「今ごろ見つけたのかよ!」とお叱りを受けそうな気もしますが、つい先日、iPad版のアプリとしてArturiaのiSPARKというものが出ているのに気づき、2400円で購入してみました。登場したのは今年の2月だったようですが、さっそく試してみたところ、メチャメチャ便利で強力なドラムマシンですね。覚えている方もいらっしゃると思いますが、これはDTMステーションで3、4年前に何度か取り上げていたArturiaのSPARKやSPARK LEのiPad版。何万円もするハードウェアのSPARKやSPAKR LEより、ある意味、使えるドラムマシンなんですよ!
基本的にはArturiaお得意のTAEというエンジンを使って、ビンテージ音源を今に復活させたドラムマシンなんですが、音色は自在にエディットできるし、シーケンサ機能は超強力だし、AudiobusにもInter-App Audioなどにも対応しているから、iPad上の各DAWなどとも自由に連携できるのです。そして、何よりも便利に感じるのはiPad単体で使えるということ。SPARKもなかなか強力な機材ではあったけど、ハードウェアは単なるコントローラに過ぎず、WindowsやMacと接続して使わなくてはならないという面倒さがあったのです。でもiPad単体でどこまでのことができるのか、見ていきましょう。
Arturiaが出すiPad用の強力ドラムマシン、iSPARK
まずは、以下のiSPARKを紹介するビデオがあるので、英語の5分超のものではありますが、冒頭の1分程度でもご覧になってみてください。なんとなく、その雰囲気、音のニュアンスや多機能さは分かりますよね。
では具体的に見ていきましょう。まず、起動して表示されるメイン画面は、現行製品として販売されているSPARK LE(国内販売元は、フックアップからKORGに変わりました)とよく似たデザインになっています。
現在KORGから発売されているハードウェア版であるSPARK LE
画面下側には16個のパッドが並んでいますが、これを叩いてみると、まさにドラムマシンとして音が出ます。iPadなので、叩く強さによって、ベロシティーが変わるのかな…と思ったら変化しないので、あれ?と思ったら、パッドの叩く位置によって変化するようになっていました。確かにiPadの加速度センサーでのベロシティー、イマイチ使えないので、こっちのほうが断然いいですね。
X-Yパッドをなぞることでフィルターがかかる
また、黒っぽいX-Yパッド部分を指でなぞると、フィルターがかかって、リアルタイムに音が変化していくところも面白いですね。ローパスフィルターもバンドパスフィルターもありますよ。
録音ボタンをクリックすれば、簡単にドラムパターンをレコーディングしていくことができる
ここで、右上にあるメトロノームアイコンをタップして、クリックをONにした上で、録音ボタンをタップ。この状態でパッドを叩いていけば、それを録音でき、オーバーダブでどんどん音を重ねていくこともできます。iSPARKはまったく初めて…という人でも、何ら違和感なく、すぐに使えそうですよ。
4バンク×16種類のパターンを組んでいくことが可能
画面をPatrnsに切り替えると、こうやって録音したパターンを管理できるようになっています。具体的にはBank A~Dの4バンクそれぞれに16種類のパターンを記憶させられるので、4×16=64パターン。また1パターンは通常16ステップとなっていますが、ステップ数は自由に設定することが可能で、最大4小節分=64ステップとなっているようですね。
このiSPARK、デフォルトでは80’sサウンドのドラム音源でしたが、ほかにどんなものがあるのでしょうか?プロジェクトの一覧を開いてみると、かなりいろんなものがありますね。当初のSPARKはビンテージ機材の一覧が出てくる感じでしたが、最近のものは曲ジャンルなどによってライブラリが用意されているようで、このiSPARKもそれにならっているんですね。
数多くのプリセット音色、プロジェクトデータがあらかじめ用意されており、Linn Drumsのようなサウンドもある
とはいえLinnDrumをエミュレートするLynn Dream、カシオトーンをエミュレートするKaziotone、KAWAI R-100をエミュレートするKR-100、YAMAHA RX-5をエミュレートするYRX 5……と、ビンテージモノのライブラリもいろいろあり、読み込むと、すぐにそれらのサウンドが蘇ってくれます。
ミキサー画面は8パッドずつ、2つに分かれている
ここで画面をMIXERに切り替えてみます。すると8つのフェーダーが現れますが、右上のボタンで切り替えられるので16個あるパッドそれぞれの音量やパン、センドエフェクトなど自在に調整できるようになっているんですね。
