プラグインメーカーとして著名な、Waves Audio。マキシマイザのL2やピッチコレクトのWaves Tune、ダイナミクスプロセシングのMaxxVolume、コンボリューションリバーブのIR1……、プロのレコーディング現場などでも幅広く使われているので、雑誌やWebの情報で目にしたという人も少なくないはず。最近では、ついに64bit化したことが大きな話題になっていますが、このWaves Audioってイスラエルのメーカーだってことをみなさんご存知でしたか?
そのWavesでずっと音作りに携わってきたソフトウェア製品開発局責任者であるYoad Nevo(ヨアッド・ネヴォ)さんにメールでインタビューすることができました。Nevoさんは、プロデューサー・エンジニアとしてにPet Shop Boys、Sugababes、Girls Aloud、The Bangles、Air、Goldfrapp、Morcheeba、Bryan Adams、Duran Duran、Moby、Dave Gahan……といった多くの著名アーティストの作品にも携わってきたという人物でもあるんです。現在はロンドンに2010年に完成させた大型のプライベートスタジオ「Nevo Sound Studio London」を持ち、ここでエンジニアとして活躍しているようです。
Waves Audioのプラグイン開発者であるYoad Nevoさん
--Waves Audioでソフトウェア製品開発局責任者をされていたとのことですが、実際にはいつからいつまで在籍されていたのでしょうか?
Nevo:1996年から在籍していて、今も現役でWaves Audioの商品に関わっています。
--そもそもWaves Audioと関わるようになったキッカケなどがあれば教えてください
Nevo:Waves Audio社に入ることが決まった段階で私にはすでプロデュース、ミキシング、マスタリングの経験と知識を持っていました。その時、Waves社からコンサルタントおよび開発者としてのポジションのオファーがありました。
--Waves Audioのほとんどの製品に関わっているとのことですが、どのような関わり方なのですか?
Nevo:私は今現在リリースされているすべててのWavesの商品に携わっています。更に、Qcloneなどを含むプラグインは自分の名前で特許も取得しています。このプラグインは私が一から開発、デザインしたステレオサラウンドプロセッサーです。他にもGTR、superTap delay、H-Compressor、MPX tapeにも携わっていますし、現在のNevo Sound Studio Londonのメインコンソール、NEVEにも組み込まれているNLSも私の開発したプラグインの一つです。
多くのプラグインをまとめたバンドル製品も多数発売されている
--特に深く関わったプラグインがあるようでしたら、どのようなプロジェクトで、どのように開発が行われたのかを教えてください。
Nevo:私たちは基本的にチームでプラグインを開発していきます。どの製品にも細かいところまで妥協なく素晴らしいものを作るためにたくさんの時間を費やしています。時々、製品がリリースされるまで長期にわたる開発時間を要しますが同時にそれと比例するくらいのやりがいを感じています。
--現在Waves AudioのプラグインはMac、Windowsに対応するとともに、TDM、RTAS、AU、VSTなどさまざまなプラットフォームに対応しています。最近では64bit版も出てきたり、Avidの新プラグインフォーマットであるAAXにも対応を表明するなど本当に多岐にわたっていますが、これらプラットフォーム間で音に違いが出たりしないのでしょうか?
Nevo:どのサウンドプラットフォームもDTMプラグインとして使う上、数学的な構造(フローティングポイントに対するフィックスポイント)などが違うため、やはりサウンドプラットフォームによって音は変わってくると思います。しかし、それはほとんど理論上として存在する変化であってほとんど人間の耳で気付けるものではないですし、普段の使用ではまったく影響しません。
--もともと音響・音楽・技術という世界に踏み入れたキッカケはどんなことだったのですか?
Nevo:私は10代のころにギターを弾き始め、音楽の世界の虜になりました。 そして、すぐにこの世界でさらなる新しい発見やまだ出会ったことのない音楽があるということに気付きました。私にとってギターはその方法を見出せ、音楽理論、さらにエンジニアリングをも学べる楽器であり、紛れもなく今日の私のプロデュースに結びついています。
いま、Nevoさんが拠点としているNeve Sound Studio London
--Nevoさんのプロフィールを見ると「初期の試みは、レコーディングやミキシングに留まらず、自分自身で音声を分解したりつなぎ合わせたりと試行錯誤するようになる」とありますが、もう少し具体的に教えてもらえますか?とくに「音声を分解する」というのは、どうやって何をやったのでしょうか?
Nevo:私がギターを始めたころ、エレキギターを持っていましたがアンプがありませんでした。なので、なんとかそのギター本来の音をだそうと、持っていたスピーカやテレビ、テープレコーダーにつなげたりしていました。それから、ギターの中に入っているものを分解してみたり、ディストーションやエコーなどの他の物にもつなげてみるようになりました。その後、4トラックのレコーディングマシンやモノフォニックのJemシンセサイザーやギターストンプボックスを買い、リールテープを使って音と音をつないでレコーディングするようになりました。
Nevo Sound Studio LondonにはNEVEのコンソールをはじめ数多くの機材が入っている
--最近手がけられた作品をいくつか教えてください
Nevo:私は今、「These Reigining Days」のデビューアルバムのプロデュース、ドイツのバンド「Chima」のミキシング、そして他のポップ・ロックスの多くのマスタリングだけでなく、TYPのステージプロダクションにも参加しています。ぜひWavesのプラグインを使うとともに、こうした作品も聴いていただけたらと思っています。
--ありがとうございました。
【関連リンク】
Yoad Nevoホームページ
Nevo Sound Recording Studio | London
WAVES Audio