iPhone、iPadのDTM系アプリとして常に人気上位にいるKORG GadgetのMac版であるKORG Gadget for Macが3月24日、ついに発売になりました。今年1月にアメリカで行われたNAMM SHOWで発表されて大きな話題になっていたKORG Gadget for Macは単にiOSからMacへプラットフォームを変えただけではなく、DTMにおけるさまざまな可能性を提示してくれる、これまでにないユニークなアプリケーションとなっているのです。
ソフトはダウンロード版のみで、KORG Shopを通じての購入となります。また価格は29,800円(税込み)が標準価格となっているのですが、今なら発売記念特別価格の19,800円。同じタイミングでiPad/iPhoneで使えるiOS版も機能大幅強化の上に半額の2,400円で発売されています。先日放送したDTMステーションPlus!でも、このKORG Gadget for Macを紹介しましたが、改めてこれがどんなソフトであるかを紹介するとともに、iOS版と何が違い、どんな使い方ができるのか見ていくことにしましょう。
KORG GadgetのMac版が3月24日に発売されたのでiOS版とともに使ってみた
iOS版のKORG Gadgetをご存知ない方のために、これを簡単に説明すると、Gadgetという名前からも想像できるとおり、まさにガジェットという感じのカワイイ、カッコイイ電子楽器を数多く集めて1つにまとめた宝箱です。
KORG Gadgetは数多くの電子楽器ガジェットをひとつにまとめた宝箱
最初、このイメージ写真を見たときは、volcaのような機材がKORGからいっぱい誕生したのか!?と思ったのですが、KORG Gadgetに入っている、これらのコレクションはいずれもバーチャルなものであり、現実には難しいデザインやアニメーションなど、ソフトならではの楽器になっています。
Mac版のKORG Gadgetの画面。見た目はiOS版そっくりだが、4スプリットの広い画面になっている
iOS版のKORG Gadgetについては、以前「Ableton Liveとの連携も可能に!iPadユーザーなら絶対持つべき新KORG Gadget」という記事でも紹介しているので、そちらもご覧いただきたいのですが、いわゆるEDM系と呼ばれるジャンルの音楽制作を得意とするツールとなっています。
これまでまったく音楽制作の経験が無い人、楽器演奏がまったくできない人でも、起動してすぐに音楽を作っていけるというのが非常に大きな魅力です。そういうと、初心者専用のアプリに思えてしまうかもしれませんが、結構プロユーザーにもGadgetを使っている人が多いのは、制作手法はもちろんですが、とにかく、これらのバーチャル楽器から飛び出すサウンドがカッコイイというのが大きな理由なのではないかと思っています。
iOS版ではオプションだったガジェット・コレクションもすべて使えるようになっている
そのKORG Gadgetが今回、Macへと移植されたわけですが、このMac版では基本的にiOS版でできることはすべて一通りできるようになっています。また、iOS版ではいくつかのコレクションはオプション扱いになっていたものも、Mac版ではすべて使えるようになっているんですね。
たとえば、Abu Dhabi、Bilbao 、Kamataなどはアプリ内課金で購入する形になっていたし、SalzburgやFirenzeGlasgowなどはKORG Moduleをインストールすると使えるといった形になっており、これらのコレクションすべてを揃えるとなると3万円程度するという、iOSにおいてはちょっとした高級アプリとなっていたのです。
また今回のMac版の登場に伴い、また新たなガジェット・コレクションも追加されています。そのひとつがZurichというもので、見た目からも分かる通り、テープレコーダーです。これまでKORG Gadgetでは、シンセやドラム音源をMIDIで鳴らす「打ち込み」を基本としたシステムになっていましたが、このZurichの登場によって、ついにボーカルや生楽器でも、そのまま取り込めるようになったんです。
テープがクルクル回るアニメーションや入出力に合わせてVUメーターが振れるのも楽しいところですが、ここにはコンプレッサ、EQ、フィルター、リバーブなど26種類ものエフェクトが搭載されているのもかなり実用的。しかも既存のオーディオファイルをインポートして利用できるので、さまざまな活用が可能です。
