6月25日、RolandからAIRAシリーズの4番手、キーボード型のシンセサイザ、SYSTEM-1が発売されました。往年の銘機SH-101などのアナログ回路をACB(Analog Circuit Behavior)テクノロジーという技術で再現して作っているのと同時に、PLUG-OUTなる新技術、新コンセプトでDAWとの連携も実現したという期待度の高いシンセ。これは、さすがに買っておかなくちゃと私も予約注文したのでした。
TR-8やTB-3、VT-3などと同様、緑に光る幻想的なデザインのシンセサイザ。思っていた以上に薄く、以前あったRolandのUSB-MIDIキーボード、PCR-1のようなタッチの25鍵盤となっています。そのAIRA SYSTEM-1をさっそく触ってみたので、ファーストインプレッションということで、これがどんなシンセサイザなのか、どんな音が出る機材なのか紹介してみたいと思います。
まずは、このSYSTEM-1が家に届いてすぐに、スタンドアロンの音源として使うとともに、各パラメータを動かしてみました。まさにアナログシンセという感じで、比較的分かりやすくシンプルな構造の音源のようです。一つ一つを文章で紹介するよりも、音を聴きながらのほうが、分かりやすいと思ったので、即席でビデオにしてみました。ちょっとご覧ください。
もちろん、かなり端折っているので、SYSTEM-1の全機能のうちの一部しか見れていませんが、雰囲気は分かっていただけたのではないでしょうか?
このビデオを補足する形で少し解説してみましょう。まずSYSTEM-1には2つのオシレーターがあり、それぞれ
・ノコギリ波(SAW)
・矩形波(SQUARE)
・三角波(TRIANGLE)
・SuperSAW
・SuperSQUARE
・SuperTRIANGLE
の6つの波形を選択できるようになっています。
SuperSAWなどSuperというのは単独の波形ではなく、同一波形を複数重ね合わせたもので分厚いサウンドが得られるRolandのオリジナル波形です。SYSTEM-1には、SuperSAWに加え新しくSuperSQUARE、SuperTRIANGLEが搭載されています。さらにCOLORというパラメータを動かすことで、重なった波形通しをデチューンさせて簡単に分厚いサウンドにすることもできます。
これらの波形でモノフォニックのシンセサイザとしても使えるし、POLYモードにすれば4音まで出せるポリフォニックシンセサイザとしても機能するようになっています。
またビデオに入れ忘れてしまったのですが、OSC 1にはCROSS MODというパラメータあがり、これはOSC 2からOSC 1へとFM変調をかけるもの。これによってかなり攻撃的なサウンドになりますね。
フィルター部。LPF、HPFが搭載されているほか、フィルター専用EGも搭載されている
フィルターはビデオではローパスのCUT OFFとRESOの2つのパラメータのみを動かしましたが、-12dBタイプと-24dBタイプが選択できるほか、これとは独立する形でハイパスフィルタも用意されています。さらに、フィルター専用のADSRのエンベロープジェネレータも搭載されているので、音作りもしやすくなっています。
もちろんアンプ、つまりVCAの部分にもフィルターとは独立したエンベロープジェネレータが搭載されているので、音の立ち上がりとか、余韻の調整はこちらで行う形です。また、このアンプ部にはCRUSHERなる、すごい名前のパラメータが搭載されているのも大きな特徴です。そう、作り込んできた音を、このパラメータ一発で破壊してしまうんですね。ちょっと上げるだけでも、ビット・クラッシュ的なサウンドでかなりドラスティックに音色が変化していくので、なかなか面白いですよ。
LFOも1基搭載されており、これはサイン波、三角波、ノコギリ波、矩形波、サンプル&ホールド、ランダムの6種類から選択できるようになっています。この信号をオシレータ(ピッチ)、フィルター、アンプのそれぞれに+方向、-方向で掛けていくことが可能になっています。
そして、SYSTEM-1の大きな特徴といえるのがSCATTER(スキャッター)の存在。AIRAの他シリーズ製品にも、それぞれ機能の異なるSCATTERというものが搭載されています。これは「まき散らす」といった意味のものなのですが、SYSTEM-1ではアルペジオ機能をまき散らす存在としてSCATTERが搭載されているのです。
