2年前に「マスタリングを人工知能が行う時代に!?」という記事で取り上げたLANDR(ランダー)というインターネットを介した自動マスタリングサービス。最近はよくネット広告でも見かけるようになったし、SONARにも実装されているため、「知ってるよ!」、「使ったことある」という方もいると思います。
とはいえ、本来はマスタリングエンジニアと呼ばれる専門職の人が行うマスタリングを人工知能で行うなんて……と疑ってみている人も少なくないでしょう。そのLANDRはカナダのLANDR Audio Inc.という会社が行っているサービスなのですが、先日、正式に日本上陸しサービスを開始しました。また、その日本での正式サービススタートに合わせ、REMIXコンテストを行っているので、どんな内容なのかを少し紹介してみたいと思います。
人口知能で自動マスタリングを実現するネット上のクラウドサービス、LANDR
このLANDRはすでに世界中で80万人以上が使っているサービスで、すでに300万曲以上がマスタリングされているのだとか……。私も2年前から何度か試したことがありますが、UIもよくなり、ついに日本語も使えるようになると同時に、徐々に性能も向上しているんですよね。
そもそも「マスタリングって何?」という方もいると思うので簡単に説明しておくと、これは音楽制作における最終工程で、ミックスダウンした結果をさらにいい感じに聴こえるようにトリートメントする作業を意味しています。耳のいいマイスターともいうべきマスタリングエンジニアがEQやコンプ、リミッター、マキシマイザとったものを使いながら音質や音圧を調整する作業なんです。
そうしたプロのマスタリングエンジニアがどんな音楽をどのように仕上げているのかという膨大な情報を元にして人工知能がマスタリングを行ってくれるのがLANDRである、というわけなんです。通常マスタリングエンジニアに依頼すれば、作業してくれますが、やはり1曲あたり数万円~十万円くらいはしてしまいます。でも自動で作業してくれるLANDRならMP3-192kbps仕上がりならば月2回まで無料、MP3-320kbpsなら499円、16bit/44.1kHzのWAVなら999円、それ以上のハイレゾなら1,999円と格安で実現してくれるんですね。
使い方はいたって簡単。LANDRサイトにアクセスし、手持ちのWAVファイルをドラッグ&ドロップでアップロードするだけ
実際に試してみても、かなりいい感じにまとめ上げてくれ、音圧もガツンと上げてくれるので、ぜひ一度試してみると面白いですよ。使い方はいたって簡単です。
ドラッグ&ドロップすると、そのファイルがアップロードされていく
あらかじめマスタリングしたい音源データを用意しておきます。通常はWAVファイルがあればいいですね。CD用に用意した16bit/44.1kHzでも構わないし、24bit/48kHzとか24bit/96kHzのものでもOK。
すぐにマスタリング処理が行われ、使用前(オリジナル)、使用後(マスタリング)を聴き比べることがでいる
LANDRにログインした後、ここにドラッグ&ドロップで、WAVファイルを持っていけば、もうそれだけ。マスタリングに数分の処理時間がかかりますが、これが終われば、LANDRサイト上で、マスタリング結果をストリーミングで聴くことができます。この際、音圧の低・中・高を選択することも可能です。最後に、これをダウンロードすればいいわけですね。前述のとおり、MP3-192kbpsのダウンロードなら月に2回まで無料ですが、それ以上は有料になるというわけなので、まずMP3でダウンロードしてみて、これを聴いて気に入れば、そこでお金を支払ってしっかりしたデータを入手する、という手順がいいかもしれませんね。
さて、ここでお知らせしたいのが、よくみんながお世話になるDAWのノウハウ情報をビデオなどで提供しているSleepfreaksがLANDRとコラボしているという点です。Sleepfreaksサイト経由でLANDRのアカウントを取得すれば、通常の無料プランの場合、上記のMP3-192kbpsでの月2回まで無料というのに加え、16bit/44.1kHzでのWAVダウンロード権を全2回分入手できるようになっているんです。ちなみに、月額料がかかるベーシックプラン(600円/月)、アドバンスプラン(1,400円/月)、プロプラン(3,900円/月)というものがあり、プロプランであれば、すべて無制限で使えるようになります。
LANDRとSleepfreaksでのREMIXコンテストが行われている
さらに、そのキャンペーンということで、現在REMIXコンテストが行われていているんです。具体的には、Sleepfreaks側が用意している課題曲を利用して自分でミックスし、マスタリングした上で提出すると、コンテスト優秀作品に対しては、LANDRのプロプラン1年分(無制限にダウンロードできるプラン)がもらえたり、1位の人にはNative Instruments MASCHINE Mk2に加え、TuneCore Japanの1年間のシングル&アルバムの無料クーポンがもらえるというものなんです。
この課題曲はVOCALOIDを使って作成された楽曲で、ボーカル、ベース、ドラム、リード、パッド……と各トラックごとにステレオWAVファイルで書き出された、いわゆるステムファイル(44.1kHz/32bit float)が用意されているので、これをダウンロードした上で自分で組み立て直せばいいわけですね。
ダウンロードしたステムファイルをCubase上に展開。ここから自分オリジナルのミックスを作っていく
どうREMIXするかは自由自在。DAWに展開した上で、レベルやPANをいじって組み立て直すのはもちろんのこと、テンポが指定されているから、オリジナルのリズムパターンを作って差し替えてみるとか、ボーカロイドのボーカルに自分の歌声重ねてみるなんていうのもアリかもしれませんよね。
REMIXした結果を44.1kHz-32bit froatで書き出してLANDRへ
そうして完成したミックスに対して、最後にLANDRを使ってマスタリングして提出すればいいわけです。ただポイントとなるのは、必ずしもLANDRを最終工程にしなくてもOKという点です。
やはりLANDRは人工知能が処理するマスタリングですから、かなりいい感じには仕上げてくれるものの、必ずしも自分のイメージと合致するとは限りません。やはり出来上がったものを聴いてみて、もう少し低域を厚くしたいとか、ボーカル付近の中域を微妙に落としたい……などなど気になる点が出てくる可能性はあると思います。
必要に応じて、LANDRで処理した後に自分の味付けをするのも手。画面はWaveLab Pro 9
そんな時はLANDRで処理してダウンロードしたデータを再度、DAWに読み込ませた上で、もうちょっとだけ手を加えるなんていうのも重要な手なんです。実際、そうした使い方をすることで、LANDRをより有効活用できるんですよね。
最終的に仕上がったら、SoundCloudにアップロードにアップロードするとともに、必要事項を記載すれば応募完了というわけです。ちなみにコンテストの締め切りは1月9日。年末年始のお休みの時期に、じっくり取り組んでみると良さそうです。
これに関連し、Sleepfreaksでも、以前取材させていただいた大鶴暢彦さんがLANDRの使い方を紹介するビデオを公開しているので、参考にしてみるといいと思いますよ。
もちろん、REMIXコンテストに限らず、LANDRの活用方法はいろいろとあると思います。自分の制作した楽曲をマスタリングする際、自己流でやるよりもLANDRに任せれば確実に仕上げてくれるし、LANDRの仕上げを参考にしつつ自分でそれに近づけるという学習用としても使い方もあると思います。またミックスの仕方によってLANDRの仕上げ方もかなり変わってくるのでミックスの理解を深めるという意味でも、大きく役立つはずです。いずれにせよ、無料で試すことは可能ですから、まずは一度使ってみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
LANDRサイト
LANDR x Sleepfreaks REMIXコンテスト
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