Pro ToolsとAPOGEEのオーディオインターフェイスをWindowsでも!

気になっていたけど、Windowsで使えないから諦めていた…」という人も多い、APOGEEのオーディオインターフェイス。プロミュージシャン御用達ということで、よく話題に上るけど、APOGEEはAppleとガッツリと組んでいるだけにWindowsで使うことができなかったんですよね。

しかし、そのAPOGEEがAvid Technologyと組んだことにより、Windowsで使えるようになりました。以前の記事「プロ御用達オーディオIF、APOGEE製品ってどんなもの?」でも少し触れたPro Tools | Duet(デュエット)およびPro Tools | Quartet(カルテット)というのがそれ。先日、それぞれを借りてWindows上で使ってみたので、どんな製品なのか紹介してみたいと思います。


Windows 8.1上でPro Tools | Quartet、Pro Tools | Duetを使ってみた 


まず製品構成についてですが、Pro Tools | DuetはPro Tools 11と2IN/4OUTのオーディオインターフェイスDuetの組み合わせ、Pro Tools | QuartetはPro Tools 11と4IN/8OUTのオーディオインターフェイス、Quartetの組み合わせとなっており、いずれもハードウェア単体ではなくPro Tools 11(USBドングルであるiLokも付属)をバンドルした製品なんですね。


左がAPOGEE版のQuartetとDuet、右の黒い方がAvid版のQuartetとDuet 

見た目はAPOGEE版のDuet、Quartetがシルバーなのに対し、このAvid版のDuet、Quartetはブラック。この色とロゴが違う以外は、まったく同じ大きさ、同じ筐体、同じ入出力となっており、スペック的に同じになっています。では、これまで単独製品として販売されていたAPOGEE DuetやAPOGEE QuartetとPro Tools 11を個別に買って組み合わせたのと同じなのかというと、そうではないんです。

最大の違いはWindowsで使えるか否か。Avid版であるブラックボディーのPro Tools | DuetおよびPro Tools | QuartetはMac用だけでなく、Windows用のドライバやコントロールソフトがバンドルされており、Windows上でも利用できるのです。Windowsユーザーにとって縁遠かったAPOGEE製品が、これでようやく使えるようになったわけです。このドライバ、AvidがWeb上でも最新版を公開しているので、「これをダウンロードしてAPOGEE版で使えばいいのでは?」とも思ったのですが、発売元であるメディア・インテグレーションの担当者に確認したところ、実はAvid版でしか動作しないのだとか……。

Windows版のドライバはAvidの開発であるため、Avid版でしか動作しないようです」とのこと。詳細は分かりませんが、APGEEの製品ポリシーとしてApple製品にターゲットを絞るということがあるのかもしれませんね。反対にAPOGEE版ではiPadやiPhoneと接続するための専用ケーブルが同梱されているけれど、Avid版には入っていません。試しにLightning-USBカメラアダプタを介して接続してみたけれど動かすことができないので、iOSデバイスが必須であればAPOGEE製品を選択する必要があるようです。

ちなみに、WindowsではASIO、WDM、MMEの各ドライバが利用可能になるのでPro Toolsだけでなく、各社のDAWはもちろん、Windowsでの音の入出力を行うあらゆるソフトウェアで、Duet、Quatetが利用できるようになります。


Windows版のPro Tools 11.2.2をインストールして使ってみた

では、さっそくドライバをインストールして、Duetを接続した上で、Pro Toolsの最新版である11.2.2をインストールして起動させてみたところ、自動的にDuetのセットアップがされて使えるようになっています。プレイバックエンジンを確認してみると、「Pro Tools | Duet」が設定されていることがわかります。デフォルトのバッファサイズは256となっていましたが、これを64に設定してもまったく問題なし。試しにギターアンプのEleven Freeをプラグインに設定した上でギターを弾いてみると、非常にいい感じでモニターすることができますね。


Duetはブレイクアウトケーブルを利用して入出力を行う 

Duetの場合、本体にあるのはヘッドホン出力だけであり、ギターやマイク、またラインでの入力およびスピーカーなどへの出力には付属のブレイクアウトケーブルを使って接続します。ブレイクアウトケーブルを使うことの好き嫌いは分かれると思いますが、ノイズ面においてはまったく心配なし。非常にクリアなサウンドで録ることができ、モニターできます。


Quartetはリアにアナログのコンボジャックでの入力が4つと、TRSフォン出力が6つ、オプティカル入出力などがある 

一方のQuartetであれば、サイズは少し大きくなりますが本体のリアパネルにアナログ入力を4系統+アナログ出力6系統+ヘッドホン、さらにオプティカルの入出力とワードクロック出力を備えているので、ブレイクアウトケーブルなしに、各器材との接続ができるようになっています。もちろん、入力はDuetと同様にTRSフォン、キャノンにも対応したコンボジャックとなっておりファンタム電源供給機能も装備しているからコンデンサー・マイクへの接続も可能ですよ。


Mic、Inst以外に+4dBu、-10dBV に切り替えることができる

また、さすがと思ったのは入出力のアナログ信号設定において+4dBu、-10dBVの設定がそれぞれ行えるということ。この辺が適当なオーディオインターフェイスが多いのですが、業務用の+4dBuと民生用の-10dBVをしっかり使い分けることができるというのは重要なポイントですからね。

