ちょくちょく常識外れな値付けで驚かせてくれるソースネクストですが、またちょっと異常な値付けで製品展開をしています。今回紹介するのは先日も「Windows DTMerがSOUND FORGE Pro 14を持っておくべき7つの理由」という記事で紹介したSOUND FORGE Pro 14にさまざまなソフトをバンドルしたSOUND FORGE Pro 14 SUITE。SOUND FORGE Pro 14としての機能は何も変わらないものの、ここにSteinbergのSpectraLayers Pro 7やMelodyne 5 Essentialなどがバンドルされたバージョンで、どちらがメインか分からない製品構成になっている製品です。
そもそもSpectraLayers Pro 7自体、Steinbergが30,000円(税抜き)という価格でダウンロード販売を行っているのですが、これと9,000円でダウンロード販売されているMelodyne 5 Essential、さらにiZotopeなどの各種プラグインをセットにして19,000円というのだから、値付けの根拠がわかりません。SOUND FORGE Pro 14単体の価格が12,900円なので、差額で計算すればSpectraLayers Pro 7ほか諸々で6,100円というメチャクチャな設定です。SOUND FORGE自体はWindows専用ですが、SpectraLayersやMelodyne、Ozone、RXなどはMacでも利用可能なので、Macユーザーにとってもお得なセット。これでホントに利益がでるのか、ちょっと心配になってしまうほどですが、このタイミングでSpectraLayers Pro 7を試してみたところ、AI機能を搭載し、さらに強力なソフトへと進化していました。実際そんなソフトなのか、SpectraLayers Pro 7に焦点を絞って紹介してみたいと思います。
SpectraLayers Pro 7を同梱したSOUND FORGE Pro 14 SUITEがSpectraLayres単体で買うより安い珍現象が発生
ドイツMAGIXのSOUND FORGE Pro 14 SUITEは、今年の夏に世界中で英語版が発売され、少し遅れて日本でも8月27日から発売された複数のソフトがセットになった製品です。その中身は
SpectraLayers Pro 7 (Steinberg)
Melodyne 5 Essential (Celemony)
Ozone 9 Elements (iZotope)
RX7 Elements (iZotope)
Noise Reduction Pack (MAGIX)
Acoustic Mirro Impulse Files (MAGIX)
VariVerb II (MAGIX)
Vintage Effects Suite (MAGIX)
Vandal (MAGIX)
というまさにテンコ盛りな内容となっています。その、中心ソフトである波形編集ソフトのSOUND FORGE Pro 14に関しては、先日の記事でいろいろと紹介しているので、そちらに譲るとして、今回の最大の目玉となるのが、SteinbergのSpectraLayers Pro 7です。
さまざまなソフトが同梱されたSOUND FORGE Pro 14 SUITEのインストール画面
「SpectraLayers ProがSteinberg製品って、どういうこと?」と不思議に感じられた方もいると思いますが、昨年の記事でも解説した通り、このソフトは、もともとSOUND FORGEと同様、MAGIXのソフトだったわけですが、昨年、Steinbergに事業譲渡され、現在はSteinbergの製品となっているのです。
現時点において、国内でSpectraLayers Pro 7のパッケージ版が発売されていないからなのか、日本ではSteinbergもあまり積極的な営業展開をしていないようですが、8月3日にリリースされたばかりのこのソフト、AIを使って処理するUnmix Stemsなる超強力な機能が搭載されたのを試してみたので、ちょっとこちらのデモをご覧ください。
お分かりいただけただけたでしょうか? これは作曲家の多田彰文さん編曲で、声優の田村響華さんが歌った「しゃぼんだま」のWAVファイルをSpectraLayers Pro 7に読み込ませた後、Unmix Stemsという機能を実行することで、ボーカル、ピアノ、ドラム、ベース、その他(この曲では主にアコースティックギター)に分解できてしまったというもの。
AIの進歩により、最近この手のことを実現するソフトが増えてきていますが、これはかなり高速に処理できるのとともに、分離具合も非常にキレイですよね。
もちろんSpectraLayers Pro 7は、音の分解だけでなく、さまざまな機能を持つ高性能なソフト。8月3日のリリース時にはSNS上では結構話題になったので、以下のようなプロモーションビデオをご覧になった方も少なくなかったのではないでしょうか?
