8月末に米Apogeeから発売されたコンパクトなオーディオインターフェイス、Duet 3(9月30日までイントロプライスは税込77,000円、10月1日以降は 税込80,300円)。プロミュージシャン、スタジオエンジニアからの評価が高いApogeeの新製品とだけあって、多くのDTMユーザー、そしてオーディオファンからも注目が扱っていた製品ですが、実物を見てみるとスタイリッシュであり、その薄さにも驚かされます。スマートなトラベルケースも標準で用意されているので、ノートPCとセットで持ち歩いて使うモバイルレコーディングにもピッタリという印象。
USB Type-C接続で、24bit/192kHz、2IN/4OUTというこのオーディオインターフェイスの性能のほうも抜群。単に音を入出力するだけに留まらず内部にDSPを搭載しており、PCのCPUパワーを使わず、Duet 3の本体内でエフェクト処理できてしまうのも大きなポイントとなっています。Mac、Windowsそれぞれに対応する、そのDuet 3を試してみたので、どんな機材なのか、紹介してみましょう。
Apogeeの小型オーディオインターフェイス、Duet 3を試してみた
すでに生産終了となった前モデルのDuetが手元にないので、ぱっと見での比較がしづらいですが、以前「ついにAPOGEEがWindows 10完全対応。高音質・コンパクトなプロ御用達機材、Duetを使ってみた」という記事で取り上げたときの写真を見比べてみても、ずいぶん薄くスリムなオーディオインターフェイスに進化したことが分かります。
トップパネルには超薄型のゴリラガラスが採用されており、その上に紫に光る大きなコントロールノブがあるのが特徴。プッシュ式になっているこのコントロールノブを操作することでメインボリューム、ヘッドホンボリューム、入力ゲインと、一通りの調整ができるようになっているのです。
手に持った写真で比較すると非常に薄くスタイリッシュになっていることが分かる
MacやWindowsと接続するのはUSB Type-Cのポートですが、これが2つ搭載されており、どちらのポートに接続してもOK。もう片方に電源を接続することにより、PCのバスパワーからの電源だけで足りないときに利用できるようになっています。
ちなみに本体に付属しているケーブルはUSB Type-CーUSB Type-Cとなっていますが、キャップを取り付けるとUSB Type Aにもなるという便利なもの。これを使うことで従来からのPCでも最新のMacのようなUSB Type-Cしか端子がないマシンでも直接接続することが可能になっています。
USB Type-CとしてもType Aとしても利用可能な付属ケーブル
ボディーが非常に薄いだけにフロントにはステレオミニのヘッドホンジャックがありますが、ラインやマイクとの接続には付属のブレイクアウトケーブルを使う形になっています。そのブレイクアウトケーブルを見てみると、端子が6つに分かれており、マイク入力用のキャノン入力が2つ、ギターやライン入力のためのTRS入力が2つ、そしてメイン出力用のTRS出力が2つという構成。
ブレイクアウトケーブルを使うことの好き嫌いはありそうですが、別売でUSB-C Docking Station for Duet 3(22,000円)というものも用意されています。今回試すことはできなかったのですが、これを使うことでブレイクアウトケーブルを使うことなく本体に直接接続できるようになるので、自宅やスタジオでの利用の場合などを、これを利用するというのもよさそうです。
別売のDocking Stationを使うことで、ブレイクアウトケーブルなしで接続できるようになる
さて、Duet 3を利用するにはMacでもWindowsでも、予めドライバもセットとなったApogee Control 2というソフトをインストールしておく必要があります。そして、このApogee Control 2というのがDuet 3のフル機能を使う上で非常に重要な役割を担う形になっているのです。
Windows、MacのアプリケーションであるApogee Control 2でDuet 3の全機能をコントロールする
DAWから見ると、普通の2in/4outのオーディオインターフェイスとして認識されるDuet 3ですが、これは単に音の入出力をするだけのオーディオインターフェイスというわけではないんです。
内部にミキサー機能があり、DSP機能を使ったエフェクトがあり、これらをApogee Control 2から制御できるようになっているのです。Apogee Control 2がDuet 3を認識すると、以下のようなミキサー画面が表示されます。Duet 3自体は電源を切った時点の情報を覚えているので、再度PCと接続するとその前の状態がここに再現されるようになっています。
