8月5日、東京渋谷のライブハウス、DESEO mini with VILLAGE VANGUARDにおいて、第6回目となるDAW女子会が開催されました。「DAW女子会?何だそれ?」という人、「DAWを使ってる女子が集まって飲み会でもするの?」なんていう人も多いと思いますが、これはDAW女シンガーソングライターとして活躍していて、ポニーキャニオンからのメジャーデビューが決まっている小南千明さんが主催するライブイベント。ここでステージに上がるのは、DAWを使ってる曲を作っている女性アーティストのみ。観客のほうは女子はもちろん、男子もOKであり、実際には8割近くが男性だったりしたのですが、とっても盛り上がったライブイベントになりました。
総じて言えるのは、どのアーティストもすごくクォリティーの高い、ということ。それはVol.6に限らず、これまでのDAW女子会すべてに共通する点ですが、今回また改めてそう感じました。きっと、今後、DAW女子会出演者の中から大物アーティスト、著名作家が続々と誕生するはず、と思っていますが、今回のDAW女子会、実際どんなDAWや機材が使われていたのか、という観点から紹介してみたいと思います。
8月5日に開催された小南千明 Presents DAW女子会Vol.6 夏祭りSPECIAL
DAW女子会は2016年3月にスタートしたイベントで、3~4ケ月に1度のペースで行われていて、今回が6回目となるものです。以前に「男子も見に行けるDAW女子会。12月19日、東京・渋谷で開催!」というvol.4の告知記事を書いたこともありましたが、DTM業界にも少しずつ知れ渡るイベントになってきました。
DAW女子会 vol.6のタイムテーブル
今回のDAW女子会参加メンバーは、小南千明さん(@c_1115)、YUC’eさん(@yuce_e)、Utaeさん(@Almost_human720)、マキアダチさん(@makiadachi10)、ASOBOiSMさん(@tanama1204)、おかありなさん(@oka_arina)、小川ひなこさん(@215hina)の計7人。このうち小南さんは当然ながらUtaeさんも6回目の参加、YUC’eさんが4回目、マキアダチさんが2回目。DAWを使うという共通点はあれど、みんなジャンル的にはかなり異なるところもDAW女子会の面白いところです。
DAW女子会の主催者であるDAW女シンガーソングライター、小南千明さん
普通ライブハウスで行われるライブって、バンド系のものと、ピアノやギターを使った弾き語り系の大きく2つに分かれるように思いますが、ここに集結するDAW女のみなさんは、それらとは明らかに異なるスタイルでのライブステージなんですよね。
DAW女子会 vol.6のフライヤー
そう、基本的に一人でのステージであり、人によってギターを持ったり、キーボードを弾いたりもするけれど、バックには彼女らが作ったバックトラックが流れる同期モノとなっているのです。DAWを持ち込んで直接ここから再生させる人もいれば、それを2chに落としてPCからプレイする人、WAVファイルをPAに渡して、PA側からプレイしてもらう人……と手法はそれぞれですが、みんなDAWを活用したステージになっているんです。
そしてMCなどで、みんなが異口同音に言っていたのは「普段は、どこのライブハウスでやっていても、すごくアウェイな感じなんです。ここに来て、初めて自分のホームグラウンドはここだったんだ、って実感しました」という話。
主催者である小南千明さんも「普段は自宅に引きこもって制作しているし、ライブも1人で孤独なDAW女たちだけど、今日はそんな私たちのつくる音楽を受け取ってもらえて嬉しい!」との話に、会場の来客者もうなづいていたのが印象的でした。
今回のDAW女子会のステージに立った7人のメンバー
もちろん、ここに集まっている人たちも、DAWを使っていることに興味を持っている人も多く、業界関係者、楽器メーカーの人などが散見されるのも面白いところです。
今回の7名のみなさんが使っているDAWをまとめると以下のようになります。
使用DAW | |
小南千明 | Studio One 3 |
YUC’e | Cubase Pro 9 |
Utae | Ableton Live 9 |
マキアダチ | Logic 9 |
ASOBOiSM | GarageBand & Logic |
おかありな | GarageBand & Music Studio |
小川ひなこ | Pro Tools 10 |
もう少し、具体的に紹介していきましょう。まずこのステージの1番バッターに立ったのは、主催者である小南千明さん。小南さんはStudio Oneユーザーとして知られてますが、現在は最新版のStudio One 3.5を活用しているとのこと。ステージでも、このStudio Oneを使っていたのですが、制作したデータそのものを持ち込んでいるのではなく、ステムとして6、7トラックに書き出したものをStudio One上に並べ、曲ごとにマーカーをつけた上でポン出しをしているとのこと。
オープニングは小南千明さんによるライブからスタート
6、7トラックにまとめていた理由について小南さんは「やはり出音は、会場に行ってみないと分からない面も多いので、2chにはせず、ベースやドラム、シンセパート、コーラスなど大きくパートわけした状態のものを持ち込んでいます。実際にリハで鳴らしてみて、モコモコしていたら、ローを落とすなど調整しています。ハモ部分を歌いながら、本番中に音量調整することもありますね」とのこと。DAW女ならではのこだわりでもありますよね。ステージ上ではRolandのシンセ、JD-Xiを弾きながら歌ったり、曲によってはAIRAのTR-8を使ったりもしていました。
ASOBOiSMさんの後ろには、MacBook Proとともに、Scarlett 2i4が
2番手、今回初参加となったASOBOiSMさんはGarageBandで曲作りをし、Logicでアレンジをしているとのことですが、ステージ上にはこれを2mixした状態でDJソフトを使って再生していたとのこと。オーディオインターフェイスにはFocusriteのScarlett 2i4を使っており、この鮮やかな赤が、会場の一番後ろからでも目立って見えました。