音質的には、DuetともQuartetもほぼ同じといってよさそうですね。実際にレコーディングしてみると、なぜミュージシャンがAPOGEEのオーディオインターフェイスを絶賛するのかがちょっと分かった気がしました。というのも、これ、ほかのオーディオインターフェイスと比較して微妙に音が違う感じがするんです。確かに非常にHi-Fiでクリアなサウンドでありながら、ちょっとパンチの効いたサウンドになるんですね。


有機ELの液晶パネルで各種設定やレベル調整も可能

別にEQがかかっているとか、エキサイターが使われているというわけではないけれど、これを通すだけでギターでもボーカルでも、またベースでも録れてしまうんです。APOGEEならではの音作りというのがあるんでしょうね。柔らかい音にするといったオーディオ製品での音作りとはまったく違い、モニターサウンドを追及した結果のサウンドというのでしょうか……、ガツンと来る音が誰でも簡単に録れてしまうというのは、大きな魅力だと思います。

ところで、Pro Tools | DuetおよびPro Tools | QuartetのドライバをインストールするとPro Tools IO Controlソフトウェアというものが一緒にインストールされます。これはAPOGEE製品にあったMaestroというソフトをベースにAvidが改良したもの。いわゆるミキサーソフトウェアであり、入力および出力の設定、PCからのリターンを含めたミックスバランスを調整できるようになっています。


Quartetの場合、2つのミックス設定をすることができ、切り替えて利用できる 

とくにQuartetの場合、Mixer1とMixer2という2つのミックスを設定した上で、切り替えて使うことが可能となっています。どの出力に何をルーティングさせるかの設定も自在にできるなど、非常に自由度の高い設計になっていますね。


どの出力端子にどの信号を送り出すかを設定できるマトリックス画面

また、このPro Tools IO ControlはAPOGEE版のMaestroと異なり、EUCONに対応しているのも大きなポイントです。手元にEUCONをサポートするコントロールサーフェイスがあれば、これでフルコントロールできてしまうわけですね。


EUCONにも対応しているが、DuetやQuartetのタッチパネルボタンに機能をアサインすることも可能 


もっとも、DuetやQuartet自体にも各種ボタン、ノブなどが搭載されているので、これだけでも結構使えますよ。たとえばDuetにはアサイン可能なタッチパネル式のボタンが2つ、Quartetには3つが搭載されており、それぞれにミュートやDIM、スピーカーとヘッドホンの切り替えといった機能を割り当てて使うことができるようになっているのです。


Duet、Quartetに搭載されているUSB端子にUSB-MIDIキーボードを直接接続できる 

最後にもう1点触れておきたいのがMIDIインターフェイス機能です。DuetもQuartetも本体、ブレイクアウトともにMIDI端子は存在していないのですが、もちろんMIDIインターフェイスとしても利用できるようになっています。実は、USB端子として備わっているんですね。最近のMIDIキーボードはMIDIで接続するよりもUSBで接続するほうが一般的。こうしたキーボードがそのまま接続できるし、USB-MIDIインターフェイスも接続可能。このUSB端子経由で電源供給もできるから、とってもコンパクトなMIDI環境を構築できるのです。Pro ToolsでMIDIの打ち込みを行う場合も、これでOKというわけですね。

以上、ごく簡単にPro Tools | DuetとPro Tools | Quartetについて紹介してみましたが、いかがでしょうか。とにかく気持ちいいサウンドが簡単にレコーディングできるというのが大きなポイント。ようやくWindows上で、「Pro Tools&APOGEEデバイス」という環境が使えるようになったというのはDTMの世界において大きなトピックスだと思います。

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【関連記事】
プロ御用達オーディオIF、APOGEE製品ってどんなもの?

Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • NABE

    藤本様、Digital Audio LaboratoryのProTools|Duet/Quartetの実力。記事を読みました。
    ASIOバッファ調整、ProToolsでしか調整不可能という点(SONAR等でもやはり同様でしょうか)
    こちらでも文字大きめにして追記していただきたく思います。

    2015年1月20日 9:45 AM
  • Tum

    Avid版Duet購入を検討しているのですが、上の方と同様の内容を気にしております。
    下記記事についてです。
    http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/684248.html
    「ASIOドライバとしてバッファの調整ができない」
    「レイテンシーが40~50msec程度になってしまい、モニター環境としては使い物にならない」
    「ProToolsを使う場合は、ProToolsのプレイバックエンジンの設定でバッファサイズを変えられる」
    WindowsにてProTools以外のDAWを使用する(例えばAbleton Live)ことを想定しておりますが、
    もしこの情報が本当であるとすると致命的に感じております。
    Ableton Liveであれば、オーディオ設定でレイテンシー設定ができたと認識しておりますが、
    この設定が無効になってしまうのでしょうか?
    Avid版Duet固有の問題なのでしょうか?
    勘違いなどありましたらご指摘ください。
    ご回答お待ちしています。

    2017年4月2日 12:28 AM

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