SENNHEISER創業75周年記念モデルのHD 25 Limited Editionが数量限定で発売。HD 25が世界中のスタジオで使われる理由

ドイツの音響機器メーカーSENNHEISER(ゼンハイザー)から、創業75周年を記念したアニバーサリーモデルのモニターヘッドホン、HD 25 Limited Editionが発売されました。ヨーロッパを中心に音楽の制作現場で愛用されているHD 25をベースに、1968年に発売された世界初の開放型ヘッドホンHD414を彷彿とさせる黄色のイヤーパッドを採用したスペシャルモデル。6月4日の発表とともに楽器店などでは予約が殺到し、入手しづらい状況になっているようです。

このベースとなったHD 25は、スタジオモニターのヘッドホンとして世界中で広く使われているもので、実際に使っている方も少なくないと思いますが、この機会に、なぜHD 25が世界中の制作現場で使われているのか、また同じスタジオモニターとして人気の高いソニーのMDR-CD900STと比較するとどんな特徴があるのか、さらにはHD 25の下位モデルであるHD 25 Lightとはどう違うのかなど、実際に試してみたので紹介してみましょう。

SENNHEISER創業75周年記念モデルのHD 25 Limited Editionが数量限定で発売

SENNHEISERは、1945年に前身のLabor Wを設立して以来、今年で創業75周年を迎えました。設立以降、「くじら」という愛称で長年レコーディング業界で使用されているダイナミックマイク「MD 421」や放送業界で使用されている定番のガンマイク「MKH 416」など、業界で使用され続けている名機たちを世に送り出しています。そして、1968年には世界初の開放型ヘッドホンHD 414を開発し、累計1000万個以上売り上げ、SENNHEISERといえば開放型ヘッドホンというイメージを固めていきました。

1988年に満を持してリリースしたHD 25は、現在でもスタジオモニターとして世界的に広く使われており、今回限定モデルのHD 25 Limited Editionが6月4日に発表され、6月18日より発売されました。

世界初の開放型ヘッドホンHD414を彷彿とさせる黄色のイヤーパッドを採用した HD 25 Limited Edition

HD 25をベースに、黄色いイヤーパッドとネームプレートにレトロなSENNHEISERのオリジナルロゴがプリントされたHD 25 Limited Edition。パッケージもレトロ仕様となっていて、海外情報によると世界中で25000台の数量限定で発売されるとのこと。

パッケージはレトロ仕様

6月4日には、発表と同時に予約が開始され、各所で入手しづらい状況になっておりますが、6月18日14時現在、Amazonなど一部でまだ取り扱っているようです。もっともこのアニバーサリーモデルの音質は、HD 25とまったく同じ。実際HD 25自体が、かなりいいヘッドホンなので、音楽に関わっているのであれば、持っていて損はないと思います。

アニバーサリーモデルとオリジナルのHD 25はまったく同じスペック

ここで少しHD 25の歴史を振り返ってみましょう。前述したようにHD 25は、1988年にリリースされて以降、スタジオモニターとして、世界中で使われています。とくにヨーロッパを中心に、レコーディングスタジオや放送局で使用されているのはもちろんのこと、現在は世界中のDJブースでも愛用されています。

当初は、主に映画製作や放送業界をターゲットに発売されていたらしいのですが、取り回しのよさや性能の高さがDJからも評価され、Youtubeで10億回再生以上されている楽曲「Hey Mama ft Nicki Minaj, Bebe Rexha & Afrojack」を作ったフランスのDJ・音楽プロデューサー Pierre David Guettaやグラミー賞受賞履歴のあるフランスのDJ Bob Sinclar、リアーナとコラボした楽曲で世界的なヒット曲を世に放ったスコットランド出身のDJ Calvin Harrisなど、多くの有名なミュージシャンが愛用しています。

数多くの有名DJも使用している

そんなHD 25は、初代モデルから大きなバージョンアップはないものの、マイナーバーチェンジは何度か繰り返しており、今まで「HD 25-1」や「HD 25-1 II」といった名前で発売されていたこともあります。また以前、誕生25周年を記念して発売されたHD 25 ALUMINIUMというモデルも存在します。

