毎月のように通っているシンセバーですが、先日その会場で、ふと、あの氏家克典さんから声をかけられたんです。「すごく面白い物理モデリングのギター音源があるんだけど、使ってみない?」と。そう氏家さんがやっているMusic Track内のネットショップ「メディアウェーブ」で扱うようになったというのです(※2020.9.10追記 その後取り扱い先がbeatcloud.jpに変更されています)。
1つ提供いただけるということだったので、もちろん2つ返事でOKしたわけですが、これはフランスのXhunAudio(ヒュンオーディオ)という会社が開発したIronAXE(アイアンアックス)というVSTiのプラグイン音源。なかなか面白い音源だったので、ちょっと紹介してみましょう。
フランスXhunAudioのギター専用物理モデリング音源、IronAXE
物理モデリング音源という言葉をご存知でしょうか?最近、DTMの世界でもよく見かけるキーワードのひとつだと思いますが、一言でいえば「アコースティック楽器を、その構造からシミュレーションして、音を作り出す」音源のことです。
その物理モデリング音源を初めて知ったのは、約20年前にYAMAHAが発売したVL1という音源でした。当時47万円という価格でしたが、技術によってとんでもないことができるようになったんだな…と感激した覚えがあります。当然、そんな高いものは入手できなかったのですが、その3年後、それをそのままハーフラックサイズのDTM音源にしたVL70-mというものが58,000円で登場。これはすぐに入手して、いろいろ遊びました。まあ、最近あまり電源を入れることもなくなりましたが、今でも手元にありますよ。
さっき電源を入れたらしっかり動いてくれたYAMAHAのVL70-m
当時この物理モデリングをYAMAHAでは「バーチャル・アコースティック」=VA音源と呼んでいましたが、最近はそうしたものもソフトシンセでできるようになっているんですよね。
エレキギターをアコースティック楽器と呼んでいいのかどうかは微妙かもしれませんが、その構造やピックアップの電気回路を物理的にシミュレーションするというのがこのIronAXEなんです。
最大の特徴は、とにかくコンパクトであるということでしょう。いま、ギター音源もいろいろあるし、かなりリアルなサウンドが出せるものもありますが、その大半はサンプリング音源。そのため、高品位なものになればなるほど、大きなサイズになるのも事実。ファイルサイズで見れば、やはり単音色で見ても数十MB~数百MB。セットでインストールするから通常はGB単位というのが一般的ではないでしょうか?
ファイルサイズを見ると、14,205KB(14.2MB)と表示されている
それに対して、このIronAXEは、インストーラのサイズが8.1MB、インストールした結果でもたった14.2MBとまさしく言葉通りの桁違いのコンパクトさです。
実際、起動してみるとそのリアルすぎるサウンドには驚かされます。打ち込みでのギター入力をしたことのある方ならよくご存知だと思いますが、ギターをリアルに表現するのって非常に難しいですよね。というのも、ギターっていろいろな奏法を組み合わせながら弾くし、それによって音色を切り替えないといけないから、面倒でなかなかやってられない、というのが実際のところ。
でもIronAXEは、結構簡単にできてしまうのです。これはMIDIのキーボードで弾いてみるとよく分かるのですが、ちょっと面白いトリックが隠されているんです。そう、まずは鍵盤を演奏しながらモジュレーションホイールを動かすと、弦をミュートをかけたような音となり、ホイールの位置によってミュート具合を変化させることができます。
さらに低音のキーを押しながら弾くと、さまざまな奏法に切り替えることが可能になっているんです。たとえば、C#1を押しながらだとタッピング奏法に、D1を押しながらだと、パワーコードが弾かれる形になります。さらに、D#1ならマイナーコード、E1ならメジャーコード、さらにF#1なら弦を離してスライドダウンした状況を再現してくれるなど、普通はどう入力すればいいか、どの音色を選べばいいのか分からない奏法を簡単に再現してくれるんですね。
もちろん物理モデリング音源ですから、いろいろと物理モデルを変化させることも可能です。2ピックアップのテレキャスター風なモデルと3ピックアップのストラトキャスター風なモデルの大きく2種類があり、ピックアップをシングルコイル、ハムバッカーに切り替えたり、ピックアップの場所を移動させたりといったことが自在にできるのです。
ハムバッカーを3つ団子状に重ねるなど極端な設定も可能
実は私自身は、ピックアップが違うとどう音が変わるのかなど、よく分かっていなかったので、これを使っていじってみると、結構勉強になって面白かったです。
なお、楽器としての物理モデリングとはちょっと違うかもしれませんが、ギターアンプのシミュレーターやストンプエフェクトも数多く揃っているので、これらを組み合わせることで、ギターサウンドをIronAXEひとつで完結できるようになっているのです。
なお、現在のところWindows版のみで、Mac版は計画中とのこと。現状でも、フリーウェアなどと組み合わせるとMacのプラグインとして動かす方法はあるようで、XhunAudioのサイトにもやり方が記載されているので、興味のある方は試してみてはいかがでしょうか?
なお、その氏家さんによるIronAXEのデモビデオがとっても分かりやすいので、以下に掲載しておきます。ぜひ、その音を聴いてみてください。
【製品情報】
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