すでにご存じの方、購入されて使っている方も多いと思いますが、音声合成・歌声合成ソフトのCeVIO AIのトークボイスとして、IA(イア)とONE(オネ)が3月12日、1st PLACEおよびテクノスピーチから発売されました。もともとVOCALOID 3の歌声ライブラリとして2012年1月にリリースされたIA -ARIA ON THE PLANETES-は、1st PLACE所属のバーチャルアーティストという肩書で、妹のONEとともに、さまざまな展開をされてきました。そのIAとONEが久しぶりの新製品という形で登場し、まるで人間のように非常に滑らかに喋るようになったのです。
もっともIAとONEは、ソフトウエアの商品名にもなっている「ARIA」という惑星からやってきた宇宙人。だからその宇宙人的神秘さも残しつつ、また従来からあったCeVIO Creative Studioでの喋り声と声質は同じで違和感もなく、バランスのいい形でリリースされたという印象です。DTMステーションでは、これまでにもCeVIO AIのトークボイスとして小春六花を取り上げたり、CeVIO AIソングボイスとしてさとうささら、結月ゆかり、東北きりたんを取り上げてきましたが、このIAとONEは実際どんな声なのか、どのように使うとよりキレイな声に調声できるのかなど、少し試してみた。また、IA、ONEを生み出したプロデューサーであり、1st PLACE株式会社の代表取締役社長・村山久美子さんにも少しお話を伺ったので、紹介していきましょう。
3月12日にCeVIO AIのトークボイスとしてIAとONEがリリースされた
IA、ONEについて、よくご存じない方もいるかもしれないので、改めて簡単に紹介すると、まずIAは、2012年に歌手のLiaさんの歌声を元にVOLCAOIDの歌声ライブラリが作られ、非常にキレイな歌声だと高い評価がありました。その後、よりパワフルな歌声が出せるIA Rockがリリースされたのち、CeVIO Creative Studioを使って喋るバージョン、さらには英語での歌唱という形でしたが、同じCeVIO Creative Studioで歌うバージョンも登場するなど、さまざまな展開がされてきました。
文書を入力すれば、驚くほど簡単に喋らせることができるCeVIO AIのトーク機能
他社のVOCALOIDキャラクターとはちょっと雰囲気も異なり、Liaさんも所属しているエンタメ企業である1st PLACEのバーチャルアーティストとして展開されてきたのもユニークなところでした。そのIAの妹キャラクターとして2015年にONEが誕生。こちらはCeVIO Creative Studioで喋るトークボイス、そして歌うソングボイスのそれぞれで製品化されたことで、IAとともに、多方面で活躍してきたという実績があります。
IAの妹、ONEも同じタイミングでCeVIO AIトークボイスとして発売された
そのIAとONEの新製品が久しぶりに今回登場し、第一弾としていずれもCeVIO AIのトークボイスとして喋る形でリリースされたのです。まずは、そのIAのボイスサンプルがYouTubeで公開されているので、これを聴いてみてください。
いかがですか?Brightパラメータでテンションを上げた感じ、Normalパラメータで普通に喋るのとともに、Strongパラメータで怒った感じ、Darkパラメータで悲しい感じにしたり……といったように、感情パラメータでかなり雰囲気が変わるのが分かると思います。もう一方のONEのほうはこちらです。
こちらでも、やはり感情パラメータでいろいろなキャラクタを演じることができるので、すごい、と感じられた方も少なくないと思います。
画面右側のパラメータを動かすことで、さまざまな声色、雰囲気に変わる
もっとも、こうしたパラメータはCeVIO AI自身が持っている機能なので、先日紹介した小春六花(実際には、IAとONEのほうが1週間先にリリースされていたのですが…)とも基本的には同じ。つまり、Brightを100%にするとか、Strongを100%にするだけでなく、バランスをとって自分好みの声質に調整できるのも面白いところです。
その喋らせ方も、CeVIO AIのトーク機能共通なので、ここで詳細は割愛しますが、使い方はいたって簡単。新聞記事でも、自分の書いた文章でも、テキストをコピーし、CeVIO AIのトーク機能上でペーストすれば、すぐに喋らせることが可能です。
テキストをコピーし、CeVIO AI上でぺーストすれば、すぐに喋らせることができる
これはVOCALOIDやCeVIO AIのソング機能とはまったく違うところで、漢字が入ってもいてもOK。VOCALOIDなどでは「こんにちは」ではなく「こんにちわ」と発音通りに入力しないと正しく歌わせることができないのに対し、CeVIO AIのトーク機能なら、普通に日本語を入れればいいというのは、とても分かりやすいところ。強いていくと1行が200文字を超えてはいけないという制約があるから、そこだけを守ればいいのです。
