Windows 8が10月26日、発売になります。Windows 7がリリースされてからちょうど3年。ようやくWindows 7が定着してきたなと思ったところでのメジャーアップデートです。機能、性能が格段と上がっていった昔と違い、最近はOSのアップデートは「面倒なこと」という印象が強くなってしまいましたが、この仕事をしていると無視するわけにもいきません。
3月1日にWindows 8 Consumer Previewという評価版が無償公開されていたので、いつか試さなくては…と思いながら半年も経過してしまいました。このままでは、製品版が発売されてしまう、マズイ、と思い、重い腰を上げて先日ようやくインストールしました。そう、世の中的には、ほぼ最終版であるRTMの先行販売が法人向けに始められたというタイミングだったわけですが。これがDTMユーザーにとって、どんなものなのかという観点から簡単にレポートしてみましょう。
※追記
読者の方からもご指摘いただいたので、最新のEnterprise RTMの評価版をインストールしなおして改めて検証してみました。
Windows 8に採用された新ユーザーインターフェイス、Modern(旧称Metro)
Windows 8がどんなものなのか、についてはPC雑誌や各Webサイトでもいろいろとレポートされているので、ここで敢えて細かく説明をする必要はないと思いますし、実は私自身もよく分かっていません。ただ、簡単にいえばシステム的にはWindows 7をベースに、UIを大きく変更し、「Windows 8 Modern UI design」(これまでMetroと呼ばれていたUI)に変更され、従来のPCおよびタブレットPCで利用できるOSになった、というものです。
さっそくインストールしてみての第一印象は、「分かりにくい!!」というものです。おそらく慣れの問題はあると思うのですが、タッチパネルを強く意識したModern UIになったというのは、かなり違和感を感じてしまいます。確かにタッチパネルで操作するのであればいいのかもしれませんが、マウス操作のPCユーザーにとっては、無用のランチャーが加わり、しかもそれの使用を強要されているという印象を持ってしまいます。
従来のWindowsのUIとそっくりなデスクトップだが、スタートボタンがない
上は当初試したConsumer Preview、下が最新のRTM評価版
デスクトップ画面にすると、いつものWindowsの画面のようになり、一見普通に操作できるのですが、Windows 95以来馴染んてきたスタートボタンが無くなっているんですよね。最初はどうやって電源を落とすのかも分かず、コントロールパネルをどうやって開けばいいかも分からないなど、かなり戸惑いました。
従来UIモードなんていうのを用意しておいてくれればいいのですが、それもないんですよね。Windows3.1以来、ずーっとWindowsを使ってきましたが、ここまで分かりにく、使いにくいOSは初めてだな、というのが正直なところです。4、5日使ってみて、ようやく慣れてきましたが、やっぱり使いにくいです。
Windows 98、Windows Me、Windows XP、Windows Vista、Windows 7と続くなアップデートは、一つ置きにダメOSがある、などと言われていますが、まあ今回はそのダメな順番に当たるので、そういうことなのかな、なんて思ってもいます。
ただWindows Vistaのときのように、遅くて重くて使えない、ということはありません。スピード的にはWindows 7がベースに改良されているだけに快適ですよ。当初「Windows 8は8秒で起動する」なんて宣伝されてましたが、そこまで速くはないものの、Windows 7より微妙に速くなっているようにも思います。また、Windows 7で動作するアプリはほぼ問題なく動作するようなので、互換性の心配は基本的になさそうです。
とはいえ、いろいろと特殊なことの多い、DTM回りの周辺機器、つまりオーディオインターフェイスやMIDIキーボードなどは使えるのでしょうか?そして、ASIOドライバやMIDIドライバなどを多用するDTMアプリが本当に動くのかは気になるところです。
各ドライバとも、基本的にはWindows 7用のものを普通にインストールして使うことができる
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さっそく試してみました。試してみたハードウェアはSteinbergのUR28M、TASCAMのUS-200、RolandのQuadCapture、そしてPreSonusのAudioBox 44VSLの4つのオーディオインターフェイスとASIO4ALL。そしてRolandのUSB-MIDIキーボードのA-300Proです。
RolandのドライバはOSバージョンチェックによってはじかれる
基本的にどれも使えるようですが、問題となったのがRolandのハードウェア。これはドライバでOSのバージョンチェックをするため、インストーラを起動した時点ではじかれてしまうんです。無理やりインストールしようとしてみましたが、それもうまくいきませんでした。ただ、これまでRolandはどのメーカーよりも早くOSの発売日もしくはその翌日には新OS対応ドライバをリリースしていたので、まず問題はないだろうと思います。