まずARPEGGIOボタンをオンにしてコードを弾くとUPとかDOWNといったアルペジオタイプに合わせてアルペジオ演奏がされ、その下のJOGダイアルを回すことで10種類のパターンを選択できるようになっています。さらに、ジョグダイアルの外側には、通常ピッチベンドとして機能するジョグシャトルがあるのですが、これを動かすことで、リアルタイムにアルペジオのグルーブが変化していくんですね。
そして出力最終段にはエフェクトが2系統用意されています。リバーブとディレイで、これを使うことで音に広がりをつけることができますね。
SYSTEM-1のリアパネル。MIDIで外部機器とやりとりできるほか、USBでPCと接続すると大きな威力を発揮する
と、ここまでSYSTEM-1本体だけでできることの概要を見てきたわけですが、ここまでがSYSTEM-1が持つ機能の半分のようです。そう、これをPCと接続することで、さらに大きな威力を発揮するというのが、SYSTEM-1の最大の特徴ともいえるのです。
まずはドライバーをインストール。これがオーディオ兼MIDIドライバーとなっている
まずドライバをPCにインストールし、USBで接続してみました。すると、SYSTEM-1はPCから見るとオーディオインターフェイス、MIDIインターフェイスとして認識されるんですね。この点はTR-8やTB-3とも同様で、オーディオインターフェイスとしては、24bit/96kHz固定の2IN/2OUTのデバイスとして見えます。
24bit/96kHzの2IN/2OUTのオーディオドライバとして見える(画面はCubase7.5)
WindowsにおいてはMMEドライバ、ASIOドライバで利用でき、MacならCoreAudioドライバのデバイスとして扱うことが可能。たとえばSONARやCubaseを立ち上げて、これのオーディオインターフェイスとして利用できるわけです。
「でも、シンセサイザがオーディオインターフェイスって、どういうこと?」と不思議に思う方ももいるでしょう。実際に使ってみるとすぐにわかるのですが、まずPCから出力した音は、そのままSYSTEM-1のオーディオ出力から出てきます。使ってみたところ、VOLOUMEパラメータは効くのですが、この音にフィルターを掛けるといったことはできないようです。もしかしたら、ワザがあるのでは……とも思ってしまいますが、現時点では分かりませんでした。
一方、DAW側でオーディオのレコーディングボタンを押すと、SYSTEM-1で鳴らした音がそのままトラックへとレコーディングされていくんですね。もちろん完全なデジタル接続ですからノイズレス。実は先ほどのビデオのシンセサウンドのレコーディングは、この方法を使っています。
TR-8の場合は、キック、スネア、ハイハット……と、音色ごとにパラで同時に録れるようになっているのですが、SYSTEM-1の場合はステレオ1系統となっているようです。
MIDIドライバとしては2系統のポートが見える(画面はSONAR X3 Producer)
一方、MIDIのほうは「SYSTEM-1」、「SYSTEM-1 CTRL」と2系統見えます。触ってみるとすぐに分かりますが「SYSTEM-1」のほうが鍵盤を弾く演奏情報、「SYSTEM-1 CTRL」は各パラメータを動かすコントロール情報が流れるようになっています。
オーディオトラック、MIDIトラックに同時にレコーディングしていくことができる
したがって、DAW上にオーディオトラックとMIDIトラックを作って、両方同時にレコーディングすれば、USBケーブル1本でオーディオとしてもMIDIとしても録ることができるわけですね。
SYSTEM-1上にもPLUG-OUTというボタンがあるが、6月25日現在機能していないので、1か月のお預け
そして、もっと気になるのがSYSTEM-1が 打ち出した新コンセプトPLUG-OUTです。これまでのRolandの 説明によると、後日リリース予定のVSTやAudioUnits対 応プラグイン・ソフト・シンセをSYSTEM-1へPLUG-OUTし て音源そのものをPCと切り離して持ち出せるとのことです。制作で使用した音源や音色をそのままライブに持ち出すことが出来るなど、有機的に連携 できるということのようです。
ただ残念ながら6月25日現在、PLUG-OUTのシステムはリリースされておらず、Rolandによると7月下旬に公開されるとのこと。SYSTEM-1の拡張機能として無償でダウンロード可能になるとのことですので、これは公開され次第、詳しくレポートしてみようと思っていますので、お楽しみに。
【製品情報】
AIRA SYSTEM-1製品情報
SH-101 PLUG-OUT情報
SH-101 PLUG-OUTキャンペーン情報
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