いつ出るか、いつ出るかといわれ続けて10年以上。2003年8月にSampleTank2が発売されて以来、なんと11年ぶりのメジャーバージョンアップという形でSampleTank3がイタリアIK Multimediaから発売されました。Native InsturmentsのKONTAKT、SteinbergのHALionと並ぶ3大サンプラーソフトの一つであり、新バージョンの登場を首を長くして待っていた人も多いと思います。
パッケージ版の発売は、9月ごろとなっていますが、7月24日よりIK Mutimediaのサイトからダウンロード版が登場し、日本からも日本語でダウンロード購入できるようになったのです。価格は9月30日までの発売記念価格として239,99ユーロ(通常価格は279.99ユーロ)で約33,000円。ほかにクロスグレード版が159,99ユーロ(約21,800円)、アップグレード版が119.99ユーロ(約16,500円)とより手ごろな価格で購入する手段も用意されいます。そのSampleTank3をさっそく使ってみたので、簡単にレポートしてみたいと思います。
11年ぶりのメジャーバージョンアップとなったSampleTank3
現在でもSampleTankを使うファンは多いと思いますが、この11年の間に、2.0から2.5へとにアップデートしたとはいえ、やや時代遅れのソフトとなっていたのも事実です。その最大のポイントはSampleTank2が32bitのアプリーケーションであり、64bit対応していなかったことです。そのため、SampleTank3登場への期待が高まっていたわけですが、これでようやく64bit対応が実現したわけです。
SampleTank3はMacでもWindowsでも使えるハイブリッドで、64bitアプリケーションとなっている
SampleTank3はSampleTank2と同様、Windows、Macのハイブリッドとなっていますが、双方ともに32bit版はバッサリ捨てて64bit環境専用になったのも面白いところ。だからWindowsXPなどの32bitOS上では動きませんし、DAWのプラグインとして使う場合もDAW自体が64bit版でないと動作しないのは注意点ですね。またそのプラグイン環境としてはVST、AudioUnits、AAXのそれぞれの64bit版で動作するほか、DAWなしのスタンドアロンのアプリケーションとしても動作するようになっています。
SampleTank2のライブラリのインポートも簡単にできる
今回、そのダウンロード版のWindows版を使ってみたので、まずはプログラム本体をダウンロードして、インストール。ここまでは、あっけないほど簡単に、短時間でできたのですが、これでは肝心のサンプリングデータがないために音が出ません。SampleTank2のデータを読み込んで再生させることができましたので、とりあえず過去資産が活用できることは確認できたのですが、データはどこかと思って探したら、プログラム本体とは別途ダウンロードするんですね。
音色ライブラリは24.6GBもあるので、ダウンロード、インストールには結構時間もかかる
見てみると3GB程度のファイルを38本ダウンする必要があるので、光ファイバー回線とはいえ、ダウンロード完了までには、30分以上かかりました。ZIPファイル形式で計24.6GB。これらを解凍すると、それぞれにインストーラが入っているので、ひとつずつインストールしていく必要があり、それらの作業も含めるとトータル1時間以上かかりましたが、まあ1回インストールすれば済む話ですからね。なお、展開すると33GB以上のファイルサイズになります。
音色ライブラリは8回インストール作業が必要なので、結構大変
さて、改めて起動してみると、左側には読み込んだサンプリングデータの一覧が表示されます。Acoustic Drums、Synth Bass、Piano、Organ、Strings、Brass……、と21カテゴリがあり、その中を覗くとさらに階層が分かれ、計4,000種類以上の音色がはいっているそうです。
音色ライブラリがインストールされると、画面左側に音色のカテゴリ一覧が表示される
とりあえず、GrandPiano1というのを読み込んでみると、SSDのドライブだからか3、4秒で読み込んでくれるのですが、これだけで1.17GBもあるんですね!このスピードにも驚きましたが弾いてみると、かなりリアルな音が出ますね。ピアノだけでも、この値段の価値は十分あるのではないでしょうか…。
1.17GBもあるグランドピアノのライブラリが3、4秒で読み込めるのにはビックリ
続いて2chにバイオリンを読み込んでみます。Stringsの中を見ると、ソロ、アンサンブル、ミックスオーケストラなどカテゴリが分かれるのですが、ソロにもアンサンブルにもバイオリン音色があり、アンサンブルも4バイオリン、11バイオリン、23バイオリンと3つの編成に分かれています。ここで11バイオリンを見てみると、さらに21種類ものバイオリン音色が入っているのですから、かなり選択肢がありますよね。