もっともA-300Proの場合は標準ドライバモード(Advanced Driverをオフに設定)にすることで、ドライバをインストールすることなく利用することができるため普通に使うことができました。
一方、一番気になっていたのはAudioBox 44VSLについて。実はこれはUSB Class Audio 2.0に対応したオーディオインターフェイスであるため、MacやiPadではドライバなしに使うことができます。Windows 7はUSB Class Audio 1.0には対応していたものの2.0には対応していなかったため、Windows 8になって対応するのでは…と期待していたのです。が結果的にはダメなようですね。この時点でDTM、オーディオ用OSとしての進化点はない、と諦めました。
SONAR X1 Produciton Suiteは問題なく動作
一方、アプリのほうはどうか?こちらはSONAR X1 Production Suite、Cubase AI 6、ACID Music Studio 9のそれぞれをインストールし、ASIOドライバを設定して使ってみました。これに関しては、だいたい問題なく動作するようでした。
Cubase AI6でのASIOドライバ設定も問題なくできる
が、だいたいです。まあConsumer Previewというバージョンのせいなのか、私のマシン固有の問題なのかもしれませんが、どうも安定性がいまいちなんです。普通に使えてはいるけれど、ふと音が出なくなってしまうことがときどきあったりするんですよね。たとえば鍵盤でソフトシンセを弾いていて音が出なくなることがある、といった具合。原因はハッキリせず、しばらくすると音が出るようになったりするので、困ったものです。
※追記
その後、EnterpriseのRTM評価版を使いましたが基本的には何も状況は変わりませんでした。 ただなんとなく安定性は上がったようで、とりあえず音切れという現象はなくなりました。
発表されたばかりのACID Music Studio 9も普通に動作してくれた
私のところでは大丈夫だったのですが、ASIO4ALLを使っていると、スリープ復帰後に音が出なくなるといった方もいたので、この辺にも問題が潜んでいる可能性はありそうですね。
ASIO4ALLが不安定という話は出ていたが私の環境では問題なかった
※追記
さらに、読者の方からVOCALOIDについても検証してほしいという要望があったので、新たに入れなおしたRTMにおいて、VOCALOID3のMegpoid NativeおよびVOCALOID3 Editorをインストール。またVOCALOID2の初音ミクをインストールするとともに、2.0.12へアップデートして使ってみました。結果としてはまったく問題なし。Windows 7で使うのと同様、普通に使うことができました。
Windows 8上で動かしたVOCALOID3。とくに問題もなく普通に動作した
といったところが、半年遅れのWindows 8 Consumer Previewのレポートです。仕事柄、Windows 8を使わなくてはならないんだと思いますが、できることなら使いたくないですね。Windows 7が非常によくできた完成度の高いOSだったので、なおさらそう感じてしまうのでしょう。でも、新マシンを購入すれば必然的にWindows 8になってしまうのだから、ここは避けられないところ。これまであったようなダウングレードサービスを利用しつつ、Windows 8への従来UIの復活アップデートに期待したいところです。
※追記
今回試したマシンのスペックについて問い合わせがありましたが、これは以前「 Sandy Bridge対応PCでこの夏は節電だ!」で記事にしたマシンをそのまま使っております。
【関連情報】
ASIO4ALLサイト
コメント
初めまして。いつも藤本さんの記事を読ませて頂いてます。
疑問に思ったのですが、Windows8になってWindows標準音源のMSGSは省かれたりせずに残っているのでしょうか?さすがに音質改善はないと思いますが。
フリーソフトのDominoなどからDTMに触れる方にとっては、やはりMSGSはないと困りますよね・・・
結果は変わらないかもしれませんが、今の時期にレビューするのであれば3月に公開されたConsumer Previewではなく、6月のRelease Previewのほうがよかったのではと思います。
今の時期なら6月のRPより、RTMの評価版の方が良いと思います。
see)http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/20120821_554078.html
おっとそうですね、Enterpriseの評価版がありました。
ありがとうございます。
いま、Enterprise版のRTMダウンしてみました。
が、これのシリアルナンバーで出てこないのはなんででしょう…。
シリアルナンバーいらないんですね(^^;
いま無事インストールできたので、再検証中です。
それから、げんちゃんさん、MSGSは何も変わってないですよ!
