年に1台は新しいPCを入手するのが趣味なのですが、前回、ベアボーンを使ってPCを組み立てたのが2019年1月だったので、もう2年近く前。そのマシンについては、AV Watchの連載のほうで少し紹介してみましたが、そろそろ何か欲しいな……と思っていました。そうした中、声優の小岩井ことりさんが、Ryzen Threadripper 3970Xをベースにしたマシンを自作したという話を聞いて、最近Ryzenってよく話題に出るけどどうなんだろう……と思っていたのです。
ただ、小岩井さんの場合、PC組み立て予算に100万円も突っ込んで完成させたスーパー高速マシンということで、そんな真似はさすがにできません。一方で、ネットのニュースで手のひらに乗る小さなRyzenマシンをASUSが出していることを知り、価格的にもトータル9万円程度でできそうだったので、それにチャレンジしてみることにしました。個人的にはずっとIntelのCPUを使ってきたので、AMDのCPUでPCを作るのは2000年ごろに使っていたAthlon以来、約20年ぶり。実際DTMで使えるのか、パワー的に問題ないのか、騒音や熱などはどうなのかなど、紹介してみましょう。
ノートPCとMacにおいては、完成品を買ってきますが、デスクトップPCは自分で組み立てるようにしています。そのほうが、自分の好きなスペックにすることができるし、OSはクリーンインストールから不要なソフトが入っておらず、スッキリするからです。最近メーカー製のPCが安いので、必ずしも自作PCが安いとは限らないですが、予算に応じて自由に組めるのも大きなメリットだと思っています。
Amazonで42,800円のASUSのMiniPC PN50 BBR026MD
実は、いまのAMD Ryzenにどんなバリエーションがあるのかも全然分からず、ただ名前だけで手を出してみた……というのが正直なところですが、今回入手したのはASUSの
という超小型のベアボーン。まあ、ベアボーンといっても、一般のベアボーンよりもさらにシンプルで、中にメモリとHDD/SSDを組み込んでOSをインストールすればもう完成という単純なもの。PCを組み立てたことがないような初心者でも簡単にできてしまいます。
そして、このMiniPC PN50にはAMDの
というCPUが搭載されています。調べてみたところノートPC用の省電力CPUとのことですが、以下のようにCPUコア数6、最大ブースと・クロック 4.0GHzなど、そこそこのスペックにはなっている模様です。
このベアボーン本体をAmazonで調べてみると、47,800円(税込)と手ごろ。せっかくならメモリは目いっぱいの64GB積んでみようと考えました。また、SSD、HDDの両方を内蔵することが可能なのですが、ここではとりあえずSSDを1TB搭載して、静音マシンにしてみようということにしたのです。
そこで見つけたのがCrucialのM.2 SSDの1TB P1シリーズ Type2280というもので11,981円。一方メモリも同じくCrucialのS.O.DIMM DDR4-3200の16GBx2というものはAmazonで見つかったけれど、目的の32GBx2は見当たらず。ネット検索してみたところ、秋葉原のショップ、ARKのオンラインストアで32,800円であったのを発見し、これを購入しました。税込みトータル額は87,581円。果たしてどんなものになるのか。
購入したのはベアボーン本体のほか、M.2のSSD 1TBとメモリ64GB
とりあえず、届いたものの内容物をチェック。すべて揃っていることを確認の上、ドライバで本体ネジを外してシャーシを開きます。
まずはメモリの取り付け。S.O.DIMM用のスロットが二つあるので、1つずつ差し込み、カチっと鳴るところまで抑えます。
続いてM.2のSSD。こちも別のスロットに差し込み、上から軽く抑えた上で、付属のネジをドライバで留めればOKです。
組み立てといっても、たったこれだけ。再度シャーシを元に戻してネジをはめれば、完成です。
ACアダプタをつないで電源を入れてみると……、BIOSの画面が表示され、それぞれチェックしてみると問題なさそうです。メモリ容量が表示されなかったので、最初大丈夫か…?とドキっとしましたが、結果は問題なし。
さっそくWindows 10をインストールしてみたところ、30分強でインストールも完了。これは手元にあるライセンスを使いましたが、新調する場合は、本体もしくは、SSD、メモリなどとセットでDSP版を購入するのが良さそうですね。