ここでは11 Violins Multiという音色を選んでみました。弾いてみると、かなりリアルなサウンドが出てきます。が、ここで、ちょっと気になったのが低音部分。黒と赤の鍵盤になっていて、おや?と思い、ここをクリックすると、ダイアログが表示されます。
Multi Violinという音色にはアーティキュレーションも入っている
そう、これアーティキュレーションになっており、C0を押すとサスティン、G0ならピッチカート、B0ならスタッカートといった具合に、異なる奏法での音を表現できるようになっているんですね。バイオリンやトランペットなど、奏法を変えると、違う音色になる楽器もあるので、その場合、いちいち音色自体を切り替えるのではなく、低い鍵盤をスイッチとして切り替えることで、奏法を切り替えることが可能になっているわけです。こうしたアーティキュレーション情報が入った音色は全体の中の一部ではありますが、表現力を広げる上で、非常に有効な手段ですよね。
※追記
「49鍵などの鍵盤を使っている際、C0やG0などの低いキーを押せないので、アーティキュレーション用のスイッチをトランスポーズする方法はないか?」という質問が来ていました。トランスポーズはないようですが、SampleTank3では、PCのキーボードを鍵盤として使えるので、そちらを低音設定にしておくと、これをスイッチにすることが可能です。
INFOボタンを押すと、サンプル元である、いかにもなイラストが表示される
4,000種類もの音色が入っているので、これを選んで弾いているだけで楽しく、すぐに何時間も経ってしまいます。INFOというボタンを押すと、音色がイラスト表示され、シンセサイザの場合だと、何からサンプリングしたのかなど想像できるイラストが表示されるのも面白いところでした。
パターンとしてのMIDIデータも2,000種類以上収録されている
また、自分で弾いたり、DAWからMIDIシーケンスを鳴らすだけでなく、SampleTank3には、PATTERNというパターンフレーズ情報が入っており、これでそれっぽい演奏がすぐにできるのも特徴です。ドラム用、ベース用、ギター用と、さまざまなフレーズが入っているので、これで簡単に演奏することができるし、DAW側からテンポを同期させて鳴らすこともできますよ。
このようにSampleTank3はプレイバック型のサンプラーですから、基本的には4,000種類ある音色から好みの音色を選び出して、使う音源です。また最高16のマルチティンバーとなっているので、複数のMIDIチャンネルで同時に鳴らすことができるし、それぞれの出力をバラバラのオーディオトラックに戻すといったことも可能なのはSampleTank2と同様です。
シンセサイザとして数多くのパラメータを用いての音色エディットも可能
とはいえ、SampleTank3もシンセサイザであり、もっと積極的な音色エディット、音色づくりも可能です。EDIT画面に切り替えると、フィルタ、LFO、エンベロープ……とさまざまなパラメータが並んでいるので、ここでかなり音を変えていくことも可能です。
またPARTのところでは、この音色が受けるMIDIチャンネルが設定できるほか、ゾーニングを設定することが可能です。先ほど、16マルチティンバーの音源であるといいましたが、PART1とPART2を同じMIDIチャンネルに設定すれば、レイヤーとして2つの音色を重ねることができるし、ゾーニングで分けていけば、スプリットも可能というわけなんですね。
さらに、その16あるパートのミキサーも備わっていて、ここでレイヤーのバランスをとったり、もちろん、各パートごとのバランスをとることもできるわけですが、ここには1パートごとに5つのインサーションエフェクトを設定することが可能です。これはVSTやAUのエフェクトというわけではなく、SampleTank3が独自に持っているエフェクトなんですが、これがまた優秀なんです。
各パートごとに5つまでのエフェクトをインサーションで入れることが可能
ご存じのとおり、IK MultimediaはギターアンプシミュレータのAmiliTubeやアナログモデリングのマスタリングソフトT-RackSのメーカーでもあり、エフェクトは得意中の得意。そのIK Multimediaのエフェクトが55種類も搭載されており、自由に使うことができるのです。
もちろんプレイ画面においてもエフェクトの設定は可能となっている
リバーブ、ディレイ、フランジャーといったものから、ステレオイメージャー、ビンテージのコンプ……と、いろいろ。こうしたパラメータの設定はミキサー画面だけでなく、メインのプレイ画面においても前面に表示させてエディットできるので、エフェクトを使った音作りという面でも、かなりマニアックに使うことができそうですね。
【製品情報】
SampleTank3製品情報
【価格チェック】
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