いろいろなメーカーから面白い製品が数多く発表されて盛り上がっているドイツのMusikmesse 2011。そこで本日4月6日に発表されて話題になっているひとつがBOSSのポケットサイズのMTR、BR-80です。
現行のMICRO BRの後継となる製品なのですが、驚くほどの機能てんこ盛り。誰がこの機能全部使いきれるのか?と思ってしまうほどですが、その機材を先日ちょっぴり触らせてもらいましたので、簡単にレポートしてみたいと思います。
このBR-80は現行のMICRO BRとほぼ同寸のポケット電卓サイズ。基本的には従来機種と同様にMTR主体の機材ですが、4トラックから8トラックへと拡張されたため、その自由度が大きく上がり、まさにどこでも手軽に多重録音ができる機材となっています。もちろんBOSS=Rolandお得意のVトラックに対応しているため64Vトラックが扱えるわけです。
サイズ的には現行のMICRO BR(上)とほぼ同寸のBR-80(下)
比べてみると分かるとおり、大きさは変わらないものの、2行のキャラクターベースの液晶表示から128×64ドットの液晶ディスプレイに変わるとともに、液晶右側にジョグダイアル&十字キーが搭載されたため、操作性は格段にアップしています。以前MICRO BRを使ったときには、ちょっと手探りで操作している感じがありましたが、BR-80だと違和感なく操作することができました。
また。現行のMICRO BRはオマケのモノラルマイクが内蔵といった感じだったのが、今回はしっかりしたステレオコンデンサマイクが搭載されたため、音質的にもこれだけでそこそこの音で録れてしまうのも大きな特徴。しかもその音が16bit/44.1kHzの非圧縮・リニアPCMで録音できるのです。24bit/48kHz対応だったりしたらもっとよかったのに…なんて思わないでもありませんが、誰もが手軽にCDクォリティーで楽しめるという意味では、かえってこれでいいのかもしれませんね。
またMICRO BRで不満だったのはSDHCに対応しておらず、最大1GBのSDカードまでしか扱えなかった点ですが、こちらは32GBまで扱えますから、メモリー容量の点でも心配ないようです。
現行のMICRO BRにも簡単なリズムマシン機能はありましたし、それなりによかったのですが、今回はそのパターンが増えただけでなく、リズムデータをスタンダードMIDIファイルでPCから転送可能というのも画期的。下手に小さい機材でチマチマとパターンを組むよりずっと効率的ですからね。
と、ここまでがMTR的な機能ですが、これはBOSS製品なので当然ギター入力があるわけで、ここでCOSMテクノロジーによるさまざまなエフェクトが使えるようになっています。細かく試したわけではないですが、GT-10クラスのエフェクトとのことですから、まさに何でもありのエフェクトですよね。しかも、ここには最近話題のボーカル専用エフェクトVE-20相当の機能も搭載されています。まあ、VE-20のフル機能装備というわけではないようですが、つまりギター用というだけでなく、マイクを使ってボーカル用の機材としても十分に使えるわけです。
そしてこのBR-80には、MTR機能とはまったく別にeBandというモードも装備しています。これは“おっさんホイホイ”機材として話題となったJS-8と同等のことができるモードです。そう、MP3やWAVファイルを再生させるとともに、センターキャンセル機能でボーカルやギターパートを消し、自分で歌ったり、ギター演奏したり……ということができるのです。この際、可変ピッチ再生ができたり、可変テンポ再生ができるというのも大きな特徴ですね。またLive Recモードというのにすると、フレーズ・アイディアのメモ録音やバンドの練習の録音もできるようになっています。
BR-80がすごいのは、まだここから。側面を見るとUSB端子が搭載されていますが、これをPCと接続すると、なんとこれがオーディオインターフェイスに変身してしまいます。この場合、PCからのUSBバス電源駆動にもなるわけですが、ここでも前述のCOSMエフェクトは健在。つまり、エフェクトをかけた状態でPCに音を送る「掛け録り」ができるというわけです。もちろん、BR-80をエフェクト内蔵のUSBマイクとして捉えることも可能なわけですよね。
こうなると、当然PCでその音をレコーディングするソフト=DAWが欲しくなってくるわけですが、そのために、SONAR X1 LEまでがバンドルされているんです。まあ、これはWindows専用でMacでは使えないわけですが、そこまでやるか…?というのが正直な印象。SONAR X1 LEって大半の人にとっては十分すぎるDAWであり、「これがあればとくにSONAR X1 ESSENTIALを買わなくても…」とも思ってしまいます。逆に言えばSONAR X1 LEのために25,000円払ったって損はないなと思いますからね。
Windows専用だが強力なDAWであるSONAR X1 LEを標準でバンドル
以上がBOSSのBR-80の概要。このすべての機能使いこなせる人って、どれだけいるんでしょう?これだけ機能てんこ盛りで25,000円前後はやはり魅力的です。
なお、発売は6月ともうちょっと先なのが待ち遠しいところですね。
【追記】
取材した発売直前では25,000円程度になるだろう、というローランドの話でしたが、実際は消費税分が抜けていたのか2011年8月現在の実売価格は、安めの店で27,000円程度、高めのところだと30,000円前後になっているようです。
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