DAWが何であれ、音楽制作する上で、まさにデファクトスタンダードとなっているツールといえば、Native InstrumentsのKOMPLETEですよね。プロユーザーはもちろん、ハイエンドDTMユーザーなら、ほとんどの人が使っているKOMPLETEですが、標準版のKOMPLETE 11が69,800円、上位版のKOMPLETE 11 ULTIMATEになると139,800円とDAWより遥かに高価になるため、「自分には無縁なもの……」なんて思っている人も少なくないのではないでしょうか?
でも、KOMPLETE 11 SELECTというエントリー版が24,800円で販売されているって知ってましたか?ここにはMASSIVEをはじめとするプロ御用達音源が11種類入っており、全DTMユーザーにとって即役立つセット製品となっています。しかも、Native InstrumentsのハードウェアであるMASCHINEシリーズや、KOMPLETE KONTROL Sシリーズを購入すると、KOMPLETE 11 SELECTが付属してくるという仕組みも用意されているんです。ちょうど私も年末にそのKOMPLETE KONTROL S25を購入して、KOMPLETE 11 SELECTをGETしたところ。まだKOMPLETE 11 SELECTについて知らない人も多いようなので、改めて紹介してみたいと思います。
Native InstrumentsのKOMPLETE 11シリーズのエントリー版、SELECTは手頃な価格ながら非常に強力
さまざまなDTM関連製品を出している、ドイツのNative Instrumentsの大黒柱的存在となる製品が、KOMPLETEシリーズでしょう。「COMPLETEのスペルミスじゃないの?」なんて問い合わせも多いそうですが、KOMPLETEと書いて「コンプリート」でOKですよ。
KOMPLETEはその名の通り、20年の歴史を持つ同社のすべてが揃ったパック製品であり、ここにはNative Instrumentsの現行製品となるソフトウェア音源、エフェクトが詰まっているんです。もちろん動作環境はWindowsでもMacでもOK。正確にいうとWindows 7以上、Mac OS X 10.10以上となっており、スタンドアロンでの動作のほか、プラグインとしてもVST、Audio Units、AAXとどのDAWでも使えるようになっています。
KOMPLETE 11には45製品と膨大なソフトウェア音源、エフェクトが詰まっている
標準版のKOMPLETE 11の場合、KONTAKT、REAKTOR、MASSIVE、BATTERY、FM8、THE GRANDEUR、STUDIO DRUMMER、GUITAR RIG……と45種類の製品、13,000以上のサウンドが入り、サンプルライブラリの容量は155GB以上と膨大です。
さらに、その上のKOMPLETE 11 ULTIMATEになると87製品、18,000サウンド以上であり、サンプルライブラリの容量は500GB以上なので、インストールする側のマシンもしっかりした環境を整えないといけませんね。もちろん、使うものだけをインストールするとか、外部のHDDにサンプルライブラリを入れておくという使い方もあるわけですが、音源に注力して開発してくると、ここまでの製品が揃うのか…と改めて感心してしまいます。
パッケージ版のKOMPLETE 11 SELECT。USBメモリーにインストーラが入っている
さて、その中で今回フォーカスを当てるのがエントリー版であるKOMPLETE 11 SELECTです。まず、KOMPLETE 11シリーズを簡単に比較すると、以下のような違いがあります。より詳細についてはNative Instrumentsのサイトに比較表があるので、ご覧ください。
KOMPLETE 11 SELECT | KOMPLETE 11 | KOMPLETE 11 ULTIMATE | |
含まれる製品数 | 11 | 45 | 87 |
サウンドの数 | 2500以上 | 13,000以上 | 18,000以上 |
サンプルライブラリ | 25GB以上 | 155GB以上 | 500GB以上 |
フルバージョン価格 | 24,800円 | 69,800円 | 139,800円 |
入っている製品数としては11種類とKOMPLETE 11やKOMPLETE 11 ULTIMATEと比較すると少ないですが、それでも容量でみると25GB以上というのですから、膨大なものであることは想像がつきますよね。では、その中身がどんなものなのか少し見てみましょう。一覧にすると以下の通りで、それぞれの単価を合計すれば、128,220円分の製品ということになります。
製品 | エンジン | 単体価格 | |
シンセサイザー | MASSIVE | 単独動作 | ¥18,800 |
MONARK | REAKTOR | ¥12,800 | |
REAKTOR PRISM | REAKTOR | ¥8,780 | |
RETROMACHINES MK2 | KONTAKT | ¥8,780 | |
アコースティック・ピアノ | THE GENTLEMAN | KONTAKT | ¥12,800 |
