音楽、楽器の世界にはいろいろと新しい技術が投入されてきていますが、私が2011年で一番すごい発表だと断言できるのが、Rolandが9月15日に発表したV-Remasteringというもの。
Rolnadの研究所が生み出した新しいテクノロジーV-Remasteringが搭載された製品としては今年12月にR-MIXというアプリケーションがWindows用、Mac用に登場する予定になっています。また、R-MIXのエッセンス部分を取り出したiPad版も近いうちにリリースされる予定です。先日行われた発表会でR-MIXのデモをを見たのですが、ちょっとビックリです。
Rolandの新技術「V-Remastering」を搭載したR-MIX
V-Remasteringを言葉で表現すると「音楽を可視化し、直感的かつわかりやすくリアルタイムにコントロールする技術」となるのですが、こればかりは実際の動作をビデオで見るのが分かりやすいので、まずはこれを見てみてください。
手持ちのデジカメで録画したビデオなので、モノラルとなっているほか、周囲の音もかなり拾ってしまったため、多少分かりにくいところがあるとは思いますが、何をしているのかお分かりになったでしょうか?もし、分かりにくければ、英語ではありますが、Rolandのグローバルサイトでキレイなビデオを公開しているので、それを見るといいかもしれません。この中身について簡単に解説してみましょう。
画面中央にピラピラと表示されているグラフィックがありますが、これがV-Remastering技術の中枢部分であり、FFTの2次元?3次元?版といった感じのものとなっています。
このグラフィック、横軸がPAN=音の定位を表しているので、中央がセンター、右の音は右、左の音は左のほうに表示されます。また縦軸は周波数を示しており、上のほうが高い音、下のほうが低い音を表しています。さらに、このグラフィックには色がついていますが、白や赤が強い音、青が弱い音を表しているのです。
先ほどのビデオからも分かるとおり、音をリアルタイムに解析し、画面に表示させているわけですが、この音はステレオミックスのものなら何でもOKなのです。つまり手持ちのCDやネットから入手したMP3などを取り込むことができ(詳細は確認できていませんがMP3などは予めWAVに変換する必要があるかもしれません)、それを再生させると、このように解析されてグラフィカルに表示されるのです。
ちょっと見ていると雰囲気が分かってくると思いますが、たとえばボーカルは中央のやや上のあたりに定位していて、声が出ているときに赤く表示されます。この部分を四角く囲んだ上で、右側にあるフェーダーを下げていくと四角の外側が消えて、ボーカルだけを抽出することができます。反対に左側のフェーダーを下げると、ボーカルだけを消してキレイにカラオケを作ることができるのです。
昔からセンターキャンセルでカラオケを作るという方法はありましたが、これだとベースパートなどボーカルではない部分も消えてしまい、どうしても違和感があったわけですが、V-Remastering技術を使えばボーカル部分だけをキレイに消せるわけです。
枠の内側を消すとボーカルのないカラオケになる
さらに四角い枠を左に移していくと、そこにはギターの音が見つかります。それだけを取り出したり、ギターだけを消すといったことでき、同様に枠を中央よりやや右の下に持っていくとベースを操作できる……といった具合です。この四角い枠の範囲は自在に調整できるので、画面を見ながら目的の音だけを取り出したり、消したりすることとができるわけです。
こうすることでMIDIデータやDAWの生のトラックデータなどを使わなくても手持ちのCDからマイナスワン演奏を作り出すこともできれば、ソロパートだけを取り出すこともできるというわけです。
しかもR-MIXにはVariPhraseという技術が搭載されているので、ピッチを変えずにタイムストレッチをかけてテンポを変えるといったことができるます。たとえばギターの速弾きを取り出してゆっくり再生させれば、耳コピにとって超強力な味方になってくれそうですよね。
