デジタルエフェクトメーカーの老舗であるEventideから、また面白いプラグインエフェクトがリリースされました。Rotary Modというこの緑のプラグインは、レスリースピーカー・キャビネット、つまりローターリースピーカーをシミュレーションするエフェクトで、独特なうねるサウンドを作り出すプラグインです。
もともとはハモンドオルガンに入っていたレスリースピーカーを取り出してエフェクトとして古くから使われてきたものを再現するもの。本来9,800円(税抜)という製品。Eventideのエフェクトがこの値段で入手できるのですから、とりあえず1つ持っていて損のないプラグイン。どんなものなのか紹介してみましょう。
Evetideから新たにリリースされたH9 Plug-in SeriesのRotary Mod
DTMステーションでもたびたび取り上げている米Eventideは、世界の音楽シーンを支えてきた老舗デジタルエフェクトメーカー。1976年に発売されたハーモナイザー、H910に代表される同社のビンテージ製品を、最近は自らプラグインで再現し、誰でも手軽に使えるようにしているのが面白いところです。
そのEventideの現行のハードウェア製品として、ギター用のコンパクトなストンプボックス型デジタルエフェクター、H9 Harmonizerという製品があります。世界中のギタリストの間で高い評価を得ているH9 Harmonizerの中には数多くのエフェクトが詰まっているのですが、そのエフェクト類を最近、Eventideは1つ1つプラグイン化し、DTMユーザーへと解放しているのです。
先月はピッチシフターのMicroPitchとステレオディストーションのCrushStationをリリースしていましたが、今度はレスリースピーカー・キャビネットをシミュレーションするRotary Modです。実際、どんな音がするものなのか、あえてオルガンではなくギターのフレーズにさまざまなプリセットを切り替えて鳴らしてみたので、ちょっと聴いてみてください。
オルガンでの効果とはちょっと違う、結構使えるサウンドになるし、プリセットの違いでかなり異なる雰囲気になることが感じられたのではないでしょうか?
レスリースピーカー、ご存知の方にとっては当たり前の機材ですが、改めて説明しておくと、これはもともと1940年代のハモンドオルガンに搭載されていたもので、スピーカー自体がグルグルと回転することでドップラー効果などが生じ、独特なうねりのあるサウンドにするという原始的なエフェクトです。ウーファーとトゥイーターを別々の速度で回転させると、さらに不思議な効果が出せるなど、いろいろな工夫がされてきたエフェクトでもあります。
当然、数多くのソフトウェアメーカーが、これを再現しており、現在ハモンドオルガン、レスリースピーカー自体の商標権や製造権を持つ鈴木楽器がIK Multimediaと協力して、AmpliTube Leslie、T-RackS Leslieといったソフトウェアを出していることも以前、記事にしたことがありました。
IK Multumediaとはまただいぶアプローチの異なるレスリースピーカーシミュレーター、Rotary Mod
今回Eventideが出したRotary Modは本家が行っている厳密な再現というよりは、もっと気軽にロータリースピーカーサウンドを利用しようというコンセプトのプラグインであり、UIのデザインを見ても、パラメーターを見てもカジュアルでありつつ、本物よりもエッジの効いたサウンドが作れるものになっているようです。
さまざまなプリセットが用意されているのは、まずはこれを使うだけでもいろいろなサウンドを楽しめる
パラメーターについて簡単に紹介すると左右のフェーダーで入力と、出力のレベルを調整。ROTORは低域=ウーファーを回すスピード調整で、HORNは高域=トゥイーターを回すスピード調整。RTR/HRN MIXはそのROTORとHORNのバランスを調整するもの、HICUTはハイカットフィルターとなっています。
一方で、これとは別にセカンドLFOというものを持っており、それを使ってロータリースピーカーサウンドに対してモジュレーションをかけていくことも可能。そのセカンドLFOのスピードを決めるのがSENSで、どのくらいモジュレーションをかけるかを決めるのがAMOUNT。またLFOの波形はSOURCEで設定できるようになっており、具体的にはSine、Triangle、Peak、Random、Square、Ramp、Sample and Hold、Envelope、ADSR、Ribbonから選択できるようになっています。このあたりを見ても、単なるレスリースピーカーの再現とは違うことが分かると思います。