これを見ると、なんとなく雰囲気が分かると思いますが、SpectraLayersは、オーディオをスペクトル分解した上で、グラフィカルに表示し、それをPhotoshopのような感じでレタッチ可能なソフトです。3D表示させることも可能になっているため、まさに音を立体的に捉えてエディットできるソフトなのです。音を3Dで立体的に表示させ、エディットすることができる
これを利用することで、たとえばレコーディング中に電話がかかってきた際のコール音を視覚化するとともに、それを抜き出したり、ホールでのコンサート録音中に観客席から入った咳払いのノイズを視覚化して取り除く……なんてことができるユニークなソフトなのです。
そのSpectraLayers Proが新バージョンの7になって機能強化されたとしているのが、先ほどのAI機能であり、ステムに分解することを自動にできたわけですが、ほかにもAI機能を用いて、トーンとノイズ、トランジェントというレイヤーに分解することなども可能になっています。
Select Similar機能で、似たパターンを探すことができる
さらにやはりAIの強みともいえるのがパターン認識です。SpectraLayers Pro 7にはSelect Similarという似たパターンを探し出す機能が搭載されています。そのため、ある音を見つけ出して選択した後、この機能を利用することで、その前にある似たパターン、その後にある似たパターンをスペクタラムから自動選択することが可能となっています。
ほかにもハムノイズの除去、クリップノイズやクリックノイズの修復、またヒーリングといった機能も搭載されています。ヒーリングとはあまり聞きなれないエディット用語ですが、特定の音を除去しつつ、そこに違和感が出ないように、スムーズな感じで音を消してくれる機能です。
SOUND FORGE Pro 14と有機的な連携ができるようになった
また前バージョンからARA2に対応したため、SOUND FORGE Pro 14の内部機能のようにSpectraLayers Proを使ったり、Cubase Pro 10.5の内部機能のように使うことができ、ソフト間の連携性がより高まっています。
ARAによってCubaseの一機能のようにSpectraLayers Pro 7を使うことができる
またVST3対応についても、より便利に使えるように進化しており、前述のようにステムに分解した際、それぞれのレイヤーごとに個別のエフェクトを掛けるといったこともできるようになったのです。たとえば、先ほど分解したパートの中で、ボーカルだけに深めのリバーブを掛ける……なんてことが簡単にできるのです。
SpectraLayers Pro 7はeLicenserで管理される
ちなみにSpectraLayers ProがMAGIXからSteinbergに譲渡されたことで、非常に大きなメリットとなったのは、ライセンス管理がeLicenserに切り替わったこと。そうMAGIX時代(その前のSony Creative Software時代も含めて)は一度インストールしたら、ほかのマシンに引っ越すことなどできず、大きな問題になっていました。SOUND FORGEを含め他のMAGIXソフトはライセンス管理もスマートにできていたのに、なぜかSpectraLayers Proだけは妙な管理になっていたのです。それがeLicenserになったことで、ライセンス管理がCubaseなどと同様になり、すごく扱いやすくなりました。ただし、できれば事故を無くすためにもSoft eLicenserではなく、ハードウェアのUSBドングルであるSteinbergKeyを利用するのがお勧めなので、もし持っていない方は、このタイミングに入手しておくのがお勧めです。
SpectraLayers Pro 7を使うなら、SteinbergKeyを入手しておくのが絶対おすすめ
以上SpectraLayers Pro 7について、簡単に紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?これだけの機能を持ったソフトを、オマケ扱い?で安く購入できるというのは、ユーザーにとってはうれしい限り。Steinbergの新製品を他社が安く売ってしまうという、やや理解に苦しむところではありますが、事業譲渡の条件の中に、そんな取引があったのかもしれません。いずれにしても、このタイミングで入手しておくのは、悪くない選択だと思います。
Mac版の入手法
SOUND FORGE Pro 14 Suiteの中に入っているSpectraLayers Pro 7、Melodyne 5 Essential、iZotope RX7 Elements、iZotope Ozone 9 ElementsはMacにも対応しています。ただし、これらはソースネクストからインストーラは提供されておらず、シリアルコードのみの発行となるため、別途ダウンロードが必要となります。
SpectraLayers Pro 7はSteibergサイトにおいてSteinberg Download Assistantをダウンロードし、これをインストールすることで入手可能です。
またMelodyne 5 Essentialは、まずcelemonyサイトにアクセスの上、ユーザーアカウントを作成し、ログインします。その後「ライセンスを追加」のところで、シリアルを入力することで、ユーザー登録が行え、ダウンロード可能になります。
そしてiZotope RX7 ElementsおよびOzone 9 Elementsは、iZotopeサイトにアクセスの上、ユーザーアカウントを作成し、ログインします。その後「Products Downloads」からダウンロードすることができます。
※2020.10.05追記
2020.09.29に放送した「DTMステーションPlus!」から、第160回「KOMPLETE 13 & MASCHINE+」のプレトーク部分です。「ミックス音をパートごとに分解可能な魔法のソフトSpectraLayers Pro 7同梱で19,000円!? SOUND FORGE Pro 14 Suiteの値付がオカシイ!」から再生されます。ぜひご覧ください!
【関連情報】
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