最近楽器店などでも見かけることが増えてきたVECLOS(ヴェクロス) SSA-40という小さなスピーカーをご存じですか?これは、なんと魔法びんメーカーであるサーモスが開発した、まさに魔法びんの構造をそのまま応用したスピーカーなんです。同社はステンレス製の魔法びんメーカーとして知られており、ステンレス製の水筒はもちろん、同様の構造で保温がしっかりしたマグカップやタンブラーなど数々の製品を販売していますが、このVECLOSもそれとほぼ同様の構造となっているんです。
でも、こんなちっぽけなスピーカーでまともに音が出るの?と疑問に思う方も多いと思います。ところが実際に聴いてみると驚くほどの音量が出るのと同時に、解像度も高く、モニタースピーカーとしてもかなり使える存在なんですよ。さすがに重低音は厳しい面はあるのでサブモニターという位置づけがピッタリ。実際、どんなものなのか紹介してみたいと思います。
軽くて小さいのに、かなりのパワフルで高品位な音でモニターできる魔法びん構造のスピーカー、VECLOS SSA-40
私がVECLOS SSA-40を最初に見たのはちょうど1年ほど前。東京・神田の宮地楽器の店員さんから「これ、小っちゃいクセにすごい音が出るんですよ」と紹介されたのが最初。そのときは、Bluetooth接続でiPhoneから音を出したものを聴いたんですが、想像以上にキレイな音でかつパワフルだったので、ちょっとビックリしたのを覚えています。
4色のカラーバリエーションが用意されているVECLOS SSA-40
その後、インプレスのAV Watchの編集部から連絡があり、今年3月にAV Watchのタイアップ記事として「真空技術による解像度の高いサウンドが魅力のVECLOS、スピーカーユニットをパイオニアと共同開発!!」というのを書いたこともありました。ここではサーモスへ取材にいき、そのスピーカーの構造がどうなっているのか、実際周波数特性がどうなっているのかなどの細かな話まで書いているので、興味のある方はぜひ参考にご覧になってください。
魔法びんのステンレスを使った真空二重構造がスピーカーに利用されている
上記の記事にもあるとおり、なぜ魔法びんのサーモスがスピーカーを作ることになったのかというと、その構造に秘密があるんです。ご存じのとおり魔法びんでは真空断熱という手法を用いて長時間の保温を実現しています。サーモスではこの真空断熱にステンレスの二重構造を利用しているのですが、この真空二重構造をほかに何か活用できないだろうか……と模索した結果、スピーカーで利用できそうだということになり、研究を進めた結果、VECLOSが生まれたのだそうです。
中に入るスピーカーユニットや音響部分についてはパイオニアとの共同開発となっている
そう「真空二重構造」によるエンクロージャーの優れた振動減衰特性と、雑音の原因となる振動を伝えないという真空自身の特性をうまく活かしているんですね。魔法びんの技術を活用したスピーカーは世界初とのことですが、細い缶コーヒーを半分に切ったくらいの小さく軽いスピーカーから、この迫力あるサウンドが出てくるのには誰もがビックリすると思いますよ。普通だったらあり得ないですからね。
とっても便利なので、その時入手したVECLOSを事務所用に使っていました。そんな中、先日、サーモスの担当者から連絡をいただき、DTMステーションにバナー広告を入れてくれるということになったため、改めてこれを自宅のDTM環境に追加してみたところ、想像してた以上に使えるんですよ。
左にある黒いYAMAHAのモニタースピーカー、MSP5 STUDIOと並べると大きさの違いが際立つ
普段、私はYAMAHAのMSP5 STUDIOというモニターを使ってみるのですが、それと並べてみるとオモチャというようなサイズ。もちろん、VECLOSがMSP5に勝てるパワーというわけじゃないんですが、それでも自宅で鳴らすには十分過ぎるほどの音量を鳴らすことができます。普通の家なら、これを最大音量で鳴らすには躊躇するほどですね。
しかも24.5インチのディスプレイの内側に、やや角度をつけて設置していることもあり、すごくステレオ感、立体感を得ることができるんですよ!とくに中・高域の解像度は抜群にいいので、まさにモニタースピーカーとしてはピッタリという感じです。
台座部分を開き斜め上を向く形で設置する。この右側のユニット内にバッテリーが装備されている
スピーカーなんて、あまり説明する機能があるわけではないのですが、やや変わったスピーカーではあるので、いくつか解説しておきましょう。まず、このVECLOS SSA-40のペアのスピーカーは付属する接続ケーブルでつないでおき、右チャンネル側から入力信号を与えます。
Bluetooth接続すれば、iPhoneなどから鳴らすことも可能
