「何だ!こりゃ!?」という、これまでにない常識外れのすごいオーディオエディタが誕生しました。イギリス生まれのHit’n’Mix Infinityというソフトが、それ。最新バージョンはv4.5なので、すでに海外では発売されていたようですが、4月6日からそのHit’n’Mix Infinityが国内でも正式発売されたのです。そして、日本上陸キャンペーンとして通常価格が36,000円(税抜)のところ、4月6日~5月6日の間、28,800円となっています。
これが何なのか、一言ではいい表しにくいけれど、誤解を恐れずに言えば、Melodyneを進化させて機能を増やし、より汎用的に使えるようにしたオーディオエディタといったところでしょうか…?CDのトラックを解析して、各パートに分解して音程を検出するといったこともできてしまう夢いっぱいのソフト。いわゆる波形エディタやスペクトラムエディタとはまったく異なり、オーディオをMIDIのように音程や長さで編集できるようにしたもので、音程を持たないリズムなども扱うことができ、テンポを検出した上で自由に調整できるなど、これまでのオーディオエディタの常識を覆すソフトなのです。かなり多くの機能を備えているようなので、まだすべてを把握できたわけではにのですが、とりあえず少し使ってみたので、これがどんなものなのかファーストインプレッションということで紹介してみたいと思います。
これまでの常識を覆すオーディオエディター、Hit’n’Mix Infinityが日本上陸
一般的にオーディオエディタというと、波形が表示され、それをカット&ペーストしたり、エフェクトを掛けたり、音量調整したり……といった使い方をするツールを指します。またSpectraLayersやiZotope RX、WaveLabなどオーディオをスペクトラム表示し、エディットしていくタイプのものもありますが、このHit’n’Mix Infinityはそれらとはまったく違うタイプのオーディオエディタです。
いきなりですが、すごいところからお見せしていきましょう。2年前にわれわれのレーベル、DTMステーションCreativeからリリースした小寺可南子さんボーカルの楽曲「Appreciation 100」という曲があるのですが、その冒頭の約30秒を切り出すとこんな感じです。
これをHit’n’Mix Infinityにドラッグ&ドロップで持っていくと、これがどんな構成の曲なのか聞いてきます。
見ると分かる通り、
Voice(ボイス)
Guitar(ギター)
Bass(ベース)
Percussion(パーカッション)
Other/Full Mix(その他、フルミックス)
という選択肢なっていますが、このデータはもちろ、すべてのが楽器、ボーカルをミックスしたトラックですから「Other/Full Mix」を選択します。すると、解析が始まり、30秒のデータではありますが、数分待たされます。そして解析した結果、以下のような画面になるのです。
オーディオファイルを読み込む(Ripする)と自動的にこのように解析される
見てみると、まさにピアノロールのような画面が表示されていますが、色がカラフルですよね。そして右下を見ると、各色に対する割り当てが表示されています。分かりますか?そう、何の設定もしていなかったのに、この楽曲がボーカル、ピアノ、ディストーションギター、ベース、バイオリンなどで構成されていると割り出し、それぞれの音の動きを解析してピアノロール表示していたのです。ちょっと衝撃的ですよね。
ここで、Dist.Guitarというところをソロの設定にして再生してみたのがこちら。
100%完璧ではないかもしれませんが、イントロにおけるギターをしっかり捉えていますよね。同じようにvoiceをソロにしてみたのがこちらです。
やはり完璧ではないけれど、ほぼ捉えているのが分かると思います。もちろん、楽曲によって、もっとキレイに分解できるもの、ここまではできないものなどいろいろではありますが、これがオーディオエディタなのかと驚きます。また、このビデオではソロボタンを使いましたが、各楽器ごとにバランス調整をすることも可能になっています。この辺りはiZotopeのRX7に搭載されたMusic Rebalanceなどにも近いところですが、その分解力はMusic Rebalanceの比ではなさそうです。ちなみに、ドラムなど音程がない楽器に関してはUnpitched(Low)およびUnpitched(High)に割り振られています。
これだけでも、すごいソフトであることが分かると思いますが、Hit’n’Mix Infinityは、音を解析して分解することを目的としたソフトではなく、それは単なる一機能に過ぎないのです。