Enterpriseの評価版はプロダクトキーは不要だそうです。
http://technet.microsoft.com/ja-jp/evalcenter/hh699156.aspx
インストール後 10 日以内にこの評価版のライセンス認証をオンラインで行う必要があります。 ライセンス認証を求めるメッセージが表示されます。 このソフトウェアにプロダクト キーは必要ありません。
masaoさん、ありがとうございます。
なるほど、そうなっていたんですね。
MSGSが変わらなかったと聞いてひと安心です。自分はもう使いませんが、やはりお世話になった音源なので。
QUAD-CAPTUREのドライバーですが互換モードでWindows7にしてインストールしてもインストールできませんか?
ジービーさん
ありがとうございます。もちろんやったんですが、ダメでした。
海外の掲示板などでもみんな同様のことを言ってましたね。
こればかりは、正式ドライバー待ちのようです。
いつも楽しく拝見させて頂いております。
DTMプラットフォームといえば8も大本命ですけど、ARM用のWindows8RTも気になる所ですね。
iPadに変わるDTMマシンとなるのか、個人的にはかなり期待しています。
SONAR RTとか出れば嬉しいんですけどね。
コッコさん
こんにちは。そうですね、ARMのWindows8は私も気になります。
が、いまのところ、ハードがないですし…。
考えてみれば、10年ほどまえ、Windows NTの時代にはx86だけでなく、PowerPCでも、Alphaでも動くOSだったんですよね。でも結局、x86しかアプリがなく終わってしまいました。なんとなく、そうなるのではという気もするのですが、どうでしょうか?
少なくともDAW系がARM対応のアプリを出してくるとは思えないですし…。もちろん、そんな動きが出てくるようなら、とっても楽しいのですが…。
まずは、対応ハードがどうなるかですね。AndroidマシンにWindowsがインストールできるようになったりするんでしょうか…。
モバイルDTMマシンだとやはりiOS系が強いですけどandroidはAPIの制約上やはりDTM用途だと厳しいですね。
もしWindows8RTのドライバ開発がOKであればUSBがあるのでx86 Windows用のオーディオインターフェイスやMIDIキーボードも使えるようになる可能性もありますし、外部メモリースロットもあるので大容量を活かして色んな音源を持ち歩いたり。MSのリファレンスタブレットが2万円弱なのでもし優秀なDAWとかがリリースされればiPadと戦えるかも・・・と淡い期待ですw
WindowsNTだと確かMIPSとかにも対応してますね。現代ではここまで太っ腹な仕様はできないでしょうけどできたら楽しそうですね。(Windows8に関してもRTはどっちかというとWindowsCE系列ですし)
ただAndroidマシンにWindowsCE7をインストールしている人は居たので時が解決してくれるかもです!
コッコさん
MIPS、すっかり忘れてました(^^; 懐かしい…
Androidもまだ可能性はあると思うんですよ。
先日かいた記事をご覧いただけたでしょうか?
http://www.dtmstation.com/archives/51801951.html
http://www.dtmstation.com/archives/51802099.html
ここにあるMusicSDKが広まってくれば、大きく変わるはずなので。
もちろんWindowsが来てくれるのは歓迎ですし、私自身、何よりWindowsに親しんできたので、嬉しいところですが、MicrosoftがDTM系に興味を持ってくることは期待薄ですし、各ソフトメーカーもモバイル系のWindowsには興味を示していないのを考えると、なかなか厳しいだろうな、と。
Music SDK!私も藤本さんの記事で知り、もちろん把握させて頂いてます!ここ最近音沙汰が無いのですっ飛んでました(^_^;)
ざっと調べて見たのですがまだ開発中なのですかね?これが製品化されればAndroidがDTMデバイスとして活躍してくれそうです。
ただそうなると画面の比率、解像度、スペックなどデバイス間の断片化が今後問題になってきそうです・・・自由度の高いプラットフォームゆえの性という奴ですね。
WindowsCE系は昔からソフト会社の取り込みができてませんでしたね。デスクトップWindowsと同列に扱ってHPのポケットPCやハンドヘルドPCを多用途で使おうとして試行錯誤してた時期が懐かしいですw 結局はソフトが無いために挫折しましたけどね。苦い思い出・・・高かったのに・・・
この流れをこのまま引き継いでしまうとモバイルWindowsは今後も苦戦しそうです。
あまり記事と関係無い話題でコメントを埋めてしまうのも忍びないのでこれまでに致します。藤本さんの豊富な知識と経験に改めて感服致しました。今後も楽しい記事をよろしくお願いいたします!m(_ _)m
かなり偏った、いい加減な知識ですが(^^;
ぜひ、また何か新しい情報などありましたら、教えてください!
