海外ではそれなりのシェアを持ってきたエントリー向けのDAW、Mixcraftというものをご存じでしょうか?オーディオ、MIDI、ループシーケンス機能、またエフェクトやプラグイン音源など一通りの機能を備えたこのMixcraft、これまで国内では流通していませんでしたが、ダウンロード版があったため、一部のマニアユーザーの間では使われていたようです。
そのMixcraftの新バージョンで日本語対応したMixcraft 6が7月28日、ディリゲントから発売されます。標準版のMixcraft 6が9,980円、プラグイン機能がより充実したMixcraft Pro Studio 6が19,800円という低価格な設定のこのソフト、一足先に使うことができたので、どんなDAWなのかを紹介してみましょう。
実売価格9,800円程度のDAW、Mixcraft 6にはソフトシンセやエフェクトなどが数多く搭載されている
Mixcraft 6はアメリカのAcousticaという会社が開発したWindows用のDAWで、主にエントリーユーザーをターゲットとしたソフトです。これからDTMを初めてみたいという人、楽器はまったく弾いたこともないけれど音楽制作にチャレンジしてみたいという人でも分かりやすく使うことができるし、ギターならちょっと弾けるといった人には、さらに楽しく使っていくことが可能です。
このMixcraft 6を使う上で、まず最初の大きなポイントとなるのがループシーケンス機能です。Mixcraft 6には標準で4949種類のループ素材と1644種類の効果音が同梱されているので、その中からキーワードで絞りこみながら、気に入ったドラム素材、ベース素材などを選んで、トラックに並べていくだけで、本格的なサウンドを作っていくことができます。ここには音楽の知識もPCの知識も必要ありません。ただブロックを並べていくような感覚で操作していくだけで、ドラム、ベース、ギターなどのループ素材を並べていけば、自動的にタイミングがぴったり合ってくれます。
膨大な数のループ素材が収録されており、これをトラックにドラッグするだけで曲を作っていくことができる
ループ素材のジャンルも多岐に渡っています。ブルース、ファンク、80年代シンセロック、アンビエント、DUBSTEP、ジャズ、ラテンロック……、要するに何でも入っているわけです。これだけのループ素材セットを購入すれば、それだけで1万円程度はするので、すぐに元は取れそうですよ!
ループ素材を組み合わせてできたトラックに重ね合わせる形でボーカルをレコーディングしたり、ギターを重ねていくということも簡単にできます。たとえばボーカルをレコーディングする場合、リバーブをかけたり、イコライザ、コンプレッサなどのエフェクトをかけることで、かなりカッコいいサウンドに仕立てていくことも可能です。もちろん、エフェクトの使い方なんてまったく分からないという人でも大丈夫。プリセットが数多く用意されているので、たとえば「Vocal Rock Ballade」、「Vocal Arena」なんていうのを選べば、それに最適なエフェクトがセットされるのです。
1トラック目にドラムループを並べ、2トラック目にギターをレコーディングしていく
一方、ギターを接続する場合、本来ならギターにエフェクターを接続し、それをギターアンプに突っ込んで、そのアンプから出る音をマイクで拾ってオーディオインターフェイスを通して録音というのが本来の形だけれど、ここにはアンプシミュレータが搭載されているので、これを使えばOK。Marshall風なロゴのアンプを立ち上げて利用すれば、なかなかいい音で録れますよ。
DAWにおいてもう一つ重要な機能がMIDIシーケンスによる打ち込み機能です。このMixcraftにはピアノロールでのMIDIシーケンス機能が搭載されているので、これを使いマウスで1音1音入力していくことも可能だし、USB-MIDIキーボードを持っているのなら、それを利用することで、リアルタイム入力していくことも可能です。
PCのキーボードを鍵盤代わりにするバーチャルMIDIキーボード
ここで細かな機能までは説明しませんが、クォンタイズやヒューマナイズ、ベロシティの調整……と一通りの機能は揃っています。決して高機能とはいえませんが、とりあえず困ることはないと思います。なお、USB-MIDIキーボードがない場合、バーチャルMIDIキーボードというものが用意されており、パソコンのキーボードを鍵盤として使うこともできるようになっています。
