Cubaseを使ってライブハウスから即音楽配信を行う、即レコLIVEがスゴイ

先日「リハスタ入って、いきなりレコーディングできる即レコを体験してみた!」、「レコ24はCubaseと3台のオーディオIFで構成されていた」という2つの記事で紹介した即レコ24。その取材の際、ヤマハの人にシステムの説明などをしてもらったのですが、その時にちょっと聞いたのが、「即レコ24とまったく同じシステムをライブハウスに導入して、音楽のストリーミング配信を行っている」という話。

やはりCubaseを核にしたシステムらしいのですが、こちらはライブで演奏する曲をそのままレコーディングしていき、1曲終えるごとに、即、サーバーにアップロード。ライブハウスに来れない人でもほぼリアルタイムにライブ演奏を聴けるようにする即レコLIVEというサービスなんだとか。なんか、スゴそうなシステムだけど、どんなものなのか、いまひとつピンときません。もう少し詳しく教えてほしいとお願いしたところ、「今度、東京・高円寺にあるJIROKICHIというライブハウスで、即レコLIVEの収録があるので、リハを見に来ませんか?」と誘っていただいたので、その内容についてレポートしてみましょう。見学したのは、7月19日に行われたバイオリニストの高橋香織さんのユニットによるセッションライブ「KAO’S! 夏の陣」です。
バイオリニストの高橋香織さんのユニットによるライブのリハーサルを見学してきた。ドラムはTHE SQUAREのオリジナルメンバーでもあった仙波清彦さん


最近、ライブが終わったら、すぐにその場でCD化して販売したり、配布したり……というサービスが増えてきています。PAからの音、リニアPCMレコーダーで収録した音を大急ぎで編集し、CD-Rに焼いてデュプリケート。最近だとUSBメモリーにコピーして…なんていうのも出ているようですが、いずれにしてもスゴイなぁ、と。今回紹介する即レコLIVEも、それと似たサービスですが、CDにするのではなく、ネットで流すもの。また、その作業がほぼ自動で行われているというのが大きな違いでもありますね。

だったら、USTREAMとかニコ生みたいなものなのか、というと、それともちょっと違います。映像の有無という大きな違いのほか、USTREAMやニコ生は、生放送の仕組みであるのに対し、即レコLIVEはCubaseにレコーディングし、それをミックスダウンしたものを配信しているんですね。だから、その後、何度でも再生することができ、聴きたい曲を1曲ごとに再生できるのです。

まあ、USTREAMやニコ生だって、アーカイブとかタイムシフトといった手段があるので、ユーザーからすれば似たようなものではあるのですが……。一方、即レコLIVEもiTunesのようなダウンロード型ではなく、AAC-128kbpsのストリーミングとなっていて、USTREAMなどと比較すると、映像がないだけに音質はかなりいいですね。

その背景には、単に配信のフォーマットだけでなく、レコーディング時のマイクのセッティング方法の違いや、24トラックのマルチでレコーディングしていること、配信専用にミックスを行っている点……などなど、いろいろな違いがあるようです。ちなみにAAC-128kbpsというのも、まだ試行錯誤をしているところで、今後ビットレートを変更する可能性もあるようです。確かに、Cubase上ではWAVの高音質でレコーディングされているわけだから、さらに高音質で配信するといったこともできますしね。

ヤマハに聞いたところ、現在、この即レコLIVEのシステムが置かれているライブハウスは3カ所。具体的には、高円寺のJIROKICHIのほか、同じく東京都内にある四谷天窓confort、それに名古屋のTOKUZOのそれぞれです。実は、まだサービス運営方法など、模索中・実験中とのことで、今後、新しい利用の方法や派生サービスも登場してきそうですね。

40年の歴史を持つ、都内のライブハウス、JIROKICHIへ取材に行ってきました

その3カ所のうち、一番最初にシステムが導入されたのが、今回取材に行ったライブハウス、JIROKICHIです。約40年の歴史を持つ、このJIROKICHIは座席数で定員45人、立ち見の場合だと60~70人という、小さなところではありますが、名だたるミュージシャンがライブを行う、名門です。

JIROKICHIでのリハーサル風景。メンバーは高橋香織さん(v)、三好”3吉”功郎さん(g)、
一本茂樹さん(b)、吉森信さん(k)、仙波清彦さん(dr) 

