アメリカではNAMM SHOW開催中で、Rock oNや宮地楽器などが現地から次々と新製品情報を届けてくれる中、一人お留守番のDTMステーションは、NAMM情報を元に国内メーカー製品をチェックしているわけですが、その中でとっても気になった製品の一つがRolandが発表したGO:MIXERという製品です。正確にいうとNAMM前のCESで発表になったのですが、手のひらサイズの「スマートフォン専用小型ミキサー」との打ち出しになっています。
完成した製品のほとんどはNAMM SHOWに行ってしまい、国内には1台限りしかないとのことでしたが、担当者に無理を言って1晩だけお借りして試してみました。その結果、発表資料に書かれているiOSデバイスやAndroidで使えるのはもちろんのこと、スタンドアロンでも、PCとの接続でも使えるミキサーであり、かつオーディオインターフェイスでもあることが分かったので、まずは速報版としてレポートしてみたいと思います。
95mm×95mmというとってもコンパクトなUSB接続型のスマートフォン用ミキサー、RolandのGO:MIXER
写真を見てもわかるとおり、GO:MIXERは手のひらサイズの正方形型デバイス。一辺が95mmで、重さ100gなので、ホントにポケットに入れて持ち歩けるコンパクトな機材です。
マイク、ギター、オーディオ機器、電子楽器などさまざまなものを接続できるミキサーとなっている
でもこれって何をするものなの?ってすぐにピンと来ないかもしれませんよね。そう、こんな形ではありますが、GO:MIXERはその名のとおりミキサーで、アナログ8ch、さらにUSB接続によるデジタル2chの計10chの入力を装備し、出力は2chという製品なんです。
基本的にはiPhone/iPad、またAndroidのスマートフォンとの接続を前提としており、スマートフォンからの電源供給で動作するデバイスとなっているんですね。その接続端子を見てみるとmicroUSB。そして製品にはmicroUSB-LightningケーブルおよびmicroUSB-microUSB(OTG)ケーブルの2本が付属しているから、ほかにLightning-USBカメラアダプタのようなものを使うことなく、即接続して、使えるようになっているんですね。
そう、これはMade for iPhone/iPadのアップル認証の取れた製品であり(おそらくRoland初の対応製品ですよね)、かつAndroidでも使えるというわけです。まあ、iPhoneなどで使えるオーディオデバイスというのは、いまや珍しくはないし、実際ミキサーとして使える製品も存在はしていますが、ここまでコンパクトで気軽に持ち歩けるものってなかったと思います。
【追記】2017.1.22
コンシューマ用製品としてはGO:MIXERが初のMade for iPhone/iPad対応でしたが、業務用としては既にV-Mixer M-200iなどが存在していたようです。
このmicroUSBの端子に付属ケーブルを使うことで直接iPhoneやiPadとも接続可能
USB端子装備のアナログミキサーであれば、各社の製品ともLightning-USBカメラアダプタを取り付ければiPhoneでも使うことができますが、電源部まで含めて考えるとかなり大きな機材になってしまいますからね。
でも、こんな小さなミキサーで何が接続できるんだ?という疑問を感じるかもしれませんが、この図のとおり、結構いろいろなものが接続できるんです。
フォン端子でのライン入力をステレオで装備。入力レベルは右側のツマミで調整する
具体的に端子を見ていってみましょう。まずはフォン端子×2のライン入力あがり、そのレベルはツマミで調整できるようになっています。またダイナミックマイク用のフォン入力、そしてギター/ベース用のHi-Z入力端子も装備しており、これらもそれぞれ個別にレベル調整可能になっています。
ダイナミックマイクとの接続端子、およびギター/ベースとの接続端子も用意されている
さらにそれらとは独立する形で、ステレオミニでのライン入力が2系統装備されているので、ここに各種オーディオ機器を接続することが可能になっています。この2つに関しては、レベルは固定(つまり必要あれば出力側でレベル調整する形になります)となっていますが、このLINE IN1のほうにはCENTER CANCELというスイッチが搭載されているのがちょっとユニークなところ。そう、これをONにすればセンターの音を消すことができるため、一般的な楽曲を簡易カラオケのようにして利用することができるんですね。
ステレオミニでのライン入力も2つ用意されており、片方はセンターキャンセル機能も装備されている
一方で、USBと書かれたmicroUSB端子に付属ケーブルでiPhoneやiPadと接続し、iOS側で音を出すと、それもGO:MIXERへ入ってきます。そして、その音が先ほどの8ch分のアナログ入力とミックスされた形でMONITOR OUTから出力されるようになっています。ここではMONITOR OUTをライン出力としてモニタースピーカーへと接続して使いましたが、直接ヘッドホンを接続して使うことも可能になっていますね。
