普通のマイクをワイヤレスマイクへと変身させる!?SENNHEISERのワイヤレスシステムXS Wireless Digital

ヘッドホンやマイクなど、プロの音楽制作現場において絶大な信頼を置かれているドイツの音響機器メーカーSENNHEISERゼンハイザー)。そのSENNHEISERが開発した2.4GHz伝送ワイヤレスシステム「XS Wireless Digital」シリーズは、普通のボーカルマイクをワイヤレスマイクへと進化させ、ライブやリハーサル、レコーディング、ライブ配信……など、いろいろなシチュエーションでケーブルを無くし、ストレスなく自由に動き回れる環境を作ることができます。

ラインナップは動画クリエイター向けのセットやギタリスト向けのセットなど9種類あり、用途に応じて組み合わせを替えたり、拡張することもできるなど柔軟性に富んでいるのも大きな特徴です。組み合わせに応じてワンタッチですぐ接続できるので、初心者でも簡単に扱うことが可能。音飛びしない工夫がされていたり、SENNHEISERだからこそできる音質の高さを実現しているこの機材が、どういったものなのか紹介してみましょう。

自由自在にワイヤレス環境を作り出すSENNHEISERのXS Wireless Digitalシリーズ


SENNHEISERは、「くじら」という愛称で長年レコーディング業界で使用されているダイナミックマイク「MD 421」や放送業界で使用されている定番のガンマイク「MKH 416」など業界で使用され続けている名機たちを世に送り出してきました。またHD 600HD 25など、ヘッドホンに関しても世界的ロングセラーモデルを輩出していたりと、プロ・アマ問わず音楽に詳しくない方でも、SENNHEISERのサウンドを1度は聴いたことがあるはずです。

そんなSENNHEISERが昨年リリースした「XS Wireless Digital」シリーズは、通常のワイヤレスシステムとは違った、ユニークな発想のもと開発された製品です。一般的なワイヤレスマイクというと、送信機が搭載されたマイクと1Uハーフラックサイズぐらいの受信機がペアになっていて、基本的にその組み合わせを変更することはできません。ましてや、マイクを他社メーカーにするなどということはできないので、購入する際にはワイヤレスのシステムについて検討するとともに、そのマイク性能も選択における重要な要素となります。

それに対し、今回紹介する一方XS Wireless Digital XLR BASE SETは、送信機を手持ちのマイクに取り付け、受信機をミキサーやオーディオインターフェイスに接続すれば、ワイヤレス環境を構築することができるので、自由に機材を選んで使用することが可能という機材なのです。そのためワイヤレスマイクシステムと考えるようり、ケーブルのワイヤレス化ととらえたほうが分かりやすいかもしれません。。

他メーカーであっても手持ちのマイクに取り付ければ、ワイヤレスマイクとして使用できる

送信機、受信機ともに約10cmの長さ。持ち運びにも便利なサイズ感なので、リハーサル時に持ち込んだり、ライブで使ったり、自宅で簡単にレコーディングするときなど、多くの場面で活用することができます。Bluetoothイヤホンやワイヤレスのマウス・キーボード……など、最近多くの機器からケーブルがなくなり、実際ケーブルがないだけで、かなり取り回しがよく、便利に使える感覚は伝わると思います。とはいえ、気になるのは音質や接続の安定感。ここがイマイチだとしたら、使い物にならないですからね。この点をチェックしてみました。

長さは約10cm。コンパクトなので持ち運びにも便利。左が受信用、右が送信用

XS Wireless Digitalシリーズは、デジタルワイヤレスシステム採用しているので、アナログの方式のものとはさまざまな点で違います。まずマイクに入力された音声を一度デジタルに変換して伝送し、再度受信機でアナログに戻しています。その際のA/D、D/Aの精度は24bit/48kHzでCODECにはapt X Liveを採用したもの。そのためBluetoothイヤホンなどとは比較にならないハイレベルなものとなっています。

気になるレイテンシは4ms。これをどう評価するかは人それぞれですが、音速から考えると1.3m程度離れたところで鳴らした音が届くのと同等ですから、実用上まったく問題ないレベルと考えていいと思います。ちなみに、電波は2.4GHzの帯域を使用し、最適な条件の場合75mが送受信機範囲。デジタル方式ということもありクリアな音質で、さすが長年プロが愛用し続ける機材を作っているSENNHEISERクオリティといった印象です。また音が途切れにくくする方法としてTDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)という技術を用いているとのこと。これは同じ情報を2回伝送することで冗長性を持たせ、通信エラーを回避する仕組みとなっているため、接続の安定性が高いのが特徴となっています。