また先ほどのビデオの後半部分では、ボーカルだけにディレイをかけるといったワザも使われています。またこのビデオがモノラルであるため、音からは確認できませんが、ボーカルを取り出して、左右にPANを振るといったことまでできるのです。
さらに画面を見ると分かるとおり、画面下には2つのトラックがあります。ここには別々のWAVファイルを読み込んで、それぞれ別々にV-Remasteringでの処理をしながら、ミックスして再生することができます。たとえばV-Remastering技術を使ってある曲からボーカルだけを抜き出し、もうひとつのトラックにVOCALOIDで作ったボーカルを鳴らして合成してしまう、なんていう使い方もできそうです。
R-MIXは12月の発売で価格などは未定ですが2万円前後になりそうとのこと。またVariPhraseやオーディオとしての書き出し機能はないものの、V-Remasteringのスゴさを存分に楽しめるiPad版、R-MIX Tabはもっと安い価格で登場するとのことなので、まずはこちらを楽しみに待ちたいところです。
iPad版のR-MIX Tabも安い価格設定でリリースの予定
【関連サイト】
Roland製品情報「R-MIX」
コメント
コレだけの機能が出来て2万円前後とは、出来上がった音楽を分析したり再分解&再構成したい人にはぴったりのツールです。
ただ・・・凄い技術なことは確かですが、需要層の広がりが見えにくい。一部の傾向のユーザーにとどまるには惜しい技術。
DTMソフトの中に標準で組み込みするならそのDTMソフトが丸ごと話題になると思われるが。あとハード側で専用コントローラー欲しいです。作業早めに出来そうなパネルの。
ローランドさんはもうVシリーズの技術を発展させてシンセサイザーの超越的な進化形を一台にした楽器兼音楽制作機”STUDIOER(ストゥディアー、日本語的発音ではスタジア)”とか創っちゃってこういうツールを組み込み出来ればよいのになと思います。PCより動作安定するのではないか、と考える。そういえばシンクラビアってあったけれど・・・あんな感じの小さいのになるのか。
こんにちは。
3DCGの、「ボリューム・レンダリング」を連想しました。
お医者さんが、先ずCTやMRIで全身を撮影し、その後画像データ
を処理し、最後に特定の臓器や血管だけを表示させますが。
あんな感じなのでしょうか?
tkzさん
私も先日CTやMRIをやって画像を見せてもらいましたが、もっとはるかに直感的で分かりやすいと思います。CTとかはモノクロですしね。
これが面白いのはリアルタイムで音といっしょにうごくところです。
このビデオでは分かりにくい点もあったと思いますが、実物は楽しいと思いますよ。
モノラルでも使えるといいのですが、雑踏でのインタビューから声を抜き出すといった応用が考えられますね。
僕はDJでMIX作ったりしてるのですがボーカル抽出に今までは原曲同曲のインストが必要なフリーソフト「歌声リップ」などを使ってましたがそれでも綺麗に抜くことはできませんでした。これさえあればインストもアカペラも簡単且つ綺麗に抜けるので重宝すると思います!こういうのを待ってました!
初めて書き込みします。
この記事で「R-MIX Tab」のことを知り、早速アプリをダウンロードしようとしてみたのですが、現在日本では取り扱ってないとのことでした。
現在、このアプリを手に入れることはできないのでしょうか?
また、他に似たようなことができるアプリがあれば教えていただきたく思います。
最近、音楽を聴くときいろいろな音がどのように鳴っているのかにものすごく興味がいきます。その時に、このアプリのように聞きたい音だけを聴くことができれば、もっと曲についての理解が深まるような気がするので、そのためにこのようなアプリが欲しいと思っています。
よろしくお願いいたします。
バナナさん
残念ながらR-MIXはなくなってしまいましたね。以前
http://www.dtmstation.com/archives/51932355.html
この記事でSound it!にほぼ同等の機能が盛り込まれたことを記事にしています。こちらはPC用ソフトですが、搭載されているので、試してみてはいかがでしょうか?
ありがとうございます。
こんなに早く返事がいただけるとは思ってませんでした。
ご紹介のページ読ませていただきます。