どこかのタイミングでシリーズ製品5機種全部借りて記事にしよう……と思っていた米PreSonusのUSB Type-C接続のオーディオインターフェイス、Studio USB-Cシリーズ。そのStudio USBーCシリーズが付属するソフトウェア群を一新し、さらにパワーアップしました。Studio Magic 2020ソフトウェア・スイートというものがバンドルされることになったのですが、ここにはAbleton、Arturia、Cherry Audio、iZotope、Klanghelm、KV331 Audio、Lexicon、Mäag Audio、Melodics、Native Instruments、Output、Plugin Alliance、Studio Linked、UJAM、UVIの計15社、トータル17種のソフトウェアを付属しているのです。
PreSonus製品ですからDAWとしてStudio One Artistが付属しているのはもちろん、Studio Magic 2020にはAbleton Live 10 Liteも入っているからダブルDAW構成とお祭り状態。税込み2万円以下で入手できるStudio 24cやStudio 26cでも総額10万円以上のソフトウェアが付属するので、買わない手はないというプレミアム製品。実際試してみたところ性能、音質も抜群で、上から下まで5製品もあるのでニーズに応じて好きな製品が選べるのも嬉しいところ。どんなオーディオインターフェイスなのか、紹介してみましょう。
PreSonusのStudio USB-Cシリーズ、全5機種
PreSonusは今年2020年に設立25周年を迎えるアメリカの老舗メーカー。もともとプロ用のマイクプリアンプなどで知名度があったメーカーですが、2009年にDAWソフトウェアであるStudio Oneをリリースして以来、より幅広い製品展開となり、DTMユーザーにとっても馴染みの深いメーカーへと変貌してきています。
これまでも数多くのオーディオインターフェイスを出してきたPreSonusですが、その最新ラインナップとなっているのが、USB Type-C接続で最高で24bit/192kHz対応のオーディオインターフェイス、Studio USB-Cシリーズです。ラインナップとしては
Studio 26c(2ch入力4ch出力 | USB-Cバスパワー)
Studio 68c(6ch入出力 | USB-C)
Studio 1810c(18ch入力8ch出力 + DSP | USB-C)
Studio 1824c(18ch入出力 + DSP | USB-C)
と5ラインナップとなっています。Windows、Macで使えるのはもちろんのこと、USBクラスコンプライアントなデバイスなのでiPhone/iPad、Androidなどスマホ、タブレットで利用することも可能です。
PreSonusのStudio USB-Cシリーズのリアパネル
先日、一番下のラインナップであるStudio 24cの音質やレイテンシーに関して細かくチェックし、私がAV Watchで連載しているDigital Audio Laboratoryで記事にしましたが、その結果を見ても分かるとおり、抜群な高性能。44.1kHzや48kHzのサンプリングレートにおいてはバッファサイズを16sampleに設定できるため入出力往復でのレイテンシーを約4msecに抑えることが可能など、リアルタイムモニタリングを重視するユーザーにとっては非常に強力なデバイスになっています。
AV Watchで行った実験では44.1kHzで4.22msecの往復レイテンシーだった
これまでのPreSonus製品もそうでしたが、強靭なアルミボディーで頑丈な作りになっているのも安心材料のひとつ。ただ、これまでのような武骨なデザインではなく、ブルーとブラックのツートンカラーとサイドの曲線などのせいなのか、とてもカッコよくなった印象があります。中央に、LEDの入出力レベルメーターが搭載されているのも視認性が高く、またカッコよく感じる一因かもしれません。
Studio USB-Cシリーズのフロントセンターには入出力のレベルメーターが装備されている
各機種の違いについては、PreSonusの製品ページの比較に詳細な表があるので、それでチェックするといいと思いますが、せっかく5機種借りてみたので、下から順に簡単に紹介してみましょう。
Studio USB-Cシリーズのエントリー機種、Studio 24c