受信機は、オーディオインターフェイスやミキサーに接続して使用するといった使い方も可能

さて本体を見てみると、ボタンが1つ付いたシンプルな構造となっています。セットの送信機と受信機は、工場であらかじめペアリングされ発送されていますが、あらためて送信機と受信機をペアリングさせる際は、両機器のボタンを押して起動させるだけ。ボタンをもう1回押せばミュートに、長押しすれば電源がオフになります。

ボタン1つのシンプル設計。送信機、受信機どちらからでもミュート可能

1つの受信機に対しペアリング可能な台数は4台。さまざまなコネクタタイプと組み合わせて使うことができます。ただし、同時に利用可能な送信機は1つだけで、その間ほかのペアリングしている送信機の電源は切っておく必要があるとのこと。

バッテリーの駆動時間は5時間でモバイルバッテリーでも駆動できる仕様。充電は付属のUSB-A USB-Cケーブルで行います。また送信器と受信機のバッテリー残量は搭載されたLEDで判断可能で、ほかにも送信機と受信機が通信圏内から外れそうになると、LEDの点滅で知らせてくれます。

充電は付属のUSB-A USB-Cケーブルで行う

XS Wireless Digitalシリーズのラインナップは以下のそれぞれ。

MIシリーズ
XLR BASE SET(ボーカルセット)
INSTRUMENT BASE SET(ギターワイヤレスセット)
PEDALBOARD SET(ペダルボードセット)
A4Vシリーズ
PRESENTATION BASE SET(基本セット)
PORTABLE INTERVIEW SET(ポータブルインタビューセット)
LAVALIER SET(ラベリアセット)
PORTABLE ENG SET(ポータブルENG セット)
PORTABLE BASE SET(ポータブルベースセット)
PORTABLE LAVALIER SET(ポータブルラベリアセット)

XS Wireless Digitalシリーズは、ギターやボーカル向けのMIシリーズと動画制作ユーザー向けのA4Vシリーズの2つのシリーズに分かれています。どの組み合わせでも自由自在にペアリング可能で、さまざま用途を想定したラインナップが揃っているので、どんな環境でも適したセットが組めると思います。

マイクマークやミキサーマークなど、機種によって分かりやすく表示してある

たとえば、XS Wireless Digital XLR BASE SETの場合、送受信機の接続端子はXLR。付属品は、充電ケーブルとラベル用カラーステッカー、というシンプルなセットとなっています。一方動画制作ユーザー向けのA4Vシリーズ XS Wireless Digital PORTABLE LAVALIER SETは、送受信機の端子が3.5mmでラベリアマイク(ピンマイク)が付き、CL 35 カールコードケーブル 3.5mmジャック、ホットシューマウント、ベルトクリップ、USB-A-USB-C 充電ケーブル、ラベル用カラーステッカーがセットになっていて、カメラに接続してすぐに使えるラインナップも存在します。

XS Wireless Digital XLR BASE SETは、XLR端子が搭載

以上、XS Wireless Digitalシリーズは、さまざまなシチュエーションで使えるワイヤレスマイク製品でした。ちなみにXS Wireless Digitalシリーズはファンタム電源を送ることができないので、コンデンサマイクを使う場合には、SENNHEISER MKE 600といった電池でファンタム電源を送れるマイクを使う必要があります。今後、動画撮影しようと思っている方やワイヤレス環境を考えている方は、ぜひチェックしてみてください。

【関連情報】
XS Wireless Digital製品情報

【価格チェック&購入】
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Commentsこの記事についたコメント

1件のコメント
  • コンチ

    ライブで使うのはちょっと怖いけど、狭っ苦しいリハスタでギターやベースと場所を取り合いながらシールド取り回すの面倒なので便利かもですね。

    ちょっとお高いのですが、リーズナブルなXviveと比べてレイテンシや周波数特性、それに安定性など比較してみたいですね。

    まあ多少高くても、サポート体制や保証など、機械以外の要素も大きいですが。

    2020年6月4日 7:49 PM

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