ドラム&パーカッション | DRUMLAB | KONTAKT | ¥12,800 |
ワールド・インストゥルメント | DISCOVERY SERIES: WEST AFRICA | KONTAKT | ¥12,800 |
オルガン&エレクトリックピアノ | VINTAGE ORGANS | KONTAKT | ¥12,800 |
SCARBEE MARK I | KONTAKT | ¥8,780 | |
エフェクト | SOLID BUS COMP | 単独動作 | ¥12,800 |
REPLIKA | 単独動作 | ¥6,280 |
まず最初に取り上げるべき音源はMASSIVEでしょう。とにかく多くのミュージシャンが基本的な音源として活用するMASSIVEはソフトシンセの王道ともいえるもの。見た目はシンプルではありますが、ここにシンセのすべてが詰め込まれているんですね。
ソフトシンセの代表的存在であり、シンプルながら非常に柔軟性の高い音作りができるMASSIVE
3つあるオシレーターには、三角波や矩形波といったアナログシンセの波形から、かなりエグい波形までさまざまなものを利用することができ、これに2つあるフィルターをかけつつ、4種類もあるエンベロープジェネレータ、8つもあるLFOなどを駆使しながら音を作り込んでいくんです。音楽制作用としても、またリアルタイムにプレイするためのシンセサイザとしても非常に使える音源で、とりあえずこれ1つ持っておいても絶対損のないものですね。ちなみに、MASSIVEだけを単体で購入することもでき、その場合、18,800円です。まあ、この価格だけを見てもKOMPLETE 11 SELECTとして購入したほうがお得そうですよね。
Mini MoogをエミュレーションするMONARK
MASSIVEが現在のシンセの標準形だとすると、アナログシンセの伝統を受け継ぐのがMONARKです。単音のみ出せるモノフォニックシンセなのですが、起動して即出てくる太っといサウンドに感激できます。昔からシンセに馴染んでいる方ならすぐに分かると思いますが、これはMinimoogのエミュレーター。アナログシンセならではのシンセサイザーサウンドを存分に味わうことができます。たとえばシンセベース用に、このMONARKがあれば、各段に違ったものに仕上がりますよ。
オールマイティーに使えるアコースティック・ピアノ音源、THE GENTLEMAN
さらに、THE GENTLEMANは3.3GBの容量を持つピアノ音源。1908年製のビンテージ・アップライト・ピアノをサンプリングしたという、この音源はとてもバランスのとれた気持ちいピアノ音源。ポップス用でもクラシック用でも何にでも使えるオールマイティーなピアノサウンドとなっています。もっとも、今作っている曲用としては、もうちょっと明るいトーンがいいとか、ダイナミックレンジをもう少し広げたい…とか、要望が出てくることはあると思います。そんなときは、THE GENTLEMANのパラメータをコントロールすることで、いろいろと調整できてしまうのも面白いところです。DAW付属のピアノ音源だと物足りない…というときに、これがあれば、かなり威力を発揮してくれると思います。
38種類のドラムセットが収録されており、自在にエディットして使えるDRUMLAB
また、DRUMLABはかなり強力であり、またちょっとユニークなドラム音源です。ここにはアコースティックドラムを中心に38種類のドラムセットが完全にチューニングされた形で収録されており、そのライブラリ容量は2.52GB。どれでも好みのドラムセットを見つけてきて使えば、さまざまな楽曲にマッチしてくれるのですが、DRUMLAB=ドラム研究室という名前の理由は、やはり実験室のようにドラムサウンドを作りこむことができるという点です。
画面を見てもわかる通り、スネアやキック、タム、シンバル……といった音を3種類のマイクで拾うことが可能になっており、そのどれを使うのか、そのバランスをどうするのか、またリバーブ設定をどの程度にするのか……といったことを自由に設定し、自分だけのオリジナルセットを組んでいくことが可能なんです。
数多くのリズムパターンが収録されていて、DAWですぐに使えるのも大きなメリット
さらにここには数多くのリズムパータンが収録されており、それらをDAWのトラックにドラッグ&ドロップで持って行って利用することも可能です。もちろん、ドロップ先においては普通のMIDIデータとなるので、自由にエディットすることも可能なので、いろいろと活用法も広がりそうです。
一方、SOLID BUS COMPも多くの人が使っているとっても便利なバスコンプです。バスコンプとは、複数のトラックをまとめたBUSトラックに対してかけるトータル・コンプレッサのこと。みんながSOLID BUS COMPを利用するのは、これを利用することで、バラバラだった音がグッと一つの音としてまとまる魔法のエフェクトだからなんです。みんなよく「接着剤」なんていう呼び方をしてますね。
「接着剤」の異名を持つまとめ役的コンプレッサ、SOLID BUS COMP
たとえば、キック、スネア、ハイハット、シンバル……と別々のトラックで作ってきたものをドラムBUSとしてまとめ上げた上で、このSOLID BUS COMPを通すと、すごく一体感が出てくるんですよね。もちろん、最終段のマスタートラックでこれを使うのもいいですよ。