普段はバンド形式でステージに立つことが多いという小川ひなこさんもDAW女子会は1人ステージ
同じく初出場の小川ひなこさんは、「バンドでの演奏が好きなので、普段はドラマーさんやギタリストさんを雇って出演することが多いんです。今回もサウンドはバンド仕立てで、ベースやギターはレコーディングしたものを使っていますが、今日は一人で演ります」と宣言してのステージ。
会場の音響がすごくいいこともあり、なかなかの迫力でした。ドラムは打ち込みで、Addictive Drumsを使っているほか、シンセにはNative InstrumentsのMassiveなどを使っているとのこと。そうして作ったものを、Pro Toolsで鳴らすわけではなく、それをWAVに書き出した上でZOOMのR8に読み込ませて、再生させていたのも印象的。PCではなく専用機を使ってしまうというのが、トラブルを回避する上で重要だったりするんですよね。
ギターを持ち、Ableton Liveのルーパーなどを駆使しながら歌う、Utaeさん
先日のDTMステーションPlus!でも出演していただいたUtaeさんは、シンセとボーカル・コーラスを融合させた、独特な世界観を持ったサウンド。ステージ上には、Ableton Live 9を入れたMacBook ProとNIのMASCHINE Jamを持ち込んでいたUtaeさん。不思議なボーカルサウンドの重ね合わせワザはLiveのルーパー機能を使っていたんですね。
UtaeさんはNIのMASCHINE JamをMIDIコントローラーとして活用する
MASCHINE Jamは、MIDIコントローラとして使っていて、そのルーパーのコントロールであったり、音量の調整、エフェクトのON/OFFやフィルターの調整などに使っていたほか、パッドとしてドラムサウンドやシンセサウンドなどを鳴らしていたようですね。
Micro KORGを使いながらボコーダープレイもこなすマキアダチさん
マキアダチさんのステージでは、PCを見かけなかったので、どうなっているんだろう……と思っていたら、バックのサウンドはiPhoneから出してたんですね。確かにクリックを聴いたりする必要がないなら、iPhoneで2mixしたものを再生するというのは、確実で失敗のない方法なのかもしれません。
MCでは英語での紙芝居パフォーマンスも
ステージ終了後にマキアダチさんに聞いてみたところ、Logic 9で制作していて、音源にはLennar DigitalのSylenth 1やフリーウェアのMOOGシンセを使ったりしていたとのこと。またステージ上ではmicroKORGを使ってボコーダー演奏などもしていましたが、なかなかカッコよかったです。
アコースティックギターも使いながらプレイするおかありなさん
「DAW女子会に呼ばれるまで自分がDAW女だとう自覚はなかったんですけど、もっとちゃんとDAWと向き合って勉強していきたいなって思いました!」と話ていた、おかありなさん。ステージから観客席側に降りて寝転がっての歌唱にはちょっとビックリしましたが、なかなかインパクトのあるサウンドでした。
各ステージの後は物販コーナーでCDなどを販売
楽曲の制作はMacのGarageBandを使っているほかiPhoneのDAWアプリであるMusic Studioを使っているとのこと。Music Studioを楽器としてドラムや効果音を出してGarageBandに録音していたそうですよ。そうして制作したバックトラック、ステージ上で、おかありなさんが操作していたわけではなく、CD-Rに書き出した上で、PAさんに渡して、音出ししてもらっていたとのことでした。
会場を大きく盛り上げていたYUC’eさん
そして、つい先日の金沢でのCubaseファンミーティングPROでも一緒だったYUC’eさんのステージは、さすがアメリカでのステージを成功させてきただけある、パワーと安定感でした。YUC’eさんによると、楽曲制作はCubase Pro 9で行いつつ、ステージに持ってきていたのはCubase Elements 8だったとのこと。ここに2mixしたものを入れて、流していたんですね。
Cubaseとともにパフォーマンス用に活用していたのはMASCHINE Mikro MK2
また歌いながら、機材操作をしていたのも印象的でしたが、使っているのはNI MASCHINEシリーズの中で一番小さい、MASCHINE Mikro MK2。このパッドにサンプルを割り当て、ドラムやノイズをリズミカルに叩きながらパフォーマンスしていたんですね。
DAW女子会 vol.6、最後のステージは小南さんが飾った
トリは、再度、主催者である小南さん。YUC’eさんが盛り上げた会場を引き継いでのステージは大盛況となりました。
森中昭宏さんによるTouch Designerを用いたVJも重要なキーとなっていた
ところで、このDAW女子会 vol.6を盛り立てたもう一つのポイントには、ステージのバックを飾るVJがありました。これは森中昭宏さんがTouch Designerというソフトを活用しながらリアルタイムに動かしていたものなんです。ビートに合わせてグラフィックが動くなど、さまざまな趣向が凝らされていたんです。このソフト、マイクから入力された音からピークを検出することで、ビートを拾い、それに合わせてリアルタイムに画像を動かすなんてことができるんですよね。この辺もDAW女子会ならではの点なのかもしれません。
最後はみんなで記念撮影!
今後もDAW女子会は定期的に続けていくとのこと。小南さんは、さらに新しい試みもしつつ進めていくとのことなので、今後にも期待したいところ。もちろんDTMステーションとしても、DAW女子会を盛り立てられるよう、お手伝いしていきたいと思っています。
【関連情報】
小南千明さんWebサイト
YUC’eさんWebサイト
UtaeさんWebサイト
マキアダチさんWebサイト
ASOBOiSMさんWebサイト
おかありなさんWebサイト
小川ひなこさんWebサイト
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