よろしくお願いします。
私などはWinXPをベースにしてさらに機能を向上させたDTM用OSというカテゴリーでの音楽制作用専門OSをマイクロソフトに作ってほしいと思うくらいです。
さらにそれをインストールする前提でDTM用のノートPCをメーカーで作る・・・。この本体には標準でDTMの環境に必要な一連のアウトプットとインの端子が全て付いていて、DTMソフトをインストールしスピーカーをつなげるだけであとは標準仕様のまま(外部になんの音響関連の拡張も増設もなしに)かなり良いレベルの環境と音質でDTMがはじめられる、というもの。
そろそろそういう本体のみで専門特化しているノートPCは必要と思います。
DTM用OS上でレイテンシーなどの問題解決を図ればかなりよい環境が実現できるのではないか。普通の人の使用のOSでは解決が必要ない問題と思いますので。ただこういう専門特化したOSは普通のOSよりちょっと値段高そう・・・。
GumiTubeさん
お返事が遅くなって失礼しました。
そうですね、DTM専用OSが出てくるといいでしょうね。
ただ個人的には、XPよりもWindows7のほうが、DTM用途であれば、いいOSになっているように思っています。また発展途上であり、古いものとの互換性、とくにプラグインの互換性がイマイチなところはあるけれど、Windows7の64bitが一番よくできているように思っています。
そんなことはいいとしても、もうOSがでしゃばる時代じゃないですよね。もう、OSは主張しないでいいから、おとなしくしていろ、と。そう思っていしまいます。
Windows 8 導入し、正月休みで手持ちのSONAR7~X2を一から再インストールしようと行いました。
するとエフェクター類引き出そうとするもオーディオFXの表示が薄文字で起動してくれません。プラグインは読み込んでいるようです。
Windows 8 よりDirect X が使えないと聞きましたが関係有るのか・・
でもエフェクター類全滅。シンセOkでして・・
どこかの設定でヘマやっているのかわかりません。
取説見ても見つからず・・
R社おやすみ・・
正月SONAR三昧するつもりが(X0X)
もしよろしければ、見当が御存知ならば返信いただきたいです。
waveさん
こんにちは。私はWindows8に直接SONAR X2をインストールしただけなのですが、そこにおいては問題なくエフェクトも使えました。が、SONAR 7などはインストールしていないので、検証できていません。お役に立てずすみません。
明日になればRolandもサポートスタートするのかな??
でもエフェクトがダメでシンセがOKというのは何か変ですよね…。
御心配おかけしました。
削除したプラグインファイルがSONARかOSの履歴でインストール先にゴーストで現れていた様です。
ファイル名が似たり寄ったりですので気付きませんでした。
よってエフェクト名もゴースト状態だったようです(笑)
返答ありがとうございました。
ところでSONAR8.5以前はWindows 8 に対応しない理由とか御存知でしょうか?
各SONAR、音質にキャラがあるので使いたいし・・
ここでWindows 8 の処理速度の優位性を見てすぐWin8を購入しました。
当然SONAR7や8をWin8で使いたい!でも今の所R社では予定なし。
互換性で行けるのか?PCに負担掛けるのか?御存知でしたら教えてください。
waveさん
とりあえず、無事動いたようでよかったです。
さて、SONAR 8.5以前がWindows8に対応していない理由。
それはとっても簡単な話ではないかなと思っています。
細かく検証する時間がないし、そうしたニーズも少ないだろうから、サポート対象外にする、メーカーとしてごく一般的な対応ということなのではないでしょうか…。
だから、普通に使って使えるし、とくに問題はないのではないかと思いますよ。
ありがとうございます!安心♪
藤本さんの記事はよく読ませていただいています・貴重な情報をありがとうございます。。音楽で長いことを飯を食っているものです・・
僕はCUBASE5を WIN7上で使用していますが・・
WIN8になって 一番期待するのは タッチパネルなんです・
というのも マウスによる MIXERの操作に凄い不満を感じていましてね・ もともとアナログミキサーをいじっていた口なので。。。あの音楽的な操作感が最高と今も思っているしだいです・・
フィジカルコントローラーも DAWのバージョンアップなどにすべて対応していくわけでもないので 限界も感じているのですが・・ ミキサーだけでも 指で画面上でいじれるのが 一番と思っているのです・・
少なくとも 3つのフェーダーを同時に動かしたいですが\・・・
このタッチセンスはどの程度まで発達しているのでしょうか?
たとえばタッチセンスつきのモニターがあれば 僕の古いCUBASE5でもタッチセンスで MIXERをいじれるのでしょうか??