すでにご存じの方も多いと思いますが、先日PreSonusからStudio One 3 Primeが無料でリリースされました。これは先日の記事「大きく進化したStudio One 3をちょっとだけ使ってみた」で紹介したStudio One 3 Professional、Studio One 3 Artistの下位モデルとしての位置づけで、従来バージョンであったStudio One 2 Freeの進化版ともいえる。
でも、「無料」というのがかえって怪しい……といぶかしく思う人も少なくないはず。「結局使えないんじゃないのか?」「ちょっと何かしたら課金されるのでは…」なんて心配に思って導入できていない人もいるのではないでしょうか?そこで、実際にこれでオーディオのレコーディングや、MIDIの打ち込みができるのか、そしてエフェクト操作やミックス作業までお金を払わずにできるのか試してみました。
無料で入手できるStudio One 3 Primeは、まともに使うことができるDAWなのか試してみた
当初予定よりちょっと遅れて登場したStudio One Primeですが、これを入手するには、若干の手続きが必要となります。基本的な手順については、エムアイセブンジャパンのサイト(http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/prime/)の「Primeの入手方法」に詳しく書かれているので参照してみてください。簡単にいうと、アメリカのPreSonus社のサイトでアカウント登録後、PreSonus Shopで0円で購入するというもの。ここではメールや住所、電話番号、名前の登録は必要になりますが、クレジットカードなどの登録は不要ですから安心してアカウント登録、0円購入して大丈夫ですよ。
その後、改めてPreSonusサイトに行き、My Productsというところに行くとMac版、Windows 32bit版、Windows 64bit版のそれぞれをダウンロードできるようになっているので、これを入手してインストールするのみ。このインストーラ自体はとっても軽く、Mac版で132MB、Windows版で90MB程度なのですぐにダウンロード&インストールできると思います。
エムアイセブンジャパンへのユーザー登録で分かりやすい日本語のマニュアルが入手できる
なお、Studio One 3 Primeを入手後、改めてエムアイセブンジャパンのサイトに行って、MYページにユーザー登録をすると、日本語のクイックスタートガイドや、ヘルプ機能として用意される詳細な日本語・リファレンスマニュアルまで手に入れることができます。
さらに今後Studio One 3 Primeユーザーへのファイル提供なども予定されているとのことですから、エムアイセブンジャパンへの登録は重要ですね。PreSonusのMYページと混乱してしまう方もいるようですが、別サイトなので「日本語マニュアルがない、ヘルプが日本語対応されてない」と騒ぐ前に、この手順をしっかり踏んでおきましょうね。
初回起動時にはPreSonusサイトで登録したメールアドレスとパスワードを入力してアクティベートする
さて、最初の起動時には、登録したアカウント名とパスワードを入力すればアクティベーションされるとともに、付属コンテンツをダウンロードできるようになっています。その付属コンテンツとはソフト音源の音色ライブラリやループ素材集、デモ曲データ、チュートリアル曲データなど。具体的にいうと
・Studio One Instruments Volume 1:155MB
・Studio One Instruments Volume 2:1.53GB
ベース、ドラム、エフェクト、ギター、キーボード、パーカッション、ストリングス、シンセ、木管楽器など300以上のPresence XT用プリセット
・Studio One Musicloops:173MB
ドラム、パーカッション、ギター、キーボード、ピアノ、ボーカル、ストリングス、シンセなど300以上のループ素材
などとなっています。
起動すると音色データやループ素材データのダウンロードを促されるので、これは入手しておこう
トータルで2GB程度あるので、通信回線によっては10分~数時間程度かかりますが、ここだけは我慢してください。私の場合は、光回線を使っていますが、ダウンロード・インストール完了まで20分程度でした。画面を見てもわかる通り、インストール作業はすべて日本語で行えるの嬉しいところですね。
はじめにStudio Oneメニューの「オプション」でオーディオインターフェイスの設定を行う
また実際に使うに当たってはオーディオインターフェイスの設定が必要となります。もちろんPreSonusのソフトですからPreSonusのオーディオインターフェイスがお勧めされるわけですが、MacならCoreAudio、WindowsならASIOドライバが使えるオーディオインターフェイスなら何でもOK。またMIDIキーボードも制限なく利用できるので、手持ちのUSB-MIDIキーボードなどを接続しておくといいですよ。
また手元にUSB-MIDIキーボードがないという人も大丈夫。PCのキーボードを鍵盤として代用するための機能があるので、これを使って演奏したり、リアルタイムレコーディングしていうことができますからね。これで物足りなくなったら、USB-MIDIキーボードを購入してみる…という順番でOKではないでしょうか?