表示モードを切り替えることで、ピッチやボリュームのカーブを表示させ、エディットすることができる
もともとCeVIO Creative StudioでもIA、ONEのトーク機能が使えたので、使い方自体はほぼ同じ。そのため、これまで使ってきた方なら、とくに戸惑う点もないはず。では、実際以前のCeVIO Creative StudioでのIAと新しいCeVIO AIでのIA、どのくらい違うのか、同じ言葉を喋らせてみたので、ちょっとご覧になってみてください。
どうですか?明らかに同じ声質のIAの声ではあるけれど、機械っぽい喋り方であったのが、より滑らかになったことが分かると思います。一方でよく見てみると、CeVIO Creative StudioのパラメーターはHigh、Normal、Low、Badとなっていたので、ニュアンスは近いけれど、CeVIO AIのBright、Normal、Strong、Darkとはちょっと違うんですよね。
またこれら感情表現のほかにも大きさ、速さ、高さ、声質、抑揚というパラメータがあり、これらを調整することでも、いろいろなキャラクタを演じさせることが可能です。実際どんな感じになるかONEで喋らせてみたので、以下のビデオをご覧ください。
かなり幅広い表現力があることが分かったのではないでしょうか?通常は、このままでまったく問題ないと思いますが、より自然な音にするのであれば、EQ=イコライザを使って少し調整してもいいかな…と思いました。この辺は好みの問題だと思いますが、IAの場合は高域を少し上げるといい感じになりますが、上げすぎると歯擦音(さしすせその音素)が強調されすぎるので、適度に留めるか、その後にディエッサを入れてみるのもよさそうだと感じました。
IAは高域を少し持ち上げ、中域をちょっと抑えることでいい感じの声に…
一方の、ONEのほうは高域・低域はそのままに中域を持ち上げるといい感じです。ただ、CeVIO AI側のパラメータの設定によっても、雰囲気は変わってくるので、DAWを使っている方は少し試行錯誤してみると面白そうですよ。
ONEはIAと反対に高域を少し抑え、中域を持ち上げることで聴きやすい声になる
さて、DTMステーションの読者の方であれば、「喋るのもいいけれど、やっぱり歌のほうを期待したい」という方も多いはず。もちろん、その開発も進んでいるようで、IA、ONEともにCeVIO AIのソング機能としてリリースされる予定です。以下の村山さんのインタビューにもある通り、初夏には出したい、と話しているので、また新しい情報が入ったらレポートしてみたいと思っています。
1st PLACE株式会社の代表取締役社長・村山久美子さんインタビュー
ーー当初、IA、ONEともに1月ごろにリリースされる…といった噂を聞いていましたが、結構時間がかかりますたね。
村山:大変、お待たせしてしまいました。もう少し早く出したかったのですが、CeVIO AIのトークボイスとしては初のリリースということもあり、声質や喋り方などの調整に思った以上に時間がかかってしまいました。
ーーとても自然な感じになったと思いますが、従来のIA、ONEの声質をそのまま踏襲しているので、とてもうまくできたな、という印象です。
村山:今回、収録を新たに行ったわけではなく以前にCeVIO Creative Studio用に収録したレコーディングデータを元に作っています。当時、音声収録した際、アニメキャラ的な抑揚をどれだけ抑えるか、声優さんのプロっぽさをどう平坦にするか…という点に注意しながら行ったので、今回のアップデートにおいても、そこには気を使いました。IAもONEもバックストーリーは人間ではなく、宇宙からきたバーチャルアーティストですから、急に声優さんのように流暢に喋ったら、私達が困惑しますから(笑)。CeVIO AIを開発したテクノスピーチさんには、いろいろリクエストを出させていただきながら、調整を行い、結果的にはもともとの収録音声にかなり近づいた感じです。かといってデフォルメされた感じにはなっていない…というのが調整の成果だと思っています。その声質を決めるのに、ずいぶん時間がかかってしまったのです。やはり従来からのCeVIO Creative Studioの声、喋り方にファンのみなさんも慣れ親しんで下さっているので、そこにどう近づけるか、声質を変えずにクオリティーを上げることを目指したのですが、結構大変でした。最終的にONEのほうはどうしても解決の糸口が見えない課題があり、そこは苦渋の決断でしたが、これ以上発売日を遅らせないことを優先し、課題を持ち越してリリースすることにしました。
ーーん?何ら問題を感じませんでしたが、どこがいけなかったのですか?