センドエフェクトは2系統用意されているほか、マスターエフェクトも別途用意されている
そのセンドエフェクトとしては2系統あり、リバーブ、ディレイ、フランジャー、コーラス……と14種類のものを設定できるようになっています。
さらに、各パッド個別にFXというボタンが用意されていますが、ここにもそれぞれ独立した形でEQ、コンプなど18種類用意されているエフェクトを2つずつ設定できるなど、かなり音作りの幅もありそうですね。
シンセサイザとして、それぞれの音色を細かくエディットすることもできる
でも、その音作りという意味では、さらにもっともっと自由度が高いというのがiSPARKの特徴でもあります。そう、これはArturiaのシンセサイザですからね。STUDIO画面を開いてみると、それぞれのパッドに割り振られたサンプリングの波形が表示されるとともに、それぞれ独立して、ピッチやフィルター、エンベロープなどの調整が可能になっているため、オリジナル音源とはかなり違った音に仕立て上げていくことも可能になっていますね。
鍵盤で音階を弾いて入力することも可能
これだけの音作りができるので、単なるドラムとして使うのはもったいないな……と思ったら、ちゃんと音階設定も可能になっていました。実際、ライブラリにはベースサウンドなどもいろいろ入っているので、これらを利用することで、ステップシーケンサとして使っていくこともできるわけですね。
もちろん、ステップ入力もできるようになっている
でも「リアルタイムレコーディングではなく、ステップ入力したい」という人もいますよね。もちろんiSPARKではステップ入力も可能ですよ。SEQ画面に切り替えると、各パッドごとにステップ入力が可能になっていて、画面を上下にドラッグすることでスクロールしてくれるので16個のパッド分、それぞれで入力することができます。
シーケンサにもピアノロールのように音階入力する機能がある
また、先ほどのような音階についてはAutomation画面を開くことにより、落ち着いて1ステップずつ入力していくことも可能なので安心ですね。
ソングモードでは、作ったパターンを並べていく
このようにして作ったパターンを並べて1曲にしたいという場合は、SONGモードにおいて設定していくことも可能。ドラムマシン、シーケンサとして思いつく機能は、一通り揃っていると考えて大丈夫だと思います。
外部機器や別アプリとの連携という面でも非常に汎用性の高いiSPARK
でも、これはiPad上のiOSアプリ。だから、単なる単独のドラムマシン、シーケンサに留まらず、ほかのアプリとの連携もかなり自由度が高くできるのも大きな特徴となっています。
もちろんAudioBusにも対応している
これまでもArturiaのiOSアプリは、iMini、iSEM、iProphetなど、いろいろと取り上げてきましたが、これらと同様にAudiobusおよびInter-App Audioに対応しているので、iOS上のさまざまなDAW、エフェクトと組み合わせて使用することが可能です。
Inter-App AudioとしてはInstrumentsおよびGeneratorとして使うことができる
Inter-App Audioについての詳しい話は以前に書いた「iPad/iPhoneでDTMを使いこなすためのInter-App Audio基礎知識」を参照いただきたいのですが、iSPARKはInter-App AudioのInstrumentsおよびGeneratorとして使うことができるので、Cubasis、GarageBand、MultitrackDAWを、各種DAWといろいろと連携できますね。
さらに、MIDIのクロック同期にも対応しているから、MIDIインターフェイス経由で、他のシーケンサと同期できるほか、KORGが規格した同期システムWISTに対応しているほか、Ableton Linkにも対応しているから、BluetoothやWi-Fiを使って、PCとの同期といったことまで可能になっているんですね。この汎用性の高さは、スゴイです。
まだ、このiSPARKの機能の一部しか紹介できていないような気がしますが、これだけの機能を持っていて2400円。iPadユーザーなら、これを買わない手はないですよね!
【ダウンロード購入】
◎App Store ⇒ Arturia iSPARK
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ SPARK LE
◎サウンドハウス ⇒ SPARK LE
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