手ごろな価格で、いい音で、かつコンパクトなモニタースピーカーってないだろうか……と探しているDTMユーザーも少なくないと思います。スペースの都合や住環境の都合から、制作はすべてヘッドホンで行っているという人が一定数いるのは事実。とはいえ、音のチェックをする上で、モニタースピーカーは必須の機材です。深夜に爆音は無理としても、やはり音をスピーカーから出して聴いてみないことには、はじまりません。
そんな中、M-Audioから先日発売された3.5インチのBX3は左右ペアで税込実売価格が12,000円前後、4.5インチのBX4も同じくペアで14,500円前後と手ごろながら、かなり高音質で、かつ120Wと大音量まで出せるモニタースピーカーです。ウーファーの口径が3.5インチ、4.5インチというサイズであるためコンパクトで、省スペースで設置できるのも嬉しいところ。実際どんなものなのか試してみたので、紹介してみましょう。
M-Audioのコンパクトなモニタースピーカー、BX4(左)とBX3(右)
とくに初心者DTMユーザーの場合、モニタースピーカーってどう選べばいいか分からない……という人も少なくないと思います。やはりアナログ機材だけに、実際に音を聴き比べてみないと分からないのが正直なところですが、さまざまなモニタースピーカーを聴き比べることができるお店なんて、国内中探しても、わずかしかありません。しかも、設置する場所や環境によっても音は大きく変わるので、実際に自分の作業スペースに置いて聴いてみないことにはわからないのが実態。
それなら、自分の中での音の標準を身に着けるために、ある程度の音質レベルを持ったモニタースピーカーを、とりあえず導入してしまうというのも手です。そんな第一歩のスピーカーとしてお勧めできるのが、今回とりあげるM-AudioのBX3およびBX4なのです。
何十万円もするスピーカーなら真剣に吟味する必要もあるでしょうが、いずれも15,000円程度あれば購入できる機材なので、それほど気負うこともないと思ますし、音質的にもこの価格からは信じられないレベルのサウンドを出すことができるので、試し聴きせずに、ネット通販などで購入しても後悔することはないはず。もちろん、事前に設置可能かどうかの大きさをチェックしておく必要はありますが、BX3なんて140(横幅)x145(奥行)x208mm(高さ)というサイズなので、小さなスペースでも無理なく設置できるはず。
4.5インチのBX4のペア(左)と3.5インチのBX3のペア(右)
それでいて、120W(トータルピーク)という大音量まで出せるのも重要なポイント。こんなに小さいのに、まさに爆音まで出せるので誰もが驚くモニタースピーカーなのです。
もっとも、音量を絞っても、非常に明瞭なサウンドであり、まさにモニタースピーカーという解像度の高い音で表現できます。そのためレコーディング時でのサウンドチェック、各トラックの音のチェック、全体をミックスする際のチェックには大きな威力を発揮してくれるはずです。
ちなみに、一回り大きいBX4も同じ120Wの出力。両方聴き比べてみたところ、確かに音量面では大きな差は感じませんでしたが、やはり低音の響きにおいてはBX4のほうがあります。その点では、個人的にはBX4のほうがお勧めですが、そこは設置スペースとの兼ね合いもあるので、それぞれで判断してみてください。
さて、大きさ以外の点でBX3もBX4も基本的な構造は同じです。左右ペアでセットとなっているわけですが、片方にアンプが内蔵されたアクティブスピーカーで、もう片方はアンプの入っていないパッシブスピーカーという組み合わせ。そしてその2つのスピーカーを付属の3.5ミリジャックのケーブルで接続する形になっているのです。
アンプ内蔵のモジュール(左)からアンプを内蔵しないモジュール(右)へ付属ケーブルで接続する
小型のモニタースピーカーだと、こういう組み合わせの製品も多いのですが、M-AudioのBX-3、BX-4が非常に便利なのは、アンプ内蔵のアクティブスピーカーを右に置くのか、左に置くのか、スイッチで選択できるようになっていること。そう、アクティブスピーカー側には電源ケーブルを指し、オーディオインターフェイスなどからの入力信号を入れる端子が用意されているので、DTMの環境によって、右に置くのがいいか、左に置くのがいいかは変わってくるはずです。そのどちらにでも合わせられるというのは、省スペース化を実現する上でも重要なポイントなので、嬉しいところです。
アクティブスピーカーを右に置くか左に置くかスイッチで設定可能
また、そのオーディオインターフェイスなどと接続するための入力端子が3つ用意されているというのも、BX3、BX4の特徴です。メインとして使うべきはリアにあるTRSフォンの入力端子です。ここにTRSフォン、つまり3接点のバランス型のケーブルでオーディオインターフェイスと接続することで、ノイズの入りにくい高音質な入力が可能になります。
バランス接続ができるTRSフォンのケーブルで接続するのがベスト
一方で、その上にはRCAのピンジャックがL/Rで用意されています。オーディオインターフェイスやその他オーディオ機器の出力がアンバランス型の場合などは、ここに接続するのもありです。ここで気になるのはTRSフォンにもRCAピンジャックにも、それぞれ別の機器を接続したらどうなるか、という点。試してみたところ、答えは簡単。両方とも音が出ました!
