DTM系のアプリが多いのは羨ましいけど、諸々の事情から「iPhoneには移れない」、「Androidがいい」という人は少なくないと思います。「もう少しAndroidにもシンセやシーケンサ、エフェクト、DAWなどが出てくれればいいのに……」と待ちわびていた方も多いでしょう。
お待たせしました。ようやくAndroidもDTM系のアプリが登場しはじめました。まあ、すでにFL STUDIO MobileやAmpliTube、iGrand Piano、SunVox……といったアプリも存在はしていたのですが、ついに本命ともいえる楽器メーカー、KORGがAndroidの世界に参入し、第1弾のアプリ、Kaossilator(カオシレーター) for Androidを発売したのです。見た目も使い勝手もiOS版とほぼ同じで、価格はiOS版の2,400円よりも安い1,980円。しかも2017年1月5日までは発売記念セールとして980円(iOS版も1,200円)と半額になっているんです。実際、どんなものなのか試してみたので、紹介してみましょう。
ついにAndroid版のKaossilatorが登場。いよいよAndroidによるDTM時代が到来
すでにご存じの方もいると思いますが、KORGから、このKaossilator for Androidがリリースされたのは12月1日。すぐに試してみようと思ったのですが、手元にあるのがちょっと古いAndroidスマホだったこともあり、動作条件に合致しません。Android 5.0以上でないと使えないんですよね。
購入したNexus 6PのOSを最新のAndroid 7.1.1へアップデート
そこで、いろいろ検討した結果、Nexus 6Pという機種のSIMフリー版を購入。せっかくなのでOSを最新版のAndroid 7.1.1に更新し、それからインストールして……とのんびり作業していたら月末になってしまいました。でもiPhone版のiKaossilatorが登場したのが2011年10月でしたから、5年遅れでのAndroid版登場というわけですね。
1月5日まで発売記念セールで980円になっているKaossilatorを購入
KORGの担当者も「2010年に当社としての最初のアプリ、iELECTRIBEをリリースして以来、Androidに対応して欲しいというご要望は数多くいただいておりました。レイテンシーの問題など、システム上の難しさから、なかなか実現できていなかったのですが、ようやく解決のメドが立ってきました。そうした中、どのアプリから対応させるべきか社内で検討していたのですが、やはり一番最初に出して多くの人に楽しんでもらえるアプリとして、このKaossilatorを選んだのです。これなら楽器が弾けない人、音楽理論などが分からない人でも、すぐに楽しんでいただけるので最適だと考えました」と話します。
Kaossilatorとは何なのか、ご存知ない方もいると思いますので、簡単に紹介してみましょう。まずは以下のビデオをご覧ください。
これでだいたい雰囲気は分かりますよね。基本的にはダンス・ミュージック系の曲をプレイする楽器なんですが、そのプレイをする上で楽器の演奏経験や能力は一切問われません。パッドを指で触るだけで、いい感じで演奏することができちゃうんです。どんな雰囲気の曲にするかはLoop Listから選択します。Electro House、Deep House、Minimal、Trance、Electro Pop、Breakbeats、Dubstep、Glitch Hop、R&B、Electronica……など50種類が用意されているので、それを選ぶだけでOK。
このリストから選んだループ集は5種類の音色で構成されています。リズム、ベース、パッド、シンセリード、コードなんて感じですが、バラバラに組み合わせることができるのもKaossilatorの面白いところです。つまり、ベースはElectro Houseのもの、リズムはGlitch HopでリードはElectro Popから選んでくるなんてことによって、自分だけのオリジナル曲になっていきます。
パートごとに違うジャンルのループデータを選んで組み合わせることもできる
各ループは最大4小節となっていて、ループによっては1小節のものや2小節のものもありますが、どう組み合わせても破綻することはないので大丈夫ですよ。では、指で演奏していたアレは何なのでしょうか? まずは5種類ある中からどれかを選択します。たとえばベースを選んだ上で、液晶画面のパッド上を指で適当に触って動かせば、いい感じでベースの演奏ができちゃうんですよね。基本的に右側が高い音、左側が低い音ですが音色によって上下に動かすことでベロシティが変化したり、フィルタの開き方が変わるなど、いろいろと試してみると面白いですよ。