Apogee Control 2は5つのパートに分かれている
この画面を見ると、かなりいろいろな要素が詰め込まれていることが見てとれると思いますが、簡単に説明すると、まずChannel部分で入力を操作していきます。前述のとおり、ブレイクアウトケーブルを使った入力にはマイク用のXLRとライン/ギター用のTRSがあるわけですが、IN 1およびIN 2それぞれで何を入れるのかを設定できるようになっています。TRSのフォンジャックからの入力の場合、民生用のラインレベルである-10dBVか、業務用の+4dBu、ギター用のHi-Z=Instrumentかを選べるのも、しっかりしているところですね。
2つの入力はそれぞれMic、+4dBu、-10dBV、Instrumentから選択できる
また48Vのファンタム電源のON/OFF、逆相設定、ソフトリミッターのON/OFFといったものが用意されています。ちなみに、コンデンサマイクを接続して試してみたところ、非常にクリーンなサウンドのマイクプリアンプ。65dBまで持ち上げら得るのですが、ノイズがほとんどなく、扱いやすいのは、さすがApogeeという感じですね。
そして最大のポイントはFXという機能がIN 1、IN 2それぞれ独立で用意されている点。そう、これが内蔵DSPを使ったエフェクト機能なのです。このボタンを押すと、以下のようなSymphony ECS Channel Stripの画面が現れ、ここでEQおよびコンプの設定ができるほか、画面右にはDRIVE機能もあり、これを使うことでサチュレーションによって音を歪ませる…といったことも可能になっているのです。
Apogee Control 2のFXボタンを押すと、このSymphony ECS Channel Stripが現れる
HIGH PASS、LO SHELF、MID PEAK、HIGH SHELFと4バンドあるEQをはじめ、各パラメーターを自分で細かく調整していくこともできますが、画面右下にはプリセットが用意されており、これを選ぶだけで簡単に音作りができるようになっています。実はこのSymphony ECS Channel Strip自体とプリセットづくりには、世界のトップミキシングエンジニアであるボブ・クリアマウンテン氏がチューニングを行っているとのことで、まさにプロの音が簡単に作れてしまうんですね。
プリセットを見るとボーカル用、ギター用、ベース用、ドラム用……などさまざまなものが用意されているから、即実践で活用できるわけです。では、そのエフェクトはオーディオインターフェイスとして見たとき、どのようにルーティングされるのでしょうか?
ボブ・クリアマウンテンがチューニングしたプリセットを利用可能
それをつかさどるのが、先ほどのMixer部とMonitor/Output部分なんです。モニターにおけるマイクやギターからの音量バランスを調整できるのはもちろん、DAWからの出力もこのMixerで調整して音を揃えていくことが可能。
そして、エフェクトをONにした場合は、モニターに対してはもちろん、DAWに対しても掛け録りの形となるので、まさに設備環境が整ったスタジオでアウトボードのチャンネルストリップを使ってレコーディングしているような感覚で利用できます。レコーディング現場で、プリセットで簡単に音作りができ、そのサウンドで即録音できるというのは、非常に効率よく作業することができそうです。
Duet 3本体とブレイクアウトケーブルをこのトラベルケースに入れて持ち歩ける
実際に試し録りしてみましたが、音質は抜群のApogeeクオリティー。価格的には、ちょっと高めではありますが、それ以上の価値が十分にあると感じました。一方、iPhoneやiPadについては今後対応するとのことですが、試しにiPad ProにUSB Type-Cケーブルで接続してみると、バッチリ使えますね。Cubasis 3から見ても、2in/4outのオーディオインターフェイスとしてしっかり認識しています。
iPad上のCubasis 3で確認したところ、2in/4outのオーディオインターフェイスとして利用できた
まだApogee Controlのアプリが対応していないので、早期の対応に期待したいところです。以上、ApogeeのDuet 3
について簡単にレポートしてみました。高品位なオーディオインターフェイスを手軽に持ち歩いて使いたいという人にとっては、強力なデバイスといえそうです。
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