以前「Prophet-5のモノ版ソフトシンセ、u-heのRepro-1がスゴすぎる!」という記事でも紹介したことがあったドイツのプラグインメーカー、u-he(英語読みでユーヒー、ドイツ語読みならウーヘー)。その後、まさにProphet-5を再現する8音ポリのRepro-5もリリースされ、現在はRepro-1/Repro-5セットでRepro v1.1(税抜実売価格16,600円)として販売されていますが、そのu-heから新たなソフトシンセやプラグインエフェクトがリリースされ、国内での発売も開始されました。
目玉となるのが、3つの異なるシンセエンジンを装備し、音楽制作の即戦力となるプリセットを膨大に備えたHive 2(16,600円)。またアナログエフェクトを物理モデリングしたプラグインとしてBBDディレイを再現するColour Copy(7,800円)、スプリングリバーブを再現するTwangström(7,800円)のそれぞれも登場。実際どんなものなのか試してみたので、紹介してみましょう。
即戦力として使えるプリセットも豊富で、非常に軽いHive 2
このu-heのHive 2、WindowsでもMacでも使え、VST3およびVST2の32bit/64bit、またAudioUnits、AAXの32bit/64bit、そしてNKSにも対応した音源なのですが、とりあえずどんなものなのか、インストール後、起動し、プリセットを5つほど順番に鳴らしてみたのがこのビデオです。
すべて同じようにド・ミ・ラとAmのコードを押さえただけですが、こんな感じで鳴ってくれるんです。アルペジエーターが備わっているから、こんな風に演奏されるわけですが、結構グッと来ますよね。
このHive 2、その名前からも分かる通り、Hive(初期バージョンは2015年リリース)の新バージョンとして登場した音源で、おそらくXfer RecordsのSERUMやLennerDigitalのSylenth1あたりを意識して開発された新進気鋭のデジタルシンセです。以下のSoundcloudに、さまざまなデモがあるので、これを聴いてみると雰囲気は分かると思います。
EDM系はもちろんですが、ロック系、フュージョン系から劇伴での活用まで、かなりさまざまな用途に使える音源になっているようです。2,000以上のプリセット音色が用意されているので、これらだけでも十分すぎるほど使える音源となっていますが、どの音色を選んでも共通するのは、CPU負荷が極めて小さいという点です。最近のソフトシンセは高機能だけど、かなりパワーを要するものが増えていますが、Hive 2はスペックの低いPCでも全く問題なく使えるのは嬉しいところ。同じu-heのRepro-1/Repro-5が高負荷であるのと比較しすると圧倒的に軽いのがポイントでもあります。
もちろん、プリセットを選ぶだけでなく、自由自在にシンセサイザをいじれるのもHive 2の特徴です。画面を見てみると分かる通り、左右対称の構造となっており、メインのオシレーターであるOSC1とOSC2、サブオシレーターのSUB1とSUB2で構成されています。このOSC1とOSC2はサイン波、ノコギリ波、三角波、矩形波、ホワイトノイズ、ピンクノイズ……と基本波形が利用できるほか、Wavetableも扱えるようになっており、結構膨大な波形が収録されています。さらにwavファイルを読み込んで使うことも可能なので、まさに何でもありのオシレーターです。
Wavetableとして数多くの波形を標準で搭載。手持ちのwavを読み込むことも可能
同様にフィルターもFILTER1とFILTER2が左右に1つずつあり、それぞれローパス、ハイパス、バンドパス……と設定して使っていくことも可能なのですが、実はそれ以外にもユニークな機能が用意されています。それが、シンセサイザのエンジンの切り替えというもの。
画面中央上部に、SYNTH ENGINEというものがあり、ここにCLEAN、NORMAL、DIRTYという3種類が用意されています。これを切り替えることにより、フィルターモデルやエンベロープカーブ、またユニゾンデチューンのかかり具合など、シンセサイザとしての根幹部分を大きく変えることができるのです。同じ矩形波を鳴らし、同じ設定でローパスフィルターをかけてもニュアンスが結構変わってくるのは面白いところです。
さらにアンプ用のEG、モジュレーション用のEGが2つずつ、LFOも2つ……とあるほか、画面下を見るとMATRIX A、MATRIX Bと合わせて計12個のモジュレーション・マトリックス・スロットが用意されているので、いわゆるパッチングも自由自在だ。
中央部にあるステップシーケンサでRECをクリックすると1ステップずつMIDI鍵盤から入力することが可能
そして前述の通り、中央部にはアルペジエーターおよび最大16ステップのシーケンサ機能も搭載されており、ここでパターンを組んでいくことも可能。シーケンサはRECボタンを押すと、ステップ入力が可能になるのでMIDI鍵盤などを弾いていけば、すぐにパターンを作ることが可能だ。
XYパッドにパラメータを割り当てると、独特なサウンド変化を実現させることができる
またXYパッドも4つ用意されており、X方向、Y方向に自由にパラメーターを割り当てることができる。うまく設定してしまえば、XYパッドを動かすだけで、自由な音の変化を実現することが可能だ。