このMIDIシーケンス機能において、Mixcraft 6がすごいのは、搭載しているソフトシンセが豊富で、豪華であるという点です。標準版であるMixcraft 6の場合、11種類。上位版のMixcraft Pro Studio 6になると計14種類のソフトシンセが搭載されているのですが、ちょっと紹介してみましょう。
まずはMinimoogをエミュレーションしたMinimogueVA、Prophet5をエミュレーションしたMessiahも秀逸です。またHammond B3オルガンをエミュレーションしたVB3 Organ、RolandのTB-303をイメージさせるAlien 303 Bass Synthesizerといったものが標準版のMixcraft 6に搭載されています。
さらに、Mixcraft Pro Studio 6になるとYAMAHAのCS80をエミュレーションしたME80、MemorymoogをエミュレーションしたMemorymoon、そしてアコースティックピアノ音源のPianissimo……と、ここまでやるかというほどのソフトシンセのテンコ盛りです。
でも初心者ユーザーの場合、そんなビンテージシンセが入っていても使い方が分からない……と心配になるかもしれませんが、大丈夫。ユーザーはピアノやギター、ベース、ブラス…といった音色名を選択するだけでOKとなっており、それにマッチした音源が自動的に割り振られるのです。また初心者ユーザーにも使いやすいPCM音源も用意されているので、戸惑うことはないはずです。
一方、先ほどもちょっと触れたエフェクトのほうも数多く搭載されています。Mixcraft 6に18種類、Mixcraft Pro Studio 6には34種類も搭載されており、EQ、コンプ、リバーブ、ディレイ、フランジャー、アンプシミュレータ、ピッチチェンジ……と何でも入っています。ピッチ補正をするためのプラグインなども入っているのです。中でも上位版としての目玉はiZotopeのマスタリングエフェクトのiZotope Mastering Essentials。これがあれば、強力なマスタリングツールとして利用できそうですよ。
こうしたプラグインの充実具合を見た人の中には、「DAW本体はいいから、プラグインだけ欲しい」、なんていう人もいるかもしれません。そこで、これがほかのDAWで使えるかどうかを試してみました。
結論から言うと、使えます。すべてVSTおよびVSTインストゥルメントのプラグインであるため、ほかのDAWのプラグインフォルダ設定で「C:\Program Files(x86)\Acoustica Mixcraft 6\VST」とすることで認識されるのです。実際SONAR X2、Cubase 7のそれぞれで試してみたところ、利用することができました。ただし、プロテクトがあるのか、iZotope Mastering Essentialsだけは認識できませんでした。
この価格ですからね、プラグイン目当てで使ってみるというのもありだと思いますよ。
iPhoneやAndroidからMixcraft 6をコントロールできるようにするアプリ、Mixcraft 6 Remote
ところで、このMixcraft 6をリモートコントロールするためのiPhoneアプリおよびAndroidアプリがリリースされており、8月31日までは無料でGETできるとのことです。実際に試してみたところ、WiFi経由で接続でき、録音や再生、早送りなどのトランスポートコントロールができ、画面上でレベルメーターも見ることができました。楽器を演奏してレコーディングするような場合、これがあるとなかなか便利でした。9月に入っていくらになるのかは分かりませんが、Mixcraft 6を買う可能性があるのなら、早めに入手しておくのがいいかもしれませんね。
ちなみに、代理店のディリゲントからは日本語字幕入りのチュートリアルが公開されています。
まずはイントロダクションとしての概要紹介ビデオのようですが、今後、毎週1本のペースでチュートリアルビデオが公開されてるとのことですので、気になる人は要チェックですね。
【関連情報】
Acoustica Mixcraft 6(ディリゲント)
【リモートコントロールアプリ】
iOS版Mixcraft 6 Remote
Android版Mixcraft 6 Remote