過去に誕生25周年を記念して発売されたHD 25 ALUMINIUM

現在のラインナップとしては、HD 25の通常モデルのほか、HD 25の通常モデルに予備のケーブルとイヤーパッド、キャリングポーチを付属した「HD 25 Plus」が用意されています。一方で、HD 25の下位モデルとして「HD 25 Light」も存在しており、登場当初はカプセルも異なる完全な下位モデルという扱いでした。しかし、その後HD 25と同じカプセルが採用されるようになり、仕様上はHD 25と同じ音で、約3,000円安いモデルとなっています。

下位モデルとしてHD 25 Lightが存在する

さてここからは、冒頭でもお伝えしたように、HD 25 Limited EditionとMDR-CD900STをいろいろな面から比較してみようと思います。お伝えしたようにHD 25とHD 25 Limited Editionの音質はまったく同じ。イヤーパッドの色が違うものの装着感も同じで、ほかの機構部分も変わりはありません。

HD 25 Limited EditionとHD 25の違いはイヤーパッドの色とデザインのみ

日本のレコーディングスタジオでデファクトスタンダードとなっているMDR-CD900STについては、多くの人がご存知だと思いますが、簡単に紹介しておくと、もともとはCBSソニー信濃町スタジオ(ソニー・ミュージックスタジオ)で使うことを想定して1989年に発売されたスタジオモニターヘッドホンです。その後コンシューマー向けにも販売されることになり、現在ではモニターヘッドホンの定番として多くの場面で使用されています。音楽に携わっている方であれば、一度は装着して聴いたことがあると思うので、その違いが分かりやすいかもしれません。

 

まず両機種の装着感から見ていくと、MDR-CD900STは楕円形のハウジングをしており、イヤーパッドが耳に重なる感じの装着感で、側圧は低めとなっています。それに対し、HD 25 Limited Editionは、小さめの円形ハウジングをしており、耳の上に乗る感じの装着感で、側圧はMDR-CD900STよりも高く、もっとしっかりとホールドされる感じの着け心地です。

イスに座って作業する場合なら、しっかりした装着感でなくても大丈夫ですが、ドラムの演奏だったり、動きのある場合の外れにくさは大切ですよね。また重さを見てみると、MDR-CD900STのケーブルを除いた重量が約200gで、HD 25 Limited Editionはケーブルを除いた重量が140gとなっています。MDR-CD900STもモニターヘッドホンとしては軽いほうの分類ですが、それよりもHD 25 Limited Editionは60g軽いです。

MDR-CD900ST(左)と並べてみるとHD 25 Limited Edition(右)の方がハウジングが小さく、しっかりと装着できる

音質的なところを見てみると、MDR-CD900STは解像度が高く、低音域から高音域までフラットで、味気ない音と表現されることが多いです。また低音域の再現度は高いものの、量感は少なく、シャキッとした音質なので、長時間聴き続けていると疲れるという声もあります。ノイズをチェックしたり、シビアに音を聴きたいときには、最適なヘッドホンですが、楽しく音楽を聴くことには向いていないといえます。

一方HD 25 Limited Editionは、モニタリングの能力はMDR-CD900STと同等の実力を持っていますが、音の傾向はMDR-CD900STとだいぶ異なります。細かい音をモニタリングすることは、スタジオヘッドホンなので可能であると同時に、演奏の熱量やリズムだったりを感じとれるものとなっています。出音は、パンチ感があって、低音域はとくに聴きごたえがあります。とはいえ、高音域と中音域もしっかりと鳴っているので全体的なバランスはいいです。また空気感や定位感は秀逸で、どこで楽器が演奏されているかを確認することも可能です。

音質の傾向は、お互いに違う方向を向いている

たとえば、レコーディングの際のモニターとして、エンジニアが使用するのがMDR-CD900STだとしたら、演奏者が使用するのがHD 25 Limited Editionという感じでしょうか。もちろん、演奏者もシビアにモニタリングしたい場合があるとは思いますが、どちらかというと気持ちよく音楽に乗って演奏したり、いい歌を歌って、いいテイクを録ることが大切だと思います。すでにMDR-CD900STを持っている方も、HD 25 Limited Editionをレコーディング用に使って、MDR-CD900STをミックスやモニタリングに使用するという使い分けはいかかでしょうか?

