ギターやシンセ、オーディオIFに直接挿せる超小型のアンプ内蔵スピーカー、TinyAMP TA-440が7,900円でクラウドファンディング中

ありそうでなかった、とっても便利なアイテムが登場します。TinyAMP TA-440という手のひらに乗るサイズの機材は、フォンジャックに直接挿せるアンプ内蔵のスピーカー。エレキギターに挿せば、それだけで結構な音量で演奏できてしまうというシンプルで便利なアンプで、いうなれば手持ちのギターがZO-3ギターのようになる感じ。オーバードライブを掛けるDRIVEスイッチもあるので、これをONにすることで、かなりパワフルなサウンドにできるというのもユニークな点です。

もちろんTA-440が利用できるのはエレキギターに留まりません。シンセサイザキーボードに接続すれば、まるでスピーカー内蔵キーボードのように変身するし、オーディオインターフェイスに接続すればモニタースピーカーがなくても、そこそこのサウンドで鳴ってくれるのです。開発したのは楽器の街、浜松にある有限会社ハーモテックという小さな会社。一般流通販売の前に、まずは市場調査も兼ねてクラウドファンディング(Makuakeにて9月21日18時まで)の形での販売をスタートし、価格的には7,900円(税込)と手ごろな設定となっています。実際どんなものなのか試作機を使わせていただくとともに、どのようなコンセプトで開発したのか伺ってみたので、紹介してみたいと思います。

ギターの出力などに直接接続できるアンプ内蔵の小さなスピーカー、TinyAMP TA-440

重さたったの100gというこのスピーカーは手のひらに乗るコンパクトなもので、ギターの出力ジャックにそのまま挿せる構造になっています。「こんなので、ホントにちゃんとした音が出るの?」と思ってしまいますが、ここには直径40mmのスピーカーが登載されており、想像以上にパワフルなサウンドが出るのです。その出力は4Wで、自宅で鳴らす分には十分すぎる大きな音量。「4Wで40mmだからTA-440というネーミングにしたんです」と話すのは、開発者でありハーモテックの代表取締役である森藤慎司さん。

実際どんな音なのか、ギターに接続して鳴らしたデモビデオがこちらです。

どうですか?もちろん、ホンモノのギターアンプと比較するべきものではないと思いますが、ケーブル不要で簡易的に音が出せるアンプとしてみれば、かなり便利に使えそうだと思いませんか。このビデオの中でCLEANとDRIVEの切り替えがありますが、それなりの歪みがあって、いい感じですよね。歪ませるというよりも、倍音を意図的に増やすような回路設計になっているそうで、これがギターにいい感じで効いているんですね。ZO-3ギターの場合、ショートスケールなので、ちょっと……という方でも、これなら自分のギターで使えるし、自分のギターの音で鳴らせるという意味でサウンドの幅も大きく広がります。

手のひらに乗るサイズのTinyAMP TA-440。フォンジャックがあり、これを直接端子に挿して使う

ちょっと驚いたのは、このTA-440にあるのは電源スイッチと、DRIVEスイッチの2つだけで、ボリュームもないというシンプルさ。
「できるだけシンプルにして、誰でも簡単に使えるように、という思いから、このような仕様にしています。ギターの音量調整はギターの出力レベルで調整し、ほかの機器でも接続する機器の出力を調整する形で音量を調整する形です」と森藤さん。

Zoomミーティングの形でお話を伺った有限会社ハーモテック・代表取締役の森藤慎司さん

一般的な接続とはまったく逆の発想で、目から鱗……という感じではありますが、「これで最高品質の音を出す」のを目指すのではなく、「簡易的で便利に音を出す」ためのスピーカーであると考えると、確かにこの手法が合理的ではありますし、試した限り結構いい音が出るな、という印象です。

本体右サイドに搭載されているDRIVEスイッチ。反対側に同様の電源スイッチがあるだけのシンプルな構造

また、これだけシンプルな構造で、素直な音が出るアンプだからだと思いますが、ギターのピックアップを切り替えたり、それぞれのボリュームを調整することで、まったく違う音になることを存分に感じられるのも楽しいところです。

実物を見て、触った感じで、もう完全な完成品という印象で、あとは生産すればいいだけだ、と思ったのですが、森藤さんに伺ったところ、「回路もスピーカーも完成していますが、このボディーは3Dプリンターで出力したものを塗装した試作機なんです。実際には今後、金型を作って生産した上で、クラウドファンディングに参加いただいたみなさんには12月ごろにモノを届けられるようにしていこうと考えています」とのこと。改めて、3Dプリンターってスゴイんだなぁ……と。

3Dプリンタで作ったという試作機を使ってみた

エレキギター以外だとどうなのでしょうか?試しに手元にあるRolandのビンテージ機材であるD-10というシンセサイザに接続してみたところ、なかなかいい感じで音が出てくれます。やはり音量調整はD-10の出力レベルを調整することで行うのですが、これだけの音が出てくれれば十分楽しめるし、ヘッドホンサウンドとはまた違った音の響きでいいな、という印象。ただし、これはラインアウトに接続するものだから、モノ出力を持っている機材のほうが扱いやすいですね。

ビンテージシンセに接続しても、即音を出すことができ、DRIVEをONにすることで、いい感じの音に

最初はDRIVEをOFFにしてクリーントーンで鳴らしていたのですが、ONにしてみると、予想以上にいい音で使えるのは驚きました。歪み系のエフェクトをかけたというよりも、音をちょっと派手にした……という印象でほとんどの音色で効果的に効いてくるんですよね。そこまで極度に歪ませるものではないから、いいのでしょうね。以下にXP-30というRolandのシンセにエフェクトをつないだ先に、TA-440を接続したデモのビデオがあるので、どんな感じなのか見てみるとイメージが掴めると思います。