レコーダー機能とギターアンプシミュレーション機能を備えたRosario
さらに、このZurichを発展させたともいえるのがRosarioです。これはいわゆるギターアンプシミュレーターとレコーダーを合体させたもので、ギターアンプ特有の奥行と空気感を持つギター・サウンドを作り出すとともに、そのサウンドでレコーディングすることが可能です。ビンテージ・アンプからモダンなハイゲイン・アンプまでを忠実にモデリングした19種類のギター・アンプ、12種類のキャビネット、24種類のエフェクターを活かしたプリセットが30種類搭載されています。
EDM系を中心に30種類のプリセットを装備するドラム音源のガジェット、Recife
さらにRecifeというドラム音源も今回新たに登場したものです。 Futuristic Drum Moduleと位置付けられたこのガジェットはFuture Electronica、Glitch Hop、Dubstep、Detroit Techno、Minimal…といったジャンルのプリセット30種類を搭載し、選べばすぐに、いい感じのリズムサウンドを作り出すことができるのが特徴です。もちろん、これらをジャンル外の楽曲に応用してみるのも面白いところ、Recifi上でサンプリングポイントを設定できたり、ピッチやスピードの設定ができるほか、エフェクトも搭載されているので、かなり積極的な音作りもできそうです。
この、ZurichやRosario、RecifeはiOS版でも搭載されたのですが、ではMac版ならではという機能はあるのでしょうか?まず1つ目に上げられるのは、見た目からも分かるとおり、画面サイズが広くなっているだけに、プロジェクト全体の画面、ミキサー画面、シーケンス画面、ガジェット画面の4つを1画面に収めることができるようになっています。やはり各画面間をシームレスに行き来できるのはストレスがなく、使いやすいですよね。
たとえばCubaseからも、KORG Gadgetの各ガジェット・コレクションをプラグインとして呼び出すことができる
2つ目に上げられるのは、このKORG Gadget for Macの各ガジェット・コレクションがすべてVSTまたはAudioUnits、AAXのプラグインとして、ほかのDAWから呼び出せるという点です。つまり、KORG Gadget for Macをインストールすると、CubaseやAbleton Live、Studio One、Logic……といったDAWに30個以上のインストゥルメントが追加されるんです。
ZurichおよびRosarioはエフェクトのプラグインという扱いになる
また、前述のZurichとRosarioはインストゥルメントではなくエフェクトとしての扱いになっています。つまりプラグインとして使う場合はレコーダーとしては機能せず、エフェクトとなるわけですね。これだけの強力なプラグイン群が一挙に増えるというのは、とっても嬉しいし、とくに音源が秀逸なので、音楽制作の幅が大きく広がりそうですよ。
KORG Gadgetで作った楽曲をAbleton Liveへエクスポートすることが可能
とはいえ、「やはりKORG Gadgetのあの制作フローがすごく便利なので、あれをうまく活用してDAWで利用できないだろうか……」という思いを持っている方も多いと思います。従来からのiOS版でも、KORG Gadgetで作ったプロジェクトをAbleton Live用にオーディオトラック化してエクスポートする、という機能はあったのですが、今回のMac版では、さらに進んで、MIDI+プラグインという形でエクスポートすることが可能になったのです。
エクスポートする際、ファイルフォーマットなどとともに、プラグインのフォーマットなども設定できる
前述の通り、Mac版では各ガジェットがプラグインとしてほかのDAW上で動作させることが可能になったわけですが、Ableton Live上ではVSTおよびAUのプラグインとして使うことができます。そこで、KORG Gadget for Macでエクスポートする際に、VSTかAUを指定した上で書き出すと、各トラックの内容がオーディオ化されずMIDIのままLiveに持っていくことができるため、Live側で細かくMIDIをエディットすることも可能になるわけなのです。
どう活用するかはユーザー次第。またエクスポートする際、Ableton Live用とLive Lite用の2つのファイルで書き出されるので、どちらを使っているかによって最適なものを選ぶことが可能になっています。
