「ネット越しにバンド活動ができるNETDUETTOβは楽しすぎる!」や「ニコ生セッション♪で生バンドやろうよ!」といった記事で、以前にも何度か紹介したことのあったヤマハのフリーソフト、NETDUETTO(ネットデュエット)。自宅にいながら、遠隔地の友達とリアルタイムにセッションができてしまうこのシステムは、個人的には今世紀最大の革命的な出来事なんじゃないか……と思ってるくらいなんですけどね、いまだにあまり知られていないのがとっても不思議です。
そのNETDUETTOが、ひっそりと、そしてさらに強力なシステムへと進化していたんですね。実は2か月前に、NETDUETTOが機能強化された、という情報は得ていたのですが、なかなか試せないままだったのですが、先ほどようやくテストしてみたところ、驚くべきものへと進化していたので、どんなことになったのかをみましょう。
NETDUETTOβがVSTプラグイン対応し、DAWと連係可能になっていた!
まず、進化点の前に、NETDUETTOがどんなものなのかをご存じない方も多いと思うので、簡単に紹介しておきましょう。
これはヤマハが開発中のソフトで、2011年に公開されたネット越しでリアルタイムにセッションができるというもの。たとえば横浜にドラム、東京にキーボード、浜松にギター、大阪にベースといったメンバーがいたときに、それぞれをNETDUETTOを利用してインターネットで接続すると、リアルタイムにセッションができてしまうのです。
ネット越しに4か所までの接続をし、リアルタイムでのセッションが可能
ネット速度、オーディオインターフェイスのレイテンシーといった問題により20~30msec程度の音の遅れはあるものの、バンド演奏をするなら十分許容範囲内であり、16bit/44.1kHzというCDクオリティーの高音質で4人のメンバーまでのやり取りが可能なのです。
NETDUETTOβは現在NETDUETTOラボで無料配布されている
WindowsでもMacでも使えるのですが、このNETDUETTOは、実験的なプロジェクトという意味合いもあって、製品ソフトとしては発売されていません。当初からNETDUETTOβという名称のベータ版扱いであるため無料で配布されるとともに、サポート対象外という形のものです。この技術を組み込んでNTTが発売した光☆DUETTO「ひかりDUETTO NY1」というものもありますが、NETDUETTOβはPCとオーディオインターフェイスがあれば、誰でも無料で使えるというシステムなのです。
以前、筆者の家でも実験に使ったひかりDUETTO NY1
またニコニコ生放送にはNETDUETTOβと連携するニコ生セッション♪というサービスも用意されています。これを利用すれば、まったく知らない人でもニコ生をキッカケに参加してセッションができてしまうという画期的なサービスでもあるのです。
そのNETDUETTOについて、ヤマハは今年7月に配布体制を変えてNETDUETTOラボというNETDUETTOを使ったサービス実験サイトを立ち上げ、ここでWindows版、Mac版それぞれのNETDUETTOβの配布を行っているのですが、それとは別に9月からWindows版のNETDUETTOβ(α開発版)なるものの配布を開始し、さらに10月29日から、Mac版の配布も開始したのです。
名前からも分かる通り、さらに実験的なものとなっているのですが、従来からのNETDUETTOとしての機能を踏襲しつつ、VSTプラグインを利用したDAWとの連携を可能としたものに進化していたんです。
DAWにオーディオプラグインとしてNETDUETTOβ(α開発版)を組み込むことができる
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、NETDUETTOラボにあるVSTモードのNETDUETTOβのオーディオの流れという図を見てみてください。これは通常モードと違い、オーディオインターフェイスとNETDUETTOβとの間にDAWを介す形になるのです。
使い方としてはオーディオトラックにエフェクトの形で組み込んだり、インストゥルメントとして組み込むだけなので、いたってシンプルなのですが、別にNETDUETTOがエフェクトになるとか、ソフトシンセになるというわけではなく、単純にDAWを信号が通過するだけなのですが、これによってどんなメリットがあるのでしょうか?
いろいろな可能性が広がるのですが、まずはDAW上で使えるプラグインのソフトウェアインストゥルメントでセッションができるということ。従来ならセッションで利用する楽器をオーディオインターフェイスの入力に接続して演奏する必要がありましたが、DAWが介在するために、DAW上で動くソフトシンセやソフトサンプラーを演奏すれば、音質劣化の心配もなく、そのまま相手へ送ることが可能になるのです。
インターネットのDAW、ABILITYに組み込んで使うこともできた
さらに、ボーカル用のマイクやギターなどの従来からも利用できる音源に対しても、いったんDAWのオーディオトラックを通すことにより、ここにコンプやディレイ、コーラス、EQ……などプラグインのエフェクトを使うことができるようになります。つまりギターはあるけど、アンプシミュレータなどがないという人でも、DAW上のものが利用できるので、より手軽にシステムを組むことができるわけですね。
ちなみにNETDUETTOのエフェクト型のプラグインへ送った音はそのままネット越しに出ていき、ネットの向こう側の音がエフェクトの出力としてDAWに戻ってくるという構造になっているのです。
では、もうひとつのインストゥルメント型のプラグインはどんな役割を持っているのでしょうか?前述のとおり、こちらもインストゥルメントとして使うのではなく、ネットの向こうからやってくる音をパラで振り分けるために存在するのです。
インストゥルメントとして組み込んでマルチアウトの設定にすると、別々のチャンネルとして扱うことができる
従来のNETODUETTOβでも相手からの音を手元にミキサーでバランスをとることが可能でしたが、VSTモードではNETDUETTOの4つのチャンネルがそれぞれ別々にDAW上に返ってくるのです。そのため単にバランスをとるだけではなく、それぞれの音に対して異なるエフェクトを掛けたり、オーディオインターフェイスの別々のポートからパラで出力させるといったことが可能になります。
ただし、入力チャンネルとしてNETDUETTOからの信号が入ってくるわけではないので、これをDAW上にレコーディングするには多少工夫が必要となります。たとえばCubaseの場合、使っているチャンネル分のFXチャンネルを作成し、NETDUETTOからの戻りを、それぞれ別のFXチャンネルに送ります。
間にFXチャンネルを挟むことで、NETDUETTOの音を16bit/44.1kHzのまま劣化なしのレコーディングに成功
さらにレコーディングするためのオーディオトラックを作成し、その入力をそれぞれのFXチャンネルに設定すると、うまくレコーディングすることができました。これについてはDAWによって手法が違うと思うので、試してみてください。
これができてしまえば、セッションした音を、完全な形で、各パートごとに別々にレコーディングできるわけで、あとから、エフェクトをかけたり、EQやコンプなども利用しながらミックスするなど自由自在。可能性が大きく広がりますよね。
とりあえず、VSTプラグインを組み込んでの接続という意味ではCubaseのほかにSONAR、StudioOne Professional、ABILITY Proでも使うことができたので、VSTプラグイン対応のDAWであれば何でも使えそうです。
Mac上ではStudio One Professionalに組み込んで使ってみた
ただしMacの場合、現時点ではAudioUnits対応ではなくVSTプラグインとしての対応のみであるためLogicやGarageBandで使うことはできません。現在のところCubaseやStudioOne Professionalなどが使えるDAWは限られますが、仕組的にはAudioUnitsを使っているように見えるので、今後に期待したいところです。
なお、接続する相手は、VSTモードである必要はなく、スタンドアロンでOKだし、α開発版でなく普通のNETDUETTOβでも大丈夫です。いろいろな使い方ができるので、一度試してみてはいかがですか?
【関連情報】
NETDUETTOラボ
NETDUETTOβ(α開発版)ダウンロードページ
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