Windows 10をインストール。ちなみに1TBのSSDはCドライブ用に256GB、Dドライブ用に768GBと割り振った
とりあえず、Windowsが動作したところで、改めて、PN50のスペックを確認すると、なかなかよくできたマシンです。
フロントには
USB 3.2Type-A×1
オーディオジャック×1
があるほか、microSDカードスロット、さらには赤外線リモコンのIRセンサーまで入っています。赤外線リモコンはまだ使い方が分かってないですが、オーディオやビデオのプレイバックなどをテレビのリモコンでできるのだとか……。
リアのほうには
USB 3.2 Gen 1 Type-A x 2
HDMI出力×1
DisplayPort×1
LAN(RJ45)×1
電源入力×1
とあり、一通り何でも揃っていますね。
とりあえず、手元にあったIK Multimediaの小さなオーディオインターフェイスiRig Pro DUO I/Oを接続し、ドライバをインストールすると、問題なく使えるようです。
iRig Pro DUO I/Oをオーディオインターフェイスとして利用。接続はUSB Type-CでもType AでもOKだった
ここでStudio One 5をインストールして、軽くベンチマークしてみることにしました。デモ曲として入っている、やや重た目なデータである「Vulpes Obsidian Sanctum」を読み込んで再生してみるとまったく問題なく作成することがきます。
Studio One 5でデモ曲を読み込んで再生させると、CPU負荷は30~40%を示した
パフォーマンスモニターを見るとディスクはほぼ0%のまま動きませんが、CPUのほうは30%前後と、それなりにパワーを喰ってはいるようです。Windowsのタスクマネジャーで見ると、6つのスレッドにしっかりと分散されて処理されていることも確認できます。
ちなみに冒頭で紹介した普段使っているIntel第8世代のPCでは、25%程度なので、それよりは重い感じ。もっともIntelマシンは6コア12スレッドで、CPU動作速度も3.2GHzなので、そもそものCPUスペックで結構差がある模様。その意味では、高速マシンというほどではないですが、DAWを使う分には問題なさそうです。
USB Type-C、USB Type AにmicroSDスロットなどが用意されている
ただし、iRig Pro DUO I/Oのバッファサイズを8Sampleにし、ドロップアウト保護を「最小」にすると、若干プチプチとノイズが入ってきてしまうので、この辺が限界。8Sampleでもドロップアウト保護を「小」にすれば音に問題はなくなるし、「最大」にすればCPU使用率も15%程度まで落とすことができるので、さらに余裕が出てきますね。
リアパネルにはUSB端子のほかにHDMI、ディスプレイポート、LANなどがある
気になる騒音だが、ファンレスではないものの、極めて音は小さく、まさに静音PC。このRyzenがノートPC用のCPUだからなのか、熱もあまり出ず、その点でも心配は無用でした。
Thunderbolt端子として利用できることを期待したけれど無理だった
ところで、本体フロントのUSB Type-Cの端子、よく見ると小さく雷マークがあるので、「これは、もしかしてThunderbolt 3が使えるのかも!」と、Universal AudioのArrow(現Apollo Solo)を接続してみましたが、残念ながらダメ。ここは過剰な期待は禁物ということなのでしょう。
以上、簡単ではありますが、Ryzenを搭載した小さなPCについてレポートしてみましたが、いかがだったでしょうか?
実は私自身は、3年前にほぼ同サイズのNUCというIntelのPCを購入し、今も持ち歩き用デスクトップPCとして使っているので、大きな感動があったわけではないんです。が、やっぱりこういう小さなマシンがあると、すごく便利。十分メインマシンとしても使えるし、サブPCとして持ち歩き用に使うとさらに威力を発揮しそうです。
個人的にはNUC 7i7という第7世代Core i7の同サイズマシンを持っていたので、どう使い分けるかは考え中
もっとも結論からいえば、64GBもメモリを搭載せず、16GB程度でも十分だったかなという気もしますが、それなら6万円台でも入手できるので、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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