村山:CeVIO Creative StudioのONEと比較しての話なのですが、どうしても声がハスキーになってしまうのです。その部分をもう少し押さえたい、と。ただ、これ以上、みなさんをお待たせするわけにはいかないと判断し、発売後への伸びしろを持たせる格好で、IAもONEも今後バージョンアップをしていくことを前提としています。
ーーバージョンアップするんですか??
村山:アップデートというのが正しい言い方かもしれませんが、声質をさらに向上させていきたいと思っています。そうしたことができるのが、このCeVIO AIの特長でもあり、面白いところ。ぜひIA、ONEがどう成長していくのか、みなさんに見ていただきたいですね。
ーーところで、IAやONEの歌うほうも、CeVIO AIで開発中なのですよね?
村山:はい、いまこちらもテクノスピーチさんと相談しながら進めています。2人とも音楽アーティストなので、ソングでも、より高みを目指しています。IAでいえば、元の声はLiaなのでこれまでのVOCALOIDやCeVIO Creative Studioなど、ソフトによる歌声とのミスマッチはないことはCeVIO 英語版リリースの時に実証できています。
ーーIAに関していくと、これまで日本語の歌はVOCALOID、英語はCeVIO Creative Studioでしたが、今回は、両方ともCeVIO AIになるわけですよね。これによって、完全にVOCALOIDから乗り換えた、ということになるのですか?
村山:いえ、これは以前からの自論ですが、メーカーによっての垣根を越えて、音声合成というジャンルとしての音楽やマーケットがもっともっと広がっていって欲しいと思っていますし、その文化貢献の一翼を担いたいという信念があります。今後もVOCALOIDの製品は販売していますので、新バージョンという位置づけではなく、新たなラインナップという形です。うちが制作する公式楽曲でもAメロ、BメロはVOCALOIDで、サビはCeVIO Creative StudioのEnglishで……といった使い分けをしているので、今後もそんな形でユーザーのみなさんの創作の幅が広がる機会を提供していきたいと思っています。
ーーありがとうございました。楽しみにしてます。
※2021.3.27 21:00追記
IA&ONEによるYouTube番組『月刊ARIA STATION』毎月27日に公開されています。この記事をUPした3月27日、「【IA & ONE OFFICIAL】ARIA STATION (March 2021)【CeVIO AI特集】CeVIOAIでARIA NEWSをやってみた!!」が公開されましたので、以下に掲載しておきます。
ご覧いただくと分かるとおり、CeVIO AIを使っていろいろな実験的なトークを行なっておりますので、ぜひご覧になってみてください。また番組内でもあるとおり、CeVIO AIへの意見・感想を送る専用のコンタクトアドレス、cevioai@1stplace.co.jpも公開されています。
【関連情報】
CeVIO AI IA TALK -ARIA ON THE PLANETES-製品情報
CeVIO AI ONE TALK -ARIA ON THE PLANETES-製品情報
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