さらにディストーション、コーラス、リバーブ、フェイザー、EQ、コンプ、ディレイの計7つのエフェクトも搭載されているので、このHive 2ひとつで、本当に幅広い音作りが可能になっている。私自身も1日かけて、Hive 2触ってみたが、掘れば掘るほどいろいろな機能が出てくる感じで、まだ一部の機能しか触れていない気がするが、どのように設定してもとにかく軽いというのは、使うほうとしては嬉しい限りだ。
なお、Hive 2はNative InstrumentsのNKSに対応しているため、KOMPLETE KONTROLキーボードやMASCHINEなどがあれば、DAW画面を見なくても、キーボードやMASCHINEの画面で音色プリセットを選んだりパラメータをいじることも可能で、とっても便利に使うことができる。
NKS対応しているHive 2。写真はMASCHINE mk3での操作画面
さて、このHive 2以外にも2つのエフェクトプラグインが登場しているので、これらについても簡単に紹介してみましょう。
まずBBDディレイのColour Copyから。今でこそディレイなんてどこにでもあるエフェクトであり、デジタルのサンプリング技術を使えば簡単実現できる機能です。でも、その昔のアナログ時代、音を遅れて出力させるディレイは高価なエフェクトでした。そのアナログ時代のディレイの代表的な方式がBBD=Bucket Brigade DeviceというICを使ったBBDディレイです。
BBDディレイを再現するエフェクトプラグイン、Colour Copy
BBDを日本でいえばバケツリレー素子。まさに入ってきたアナログ信号をバケツリレーのように順次渡していくことで、音を遅らせるというもの。数100段とか数1000段をリレーしていくことでショートディレイ~ロングディレイを実現していたのです。サンプリングしたデジタル信号ではなく、アナログ信号のままバケツリレーしていくため、段数を重ねていくとどんどん音が劣化していくという問題があり、特に高域が削れていくのが顕著でした。
でもだからこそ80年代のサウンドが作られていたわけですが、そのBBDディレイを物理モデリング的に再現するのがColour Copyなのです。でも、単に古いものを再現したというだけでなく、エンベロープフォロワーを介したダイナミック・ダッキング機能、実験的な音作りが可能になるMIDIノートトラッキング機能と無限ループのためのフリーズボタンを搭載するなど、今だからこそできるユニークなディレイに仕上がっています。
上記が、そのColour Copyのデモ音源ですが、一般的なディレイとは明らかに違った質感のエフェクトであることが感じられると思います。100種のプリセットも用意されているので、それらを試すだけで即、実戦に活用できるのもポイントです。
もう一つのTwangströmもアナログエフェクトですが、こちらはスプリングリバーブを物理モデリングで再現したものです。つい先日「Eventideが物理モデリングでスプリングリバーブ=バネ・エコーをプラグイン化」という記事でSpringというプラグインを紹介しましたが、これもそれに近い考え方のモノのようです。
スプリングリバーブを物理モデリングで再現するTwangström
EventideのSpringが、厳密に物理モデリングを実践しているのに対し、u-heのTwangströmのほうは、モジュレーションエフェクトというかシンセサイザ的なもので、スプリングリバーブに関する知識がなくても、より直感的な活用ができるものとなっています。
こんなサウンドが出るのですが、画面中央部で、バネ2つか3つかなど3タイプから選ぶことで、ニュアンスも変わってくるほか、TENSIONパラメータでバネの張り具合を変えることで、音の跳ね具合も変わってきます。またDRIVE、TONEでドライブ感や音色を調整できるほか、フィルターで音の雰囲気を変えたり、画面下ではマトリックスシンセのように、さまざまなパラメータ間でのモジュレーションを実現するなど、昔のスプリングリバーブではありえなかった音作りも可能となっています。どう使うかはユーザー次第ですが、100種類ものプリセットが用意されているので、まずはこれらを活用してみるとよさそうです。
3ソフトとも、ディリゲントサイトからデモ版を入手可能。このデモ版にシリアル番号を入力すれば製品版になる
なお、Hive 2、Colour Copy、Twangströmとも、国内代理店であるディリゲントのサイトからWindowsおよびMac用のデモ版をダウンロードすることが可能です。このデモ版、ある程度の時間使うと、「ザザザー」というノイズが出る仕掛けになっていますが、フル機能使うことが可能です。
また、デモ版のインストーラーとはいえ、実はこれが製品版そのものであり、ここにシリアル番号を入力すれば使えるようになっているので、まずは、このデモ版を試してみて、気に入ったら購入するというのがよさそうです。
【関連情報】
Hive 2製品情報
Colour Copy製品情報
Twangström製品情報
【価格チェック&購入】
◎Dirigent ⇒ Hive 2 Colour Copy Twangström Repro
◎Rock oN ⇒ Hive 2 Colour Copy Twangström Repro
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