約1年前、Pro Toolsがバージョン12にアップグレードする際、これまでの永続ライセンス制度に加え、クラウドコラボレーションなど、Pro Toolsソフトウェアの一時利用を想定した、サブスクリプション・ライセンスが追加されることが発表されました。永続でずっと使えるライセンスが入手できるのに、一部ユーザーの間ではPro Toolsが完全なサブスクリプション制に移行してしまった、という誤解も生じ、「毎年お金を払い続けないとPro Toolsは起動しなくなるらしい」、「12月までにPro Tools 12にアップグレードしないと、今後はバージョンアップできなくなる」、といった誤った噂が多く出まわり、混乱していたように思います。
そこで、改めて現在のPro Toolsのソフトウェア・ライセンスやアップグレードの仕組みがどうなっているのか、Pro Toolsの開発元であるAvid Technologyに伺い、ダニエル・ラヴェルさんに話を聞いてみました。
Pro Toolsのライセンスに関して、Avidのダニエル・ラヴェルさんに聞いてみた
--Pro Toolsの買い方、ライセンスの仕組みがいろいろあるようで、難しく思えてしまうのですが、まず、DAWであるソフトの種類としていくつあるんですか?
ダニエル:無料版のPro Tools | First、スタンダード版のPro Tools、そしてプロ仕様のPro Tools | HDの3種類です。ここではDTMユーザーということで、主にPro Toolsについて見ていくことにしましょうか。
--そうですね。最新版はPro Tools 12になるわけですが、販売店で売られているパッケージを見てもいろいろあって、どれを選べばいいのか悩んでしまいそうです。たとえばAmazonで検索してみても、ずいぶん色々出てくるんですよね……。
ダニエル:新規購入のユーザーであるか、すでにPro Tools(Pro Tools 9以降のバージョン)を持っているアップグレードユーザーなのかによって、購入すべきものが変わる仕組みをとっていますので、まずは分かりやすい新規購入ユーザーの場合を考えてみましょう。この場合、「永続ライセンス版」と「サブスクリプション版」という2種類があるんです。
永続ライセンス版とサブスクリプション版が存在する。価格は3月3日現在のものです。
--永続ライセンス版、サブスクリプション版はそれぞれどう違うのですか?まずは永続ライセンス版について教えてください。
ダニエル:永続ライセンス版は、その名前の通り、将来にわたってずっと使い続けることができるもので、以前からのPro Toolsと同様のものです。製品としてはPro Tools 12のライセンスのほかに、年間アップグレードと年間プラグイン特典がセットとなっているのですが、年間アップグレードによって、購入してから1年間は最新バージョンへとバージョンアップしていくことができます。事実12.0、12.1……、12.4と徐々に機能、性能が向上してきています。
Pro Tools 12のライセンス制度について解説してくれるダニエルさん
--では、その永続ライセンス版を購入して、その後一切お金を払わないとどうなるんでしょうか?
ダニエル:その場合でも、永続ライセンスですから、アップグレード期間終了時の最終バージョンをずっと使い続けることができますよ。購入してから1年後にたとえば12.8というバージョンになっていたとしたら、12.8のままずっと使えるということですね。もしも、その間にメジャーバージョンアップがあって、13.1にまで上がっていたら、13.1としてずっと使い続けることができるのです。
--もう一つのサブスクリプション版はどういう仕組みなのですか?
ダニエル:サブスクリプション版も機能や性能においては何も変わらないのですが、1年間だけ使えるものとなっています。こちらも、年間アップグレードがついているので、常に最新版にすることができるのは永続ライセンス版と同じです。さらに年間サポートという権利もあるので、月に1案件の電話でのサポート、または無制限のオンライン・サポートを受けることも可能になっています。
--サブスクリプション版を購入して、そのままお金を払わないと1年後には起動しなくなるという意味ですか?