デモデータを読み込んで再生してみると、28トラックある曲が問題なく再生される
さて、無事起動できたら、まずはデモソングを読み込んで、再生してみます。なんか、すごそうな画面が出てきますね。数えてみると28のオーディオトラックで構成されているようですが、さっそく再生ボタンを押してみると、ミキシングコンソールのレベルメーターが動き出し、カッコいいサウンドが流れてきます。とくにPCに大きな負荷がかかることなく、再生できることが確認できます。
新規ソングを作成すると、まっさらな画面が出てくるので、まず右のインストゥルメントを選択
では改めて新規ソングを作成します。この状態ではトラックは空なので、まずはドラムを打ち込んでみたいので、画面右のインストゥルメントをクリックするとPresenceという音源が入っているのがわかりますね。ここでArtst Instrumentsを開いてみると、さまざまなジャンルの、さまざまな音色が詰まっています。
ここではDrum Kitsの中にあるBasic Kitを選び、トラックのところへとドラッグ&ドロップ。キーボードを叩いてみるとドラムが鳴るはずです。
トラックの録音ボタンを点灯させ、メトロノームアイコンをクリックしてメトロノームを鳴らすようにした上で、さっそく録音ボタンをクリックしてレコーディングしてみましょう。適当に録音した後に「Q」キーを押せばクォンタイズもかかって、タイミングもバッチリですね。クリップをダブルクリックすると画面下にはピアノロール画面が広がるので、ここで細かくエディットしていくこともできますよ。
続いて、ベースの音色を選んで、同じようにトラックを作成し、レコーディングしていきます。キーボードが苦手という人は、ピアノロール上にペンで入力していくこともできますね。とくに難しいことを考えずにドラム、ベースと打ち込んでみましたが、これに利用したのがPresence XTサンプラーという強力なサンプリング音源です。
数多くのプリセット音色が用意されていますが、画面を見てもわかる通り、フィルターもエンベロープもLFOもエフェクトも用意されていますから、これらをいじることで、かなりドラスティックに音色をエディットすることもできますよ。まずはFilterセクションにあるCutoffとResをいじるだけでも、かなり雰囲気の違う音色にすることができるので試してみてください。
オーディオトラックを作成すれば、オーディオのレコーディングも簡単にできる
このように打ち込みができることを確認したところで、今度はオーディオのレコーディングも試してみましょう。トラックメニューからオーディオトラックを作成し、●印の録音ボタンを点灯させます。オーディオインターフェイスにマイクを接続し、音を入力するとレベルメーターが振れるので、入力音量を調整した上で録音スタート。これで簡単にレコーディングできてしまいますね。
画面右側のエフェクトのところに9種類のエフェクトが表示されるので、これをトラックへドラッグ&ドロップする
マイク入力に限らず、ギター入力や外部からの音源入力だって可能ですが、そのままの音だと味気ないので、エフェクトも使ってみましょう。画面右のブラウザのところでエフェクトを選び、「PreSonus」というところを見ると9種類のエフェクトが並んでいるのが分かると思います。ここから使ってみたいエフェクトをトラックへドラッグ&ドロップすればインサートの形で使えるようになりますよ。
ギターアンプシミュレータのAmpire XT(Basic) でパワフルなギターアンプサウンドが作れる
その9種類とは、ギターアンプシミュレータのAmpire XT(Basic)、フィルター機能も備えたBeat Delay、コンプレッサとパラメトリックEQがつけるChannel Strip、シンプル効果を持つChorus、5つのパラメータで調整するのFlanger、部屋のサイズなどを自在に調整できるディレイのMixverb、効果が分かりやすく使い勝手のいいPhaser、かなり破壊的なサウンドを作り出せるディストーションのRedlightDist、そしてチューニング周波数の設定も可能なTunerのそれぞれ。まあチューナーをエフェクトとは呼ばないかもしれないので、実質的には8種類ですね。