まず一番シンプルなStudio 24cは前述のAV Watchの記事でも詳しく紹介しているので、そちらも参考にしていただきたいのですが、見ても分かる通りフロントに2chのコンボジャックが搭載されており、マイクでもライン、ギターでも2ch同時にレコーディング可能という仕様。
ヘッドホンジャックがリアにあるのは好き嫌いが分かれる点かもしれませんが、その分、左右幅が180mmとコンパクトに収まっているのがポイントです。そのサイズでMIDI入出力も備えているから、DTM用途であればとりあえずこれで十分、というスペックとなっています。
Studio 26cもサイズ的にはStudio 24cとまったく一緒で、フロントにコンボジャックが2つという点も同様。でも見ても分かる通り、レベルメーターの周りにボタンが4つあったり、右のノブが5つに増えているなど違いがあります。最大の違いはリアにある出力が4chで2in/4outとなっている点。そのためのノブが1つ増えたわけですが、MONボタンを押すことでダイレクトモニタリングへの切り替えが手動でできたり、A/Bボタンを使うことでヘッドホンモニターを1/2chにするか3/4chにするかの切り替えができます。
Studio 26cのリアパネル。メイン出力およびライン出力はDCカップリングにも対応
また、Lineボタンが搭載されたことで、ギターなどのハイインピーダンス入力なのか、ライン入力なのかを明示的に切り替えられるのもレコーディング音質重視派にとっては見逃せないポイントだと思います。マニアックな点では出力がDCカップリング対応になっているところのもポイント。これを使うことでオーディオ出力ではなくCV/GATEでの電圧出力をしてアナログシンセサイザをコントロールする…なんてことも可能になっています。以前「まだまだ進化が続くAbleton Live。10.1のリリースに続き、モジュラーシンセと連携を可能にするCV Toolsを公開」という記事で、CV Toolsというものを紹介したことがありましたが、こうしたものがStudio 26c以上の機種でそのまま使えるほか、後で少し紹介するVoltage Modularなどでも、CV/GATEコントロールが可能になります。
その上のStudio 68cになると、横幅が少し大きくなると同時に機能的にもワングレード上がってきます。フロントにコンボジャック2つあるのは同様ですが、リアにもコンボジャックが2つあり、アナログ入力は4ch。またリアに4つのラインアウトがあるので、アナログでは4in/4outとなっています。このうちハイインピーダンス入力に対応しているのはフロントの2つのみですね。
一方、Studio 24cや26cにはなかったD-SUB端子がリアの左側にあります。これは付属のブレイクアウトケーブルを使ってMIDIの入出力およびコアキシャルのS/PDIF入出力をするためのもの。このデジタルオーディオ信号が扱えることでトータル6in/6outという仕様になっているのです。なおマイクプリが4つ搭載され、4つともに+48Vのファンタム電源供給を可能にしていることから、USBバスパワーだけでは足りず、ACアダプタが必須となっています。
リアパネル左側のD-Sub端子にはMIDIおよびS/PDIF入出力のブレイクアウトケーブルを接続して使う
そしてStudio 1810cになるとさらに横幅が広く317mmとなり、フロントには4つのコンボジャックが並びます。リアをアナログ標準ジャックのアナログ入出力がズラリ。右側から見ていくと、ヘッドホン出力が2系統、ライン入力が5ch~8ch、そしてメインアウト、ラインアウトと6chあり、アナログ8in/6outとなっています。
さらに左側にはコアキシャルのS/PDIFの入出力が本体に搭載されているのに加え、ADATのオプティカル入力も搭載。ADATは1つで8ch入力ができるのからS/PDIFでの2in/2outを加えるとデジタルで10in/2out。よってトータルで18in/8outという仕様になっています。
そして、もう一つStudio 68c以下になかった機能が、内蔵DSPを用いたゼロレイテンシー・モニター・ミックスの作成機能。これはStudio Oneとの連動を基本としたものなのですが、Studio OneのI/O設定にキューミックスというチェック項目が現れるとともに、これにチェックを入れると、ミキサーコンソールにキューミックスという項目が現れます。
Studio 1810cおよびStudio 1824cでは、ダイレクトモニタリングでキューバランスの調整可能なZ-Mix機能が利用できる