ダニエル:その通りです。将来に渡ってPro Toolsを使っていくのであれば永続ライセンス版がいいけれど、短期間であって、その後は使わなくていいのでればサブスクリプション版がお得というわけですね。
Pro Toolsはサブスクリプション版を利用することで安く利用することは可能になる
--サブスクリプション版は年間37,300円となっていますが、人からもらったセッションファイルを別のDAWへ移植するためだけに使いたい。1週間も使えれば十分という人にとっては、37,300円はちょっと高いですよね……。
ダニエル:そんな短期間であれば、1か月単位のサブスクリプションも可能です。これはオンラインでの販売のみで、パッケージ版に入っているiLok(USBドングル)は付属しませんが、3,500円でご利用いただけます。これなら、使いたいときだけ3,500円で購入して最新版を短期間使うということができるわけです。
--なるほど、だいぶ頭が整理できてきました。この永続ライセンス版およびサブスクリプション版に「年間プラグイン特典」というのが入っているようですが、これな何ですか?
ダニエル:これは昨年9月からスタートしたサービスなのですが、以下の計17種類の特典プラグインを利用できる、というものです。こちらは永続ライセンス版のユーザーであっても、使えるのは1年間だけとさせていただいていますが、かなり魅力的なプラグインが揃っていると思いますよ。
BBD Delay |
Black Op Distortion |
Black Shiny Wah |
Black Spring |
CI Chorus/Vibrato |
DC Distortion |
Flanger |
Gray Compressor |
Green JRC Overdrive |
Orange Phaser |
Roto Speaker |
Studio Reverb |
Tape Echo |
Tn+Knob Fuzz |
Vibe Phaser |
White Boost |
Space(旧TL Space) |
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--では、ここからは旧バージョンのユーザー向けの場合について伺います。
ダニエル:旧バージョンとして対象となるのは以下のラインナップになります
●Pro Tools 9
●Pro Tools 10
●Pro Tools 11
●Pro Tools Express (Mbox、Fast Track SoloまたはFast Track Duoインターフェイスにバンドルされていたバージョンのみ)
●Pro Tools M-Powered/MP 6–9
たとえばPro Tools 9やPro Tools 10など数年前に購入し、そのままになっていた方も「アップグレード・プラン(レガシーユーザー用)」という37,300円のものを購入いただくことで、先ほどの永続ライセンス版と同等のものを入手することができるのです。ただし、ここには17種類の特典プラグインは含まれていません。特典プラグインも必要であれば別途「プラグイン&サポート・プラン」もお求めいただければと思います。
Pro Tools 9、10、11を持っているユーザー向けにはアップグレード・プランが用意されている
--それでは、新規ユーザーでもアップグレードユーザーでも、いま、永続ライセンスの形でPro Tools 12を入手し、1年間経過したとします。この場合、どんな選択肢があるのでしょうか?
ダニエル:そのまま最新版を使い続けていただくのが一番お勧めです。この場合「アップグレード・プラン(更新ユーザーのみ)」というメニューを用意しており、これならば11,600円で1年間更新することが可能です。この場合も特典プラグインは別扱いであるため、こちらにも別途11,600円が必要となります。一方で、1年後にアップグレード・プランに入らなくても、そのまま使い続けることはできますよ。また、3年経過したところで、やっぱり最新版のPro Toolsが必要になった、という場合には価格はちょっと高くなりますが「アップグレード・プラン(レガシーユーザー用)」に入れば、追い付くことができます。
継続使用であれば、割安になる仕組みとなっている
--なるほど、これでよくわかりました。ありがとうございました。
というわけで、Pro Toolsのライセンス制度、お分かりいただけたでしょうか?昨年、サブスクリプションン制が出てきたので、いろいろとわかりにくくなった気がしていましたが、普通に製品を買う、アップグレードするというのであれば、従来とさほど大きくは変わっておらず、将来お金を払わないと使えなくなる……なんて心配はないわけですね。
改めてまとめてみると、「永続ライセンス」というようになった昨年以降の以前との違いは、新規購入後、もしくはアップグレード後は1年間最新版へのアップグレードの権利がつくところで、これにより、どのタイミングで買ったユーザーにも公平で、「購入した直後にバージョンアップしてしまった…」と泣くことがなくなったのは嬉しいところですね。
ちなみにその永続ライセンスは2016年4月1日に価格改定されて74,600円になるとのことなので、買うなら早めがいいかもしれませんね。ダニエルさんによると、今年はPro Toolsに音楽系の機能がいろいろと強化される予定だとのことですので、どんなことができるようになるのか、楽しみにしていたいと思います。
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