でも、なんで適当に触っているだけで、いい感じになるのでしょうか。音程を外したり、リズムを外さない理由はKaossilatorの仕組みにあります。まず音程については、予めスケールというのが設定されているんです。ドリアンとかメジャーブルース、スペイン音階、日本音階、琉球音階……、設定したスケールの音だけが鳴るため、音程を外すことがないんですね。一方、クォンタイズというものがかかるので、リズムも外さないようになっているんです。
ところで、先ほどのリストから曲のジャンルを選ぶと、5種類あるパートには自動的に音色が割り当てあられるのですが、それぞれの割り当てもユーザーが自由に設定することも可能になっているのもKaossilatorの楽しいところです。そうKaossilatorはシンセサイザであり、計150種類の音色から選ぶことができるようになっています。音色を変更しても記録されているフレーズはそのまま生きるので、これも適当に切り替えることで、ずいぶん違った演奏を行うことができるんですね。
なお、録音ボタンを押した状態で、パッドを使った演奏を行うと、それを記録していくことができます。こうすることで、予め用意されていたフレーズとはかなり違うオリジナルの曲に仕立てていくことができるのもKaossilatorの楽しさなのです。
左がiPhone 7で動くiOS版、右がNexus 6Pで動くAndroid版
このAndroid版のKaossilator、見た目も使い勝手もiOS版のiKaossilatorとほぼ同じ。メニューの設定画面などはAndroidのUIに最適化されていますから、その辺はAndroidユーザーにもしっくりいくところだと思います。
気になるレイテンシーという面でも、タップするとすぐに反応して音が出るという点においてiPhoneとの差は感じられませんでした。そう、タップして鳴る一発目の音だけは多少リズムを外していても、リアルタイムに音が出るので、演奏している実感が得られるなど、なかなかうまく設計されていますね。
Nexus 10(左)でもNexus 6P(右)でも、iOS版と変わらないレイテンシーになっていた
ちなみに、以前から持っていたタブレット型のNexus 10もOSをAndroid 5.1.1まで更新することができたので、ギリギリ動作条件をクリアします。こちらでも試してみましたが、反応性・レイテンシーという点において、まったくといっていいほど見劣りしませんでした。Androidがだいぶ進化したからなのか、KORGの技術力がすごいからなのか、iPhoneやiPadに引けをとらないところまで来た、というのはなかなか感慨深いものがあります。
では、このAndroid版とiOS版はすべてが完全に同じなのかというと、実はいくつか違いもあります。主にはiOS特有の機能が削られているのですが、1つ目はiCloudとのシンクロ機能がない点です。Google Driveへのバックアップ機能などの形で実現してくれるとよかったところですが、これは仕方ないところですかね。またiOS版にはあった、オプションのEDM Sound Setというものもカットされているようです。これはEDM系サウンド40種類をセットで240円というものですが、これを追加することができません。
WISTやAbleton Linkなどの機能はない(画面はiOS版)
さらにiOS版にはSharedという機能があり、これを使うことで他のユーザーが作った曲データを入手して再生することができるのですが、その機能が使えないのはちょっと残念なところ。またバックアップ機能、WISTおよびAbleton Linkでの同期機能がないというのが相違点です。
登場したばかりということもあり、バージョンはiOS版よりも低い、Versiion 1.0.3となっている
まあ5年の差があるわけで、バージョン番号を見てもiOS版がVersion 3.1.2なのに対し、Android版はVersion 1.0.3。応用的な機能において差があるのは仕方ないところかもしれませんね。今後、ぜひiOS版に近づけるよう機能強化を期待したいのと同時に、iELECTRIBEやKORG Gadget、KORG Moduleなどなど、iOS用にあるアプリをAndroidへ対応させていって欲しいところですね。
【ダウンロード購入】
◎Google Play ⇒ KORG Kaossilator for Android
◎App Store ⇒ KORG iKaossilator (iOS版)