また面白いのはこのUSBを通じてiOS側に録音することもできるという点です。この場合、iOSからの出力は含まれず、GO:MIXERの端子に接続された8ch分のアナログ入力のみが対象(つまりループバックはしない)となるのですが、ギターでもマイクでも外部機器でも接続して、iPhoneにそのまま取り込めてしまうのは便利ですね。つまり、ミキサーとはいっていますが、事実上のオーディオインターフェイスです。
8chの入力はパラで録音できるのではなく、ミックスされた2chでの入力とはなります。実際にGarageBand、FL STUDIO Mobile、Cubasis、Auria Proで使ってみたところ、再生、録音ともに問題なく使うことができました。
※2017.4.15追記
記事を書いた時点では、ループバックしないで録音される仕様でしたが、その後、製品化する時点で、ループバックで録音される形に仕様変更がされていました。そのため、DAWなどで利用すると、別のトラックの音が入ってしまいます。Rolandによると、このループバックをオフにする手段はないとのことです。
このオーディオインターフェイスとして機能するという意味ではAndroidでも使えるというのも大きなポイントだと思います。そもそもAndroid用のオーディオインターフェイス自体が少ないですし、ましてやミキサーとして正式にAndroid対応しているものなんてほとんど存在しないですからね。
AndroidタブレットであるNexus 10とも接続して使うことができた。画面はFL STUDIO Mobile
ここでは、Nexus10を付属のOTGケーブルで接続してみたところバッチリ動作してくれました。こちらもFL STUDIO Mobileで試してみたところ録音、再生とも問題ありません。また先日取り上げた、KORGのKaossilator for Androidもほとんどレイテンシーを感じない状況で使うことができました。
一方、年末にKaossilator for Android用に購入した最新のNexus 6Pを接続しようと思ったら、こちらはダメでした。まあ、ダメというより、ケーブルが合わなかったんですね。そうGO:MIXERに付属しているのがmicroUSBのOTGケーブルであるのに対し、Nexus 6PはUSB TypeC端子なんでつながらないんです。おそらくUSB TypeCのOTGケーブルがあれば、問題なく使えると思うのですが、これについては、改めて試してレポートしてみようと思っています。
と、ここまでRolandの仕様に則った使い方を紹介してみましたが、仕様外の使い方もちょっとだけ試してみました。まずはこのMicroUSBの端子にスマートフォン用の充電ケーブルを使ってACアダプタとつないでみたのです。細かな検証まではできていませんが、ざっと使ってみたところ、ホストマシンとなるiPhoneやiPad、Androidがなくてもミキサーとしては機能してくれるようですよ。
またMacおよびWindowsと接続してみたところ、こちらもUSBオーディオデバイスとして認識してくれます。ただドライバがないので、DAWとの連携という面では、多少工夫がいるような感じではありました。
が、1晩だけの試用ということで細かな検証まではできずに時間切れ。近いうちにこの辺も含めて詳しくレポートする予定ですのでお楽しみに。
同じくNAMM SHOW 2017で発表されたエントリーユーザー用のキーボード、GO:KEYS
そういえば、今回のNAMMのタイミングでRolandは初心者用のキーボードとしてGO:KEYS、GO:PIANOという製品を出しており、名前の頭にGO:MIXERと同様に「GO:」とついています。シリーズとして何か関連性がありそうですが、Rolandの担当者に聞いたところ、「リリースのタイミングが同じだったので、揃えただけで、特別な関係、深い意味があるわけではありません」とのことでした(笑)。
【4月21日追記】
発売された製品版では、この記事を書いたときに使ったプロトタイプから仕様が変わり、USB出力がUSB側へループバックしてしまうため、DTM用途ではほとんど使えなくなっています。Rolandに確認しましたが、設定変更はできないとのことなので、ご注意ください。
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ GO:MIXER
◎サウンドハウス ⇒ GO:MIXER
【関連情報】
Roland GO:MIXER製品情報
Roland NAMM SHOW情報
コメント
どう考えても
pokemon Go!(笑
多分Nexus6PはType-C(オス)からStandard A(メス)に変換させれば動くかもしれません。
こんにちは。
本製品をiPad Pro garage band で使用しているのですが、どうしてもループバックして録音されてしまいます。
何か特別な設定等ありましたでしょうか?
