これまでDTMステーションでも何度か取り上げてきた、しゃべらせるソフトウェア、VOICEROID+(ボイスロイド・プラス)。歌わせるソフトウェアであるVOCALOIDとは一線を画すもので、ワープロ上の文書でも新聞記事でもコピー&ペーストで持ってくれば、すぐに自然な音声でしゃべってくれる、とても便利なツールです。
そのVOICEROID+の新製品としてAHSから発表された琴葉茜・葵(ことのはあかね・あおい)は双子のキャラクタとして登場するもので、茜が関西弁、葵が標準語をしゃべるというユニークなソフト。また機能的にもこれまでのVOICEROID+と比較しても強力になり、Windows8にも正式対応するなど、より広い範囲で使えるようになっています。
4月にAHSから発売される「VOICEROID+ 琴葉茜・葵」のうち関西弁をしゃべる茜
VOICEROID+について知っている方も、初めてという方も、まずは以下のビデオをご覧ください。
いかがでしょうか?これは、琴葉茜・葵をインストール後、何の設定も調整もしておらず、ただそのままテキストを貼り付けてしゃべらせたものです。ご覧いただくと分かる通り、同じテキストではありますが、茜のほうは関西弁のイントネーション、葵は標準語のイントネーションでしゃべっているのが分かると思います。
どちらもとっても自然なしゃべり方ですよね。声質はまったく同じなのに、イントネーションが違うだけで、かなり印象も変わってくるのも面白いところ。赤いキャラクタだから茜、青いキャラクタだから葵、ということなんでしょうか!?
その琴葉茜・葵の声を担当しているのは声優の榊原ゆいさん。声優としてだけでなく、シンガーソングライター、ダンサー振付とさまざまな活動をしているマルチタレント。榊原さんは関西出身ということもあって、関西弁をしゃべる今回のVOICEROID+の中の人として抜擢されたようです。
一つのパッケージに入っているが、琴葉茜、琴葉葵は別ソフトで、別々にインストールする
ところで、茜と葵と1つのパッケージには入っていますが、別々の独立したソフトウェアとなっています。先ほどのビデオでも2つを同時に起動して、切り替えて使っていたし、必要あれば、両方を同時にしゃべらせることも可能です。VOCALOIDのようにライブラリを切り替えるという機能はないようなんですね。
「なるほど、関西弁のライブラリーと標準語のライブラリーがあるのか!」と思ったら、実はそうではないようなのです。声の収録においては、すべて標準語でレコーディングしており、音声合成エンジンのほうで、関西弁のイントネーションを作り出しているため、別々のソフトとなっているようなのです。しっかり技術背景が理解できていませんが、なかなかスゴイです。
画面下側で、イントネーションを簡単に設定できるのがVOICEROID+の特徴ですが、同じ設定になっていても、茜と葵では、イントネーションが違ってくるというのも不思議なところです。
東北ずん子の画面。画面下の右側を見ると、少し違っているのが分かる
以前紹介した東北ずん子でも、音量や話速、高さ、抑揚といった調整は可能になっていたのですが、それは文章全体に対するものでした。そのため、ある部分だけを大きい声にしたいとか、ある単語だけをゆっくりしゃべらせたい、といったことはできませんでした。
しかし、今回登場した琴葉茜・葵では、あるフレーズだけを、ゆっくりしゃべらせたり、ある1文だけを大きい声でしゃべらせるといったことができるのです。ちょうどDAWにおけるオートメーション機能のような感じ、というと分かりやすいかもしれませんね。ただし、DAWのオートメーション機能ほど自由度が高くないのも大きなポイントです。
そう自由度が高すぎると、どのように設定すると自然なのかわかりにくくなってしまいますが、琴葉茜・葵では、フレーズごとに設定できるようになっているのです。たとえば、音量の場合も、だんだん大きくする、という設定はできず、フレーズごとに音量を設定するようになっているのです。実際、しゃべる際にも、ある単語だけを大きくしゃべるということはあっても、だんだん大きくとか、だんだん小さくというしゃべり方は普通しませんからね。
もちろん、従来のVOICEROID+と同様に、イントネーションの設定ができるのも重要な機能です。しかもこのVOICEROID+がいいのは、高いイントネーションと低いイントネーションの2種類だけで、上げるか、下げるか、高いままか、低いままか、の変化しかないのです。これも先ほどの音量と同様に自由度が高すぎると、非常に設定が難しくなるのは、VOCALOIDをしゃべらせる大変さからも分かると思います。
そのほか、ポーズを入れることは可能ですし、そのポーズの長さも自由に設定することも可能。また、イントネーションや読み方を設定したうえで、必要に応じて単語を登録することができるのも便利なところです。
なお、登録するまでもない場合、ルビ(ふりがな)を振るということもできるのですが、この機能についてはシステムの都合上、標準語版である琴葉葵のみのサポートとなっているようです。
ちなみに、もうひとつ従来のVOICEROIDシリーズと違う点があります。それはNGワードがなくなったということ。そう東北ずん子や鷹の爪 吉田くんなどには、入力してもしゃべってくれない言葉がありました。が、今回の琴葉茜・葵には、そうした制限がなくなったので、喜ぶユーザーもいるかもしれませんね!?
※初出時、「結月ゆかり」、「民安ともえ」はNGワードがある旨の文章になっていましたが、これらもNGワードはありませんでしたので、修正しました。
このようにしゃべらせた結果は、WAVファイルとして保存することが可能なので(サンプリングレートは22.05kHzでモノラルになる)、ビデオ作品のナレーションに用いるとか、音楽作品に組み合わせて利用するなど、使い方はいろいろ考えられそうです。
さらに、これまでのVOICEROID+になかった機能として、音声出力先のデバイスを選択できるようにもなっています(ASIOはないようですが…)。
画面表示のレイアウト変更が可能で、キャラクタ表示をなくしたり、 音声チューニング設定を非表示にできる
さて、ここまでの内容を読んで、「うちの東北ずん子にも関西弁をしゃべらせてみたい」とか、「結月ゆかりにも、フレーズごとに音量や抑揚の設定をしたい」と思う方もいると思います。しかし、残念ながら、そうしたシステムのアップデートというのはできないようです。それは茜と葵の関係からも分かるように、システムとライブラリが完全に一体化しているので、システムだけをアップデートするということはできないみたいなんですね。
映像編集ソフトのMoive Pro MXとのバンドル製品も登場
このようにVOICEROID+はキャラクタによって機能に違いはありますが、声の雰囲気にかなり違いがあるのが各製品の最大の特徴。気に入った声の製品を選ぶというのがよさそうですね。
【製品情報】
VOICEROID+ 琴葉茜・葵
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