コンプレッサとパラメトリックEQがセットになったChannel Stripは万能
基本的なエフェクトは揃っているので、これだけあれば結構なことはできると思いますよ。ギターを接続した場合も、Beat Delay、RedlightDist、Ampireと繋いでいくと、かなりいい感じで弾いてレコーディングしていくことができました。
ミキサー機能を使っていくことで、全体を見渡しながらエフェクトのルーティングなどができる
また、エフェクトの状況などをチェックするには、画面下のミキサーを使うといいですよ。たとえばMixverbはトラックにインサートで使うよりも、このミキサーにFXチャンネルを追加した上で、FXチャンネルに設定し、各チャンネルからはセンドで送るのがいい感じですね。また先ほどのギターのように複数のエフェクトをインサートした場合、どの順番に流れるかをミキサーで調整することで、求めるサウンドを作っていくことができるはずです。
でも、「これだけのエフェクトでは物足りない」、「自分が普段使っているプラグインを利用したい」という人もいるでしょう。ここについては残念ながら無料のStudio One 3 Primeでは対応できないようになっています。上位版のStudio One 3 Artist、Studio One 3 Professionalへアップグレードしてエフェクトを増やしたり、プラグインを追加(Artistの場合はオプションでプラグイン対応する)してくださいね。
ミキサーでの操作をオートメーションとして記録していくこともできる
このようにして、レコーディングが一通り終わったら、ミックスです。画面下のミキサーを用いて各音量やパンを調整していくわけですが、もちろんオートメーションにも対応しているので、再生しながらフェーダーを動かせば、それを記録していくことも、あとで編集することも可能です。記録できるのは音量だけでなく、さまざまなパラメータも対応できますよ。
Mackie Controlなどの設定も可能で、iPadのコントローラアプリ、AC-7 Core HDとの連携もできた
さらに、試してみたのがiPadとの連携です。先日紹介したStudio One Remoteはとっても便利で強力なツールではあったのですが、これはStudio One 3 Professionalでのみサポートとのことで、使うことができません。そこでサードパーティー製ではありますが、AC-7 Core HDというアプリを試してみたところ、Studio One 3 Prime側でMackie Controlをコントローラとして設定することで、使うことができました。ちょっと手順は面倒なので、Studio One Remoteの便利さにはかないませんが、それでも使えてしまうのは嬉しいところです。
完成した曲はステレオ2chのオーディオファイルとして書き出すことができる
このように作った曲は、ソングメニューから「ミックスダウンをエクスポート」を選択することで、WAVやAIFF、FLACなどのファイル形式の2chミックスとして保存することも可能。よく無料体験版ソフトだと、最後の最後で書き出せない…なんていうものもありますが、このStudio One 3 Primeは最後までしっかりできてしまうのです。
一通りのエフェクト、ソフトウェア音源、MIDIエフェクトなどが揃っている
もちろん、前述のようにエフェクトの数が限られていたり、MIDIやオーディオの編集機能が全部揃っているわけではないのですが、これだけの機能があれば、一通りのことができてしまいますよね。
最近「Studio Oneは音がいいらしいから試してみたい」という人も多いと思いますが、このStudio One 3 Primeなら無料でここまでできてしまうんですからね。試してみないほうが損だと思いますよ!
【関連情報】
Studio One 3 Prime情報
Studio One 3製品情報
MI7のストーリーページ
PreSonusのMYページ
エムアイセブンジャパンのMYページ
【価格チェック】
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