターフェイスの入力として扱うことができるわけですね。
TR-08にはSYNCという機能があり、デフォルトではAUTOにセッティングされている
次に、同期についても見てみましょう。TR-08はリズムマシンですから、これ自体でパターンを組んでいくことが可能です。でも、DAWと連携させるのであれば、「せーの!」でボタンを押すというのではなく、しっかり同期させたいところですよね。これについてもUSB接続してあれば簡単です。
MIDIクロックをTR-08に送る
TR-08側はデフォルトでMIDIクロックに対しての同期がAUTOとなっているので、DAW側からMIDIクロックを送ってやるだけでOKです。多くのDAWは初期状態ではMIDIクロックの出力はしていないので、それぞれでTR-08のMIDIポートに送るようにすればいいわけです。あとは録音スタートすると、TR-08が自動的に動き出し、テンポも同期してくれます。
MIDIで打ち込んで、基本的にはMIDI ch.10で送ればTR-08を鳴らすことができる
一方で、このホンモノそのものといえるTR-08の音だけが欲しい、これを音源として使いたいだけだ、という人もいるでしょう。世の中にTR-808のサンプリング音源は山ほどありますが、やはりRoland自らが復刻させた、このホンモノを音源として利用する意義は大きいと思います。その場合は、DAW側はMIDIで打ち込み、鳴らした音をオーディオトラックで取り込んでいけばいいのです。
TR-08のMIDIノート対応。左が出力、右が入力
TR-08のMIDIインプリチャートを見れば、16種類の音源に対してMIDIノートが割り振られています。ここで注意すべき点は、TR-08のMIDIチャンネルが10chとなっていること。このMIDIチャンネルはTR-08側で変更可能ですが、MIDIチャンネルが合ってないと音を鳴らすことができないので、うまく音が出ない…という場合には、ここをチェックしてみてください。
TR-08の各パラメータを動かしたものを、MIDIトラックに記録していくことも可能
なお、必要あれば、キックのチューニングやトーン、コンプ…というように、TR-08にある各パラメータもMIDIのコントロールチェンジで調整することも可能になっています。またそれらはDAW側からコントロールするだけでなく、TR-08の各パラメータを触れば、コントロールチェンジ情報としてDAWに記録させることも可能なので、TR-08を使ったプレイを正確に記録し、再現するということもできそうですね。
以上、TR-08とDAWと連携させるためのポイントをピックアップしてみました。まだTR-08をしっかり使いこなしているわけではないのですが、この辺のことについてマニュアルを見てもあまり詳しく書かれていなかったので、参考になれば、と思います。
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