先日、自宅のDTM用PCを1年半ぶりに組み立てました。これまでCore2Quad Q9550というCPUのマシンを使ってきたのですが、そろそろ時代遅れだなと思い、今の世代のCPUであるCore-i7に乗り換えてみようという意図でした。まあ、SSDのドライブも導入していたし、Core2Quadのマシンで、とくに不満があったわけではありません。ただ、雑誌やWebの記事を書くためのテスト環境としては、さすがにマズイだろうということでの新調することにしたのです。
私もノートPCなどメーカー製マシンを買わないわけではないのですが、基本的にはずっと自作派。スタートは確か1993年に作った486DXのころ以来ですから、もう17、18年と自作歴が長いだけに、それなりの自信はありました。もっとも最近はタワー型は邪魔だし、重たいので、もっぱらキューブタイプのベアボーンばかりになっていますが、今回、泥沼にハマりました。理由はインテルのCore-iアーキテクチャのCPUが従来のものと大きく変わり、これまでの常識が通用しなかったからなんです。
失敗の原因は私の勉強不足であったことは間違いありません。インプレスジャパンのDOS/V POWEWR REPORT(通称パワレポ)という雑誌なども書かせていただいているのに、CPUアーキテクチャの変化などにあまり興味を持たず、しっかり記事を読んでいなかったのが問題でした。でも、とくにDTMを目的とした自作派の方などは同じ罠にハマる可能性が結構高いのではと思い、今回記事にしてみました。
自作PC派と一言で言っても、やはり目的はいろいろでしょう。私の場合は、あくまでもDTM。そもそもOS以外の邪魔なソフトはいらない、というのが自作する大きな理由のひとつでしたし、当初は高音質なサウンドカードやMIDIインターフェイスを追加するのに、拡張スロットがいっぱい欲しかったので、タワー型を自作していました。しかし、オーディオインターフェイスもFireWireやUSB接続となった今、
・CPUは高速なほうがいいし、メモリはいっぱい欲しい
・グラフィック機能は最低限で十分
・コンパクトで静かなマシンがいい
という観点で組み立てています。ただ、あんまり高い機材を買うつもりはないので、いつも最高速のものより、1、2ランク下のCPUを選択し、トータル5~10万円の予算で作るようにしてきたのです。
今回1年半ぶりとなってしまった背景には、CPUは安くなってきたけど、コンパクトなキューブ型で安いシステムがなかなか出てこなかったからです。そんな中、先日Shuttleから「SH55 J2」というベアボーンが発売されました。これは、Core-i7/5/3に対応した製品でありながら、価格が安く、調べてみたらAmazonで27,750円という値段だったため、あまり詳しいことも調べずに、即注文したのです。
Core-i対応の低価格ベアボーン、ShuttleのSH55 J2
もっとも、このベアボーンについては、パワレポの編集長から「いいよ!」と勧められたし、リアを見るとHDMIとVGAの出力を装備するとともに、PCIとPCI Express×16をそれぞれ1つずつ装備しているので、自分でも間違いないと確信していました。そう、グラフィック機能はいつも重視していないので、PentiumIIIのころからだったでしょうか、マザーボード搭載のもので十分とし、グラフィックボードを搭載するということはなくなっていました。
まあ、いい加減なもので、ベアボーンを注文してからCPUやらメモリやらをどうするか考えていったのです。調べてみると、CPUソケットはLGA1156というものだったので、CPUはCore i-7 800シリーズか、Core i5シリーズ、Core i3シリーズから選択することが分かりました。Core-i5以下では、Core2Quadから移行する意味がほとんどないので当然Core-i7のいずれかにしようと考えました。
価格的に調べてみると、Core-i7 870 2.93GHzというものが秋葉原で26,360円とあったので、これに決定。またメモリはDDR3-1333の4GBが2枚組み=8GBで13,980円だったので、これをGET。ここまでトータル68,090円。ドライブ類は手持ちものので、とりあえず動かしてみようとさっそく自宅に帰って組み立ててみたのです。
が、電源を入れても、画面に何も映らない! 一応、CPUファンは回るけれど、何のエラー音すら出ません。HDMIをDVIに変換しても、VGAに切り替えても変化はなし。そもそも画面が映らないとBIOSの設定すらできないため、手も足も出せなかったのです。CPUを取り付け直したり、メモリを抜き刺ししてもダメ。電源チェックをしても問題はなさそうと、困り果てました。
そこでTwitterを使って、救助をお願いしてみたところ、ポツポツと返事が返ってきたのです。そんな中のひとつに、「CPUにグラフィック機能が搭載されていないのでは?」というものが。
いや、だってこのベアボーンは出力にHDMI端子もVGA端子もあるわけで、マザーボードにグラフィック機能を搭載しているから、その必要はまったくないはずと、そのときは思いました。これまで常識的に、そうだったではないですか!
でも、結論はまさにそこでした。Core-iシリーズでは、CPUにグラフィック機能を搭載するようになり、マザーボード上のチップセットにはそれを持たないのです。しかも、現在そのグラフィック機能を持っているCPUはCore-i5 600シリーズとCore-i3 500シリーズと低スペックCPUのみ。Core-i7はもちろん、Core-i5の700シリーズという4コアのものですら、グラフィック機能がないのです。このグラフィック機能がないCPUの場合、ベアボーンに搭載されているHDMIおよびVGA端子は単なる飾りにしかならない、という落ちでした。
結局、後からPCI-Express×16に刺すファンレスのグラフィックカード(ATI RadeonHD5450)を7,590円で購入してなんとか動き出しました。また、実はその後、マザーボードにATAPI端子がないことに気づき、従来使っていたDVDドライブが使えないことが判明。3日連続秋葉原に通って、S-ATA対応のBDドライブを購入。ついでに、SSDの64GBも新調することにし、計104,000円也。以前に買ってあった2TBのHDDも加えると11万円強、完全に予算オーバーとなってしまいました。
まあ、最終的には非常に高速で快適なマシンに仕上がったのですが、同じ落とし穴にハマらないよう、ぜひCore-iシリーズのマシンを組む際にはご注意ください。