たった1分の練習で弾ける楽器InstaChord(インスタコード)。日本のベンチャー企業が開発した、このギター型の電子楽器は、指1本でコードを押さえられるように設計されており、これまで楽器を演奏したことない人でも、簡単にコード演奏できるというユニークな楽器です。ギターでいう、ブリッジ部分には6つのパッドが搭載されていて、ストローク奏法やピアノの鍵盤を叩くような演奏、押さえて弾くといった、幅広い演奏方法が可能となっているのも楽しいところです。またBluetooth MIDIやUSB MIDIに対応しているので、DTM用途としても使用できる機材なのです。
InstaChordは、一般発売より先行し、5月28日からスタートしたクラウドファンディングのKibidangoで、1口29,800円(税別)で申し込むことによって、手に入れることができます(先着2,000名で、100人に1人無料になるキャンペーンも実施中)。クラウドファンディングの達成率によっては、特典のプレゼントもあるとのこと。128種類の内蔵音源を搭載し、本体にあるスピーカーからも手軽演奏できるInstaChordの試作機をお借りすることができたので、これがどんな楽器なのか、紹介してみましょう。
誰でも簡単に演奏ができるまったく新しい楽器、InstaChordを持つ開発者でミュージシャンの永田雄一さん
まずは、InstaChordがどんな楽器なのか、こちらをご覧ください。
いかがでしょうか?ギターのような見た目のInstaChordは、1つのボタンを押さえるだけで、コード演奏できる電子楽器なので、これまで楽器経験のない人、ギターに挑戦したことあるけど挫折してしまった……という方でも簡単にコード演奏することができそうです。
動画内で演奏を披露しているは、InstaChordの開発者で、作曲家・ミュージシャンでもある永田雄一さん。InstaChordは、昨年秋に開催された音系・メディアミックス同人即売会=M3でお披露目されていたほか、1月のNAMM SHOWに出展していたり、テレビやラジオでも取り上げられているので、どこかで見かけたことがあるという方もいるかもしれません。見た目はギター風な電子楽器になっていて中央部に液晶ディスプレイがある
では、実際にどうやって使う楽器なのか、見ていきましょう。このInstaChordの一番のポイントは、指1本でコードを押さえられること。さらにもう1つのボタンも押すことで、7th・maj7・sus4・dim・aug・6・add9といったコードも演奏可能となります。またメジャー・マイナー入替えボタンが搭載されていることにより、世の中にあるほぼすべての楽曲を演奏するのもユニークポイントです。
このようにInstaChordは、コードを演奏をすることが基本となるため、まずはコード譜を見ながら…ということになりわけですが、「譜面は読めないんだよな…」「コード理論とか難しそう…」という方も少なくないでしょう。でも大丈夫。譜面が読めない、コードもまったく分からないという人でも、番号を見ればすぐに弾けるというユニークな仕掛けになっているのです。これは分かりやすくするためにコードを番号に置き換えたもので、数多くの楽曲をInstaChordで弾けるようにする番号譜面をネットで公開するサービスも同時に開始するそうです。
著名曲のほとんどが揃うInstaChord用の番号譜面がネット公開される予定
「コード譜を番号に置き換える?どういうこと?」という方のための動画も用意されているので、こちらもぜひご覧ください。
ポピュラー音楽は、約140種類のコードのうち6種類の基本コードをメインに構成されています。基本コードは、Ⅰ Ⅱm Ⅲm Ⅳ Ⅴ Ⅵm(Ⅶdim)とローマ数字で表すことができ、Cキーの基本コードはC Dm Em F G Am (Bdim)となります。この基本コードは曲のキーが変わると、たとえばCのコード(和音)は、役割や形が変わります。なので、通常の楽器では、キーが変わると別の指づかいを覚える必要がある場合があります。
I, ii, iii, VI, V, vi, viiの基本コードが電卓のように配列されている
ですが、InstaChordでは、Ⅰ Ⅱm Ⅲm Ⅳ Ⅴ Ⅵmを1 2 3 4 5 6と置き換え、キーごとに最適なコードが自動的に切り替わるので、難しいことを考えずに演奏できるようになっています。押さえているコードは画面に表示され、コードを確認しつつ演奏できるので、コード進行の勉強にもなりますよ。
もちろん演奏したい楽曲のキーに合わせてInstaChord側も♯または♭と書かれたボタンで切り替えていくことが可能です。
