以前にも紹介したことがあった日本語を自然にしゃべらせることができるソフト、VOICEROIDに、新たなキャラクタ「東北ずん子」が9月28日に登場します。7月にAHSの尾形社長と話をしたときに、初めてその名前を聞いて、「何だそれ??」と思ったのですが、いろいろな意味で面白いソフトなのです。
このかわいい萌え系キャラクタの東北ずん子のVOICEROIDの声優を担当しているのは、アニメ「けいおん!」のドラム担当、田井中律役で有名な佐藤聡美さん。また以前のVOICEROIDと比較すると音声合成エンジンが大きく進化し、より自然にしゃべれるようになると同時に、かなり表情豊かなイントネーションがつけられるようになっているのです。ややDTMの本筋からはずれるテーマではありますが、とっても楽しいソフトなので、ちょっと紹介してみましょう。
9月28日に発売される「VOICEROID+東北ずん子」
そもそも、この東北ずん子というのは、SSSという会社が東北復興支援の意味もあって生み出した「ずんだ餅」をモチーフにしたキャラクタ。すでにAndroid用のウィジェットも登場しているのだとか…。そんな中、東北ずん子をしゃべるキャラクタにしようという話が持ち上がり、仙台出身の尾形社長率いるAHSに声がかかり、実現へと動き出したのだそうです。
そこで検討されたのが、ずん子の声の元となる声優を誰にするかということ。いろいろと議論された結果に決まったのは、やはり東北出身という佐藤聡美さんだったそうです。
私がそのVOICEROID、東北ずん子の声をはじめた聞いたのは、以前、AHS生放送に出演させてもらったときです。まだサンプリングした声データの編集中で、アルファ版という状況だったのですが、とっても滑らかにしゃべるのには驚きました。そうこんな感じです(笑)。
でも個人的にもっと驚いたのは、その声が、けいおん!の律ちゃんとは全然違うこと。律ちゃんといえば元気いっぱいの男気ある女の子というイメージですが、こちらはふんわりしたカワイイ声なんです。というより、現在オンエア中のアニメ「氷菓」の「千反田える(ちたんだえる)」とソックリな声じゃないですか! まあ、なぜそんなことに私が詳しいのか、なんてことは横に置いておき、とにかく東北ずん子のキャラクタイメージにピッタリな声、しゃべり方になっていました。
尾形社長には「完成したら、ぜひ使わせて!」とお願いしていたところ、先日最終マスターが上がった、ということで、送ってきてくれました。というわけで、みなさんより一足早く使ってみました。
以前からVOICEROIDの「民安ともえ」や「結月ゆかり」は使っていたので、使い方やUIなどはよく知っていましたが、今回、改めて東北ずん子をインストールしてみると、基本的な使い方は同じながら、さまざまな点で変わっていました。とはいえ、とりあえず、しゃべらせてみることにしました。
せっかくなので、東北ずん子のホームページにある、ずん子の背景に関する文章をコピーしてVOICEROID画面の上にペースト。このまま「再生」ボタンを押した結果が以下のビデオです。
すごいですよね。このとおり、漢字も含めてしっかり読むことができ、イントネーションもハッキリとした完全な日本語です。VOCALOIDのように、ひらがなで入力しなくていいので、その辺にあるWebの文章などを貼り付けるだけで、しっかりと読んでくれますよ。東北ずん子だから、東北弁なのか?と思っていたのですが、普通に標準語なんですね。
もっとも、どんな文章でも、正しいイントネーションになるとは限りません。違和感があるときは画面下のフレーズ編集で調整すれば、簡単にキレイな日本語にすることができ、それをフレーズや単語として登録していくこともできます。
基本的にはイントネーションが「上がる」・「下がる」・「同じ」かという3つの組み合わせと、文字と文字を繋ぐか切るかを設定するだけで、ほぼどんな日本語でもキレイなイントネーションに仕上がるのです。VOCALOIDの調教などから考えると、その簡単さが不思議に感じてしまいますね。たとえば、先ほどの文章、最後の1文だけちょっと違和感があったので、調整してみるとこんな感じです。
この辺までは従来のVOICEROIDでも同じでしたが、違うのはここから。さらにキレイなしゃべりにするための仕掛けがいろいろと追加されているのです。
抑揚パラメータをいじることで、イントネーションをいろいろと変化させることができる
まずは音声効果というタブを開いてみると、音量、話速、高さ、抑揚という4つのパラメータが現れます。この中で新しいのが抑揚。標準で1.0ですが、まったくイントネーションがないロボットボイスのような0.0から、かなり抑揚のある2.0まで選択できますが、設定によってかなり違った雰囲気になるのが以下のビデオからも分かると思います。
またポーズというのも新たなパラメータ。これは間の空け方をmsec単位で設定するもの。普通はデフォルトのままでいいと思いますが、文中、文末、開始ポーズなど細かく設定することも可能となっています。さらに記号ポーズというのを設定しておくと、文中にポーズ記号を置くことで、それにあった間を作ることができるというわけです。
ちなみに、すでに民安ともえや結月ゆかりなどのVOICEROIDを持っている人が、東北ずん子を入れても、VOCALOID Editorのようにエディタが新バージョンに変わるというわけではありません。それぞれ、ひとつずつのソフトとして完結しているため、変化はないようです。
そのほか、VOCALOID版の結月ゆかりにも入っていたexVOICEという、オマケのWAVファイルも収録されているのもポイント。東北ずん子のexVOICEは、結月ゆかりのような、ため息やブレス、セクシーボイスといったものではなく、人名、数・単位、地域、日時といったものなっています。
と、ここまでが、VOICEROID本来のしゃべるための音声合成の話。でも、これを使って歌わせた作品を作っている例も少しずつでてきているようです。具体的なには、たとえば以下のような作品です。
これは、VOICEROIDの月読アイを使った作品ですが、どうすればこんなにうまく歌わせられるのかは、ちょっと研究中。おそらくMusicMaker MXのリミックスエージェントやエラスティックピッチなどの機能を使うと歌ってくれると思うのですが、何かいい方法が編み出せたら、また紹介してみたいと思います。