iPhoneを録音デバイスとして利用する人も多いと思います。iPhone単体でもそれなりの音で録ることはできますが、さすがに内蔵マイクだと音質面で厳しいのも事実。外部マイクも複数種類発売されてはいますが、大きいサイズのものも多く、普段持ち歩くという人は少なそうです。
そんな中、わずか8g、また16gという小さなサイズながら非常に高感度でキレイに収録できるエレクトレット・コンデンサー・マイクロフォンとしてMicWというブランドのi-Series Microphoneなるものが先日発売されました。実は、このマイクのラインナップ、だいぶ以前から業務用の高感度マイクとして、プロの音響エンジニアなどの間では広く使われていたものなのですが、最近になり一般ユーザー向けに展開されるようになると同時にラインナップも広がっています。今回、発売元のエムアイセブン・ジャパンから楽器のレコーディングに使える2つのマイクを借りたので、これを試してみました。
MicWの超感度小型マイク、i456(上)とi266(下)
MicWというブランド、ご存じない方も多いと思いますが、BSWA Technologyという会社の100%子会社、MicW Audio社が展開しているものです。親会社であるBSWA Technologyはサウンドレベルメーターやオーディオテスト機器、リアルタイムアナライザーなど、音響測定機器の専門メーカーとして知られる企業で、そこで生まれたマイクをより広く展開するのがMicWのi-Seriesというわけなのです。
Galaxy Nexusに接続してもバッチリ使うことができた
エムアイゼブンによると、現在i-Seriesとして展開しているのは無指向性マイク、単一指向性マイク、ガンマイクなど7種類。すべてに共通するのはiPhoneやiPadなどに直接接続可能な4極ミニ端子になっているという点です。だからi-Seriesという名前になっているのだと思いますが、アナログ接続であるため、iPhone/iPadに限らず、Samsung GalaxyやNexus7/10、HTC DesireといったAndroidのスマホ/タブレット、CANONのEOS 5D/7D、SONYのα NEX-7、Nikon D7000などの映像撮影機能付デジタル一眼レフ、さらにはMacBookなどのPCでも利用することができます。
ただし、日本メーカーのスマホの場合、端子の極性が異なり、うまく使えないものもあるのだとか……。そうした仕様が統一されていないというのは、困った問題ですが、i-Seriesのオプションとして極性反転させるものがあるので、それを使えば使えるようになります。
さて、今回使ったのは重さたったの8gというi456( 実売価格12,800円前後 )と、より感度を上げた16gのi266( 実売価格14,800円前後 )の2つ。いずれも単一指向のもので、マイク本体と風防がセットとなっています。数字で8gや16gという、チャチなもののように思えるかもしれませんが、実際持ってみるとアルミボディーのかなりガッチリした丈夫なもの。確かに重量的には軽いのですが、そのものが小さいため密度が高く、それなりにズッシリした印象を受けるのが面白いところです。
iPhone5にi266を取り付けてみると、こんな感じに…
さっそくi266のほうをiPhone5に取り付け、レコーダーアプリで録音してみると、確かに非常にクリアなサウンドで録ることができます。当たり前ではありますが、本体内蔵のマイクとは次元の異なる高音質です。正直なところ、iPhoneのA/Dなんてヘッドセットのマイク用のものなので、大したことないはず、と思いこんでいましたが、マイクを変えると、ここまで高音質に使えるというのは新鮮な驚きでした。
iPhoneでこんなに音を繊細にキャッチできるのか、と驚いてしまった
単一指向性だけあって、狙った方向の音をしっかりと捉えてくれます。ステレオマイクではないから( そもそもiPhoneのヘッドホン/マイク端子の入力はモノだからステレオマイクは接続できない )、音の広がりというのは捉えることができませんが、かなり繊細な音まで捉えることができますよ。
先ほどはYAMAHAのCloud Audio Recorderという比較的単純なレコーダーアプリで録りましたが、たとえばMultitrack DAWやGarageBand、またFL STUDIO Mobile HDやMusicStudioといったマルチトラックのアプリを使えば、アコースティック楽器を多重録音していくといったことも簡単にできますよね。
i456に付け替えてみると、確かにより小さくなっていることが分かる
さて、マイクをi456に変えてみると、確かに感度が少し落ちますが、こちらも非常にクリアなサウンドです。また写真を見ても分かる通り、i266と比較して、グっと細くコンパクトなのも嬉しいところ。どちらを選ぶべきかは、なかなか難しいですが、感度重視ならi266、軽さ重視ならi456ということでしょうね。
i266もi456もこんなプラスティックケースに収まる形になっている
なお、メーカーで録音したデータではありますが、SoundCloudに、i266で録音したデータが公開されていますので、音の雰囲気がつかめると思います。
さらに、今回借りた製品ではありませんが、 無指向性のマイクであるi436のデータもあるので、参考までに。
ところでi266もi456もプラスティックのケースに入った形で売っているので、ケースに入れて持ち歩くのもいいのですが、 単体商品のほかにもi266 Kit( 実売価格18,800円 )、i456Kit( 実売価格16,800円 )というものもあります。
アクセサリがセットとなったKitという形の製品もあり、価格は4,000円ほど高い設定になっている
こちらは、さまざまなアクセサリがセットとなっていて、これがなかなか便利なのです。具体的には、まずアルミのケース。マイクユニット自体、繊細なものなので、傷つけないように、このケースに入れて持ち歩こうというわけなのですが、これ、単なるケースではないんです。
ここにi456やi266を取り付けるとスタンドとして使うことができます。しかも、マイクスタンドに取り付けられるねじ穴が用意されているから、固定して使うといったことも可能なのです。
もちろんこのスタンドに取り付けた場合、iPhoneなどと直接接続するというわけにはいかないので、2mのケーブルが付属しています。さらに服などに留めることができるクリップも付属しています。これがあれば、ピンマイクとして利用することもできますよね。
洋服やネクタイなどにも留められ、ピンマイクとして利用するためのクリップも付属
またもう一つの付属品として10cmのスプリット・アダプター・ケーブルなるものもあります。こちらはiPhoneの端子をマイク用とヘッドホン用に分離するためのもの。そう、直接マイクを接続してしまうと、音をモニターすることができなくなってしまうので、ヘッドホンも付けられるようにするための部品ですね。単純なモノではあるのですが、これが結構便利です。
4極 の端子をマイク用とヘッドホン用に分離するためのスプリッター
そうした広がりを考えると、やはりKitで購入するのがいいようにも思いますが、もちろんそこはユーザー次第。iPhoneを簡単に高音質録音デバイスに変身させるためのMicW i-Series、小さくて便利で非常に強力な武器として使えるため、利用するユーザーも増えていくのではないでしょうか。