そう冒頭で「Melodyneを進化させて機能を増やし、より汎用的に使えるようにしたオーディオエディタ」と表現しましたが、そのMelodyneのように、解析結果であるピアノロールを自由にいじれるようになっており、たとえば「ギターソロのフレーズを変更しちゃおう!」なんてことも可能なのです。
ギターのフレーズをMIDIのように変更することも簡単にできる
さらには「ボーカルをハモらせちゃえ!」っていったエディットも可能なのですが、さらに驚いたのはInstrument Paletteというもの。画面を右クリックすると、フォトレタッチソフトのパレットのようなものが出てくるのですが、これを使って、先ほど解析した結果のギターとかボーカルとかの一部をパレットとして取り出すことができます。その上で、鉛筆ツールを使って、ピアノロール上にピッチを描いていけば、ギターサウンドとかボーカルサウンドで、まったく新たにフレーズを作ってしまうことまで可能なのです。もう、メチャメチャですよね。
パレットを表示させ、フォトレタッチソフトのように各サウンドを抜き出したり、書き足すこともできる
ちなみに、このパレットに読み込めるのは解析した曲だけでなく、別の曲からも可能なので、まったく別の曲で使っていたギターサウンドを、この曲で別フレーズにして入れ込んでしまうなんて使い方も可能なわけです。まさに発想しだいで、使い方は無限大。自分の好きなCD楽曲を読み込ませたうえで、従来ではありえなかったリミックス作業も可能になってくるわけです。
さて、先ほどはミックスされた曲を解析して分解したわけですが、ギターのトラックとかベースのトラック、シンセのトラック…など、もともと何のサウンドであるかが分かっているオーディオデータであれば、より正確に解析することができます。その上で、従来の波形エディタ的なエディットではなく、MIDIのようにエディットできるのが、このHit’n’Mix Infinityのすごさなわけですが、その使い方の一例を示したのが以下のビデオです。
お分かりになったでしょうか?ドラムnベースのループ素材に、まったく別の女性ボーカルの素材をミックスしているのですが、この際に「Fit Tempo」という機能を使うことで、テンポを合わせ込んでいます。さらにドラムはそのままにベースの一部フレーズだけキーを変えるなんてことまで行っているのです。
まあ、テンポの合わせ込みは、いまどのDAWでもできるので、それほど驚くべきものではないのかもしれませんが、オーディオエディタとしてこんなことができてしまうとなると、少しこれまでの常識とは変わってくるのかもしれませんね。
なお、製品情報を見ると、Hit’n’Mix Infinityは既存のDAWとも連携できるとあります。具体的にはPro Tools、Logic Pro X、Ableton Live、FL Studio、ACID Pro、Reaperなどの名前が出ていましたが、これがどうなっているのかも確認してみました。
VSTとかAudioUnits、AAXなどのプラグインとして動くのかな?ReWireを使ったりするのかな?と思っていたら、ProToolsの場合、Infinity LinkというAudioSuiteプラグインとして機能し、Revoice Pro LinkやRX Connectなどと同様に相互に連携が可能となっているようです。
各DAWの外部エディタとしてHit’n’Mix Infinityを設定して連携させることができる。画面はFL Studio
それ以外のDAWの場合は、DAW側でオーディオクリップを開く際に、DAWのエディタではなく、外部エディタを起動できるタイプのDAWだと、Hit’n’Mix Infinityを開くことができます。もっとも外部エディタを指定できないCubaseなどでも、個別にオーディオクリップをHit’n’Mix Infinityに読み込ませれば同様のことができるので、工夫次第といったところでしょうか。
以上、ファーストインプレッションとしてHit’n’Mix Infinityを取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか?驚きの連続で、まだ全体像がつかめているわけではないので、これからもう少し使い方を探っていこうと思っています。有用な使い方、便利な使い方などが分かってきたところで、また活用記事などを掲載できれば、と思っているところです。
【関連情報】
Hit’n’Mix Infinity製品情報
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