ほかにも、REAKTOR PRISM、RETROMACHINES MK2、DISCOVERY SERIES: WEST AFRICA、VINTAGE ORGANS、SCARBEE MARK I、REPLIKAと、いろいろなソフトウェア音源、エフェクトが入っているわけですが、先ほどの表のエンジンというところを見るとわかる通り、MASSIVE以外の音源はREAKTORかKONTAKTが使われているのが分かります。つまり、これらを使うためには、事前にREAKTORやKONTAKTをインストールしておく必要があるのですが、KOMPLETE 11 SELECTにはREKATOR 6 PLAYERおよびKONTAKT 5 PLAYERが付属しているので、これで動作してくれます。さらにREAKTOR用として、BLOCKS WIREDというモジュラーシンセも入っているので、これだけでも、いろいろと使えちゃいそうですね。
11種類の製品とは別に、モジュラーシンセのBLOCKS WIREDもバンドルされている
さて、そのKOMPLETE 11 SELECTは、パッケージソフト、またはダウンロードソフトとして購入することができるほか、Native InstrumentsのハードウェアであるMASCHINEシリーズもしくはKOMPLETE KONTROL Sシリーズを購入することでも入手可能です。
49,800円のMASCHINE JAMを購入すればKOMPLETE 11 SELECTが付いてくる
私はKOMPLETE KONTROL S25というキーボードを購入することで入手したんですが、MASCHINE MIKROなら41,800円で購入できて、24,800円のKOMPLETE 11 SELECTが入手できちゃうんですから、かなりお得ですよね。もっとも初心者用という点からいうと、MIKROよりちょっぴり高いですが49,800円のMASCHINE JAMがオススメ。MIKROよりちょっと大きい分、メニュー階層が浅く、より直観的にすぐに使えるというメリットがあり、初めての人でもより使いやすいものとなっているのです。
先日購入したKOMPLETE KONTROL S25をユーザー登録すると、SELECTの無料請求書が届き、入手に成功!
このようにソフトウェア単体で購入しても、ハードウェアバンドル版として入手しても中身はまったく同様です。ただ、実際に使ってみると、やっぱりKOMPLETE 11 SELECTには入っていない音源が欲しくなった……なんてこともあるとは思います。もちろん単体で追加購入していくこともできますが、コストパフォーマンス的にいえば当然KOMPLETE 11かKOMPLETE 11 ULTIMATEを入手するのがいいですよね。
KOMPLETE 11 SELECTからKOMPLETE 11やKOMPLETE 11 ULTIMATEへのアップグレードも可能
「やっぱり最初からKOMPLETE 11 ULTIMATEを買っておけばよかった……」なんてことにならないよう、Native Instrumentsは安心のアップグレードパスを用意してくれています。ちゃんとSELECTとの価格差だけでアップグレードできるような仕組みになっているから、いざ欲しくなった時点でアップグレードすることができるし、KOMPLETE 11 SELECTを導入してからKOMPLETE 11にアップグレードし、さらにしばらくしてからKOMPLETE 11 ULTIMATEにしたとしても、金額的デメリットがまったくないどころか、ちょっぴりですが安く変えてしまうメリットもまであるんですよ!!
これまで「KOMPLETEってハードルが高くて、なかなか手が出せない」と考えていた人も、このタイミングでKOMPLETE 11 SELECTを入手し、まずは使ってみるところから始めてみてはいかがでしょうか?
先日のSteinberg Day 2016。左から私、YUC’eさん、SUIさん
なお、このKOMPLETE 11とCubase Pro 9を組み合わせた活用法について、ニコニコ生放送&FRESH! by AbemaTVの放送であるDTMステーションPlus!の2017年第1回目の放送で特集する予定です。ゲストには、先日のDAW女子会でもライブステージを披露し、Cubase 9のお披露目イベントであるSteinberg Day 2016でもゲスト登壇した、YUC’e(@yuce_e)さんをお呼びし、KOMPLETE 11の実践法などを披露していきますので、お楽しみに!
【価格チェック】
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◎サウンドハウス ⇒ KOMPLETE KONTROL S25
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【関連情報】
KOMPLETE 11 SELECT製品情報
KOMPLETE 11シリーズ製品情報
MASCHINEシリーズ製品情報
【DTMステーションPlus! 第72回】
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