先日、米SONY CREATIVE SOFTWAREからACIDの新バージョン、ACID MUSIC STUDIO 10が発売されました。ACIDについては、これまでDTMステーションでも何度か記事にしてきたことがありますが、これはループ素材を並べて曲を作る手法をベースにした音楽制作ソフトで、90年代後半に登場し、進化してきたソフトです。
もちろん、現在はMIDIの打ち込み機能はもちろん、オーディオのレコーディング機能、細かなエディット機能、エフェクトやソフトシンセのプラグインの機能……と一通りの機能を備えたDAWとなっているのですが、実売価格11,000円程度と安く、しかも本当の初めてユーザーでもすぐに使えてしまうという、他のDAWとは一線を画すユニークなソフトでもあるのです。先日、ニコニコ生放送の6月17日のDTMステーションPlus!で取り上げてみたところ、結構驚いた方も多かったので、改めて紹介してみたいと思います。
ACID MUSIC STUDIO 10を使ったお絵描き音楽制作術に挑戦!
ACIDは長い歴史を持つソフトであるだけに、いろいろな機能を搭載しているのですが、何はともあれ、以下のビデオをご覧ください。先日のニコニコ生放送において、パートナーである作曲家の多田彰文さんからも「これは衝撃的な作曲方法だ!」と絶賛!?された、曲作り方法を再現したものです。
どうですか?まあ、メロディーがあるわけではないので、作曲とはいえないかもしれませんが、いわゆるトラックメイキングといえばいいのでしょうか……。まさにデタラメに操作しているだけなのに、結構カッコいい曲になっていると思いませんか?
簡単に解説しておきましょう。ACIDにはループ素材と呼ばれる1、2小節の短いフレーズが3,000種類以上収録されています。ドラム、ベース、ギター、ピアノ、オルガン……と、それぞれ単音で構成された数秒のデータであり、通常は、ここから気に入った素材を見つけ、トラックに並べて組み合わせて曲を作っていきます。
まさに適当にループ素材を見つけてダブルクリックすると画面上部のトラックとして生成される
このループ素材にはテンポ情報やキー情報が入っており、これをトラック上に並べると、自動的にプロジェクトに設定されているテンポやキーにピッタリと合うようになっているのです。そのため、まったく違うテンポ、キーのループ素材であっても、並べるとマッチするようになっているんですね。
ペイントツールを使ってお絵描きしていくと、なんとそれだけで曲になってしまう
そこで、試してみたのが先ほどの「お絵描き音楽制作」なのです。ループ素材をダブルクリックすると、トラックとして設定されるので、まさにデタラメに素材をダブルクリックしてトラックを作っていき、その後、絵や文字を描くように、トラックにループ素材を置いていくだけなのです。これなら、DTMが初めてな人はもちろん、楽器が弾けない人、音楽理論についてまったく知識がない人だって、簡単ですよね。
もちろん、ACIDはこうした使い方をするために生まれてきたソフトではありません。前述のとおり、MIDI機能もオーディオ機能も備えたDAWであり、VSTエフェクト、VSTインストゥルメントも利用可能なDAWなのです。
実際にこのACID MUSIC STUDIO 10がDAWとして、どれだけのことができるのか、ニコニコ生放送のDTMステーションPlus!でも、多田さんといっしょに試してみました。
まあACIDというと、ループシーケンサというイメージが強いだけにダンス系、テクノ系のツールと思っている人が多いと思うので、ここでは敢えて、違った方向でチャレンジしてみよう、ということでマルチプレイヤーの多田さんに、アコースティックギターとバイオリンを用意してもらいました。
手順としては、まず私が8小節分のドラムとベースを並べます。多田さんから「テンポはやや、ゆっくり目がいい」とのオーダーをもらったので、106に設定した上で、シンプルなアコースティックドラムとエレキベースを選んでみました。
デフォルトでキーはAとなっているので、そのまま8小節を通してもいいのですが、ちょっとつまらないので、2小節ごとに、A・D・A・Dと設定します。
ここで新たにオーディオトラックを作成。オーディオインターフェイスにはRolandのDUO-CAPTURE EXをつないでいたので、ここにマイクを接続した上で、多田さんにはアコースティックギターを弾いてもらいました。1小節目の頭から始まってしまうので、分かりやすいように、メトロノームを設定し、曲の手前に8拍分のカウントを入れるように設定しておきましたが、何の問題もなく、簡単に録れてしまいますね。
ACID MUSIC STUDIO 10にバンドルされているTrue Piano Amber Lite
続いてはMIDIトラックの作成。ここにピアノを入力していきます。ACID MUSIC STUDIO 10にはTrue Piano Amber Liteという、結構キレイなサウンドのVSTインストゥルメントの音源がバンドルされているので、これを起動。またMIDIデータの入力用には、多田さんが持参してくれたKORGのMicroSTATIONというキーボードを接続。「ミニキーだけど61鍵盤あって、なかなか弾きやすい」(多田さん)そうで、これを使ってリアルタイムレコーディングをしてもらいました。
MIDIキーボードからリアルタイムレコーディングしたが、もちろん後で編集することもできる
そして、今回のハイライトはバイオリン。もう一つオーディオトラックを作成した上で、先ほどのアコースティックギターとのレコーディングと同様のマイクセッティングで弾いてもらいました。ループサウンドもカッコいいのですが、アコギに、ピアノ、そしてバイオリンまで入ると、なんか格調高い感じになりますよね。
レコーディングも一発で完成だ!、と思ったのですが、「最後の辺りが気に入らないので、途中からパンチインさせて!」とのこと。
7小節目にカーソルを合わせた上で、再度レコーディングして、ようやく完成です。
どうですか?これだけのパートを10分程度でアドリブで作曲して、演奏してしまう多田さんの凄さもありますが、それをスムーズに受け入れてくれるACID MUSIC STUDIO 10も手軽で便利なソフトであることが理解いただけたのではないでしょうか?
バイオリンには付属のSONYのExpressFXリバーブを掛けた
ちなみに、このバイオリンのパートだけは、多田さんからのオーダーで軽くリバーブを掛けてみました。これもACIDに標準で搭載されているリバーブなのですが、VSTプラグインではなくDirectXプラグインというものを使用しています。実際に掛けてみると、なるほどバイオリンのサウンドが、いい感じに仕上がりますね。
以上、ACID MUSIC STUDIO 10について見てきましたが、いかがだったでしょうか?これだけのことができるDAWが11,000円程度で入手できてしまうのですから、いい時代になったものです。
ACID MUSIC STUDIO 10と同時発売になった解説書
ちなみに、このソフトの解説書「今日からサウンドクリエイター!ACID MUSIC STUDIO 10完全入門ガイド」という本を私が執筆しており、ACID MUSIC STUDIO 10の発売と同時に発売しています。冒頭で紹介した「お絵描き音楽制作術」はありませんが、初めてのDTMユーザー向けに優しく書いているので、よかったら参考にしてみてください。
またソフトと解説書をセットにした「ACID MUSIC STUDIO 10解説本バンドル」というものも発売されており、別々に買うよりは若干お得になってますよ!
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ACID MUSIC STUDIO 10製品情報