なお、Ableton Live関連でいうと、Ableton Live Linkに対応しているのも大きな特徴です。これはAbleton Liveだけでなく、KORGのiELECTRIBEやiKaossilator、またiMPCやiMaschine 2さらには、Reasonなどでも同期可能なシステムです。詳細については、また改めて記事にできればと考えているところですが、同じLAN内にいればアプリ同士で同期が可能というもの。これは従来のiOS版でも使えましたが、そのiOS版とMac版同士で同期連携できるのは、なかなか便利ですね。
iCloudへプロジェクトを保存したり、読み込むことができる
そのほか、KORG Gadget for Macはクラウド関連の機能が充実しているのも特筆すべきポイントです。その一つがiCloud Driveを使った保存機能です。たとえば、自宅のDTM環境のMacと外に持ち出すMac Bookを使っているといった場合、どちらかで作業した結果をKORG Gadgetから直接iCloudn Driveに保存したり、読み込んだりすることができるので、続きの作業をもう一台のMacで行うことも簡単です。
Alihoopaにエクスポートすれば、世界中の人たちが見てくれる可能性も…
またファイルのエクスポート機能に「 Allihoopaに曲をアップロード」というものもあります。このAllihoopa(アリフーパ)とはAllihoopa社のFigureやTake、Propellerhead社のReasonなどのアプリケーションで作った楽曲をオンライン上で公開できるサービス。このAllihoopaにKORG Gadget for Macで制作した楽曲をUPすることができるのです。これにより、世界中の人たちが自分の作った曲を聴いてくれるというのは、なかなか魅力的ですよね。
Mac Book Proのタッチバーに各ガジェット・コレクションがアイコンで表示され、選ぶことができる
ところで、今回、KORG Gadget for MacをAppleのタッチバー搭載の新しいMacBook Proを使って試してみたところ、ちょっと驚きました。タッチバーって、ファンクションキーに液晶ディスプレイが統合されたものなんですが、これが絶妙にうまく設計されているんです。
近寄って見てみると、結構な解像度で表示されている
まずKORG Gadgetを起動すると、まずガジェット・コレクションを選択する状態になりますが、このとき、タッチバーには、30種類あるガジェットのアイコンが表示され、ここから使いたいものを選ぶことができるようになっているんです。
アイテムを選択すると、タッチバーは白鍵と黒鍵が並ぶキーボードに変身する
もちろん一気に30種類すべては収まりきれませんが、指でフリックすることで、横にスクロールさせて表示できるんですね。そしてシンセ系を選べば、このタッチバーは白鍵・黒鍵が表示されるキーボードの早変わり。ドラム系を選べばパッドに変身し、ここを弾いたり叩いたりすれば、演奏することができるのは、ちょっと画期的です。
一方でタッチバーのないMacでもタイプするキーボードをMIDIキーボードのように弾くことができるようになっていて、これはこれでなかなか便利。MIDIキーボードがない場合でも、すぐに鍵盤感覚で使えるというのは、やっぱりGadget的発想で、いいですよね。
2月に放送したDTMステーションPlus!でもWindows版を期待する声が数多くあった
なお、ここまで読んで、「KORG GadgetのWindows版は出ないの?」と思う方も少なくないと思います。先日のDTMステーションPlus!の番組中もWindowsユーザーから期待する声が数多く上がっていました。その時点では、まだWindows版に関する具体的な計画はなかったようですが、「今後前向きに検討する」というお返事はいただきましたので、楽しみに待ちましょう!まずは、この発売されたばかりのKORG Gadget for Macを存分に楽しんでみてはいかがでしょうか?きっとこれまでのDTMにはなかった新しいサウンド作りに出会えると思いますよ!
【ダウンロード購入】
◎KORG Shop ⇒ KORG Gadget for Mac
◎App Store ⇒ KORG Gadget for iOS
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