またHD 25 Limited Editionは、モニター用途のほかリスニング用途して使うことにも向いています。音の詳細を楽しい音で再生してくれて、ロックやEDMなどリズムがしっかりした楽曲のノリを再現してくれます。R&Bやファンクといった楽曲のグルーブ感を感じたいときには、もってこいのヘッドホンです。

リファレンス用途としても最適

メンテナンス面を見てみると、両機種とも業務用のヘッドホンとして販売されているので、交換パーツを簡単に手に入れることが可能です。いざというときでも対応できるのは、こうした業務用ヘッドホンのメリットだと思います。またこういったロングセラー商品は、サードパーティー製の商品も豊富にあるので、カスタムを楽しみたい人にとっては嬉しいところだと思います。

HD 25 Limited Editionには予備のイヤーパッドが付属している

両機種ともイヤーパッドなどの交換は簡単に行えますが、大きな違いとしては、ヘッドホンケーブルが着脱式かどうかが挙げられます。ご存知の通りMDR-CD900STのヘッドホンケーブルは着脱式ではないので、断線時には修理に出す必要があります。一方HD 25やHD 25 Limited Edition、HD 25 Lightは着脱式を採用しているので、簡単にリケーブル可能です。

ヘッドホン側の端子は、HD 25専用の2ピン端子で、デフォルトで付いているケーブルのプレイヤー側は3.5mmステレオミニジャックです。L型ミニプラグは付属の6.3mm標準プラグへの変換を使えば、オーディオインターフェイスなどと接続できます。ちなみにHD 25 Limited Editionは右出しケーブルとなっており、多くのヘッドホンと逆なのも特徴的ですね。

ヘッドホン側の端子は、HD 25専用の2ピン端子となっている

それから、ほかにHD 25 Limited Editionの特徴的な部分は、ヘッドバンドが2つに分かれていることです。ヘッドバンドを広げることが可能で、頭頂部への負担を分散することができ、安定もしますし装着感はいいです。

ヘッドバンドは2つに分かれていて、広げることで頭頂部への負担を分散できる

また多くのDJがHD 25を使う理由として、ハウジングが前後に可動するので、片耳での使用が容易という点があります。片方の耳で会場の音を聴きつつ、次の曲をしっかりモニタリングすることができますし、周りで大きな音が鳴っていても遮音性が高いので、ちゃんと楽曲を聴きとれるという点もDJから評価されている理由なのでしょう。

L側のハウジングのみが前後に動かすことができる

ところで、HD 25の下位モデルにあたるHD 25 Lightですが、ヘッドバンドが1つになっていたり、ハウジングが動かなかったりといった違いがあるものの、重さは120gとさらに軽いのは魅力的です。音質は仕様上はHD 25と同じ音とされていますが、実際は少し異なります。全体的な傾向としては同じですが、HD 25よりもHD 25 Lightの方が中音域よりの出音で、ボーカルにファーカスされた音をしています。歌をしっかり聴きたいユーザーにとっては、HD 25 Lightを選択するのもアリだと思いますよ。

HD 25 Lightも魅力的なヘッドホンに仕上がっている

レコーディングだったり、ミックスだったり、音楽制作のさまざまなシチュエーションの中で最適なヘッドホンを選択していくことはとても重要だと思います。実際試聴してみて、自分に合うヘッドホンをぜひ見つけてみてください。

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Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • 北原

    初めましてにも関わらず、不躾な内容で失礼致します。
    文章中の「入手しずらい」という誤字がどうしても気になりましたので、「しづらい」に修正された方が良いかと思います。
    内容はMDRとの違いも書いてあり参考になりました。
    それだけに冒頭の誤字が気になりこの様なコメントを書いてしまい申し訳ありません。

    2020年6月28日 1:26 AM
    • 藤本 健

      北原様

      お世話になっております。ありがとうございます。修正しました。

      2020年6月28日 11:14 AM

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