トラック1にドラム。
トラック1を聴きながらトラック2にベースを録音すると、トラック2にドラムとベースが重なって録音されてしまいます。
GOMIXER購入さん
お返事が大変遅くなって失礼しました。おかしいと思い、Rolandから製品として発売されたものを再度取り寄せて試してみたところ、おっしゃるとおりでした。改めてRolandに確認したところ、記事を書いた時点ではループバックしない仕様だったのが、製品化する際に、仕様を変えたとのこと。また、このループバックをオフにすることはできないとのことでした。結果的に誤った情報を発信してしまったこと、お詫び申し上げます。記事内にも追記の形で訂正を入れました。
tascam ixrに続いてこちらも藤本さんのレビューで買いました。昨日届いています。僕も今あれっ?と気づいてこのサイトで見たら追記表示でガーン。仕様変更は残念です。確かに生配信者向けには良いですが、iOSDTMを趣味にしている人は勧められなくなりました。発売前レビューの怖さでもあります。iOSアプリのオーディオ機能が充実してきてCubasisやKORG gadgetで重宝するだろうという事で買いましたがこれはダメですね。追記を見ないで買うと失敗します。ixrがあるので当方問題はないですが。
この記事見てからずっと気になってたので今日iPadにギターを録音するために買いました。
もう一度見にきたら追記見て唖然。私の用途には無用の長物になりました。
仕様変更のような重要な追記はツイッターなどで告知していただけるとありがたいです。
初心者さんと同じ失敗さん
大変申し訳ありません。
もし可能であれば返品などの手段をとっていただけると…。
昨日、Rolandに行ってきて、確認しましたが、マーケティング担当者も知らないうちに仕様変更があり、この設定を変更するのは不可能とのこと。クレームをつけてはきたのですが……。ご迷惑をおかけして、本当にごめんなさい。
初心者さん
ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。
昨日ローランドに行って話を聞いてきました。
が、残念ながらDTMユーザー向けには、完全に使えない機材となってしまいました。
記事を削除ということも思ったのですが、逆に混乱が生じそうなので、
冒頭に再度、赤字で注意書きを入れました。
大変ご迷惑をおかけしました。
加筆が多くて何が書いてあるのかサッパリ分かりません。
結局、楽器をまとめて8chミキサーとしてDAWに録音できないなら、役に立たないような気がするのですが。
藤本さん。いつもありがとうございます。幸いですが本追記を元に楽器屋さん、Roland双方に連絡して既に返品が済んでいます。実物の箱にもwebの取説もスマホカメラを使った同録的使い方しか記していません。仕様変更後がどうやら本来の目的らしいのでDTM要素は皆無である事をしばらくは残していただけるとこの元記事で発売前に予約購入した人は助かると思います。今回、発売前の貸与品でのレビューでしたのでRolandも記事に無関係とは言い切れないと思います。記事を見ているはずのRolandから連絡をしていれば発売前に(配送前)に対応できましたし、何より販売店が1番迷惑を受けているのが気の毒です。クレジットカードの取り消し手数料も店側にかかります。
コミュニケーションの重要性を感じました。
最後のコミュニケーションの重要性ってのはメーカー内の事です。少々時間はかかりましたが、返品で全て済んだとはいえ後味の悪い事案でした。
初心者さん
こんにちは。改めてご迷惑をおかけしたこと、お詫びいたします。
まずは無事返品できてよかったです。
しかし、カードの取り消しは店側に負担が生じるということ、初めて知りました。その意味でも、いろいろなところにご迷惑をおかけしたなと…申し訳なく感じております。
もしも機会があれば、その販売店さんに藤本がお詫び申していたこと、伝えていただければと思います。
クレカの手数料の件は当方が誤解していましたので藤本さんの心配はないです。返品処理時に販売店がクレカの返金処理をすれば客の購入時に加盟店が支払うクレカ手数料はそちらに戻る仕組みとの事。ただ、元の商品の送料、返品時の着払いの費用とか店員さんの時間的拘束などが迷惑をかける部分ですね。ここの書き込みだけで既に複数ありますがRolandと販売店でうまく処理して欲しいものです。