中に入ってみると昭和の感じも漂う、昔ながらのライブハウスという雰囲気であり、Cubaseのシステムがセッティングされている…といったデジタルな感じはまったくありません。ちょうど、リハの最中に見学をさせてもらいましたが、響きのいいサウンドで、それをうまく取り込んでいるようなのです。

JIROKICHIの店長であり、PAのすべてを取り仕切っているWAOさんこと、桑原和夫さんに話を聞いたところ「多少、即レコ用のバランスを調整することだけはしますが、やっているのはほぼそれだけ。PA操作をしていく上で、とくに面倒なことは生じていませんよ」とのこと。

JIROKICHIの店長で、PAのすべて、そして即レコLIVE操作も担当するWAOさん

確かにPAブースには、ミキサー卓が置かれていて、WAOさんはこれを操作されていたのですが、目につくのが、iPadです。「本番最中、レコーディング開始時に、1回ボタンを押し、その後曲の変わり目にインデックスというボタンを押す、それだけの操作はするのですが、これで配信ができるのですから、便利ですよね」とおっしゃいます。

先日、リハスタで見た、即レコ24のiPad画面とはちょっと違いますが、考え方はまったく同じですね。つまりiPadに表示される簡易画面を操作すると裏でCubaseが動いてレコーディングしたり、ミックスしたり、アップロードしたり……ということがすべて自動で行われるのです。

PA用のアナログミキサー卓の向う側には、レコーディングやアップロード操作のためのiPadが…

ヤマハの担当者に確認したところ、ここも、まったく見えない奥の場所にMac Book Proとバックアップ用のMac Miniが設置されていて、ここで動作するCubase 6をiPadから動かしているそうです。またレコーディング用に、SteinbergのUR824が3台と、モニター用にさらにもう1台と計4台のUR824が接続されており、それらがコンソールの下に設置されているのを確認することができました。

所狭しと設置されていた4台のオーディオインターフェイス、SteinbergのUR824

WAOさんから、「ちょっと聞いてみますか?」と手渡されたヘッドホンを耳にしてみると、演奏中のサウンドが非常にキレイな音で聴こえてきます。「これが即レコLIVE用のミックスで、PA用とは別なんですよ。このリハの段階で多少バランスを調整するようにはしていますが、本番中はまったく触らないんです」と話してくれました。

もちろんマイクはPA用もCubase用も同じものを使っており、それを分岐させています。またPAには使わない、会場の雰囲気を録るためのエアマイクが天井にステレオで2本設置されており、これがUR824へと行っているようですね。

天井に設置されていたステレオのエアマイク

リハ途中で会場を失礼し、本番中自宅から即レコLIVEのサイトにアクセス。この即レコLIVEのサイトはOK Musicのサービス内にあるようで、OK Musicでの会員登録をした上で、カードやウェブマネーなどで支払う形になっています。

即レコLIVEのサイトトップ

ちなみに、今回買ってみた高橋香織さんの今回のユニットのライブは、全12曲・約2時間というものでしたが、これを丸ごとで980円。1年間は聴くことができるようです。とりあえずは各曲とも無料で45秒は再生可能ですので、音質チェックはできると思いますよ。この際、オーディオインターフェイスやUSB-DACなどを通して聴いてみると、その音質の良さは体感できるはずです。

確かに1曲終わるごとに、アップロードされていくので、数分遅れでリアルタイムに聴くことができました。また、MCも含めてすべて配信されているので、ライブの雰囲気は存分に味わうことができるのも楽しいところです。このライブ最中に次々とアップロードされている際には曲名表示はありませんでしたが、翌日確認したら、しっかり入っていました。この件は、WAOさんにも聞いていたのですが、ライブ終了後にPCの管理画面を使って曲名の設定などをしているそうです。

購入すると、PCやスマホでAAC 128kbpsでのストリーミング再生ができる

当日のライブの配信サイトはこちら > 高橋香織 KAO’S 夏の陣! @Live Music JIROKICHI

まさに新世代のライブ配信サービスであり、普段なかなか行くことのできない遠隔地で実施される貴重なセッションライブを自宅でも楽しめるという、嬉しい仕組みです。今後こうしたサービスが広まっていくと、音楽ファンとしても嬉しいし、どんなサービス展開がされていくのかDTMの観点からも楽しみなところです。

【関連サイト】
即レコLIVE (OK Music)
即レコ24
Live Music JIROKICHI
四谷天窓.comfort
名古屋Tokuzo-得三- 

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