InstaChordをギター風に弾く場合は、片方の手でボタンを押さえ、もう片方の手でブリッジ側のパッドをはじいて演奏します。128種類用意されている音色の中には、ピアノ音源やシンセサイザーの音色もあり、音色に応じて弾き方が変わります。これにより、さまざまな表現が可能となっています。またアルペジオなどの奏法にも対応しているのもよくできていると感心するところ。以下の動画ではどういった奏法が可能なのか紹介しているので、ぜひご覧ください。
冒頭の紹介動画や上記の動画で、カッティングやパワーコードの演奏、左手のボタンにベース音を割り当ててピアノのように両手で弾いたり、押す強さによって音量が変わるPressモードが搭載されていたりと、シンプルながらもいろいろなことができることが伝わったと思います。
内蔵スピーカーで鳴らすこともヘッドホンから出力することもできる
またInstaChordは、内蔵スピーカーが搭載されているので手軽に弾けますし、コンパクトなサイズ感で重量も軽いので、気軽に持ち運ぶこともできそうです。内蔵スピーカー以外にも3.5mmのヘッドホン端子が装備されているので、スピーカーから音が出せない場合でも楽しむことができます。
さきほどの動画の終わりで永田さんがいっていたように、MIDIを使うことで外部音源を鳴らすことも可能です。ここでは、Bluetooth MIDIを使って、iPadで起動したKORG moduleを鳴らしてみました。レイテンシーもほぼ感じることはなく、快適にiPadから音源を鳴らすことができました。
Bluetooth MIDIで接続してKORG Moduleを鳴らすこともできた
また、InstaChordにはUSB Type-C端子が搭載されているので、USB Type-Cケーブルを使って、PCと接続すればMIDI機器として扱うこともできます。DAW上で立ち上げたインストゥルメント音源に応じて、インスタコードの奏法を切り替えれば、最適な入力が行えます。
コードを打ち込めるMIDI機器としてかなり便利に使うことができるので、DTM用途としてもおすすめです。またここのUSB Type-C端子から充電できるようになっています。
演奏結果をDAWにMIDIでリアルタイムレコーディングしていくこともできる
ちなみにInstaChordの開発チームそうそうたるメンバーが携わっているようで、DTMステーションに登場されたことのある方もいろいろ。具体的には設計・プログラムにはポケット・ミクの開発に携わったウダデンシの宇田道信さん、Bluetooth MIDI関連ではキッコサウンドの廣井真さん、そのほか製造にはポケトークやタクシー用のタブレット端末など数多くのIoTデバイスを製造に携わったジェネシスホールディングスの藤岡淳一さん、デザインには、Gマーク・グッドデザイン賞など多数の受賞経験のある武者デザインプロジェクトの武者康平さん……、こうしたメンバーを見ても、しっかりした楽器に仕上がってそうです。
※2020.7.8追記
DTMステーションでも何度か記事にしたGODJやGODJ Plus、ovoなどの開発者である元JDSoundの宮崎晃一郎さんも内蔵スピーカーの開発やファームウェアアップデートが可能な回路設計を行っていることが発表されました。
あらためて、5月28日からスタートしたクラウドファンディングについてです。価格は29800円(税別・送料込み)となっていて、「Kibidango」から申し込みすることができます。またクラウドファンディングに申し込んだ方には、限定デザインの着せ替えパネルがもらえるとのこと。また先着2,000名まで、100人に1人無料になるキャンペーンも実施されています。さらにコロナウイルスの影響で苦しむ事業者に売上の5%を分配する「売上金シェアプログラム」というキャンペーンも実施中とのこと。
その後、クラウドファンディングとして4000台の注文を達成したら、専用のソフトケース。6000台の注文を達成したら、黒、白、赤から選べるようになるといった、達成率に応じてプレゼントが貰えます。ただし生産は最低2000台の注文が入ったらとなっているので、ぜひこの機会にInstaChordのクラウドファンディングに参加してInstaChordを入手してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
InstaChord公式サイト
InstaChordクラウドファンディング(Kibidango)
売上金シェアプログラム