リボンコントローラーを利用することで、複数のパラメーターを同時に動かしていくことができる
もう一つEventideのプラグインで面白いのが、この下のほうにあるリボンコントローラーの存在。先日、「Eventideが物理モデリングでスプリングリバーブ=バネ・エコーをプラグイン化」という記事で、Springというエフェクトを紹介したことがありましたが、これにも搭載されていたリボンコントローラーがRotary Modにも引き継がれているのです。
先ほどのデモビデオからもお分かりいただけたと思いますが、リボンコントローラーは、複数のパラメーターを同時に動かすことを可能にするコントローラーで、ユーザーが自由に設定することが可能となっています。
そのほか、下にあるボタンを簡単に紹介しておくと、ACTIVEは、Rotary Modの効果のオン/オフを設定するもの、Slow/Fastはこれをオンにするとスローダウンして、ロータリースピーカーの回転を遅くするというもの、そしてTAPはタップボタンであり、これをタップしていくことで、そのスピードに対応する形で、ROTORもHORNも回転数が設定されるようになっています。
なお、リボンも含め各パラメーターごとにMIDIのコントロールチェンジで調整できるようになっていますから、DAWでオートメーション制御できるのはもちろんのこと、外部にMIDIコントローラーをつないで動かすこともできるので、活用の幅も広がりそうです。
このRotary Mod、先ほどはギターフレーズにかける形で、さまざまなプリセットを鳴らしてみたわけですが、Rotary Modの利用法はオルガンやギターに限ったものではありません。エレピにかけても気持ちいいサウンドになるし、パーカッションにかけてみるのもあり。さらにボーカルにかけると独特な不思議なサウンドにすることも可能。Eventideが、さまざまな楽器に対してどんな効果になるかを紹介するビデオを作っているので、見てみると面白いですよ。
なお、前述の通り、Rotary Modが3,900円で販売されているのは6月21日まで。海外サイトでも$39ドルとなっているようですが、為替レートでみると国内での購入のほうが安いほか、国内(Rock oNや宮地楽器、イケベ楽器、サウンドハウスなど)で購入した場合は、まもなく完成する日本語マニュアルも入手することが可能となっています。また、同じエンジンを持ったiOS版もあり、こちらは現在980円となっています(iOS版は日本語マニュアル対象外)。いろいろなシーンで活用できるエフェクトなので、このタイミングで入手してみてはいかがですか?
MicroPitchとCrushStation
Rotary ModがEventideのギター用エフェクターH9 Harmonizerの中にあるエフェクトの一つであることはお伝えした通りですが、同じH9 Harmonizerから切り出したのが、先月リリースされたMicroPitchおよびCrushStationです。いずれもEventide H9 Plugin Serigesとしてリリースされており、いずれも9,800円となっています。
簡単に紹介するとMicroPitchはピッチシフターの一つなのですが、2音とか3音ズラすというより、微妙なピッチを上げたり下げたり、また微妙なディレイをかけることで、特徴的なコーラス効果やフランジャー効果などが得られるというもの。以下のビデオにそのサウンドデモがあるので、ご覧ください。
一方、CrushStationはディストーションでありつつ、3バンドEQ、コンプレッション、オクターブミックスなどをの機能を統合したエフェクト。ギター用としてはもちろん、ほかの楽器用途でもいろいろと使えるほか、Rotary Mod同様にリボンコントローラーも活用できるので、パフォーマンス用としても使えそうです。こちらのビデオもあるので、サウンドの雰囲気を確認してみてはいかがですか?
【関連情報】
Rotary Mod製品情報
MicroPitch製品情報
CrushStation製品情報
【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ Rotary Mod
◎宮地楽器 ⇒ Rotary Mod
◎サウンドハウス ⇒ Rotary Mod
◎Rock oN ⇒ MicroPitch , CrushStation
◎宮地楽器 ⇒ MicroPitch , CrushStation
◎サウンドハウス ⇒ MicroPitch , CrushStation