その入力信号は2種類で、1つはBluetooth接続でA2DP/AVRCPというプロファイルに対応したもの。もう1つは、ステレオミニジャックを使ってのライン入力です。ちょっとiPhoneの音を再生するといった用途であればBluetoothが便利なのは確かですが、DTM用途というのを考えると、ステレオミニジャックを使ったライン接続が基本になると思います。実際に、音を比較してみてもライン接続のほうが音がよく、よりクッキリしたサウンドでチェックすることができます。
オーディオインターフェイスからAUXへライン接続して使うのが基本
また音量という面でも、なぜかライン接続のほうが大きくなるようです。そして何よりレイテンシーについて考えると、Bluetoothだと、かなり音が遅れてしまい、モニター用としては使えません。そうした点から見ても、DTM用途においてはライン接続に確定なわけですね。
なお、ライン接続の場合でもBluetooth接続の場合でもボリュームレベルは出力側で設定する形になっており、VECLOS側にはボリューム設定というものは存在しません。だから、入力信号が歪んでいなければ、モニタースピーカー側のアンプで歪むようなことなく、入った情報を最大の音量で鳴らしきるという点でも、モニター向きといえそうですね。
microUSB端子を使ってVECLOS SSA-40へ電源供給する
では、VECLOS SSA-40の電源はどうするのかということでしょうか? 実はこの右スピーカーのほうには充電池が搭載されており、これだけで連続6時間の再生ができるんです。だからちょっと持ち歩いて、数時間のデモを行いたい……というようなときは、スピーカーだけを持っていって動かすことができるのべんりそうですね。
その充電用もしくは外部からの電源供給して動かす場合は、microUSBを使う形になっています。そのためiPhoneなどのACアダプタがあれば、すぐに使えるというわけです。
だったら、PCのUSB端子から電源供給をすれば、より便利かな?と思って試してみたのですが、これはちょっと止めたほうがよさそうです。確かに、それで駆動することはできるのですが、グランドループが起きてしまうからなのか、結構なノイズが乗ってしまうんですよね。なので、電源をとる場合は別途ACアダプタなどを使うのがいいですよ。
1点気になったのは、電源を入れてから20分音が出ないとオートパワーオフが効いてしまい、電源を入れなおさなくちゃいけないということ。まあ、普通に音を出していれば問題ないのですが、ちょっと席を離れて戻ってきたとき、DAWは動いてるのに、音が出ず、おや?っと思ってしまうことがしばしば。ACアダプタに接続されている場合はオートパワーオフを効かせないモードなんかがあってくれるとベストだな、と。
ちなみに、Bluetoothからの信号が来ているときも、ライン入力が接続されていると、ライン入力側が優先する設計になっています。
このVECLOS SSA-40をどうDTMに活用するかは人それぞれだと思いますが、まずはサブモニターとして使うというのがひとつでしょう。これまで使ってきた5インチ、7インチなどのモニタースピーカー、さらにはヘッドホンを使って音を確認しつつも、時々VECLOSに切り替えて音をチェックしてみると、特定のスピーカーに偏らない音作りができると思います。もちろん、反対に普段はVECLOSを使いつつ、時々大きいスピーカーに切り替えるというのもいいですね。
またコンパクトなので、これをノートPCとセットで持ち歩くというのも便利だと思います。前述のように、バッテリーが6時間持つので、ちょっとしたデモであればACアダプタなしでも十分使えます。また旅先のホテルなどでDAWを使って作業をしたいという場合でも、このスピーカーなら軽くて小さいので持ち運びにも邪魔にならないし、ACアダプタもiPhoneの充電との兼用として持っていけるのも嬉しいところです。
旅先にはノートPCとともに持ち歩くことで、ちょっとしたスタジオ環境を作ることができる
その際、オーディオインターフェイスもセットで持ち歩くのがベストではありますが、基本的にレコーディングはせず、再生がメインということであれば、PCのオーディオ出力端子にそのまま接続してしまうというのもアリですね。とくにMacであれば、レイテンシーもかなり縮められるので、そこそこ使えちゃいますからね。
以上、魔法びんメーカー、サーモスの小さな小さなスピーカー、SSA-40について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?最近楽器店などでもデモ機が置いてあるようなので、試してみてみると、きっと欲しくなりますよ!
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