RCA入力(上)とTRSフォン入力(下)を同時接続するとミックスされた音が出る
もっともそれぞれのレベルを調整するパラメーターなどは用意されていないので、あまりお勧めする使い方ではないですが、ここで2つの機器の音をミックスしてしまうこともできるわけです。
さらにもう一つ用意されているのがフロントにある3.5mmのミニジャックです。上がAUX入力、下がヘッドホン出力となっており、上に入力信号を入れると、リアのTRSフォン/RCAピンの入力はオフになり、フロントからの音が優先されて音がでるようになります。
また下のヘッドホン端子にヘッドホン/イヤホンを接続するとスピーカーからの音は止まり、ヘッドホン/イヤホンからのみ音が出る仕組みになっていました。こうした細かな入出力がいろいろ用意されているのも、DTM環境においては取り回しがしやすく便利だと思いました。
もう一つ、リアに用意されているのはHIGH、LOWのツマミ。通常はセンターに設定しておけばいいと思いますが、これをいじることで高域・低域を±6dBの範囲で調整することができるので、低域が物足りないとか、高域が出すぎている……と感じる場合には少し動かしてみてもいいかもしれません。
そんな調整機能も持ったBX3、BX4、いろいろな音源で音を出して試してみましたが、すごく使いやすく、いいモニターだと感じました。この価格でこれだけのクオリティーのモニターが入手できるのですから、いい時代ですよね。
ちなみに、BX3、BX4をM-Audioサイトでユーザー登録すると、いろいろなソフトがゲットできるというオマケがあるのも嬉しいところです。具体的に挙げると
Pro Tools |First M-Audio Edition
Eleven Lite
Avid Effect Plugins
Xpand!2
のそれぞれ。MPC BeatsはAKAIのDAWであり、以前に「AKAIの無料DAW、MPC beatsで誰でもビートメイキング。多機能ミニ鍵盤MPK mini MK3との連携で威力は最大化する」という記事でも紹介しているので、こちらを参考にしてみてください。
またPro Tools |First M-Audio Editionはご存知、プロ御用達DAWのエントリー版。それを拡張するプラグインとしてギターアンプシミュレーターのEleven Lite、さらに20種類のエフェクトをセットにしたAvide Effect Plugins、そしてマルチ音源のXpand!2も入手できるのです。
各種プラグインもセットとなったPro Tools|Firest M-Audio Edtionもバンドルされている
以上、M-AudioのパワードモニタースピーカーであるBX3とBX4について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?手ごろな価格で、小さくて、高音質・大出力まで可能というこのモニタースピーカー、持っておいて損のない機材だと思います。
※2021.01.28追記
2021.01.12に放送した「DTMステーションPlus!」から、第166回「ZOOM V3でDTMに新次元のVocalを!」のプレトーク部分です。「15,000円で買えるコンパクトなモニタスピーカー、M-AudioのBX3、BX4が高音質・高性能!」から再生されます。ぜひご覧ください!
【関連情報】
M-Audio BX3製品情報
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MPC Beats製品情報
【価格チェック&購入】
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