ソフトシンセをはじめとする数多くのDTMソフトが登場するiPhoneやiPad。その多くが海外製という印象がありますが、探してみると日本で生まれたものもいろいろあります。中でも目立っているのがユードー(Yudo)という会社。
レコーディングソフトである「Rectoolsシリーズ」やボコーダーの「SV-5」、ファミコンや昔のパソコンサウンドを作り出す「8Bitone」、そしてiPad用のメディアアート音楽作品「O-GAWA」など有名ソフトを次々とリリースしています。このユードーとはいったいどんな会社なのでしょうか?先日、社長の南雲玲生(なぐも・れお)さんにお話を伺ってきました。
私自身がユードーを知ったのは、1年ちょっと前。iPod用外付けマイクであるロジテックのLIC-iREC03Pのレビュー記事をAV Watchの連載でしたときです。LIC-iREC03Pの推奨アプリとして、Rectools02というものがあり、見てみるとかなりしっかりした波形編集ソフトだったのです。iPhoneやiPod touchでこんなことができるのかと驚くとともに、メーカーを調べてみたら作っているのがユードーという日本の会社であることを知ったのです。
さらに調べてみると、8トラックでのレコーディングを可能にした「RecTools08」があったり、強力なアナログシンセにボーコーダー機能を搭載した「SV-5」、個人的にも思いいれのあるPSGやSSG音源をシミュレーションする「8bitone」など、すごいアプリを数多く出しているのです。最初海外のメーカーだろうと思っていただけに驚いたのと、住所を見ると横浜駅の近くで、筆者の家からも20分程度で行けそうな場所だったため、一度行ってみたいとずっと思っていました。
なかなかキッカケがなかったのですが、某誌で原稿を書くためにユードーのサイトでソフトの使い方を調べていたついでに、「お問い合わせフォーム」から取材依頼を出してみたところ、社長の南雲さんからすぐにお返事をいただき、さっそく行ってきました。
恥ずかしながら、私自身、南雲さんのことをよく知らなかったのですが、実はすごい有名な方だったんですね。Wikipediaにも詳細が載っていますが、南雲さん自身がメジャーな作曲家であり、ゲームクリエーターでもあり、そして株式会社ユードーの社長でもあるという、スーパーマン。以前、コナミに勤務していて、ここでは大ヒット音楽ゲームソフトである「beatmania」を企画原案・制作した方でもあるのです。
株式会社ユードーの代表取締役 南雲玲生さん
その南雲さん、とても朗らかで優しい雰囲気の方なのですが最初にPC歴や生い立ち的なことを伺って度肝を抜かれました。「最初に触ったのがシャープのX1でMML(ミュージック・マクロ・ランゲージ)を使って曲を書いたりしてました。その後NECのPC-8001mkII、それからX68000……」と話をするのですが「ん???」と。だって、私自身、結構早い時期にコンピュータを触りだしたと思っているのですが、それってまさに私が高校時代の機材。
どう見ても私より結構若く見える南雲さんに、それは何歳ごろに使っていたのか聴いてみたところ、「僕が幼稚園のころにYMOのサウンドを聴いて感銘し、小学校に入ってすぐ父のPCの内蔵音源を使って曲を入力していました」って。ん~、やはり天才は最初から違うんだなって、参りました。ちなみに私は1965年生まれで南雲さんが1973年生まれ。当時、小学生と高校生で同じようなことをしていたみたいです。
その南雲さん、コナミで「beatmania」の大成功後、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経てユードーを設立したのが2003年。「ずっとゲーム業界で働いてきたけれど、今後はスマートフォンや携帯とか新しいデバイスでのエンタテインメントの時代が来るはずと独立を決意したのです」とのこと。
一方で「実は大学に行かずにコナミに入ったため、ずっと大学で勉強したいと思っていました。また、そのときすでに結婚して子供もいたため、会社に勤務しながら勉強、仕事を両立させるのは事実上無理だったので、自由の効く独立という道を選んだのです」と南雲さん。大学に通いながらの会社運営であったし、まだスマートフォンだって、出始めたばかりで、最初はかなり苦労もされていたようですが……、この続きは次回に。