4月末に発売されたRolandのオーディオインターフェイス、TRI-CAPTURE。これはEDIROLまたはCakewalkブランドで出ていたUA-4FXの後継モデルとして登場した製品で実売15,000円前後というもの。発売される2ヶ月ほど前にAV WatchのDigital Audio Laboratoryで紹介記事を書いたところ、結構いろいろなところで反響がありました。
ただ、そのときはプロトタイプを触らせてもらった程度で、実機を使ってのレビューではありませんでした。一方、いま改めてGoogleで検索しても、TRI-CAPTUREのレビュー記事ってほとんど見かけないんですよね。タイミング的に考えてAV Watchに改めて書くというのも何だし……、ということで、こちらDTMステーションでチェックしてみたいと思います。
RolandのTRI-CAPTUREを使ってみた
ニコ生やUstreamでの放送現場に行くことがよくありますが、そこで非常によく見かけるのがUA-4FXです。ある意味、生放送のデファクトスタンダードともいえる存在になっているわけですが、TRI-CAPTUREを使ったら、もうUA-4FXには戻れないだろうなと思うほど、生放送用にうまくできた機材なんです。
TRI-CAPTUREはUA-4FXの後継機
基本的なスペックを紹介すると、これはUSB 1.1対応のオーディオインターフェイスで、2IN/2OUTというシンプルな仕様。サンプリングレートは44.1kHz、48kHz、96kHzの切り替えとなっており、96kHzでは再生のみか録音のみの一方通行運転となるため、通常は44.1kHzか48kHzで使用する形になります。
2INとはいえ、3系統の入力があるというのが「TRI」たる所以。1つ目はマイク、2つ目がギター、そして3つ目がAUXです。マイク用にはキャノン端子が用意されていますが、キャノン-標準ジャックの変換ケーブルも付属しているので各種マイクの接続が可能。ファンタム電源スイッチもあるので、コンデンサマイクも使えます。
3系統の入力を持つTRI-CAPTUREのリアパネル
またギター入力は標準ジャックのライン入力となっていてHi-Zのオン/オフのスイッチがあるため、ギター以外のモノラル入力でも使うことが可能です。そして、AUX入力はRCAピンジャックのステレオとなっています。では、これをどう切り替えるのでしょうか?
まずマイクはINPUT1、ギターはINPUT2と割り振られており、それぞれの入力レベルを動かせばOKです。いずれもモノラルなのですが、センターに定位しているというのが、ほかのオーディオインターフェイスとは異なる大きなポイントです。またこれら2つのみを使う場合は、REC MODEを「MIC/GUITER」としておきます。
一方、AUX入力はINPUT3に割り振られていて、これのツマミでレベル調整するのですが、REC MODEを「ALL INPUTS」に切り替えないと使えないようになっています。「ALL INPUTS」という名称からも分かるとおり、この場合はマイクもギターもAUX入力もすべてミックスされて入力されるようになっています。たとえばiPodの出力をAUXにつなげば、ここでカラオケを流しながら、歌ったりギターを弾いたりということができますよね。
なお、この入力はレコーディングソフト、ニコ生やUSTREAMなどの放送ソフトへと送り出されるのですが、ソフト側でモニター返しをしないと入力音をヘッドフォンで聴くことができません。これをモニターしたい場合には「INPUT MONITOR」をオンにすればダイレクトモニタリングできるようになります。
しかし、それだけではありません。TRI-CAPTUREの面白い特徴というか非常に便利なのは「LOOP BACK」というモードが用意されていることです。これはTRI-CAPTUREで再生する音をループバックさせてソフト側に送り出すというもの。たとえば、PC上でプレイヤーソフトを鳴らすとか、ゲームをはじめとするアプリケーションを鳴らした場合、その音をそのまま録音したり、放送したりすることが可能になるのです。しかも、この場合、前述のINPUT1~3もすべてミックスできるため、PC側も含めれば4系統さらにはそれ以上の入力があると考えてもよさそうです。つまり、先ほどのiPodの代わりに、PCに入っているMP3ファイルをWindows Media PlayerやiTunesで再生して、それを放送することもできてしまいます。
LOOP BACKモードにすることでアプリの再生音を放送できる
これまでPCが出す音を録音したり放送したりするのって、簡単そうで結構複雑な配線が必要だったのですが、これならとても便利ですよね。とくに、どこか出先で放送するなんていうと、どう配線すればいいか混乱したり、必要なケーブルやミキサーがない…などと慌ててしまいそうですが、TRI-CAPTUREならその点安心です。いずれにせよ、この小さなTRI-CAPTUREひとつでたくさんの機材と接続することができ、ミキサー的に使うことができるというのは、非常に大きなメリットだと思います。
UA-4FXと比較したとき、なくなっている機能もあります。それがFX機能、つまり各種エフェクト機能です。リバーブやEQ、アンプモデリング機能が使えたので、それがよかったという人にとってはTRI-CAPTUREでは機能不足ということになってしまいます。この辺の目的だけはしっかり確認しておいたほうがいいかもしれません。とくに、ボーカル用として使いたい人で、リバーブ機能が必須という人はTRI-CAPTURE単体ではできないので、そこは注意するようにしてください。
ちなみに、いつもAV Watchでやっている音質テストをASIOドライバを用いて44.1kHzのモードでテストしてみました。上位機種のQUAD-CAPTUREなどと比較すると、やはり音質は落ちてしまいますが、放送用のデバイスと捉えれば十分すぎるほどのクオリティーといえそうです。
RMAAでのテスト結果
「DTMステーションなのに、何で生放送の話なんだよ」という方もいるとは思いますが、ニコ生の「歌ってみた」とか「演奏してみた」も広い意味でDTMと捉えることもできるわけですし…。
もうひとつの秘密兵器、SONAR X1 LEについては、また改めて紹介する予定です。