「先日、RolandのAerophone AE-30でも試してみたのですが、これが想像以上によかったんですよ。AE-30にも内蔵スピーカーがあるのですが、TA-440を接続すると、両方を鳴らすことができるんです。その結果、ちょうど内蔵スピーカーがツイーターで、TA-440がウーファーというような感じで機能し、よりパワフルな音になって、ホンモノのサックスのような音になりました」と森藤さん。

さすがにバリサクのような低音になると40mmのスピーカーでは難しかったようですが、アイディア次第でいろいろな使い方ができそうですよね。ちなみにベースに使ってみるとやはり厳しい感じでした。

銀色に光る直径40mmのスピーカーが内蔵されている

「将来的にはこれをシリーズ化して、6W出力で60mmのスピーカーでベースも鳴らせるTA-660なんていうのができたらいいなと考えています。一方、エレキギター以上に使えるのでは……と感じたのが、エレアコなんです。以下のビデオをご覧いただくと分かると思いますが、TA-440をONにすると、ハイが持ち上がって音量が大きくなり、すごくクリアな感じの音になるんですよ。マイキングなどが難しい小さな会場なら、これで十分行けるのではないでしょうか」(森藤さん)

ほかにどんな使い方があるだろうか……と思って試してみたのがオーディオインターフェイスへの接続です。この色から、まさにFocusriteにピッタリと思って、手元にあるScarlett 2i2 Gen3に接続してみたら、やはり配色的に完全マッチですね。もちろん、ステレオで使えるわけではないので、正しい使い方とは言えないかもしれませんが、音を出してみると……、思った以上にクリアでクッキリした音で鳴ってくれます。やはり、音量調整はメインボリュームを使って行うのですが、これを試してみるとちょっとビックリなことが……

FocusriteのScarlett 2i2 Gen3に接続してみたら、配色もピッタリ

そう、CDを再生し、メインボリュームを絞り目で出していても、クッキリとした音で聴こえます。ここでボリュームを10時くらいにすると、かなりな大きな音になり、12時くらいまで持っていくと、深夜なら周りから苦情が来るかも…というレベルになっていきます。でも、音は割れていないんですよね。ところがボリュームが1時を超え、さすがにこれ以上やると音が割れるか…というところで、ブチッと音が切れました。電源が入ってくることを示す緑のLEDも消えて、「あれ?壊れちゃったのか?」と思ったらそうではありませんでした。森藤さんによると、大きすぎる入力があると保護回路が働き電源が切れるようになっているのだとか。確かに一度オーディオインターフェイスの音量を絞った上で、TA-440のスイッチを入れ直したら、しっかり動いてくれました。

オーディオインターフェイスの片チャンネルに接続して使った

森藤さんによると、内部のアンプは完全アナログのディスクリート回路になっているとのこと。こっそりパネルを外して中を覗いてみると、ごっついスピーカーユニットが収まっているのとともに、基板にTinyAMPと書かれたアンプ回路が入っているのが確認できます。かなりしっかりした作りのようですね。

ネジを外して中を覗いてみると……

ところで、このアンプ内蔵スピーカー、電源はどうなっているのでしょうか?これについても森藤さんに確認したところ、「リチウムイオン電池が内蔵されておりmicroUSB端子を通じて充電する形になっています。空の状態から満充電にするまで約1時間半、そこから連続使用で6時間利用できる設計になっています」とのこと。

フォンジャックのすぐそばに充電用のmicroUSB端子が用意されている

それなら、microUSBで充電しながら使うことができるのだろうか……と思ったら、これ物理的にそうできないようになっているんですね。写真を見ればわかる通り、フォンジャックのすぐ横にmicroUSBの端子があるので、無理なんです。安全性を考えて、あえてそのようなデザインにしたのだとか……。いろいろ工夫されているんですね。

付属ケーブルをACアダプタにつなぐと、LEDが赤く点灯し充電が始まった

森藤さんとは、2年前の楽器フェアの会場でお会いしたのが最初だったのですが、浜松にあるハーモテックという会社なので、やっぱり元ヤマハとか元ローランドのエンジニアだったのかな……と伺ってみたところ「楽器が作りたくてローランドに入社したのですが、入社後すぐにローランドDGの配属になったため、楽器の開発はまったくしていなくて、ペンプロッタやカッティングマシンの設計などをしていました。またこの会社は47年前に祖父が作った会社を引き継ぎ、当初の社名に込められていた調和という意味を元にハーモテックという社名にしたのですが、結果的に音の方面にやってきちゃいましたね」とのこと。

前述のとおり、このTinyAMP TA-440はMakuakeでクラウドファンディング中で、受付は9月21日18時まで。1台の購入だと7,900円ですが、2台セットで15,500円というのもあります。まずはクラウドファンディングの目標である450万円を集め、無事成立することが大前提ではありますが、製品化が実現できたら、8,800円(税込)での販売を予定しているとのことなので、今のうちに入手しておいても決して損はないはず。仮に成立しなかった場合は返金されるので、その点は心配ありませんよ。このクラウドファンディング、応援してみてはいかがですか?

※2021.12.9追記

残念ながらMakuakeでのクラウドファンディングは失敗に終わりましたが、その後体制を立て直し、ハーモテックとして通信販売をスタートしました。赤、黒2色が用意され、それぞれ7,700円(送料別)となっています。森藤さんによると、12月22日ごろの出荷となるそうです。

【関連情報】
TinyAMP TA-440クラウドファンディングページ(Makuake)
有限会社ハーモテック・サイト

【価格チェック&購入】
◎ハーモテック ⇒ TinyAMP TA-440

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