先日もお伝えしたとおり、PropellerheadからReason 5.0がリリースされると同時に、レコーディングソフトであるRecord 1.5がリリースされました。RecordとはギタリストやベーシストなどのプレイヤーでDAW経験がない人でも簡単にレコーディングができ、音を重ねたり、ドラムやキーボードなどのセクションも作れるという、DAWとは一線を画すユニークなソフトです。
今回そのRecordが無償アップデートにより1.5へと進化し、いろいろな機能が追加されました。その中で目玉となったのがピッチアジャスター&ボイスシンセとして登場した「neptune」という新デバイス。実際どんなことができるのか試してみました。
ピッチアジャスター=ピッチ補正というのは、その名のとおりピッチを補正するためのもので、ボーカルがちょっと音程をはずしてしまったというとき、さりげなく修正できる便利な機能です。実際プロのレコーディングなどでも、さりげなく使われていたりしますが、有名なものとしては、Antares Audio Technologies社のAuto-Tune、CelemonyのMelodyneといったものがあるほか、CubaseやSONARの機能としても搭載されています。
今回Recordに追加されたneptuneもそうしたデバイスのひとつですが、最大の特徴はリアルタイム処理するピッチアジャスターであるということ。つまりマイクからオーディオ入力をneptuneに接続すると、歌ったボーカルがリアルタイムに補正されるのです。neptuneではどの音程の音を出す、出さないという設定が簡単にできるため、たとえばハ長調の曲なら黒鍵の音程は出さないので、あらかじめそのように設定しておくと、仮に#がかかった音がマイクから入力されても強制的に白鍵の音に補正されるといった具合です。
どのくらい補正を強くかけるのかといった設定ができるほか、補正処理時間を変化させることもでき、これによっても処理結果の音の具合が変わってくるので、実際の音を聴きながらいろいろといじってみるとよさそうです。
もちろん直接マイクから入力するだけでなく、あらかじめレコーディングしたオーディオトラックの出力をneptuneに入れるといったことも自由にできるのもRecordの楽しいところ。Reasonと同様、ラックを裏側にひっくり返すと、ケーブルを自由に配線して自在に信号の流れを変えられるようになっています。
このneptuneにはピッチアジャスターという副題とともに、ボイスシンセというタイトルもついているのですが、これは何でしょうか?
そう、neptuneでは入力されたボーカルなどの音声のピッチ補正するだけでなく、指定された音程に無理やり変更する機能も備わっているのです。つまりどんな音程で入力されてもCとかFといった音程に変化させることができ、しかもそれをリアルタイムに処理できるのです。そして、その音程はMIDIで指定できるので、シーケンサやMIDIキーボードでコントロールすることができるのです。
これはいったい何に使うのか? 一番簡単な利用例としては、主旋律を歌うボーカルに対して、コーラスパートを作り出すこと。キーボードを弾けばその音程どおりのコーラスパートが作り出せるので、結構便利に使えそうです。このボイスシンセの出力は、前述のピッチアジャスターの出力とミックスさせることもできるし、別々に取り出すこともできるので、コーラスパートにだけ、EQやリバーブをかけるといったことも可能なので、とても自由度高く利用することができます。もともとReasonにはBV512というボコーダーが搭載されていましたが、これとはまったく別モノとして利用できます。
そのほかにも、フォルマント(声質)をいじったり、ボーカルにビブラートをかけたり、さらには全体のピッチをトランスポーズなどいろいろな機能が搭載されています。
ところで、このneptuneを初音ミクなどのボーカロイドに対してかけるとどうなるのかもちょっと試してみました。確かに、ボイスシンセを使ってハーモニーを作り出すには便利でしたが、初音ミクのオンチを調教することはできませんでした。というのもneptuneではピッチというよりも音程を修正することを目的としており、ビブラート=ピッチの微妙な揺れは、比較的そのまま通す構造になっているため、初音ミクのピッチの不安定さを直すことはできなかったのです。
もっともこの辺はアイディア次第でいろいろと使えそうですから、ぜひいろいろと試してみてください。
【関連情報】
Propellerheadサイト