これをZ-Mixと呼んでいるそうですが、各チャンネルのセンド先となってゼロレイテンシーでのモニター出力が可能になっています。そう、単純に入った音をそのまま出すというのではなく、それぞれのチャンネルのバランスを調整した上で、どのポートから出すかを細かく設定できるというわけなのです。
その上のStudio 1824cがStudio USB-Cシリーズの最上位機種(実はその上位版ともいえるUSB 3.0接続のStudio 192というオーディオインターフェイスもありますが……)で、1Uラックマウントのサイズの機種。これフロントには2つのコンボジャックがあり、ヘッドホン出力も2つフロントにあります。そしてリアにはジャックがさらに増えています。
具体的に見ていくと、右に6つのコンボジャックがあり、いずれもファンタム電源供給可能。トータルで8つのマイクプリアンプを搭載しています。また8つのライン出力と独立したメイン出力があり、アナログでは8in/8outという仕様です。さらにその左にはS/PDIFコアキシャルの入出力とADATオプティカルの入出力があり、デジタルで10in/1out。これを合わせると18in/18outというスペックになっています。またこの機種だけはWORD CLOCKの出力も装備しているので、映像機器などを含め外部とのクロックシンクが可能になっているのです。
このように、エントリー機から業務用途で使えるハイスペック機までラインナップを揃えているのがStudio USB-Cシリーズなのです。
そしてこのハードウェアに、冒頭でも紹介した通り、Studio One Artistとは別にStudio Magic 2020ソフトウェア・スイートというソフトウェア群、計17種類のソフトがバンドルされている大盤振る舞いとなっています。
1年ちょっと前に「各製品の一斉値下げを実施。今、コストパフォーマンスの高さが目立つPreSonusのオーディオインターフェイス群」という記事で、従来のStudio Magicソフトウェア・スイートについては少し紹介していたので、今回の2020版になって追加されたものを挙げてみると以下のとおり。
Ableton Live 10 Lite | Ableton Live 10の簡易版であるLive 10 Liteは、Liveのエッセンシャルともいえるワークフロー、インストゥルメント、エフェクトを搭載し、ソングのレコーディング、コントローラーでのハンズオンな制作、アプリで制作した音楽の編集など必要な機能性を全て備えています。 |
Cherry Audio Voltage Modular Nucleus | Voltage Modular Nucleusは、モジュラーシンセの世界をソフトウェアで実現してくれる究極のソフト。オシレーター、フィルター、エンベロープ・ジェネレーター、アンプ、ミキサー…など22種類のモジュールと67のプリセットを収録したコレクションです。 |
KV331 Audio SynthMaster – Player | 世界的にも人気の高いKV331 Audioのソフトシンセ、SynthMasterのプレイヤー版。1800ものプリセットサウンドがあるので、膨大な音色を即活用可能です。またシンセサイザの全パラメータはいじれないものの、サウンド・デザイナーが各プリセットに割り当てた12の簡単なパラメーターまたはレイヤー/グローバル・エフェクトのバイパスなどの簡易編集が可能です。 |
Melodics | Melodicsは、音ゲー感覚で演奏スキルを向上できる究極のレッスン・ツールです。世界中の多くのミュージシャン達は、日々の練習のモチベーションを保つために、好きな音楽でリズムとタイミング力を養うためにMelodicsを愛用しています。 |
Native Instruments REPLIKA | REPLIKAは、2つのプロフェッショナルなディレイとパワフルなディフュージョン・アルゴリズムを洗練されたインターフェイスに装備しています。レゾナンス・フィルターとクラシックなフェイザーを内蔵しているため、さりげないスラップバックからノイジーまで、あらゆる用途に適したディレイです。 |
UVI Model D | Model Dは、本物のコンサート・グランド同様のレスポンスと演奏感を実現した洗練されたソフトウェア・ピアノ音源。ディープ・トーンシェーピング・ツール、プログレード・エフェクト、調整可能なマイク・ポジションを備え、世界有数のスタジオで収録されたConcert Grand Model Dの存在感とパワーを実現できます。 |
たとえば、以前「ACIDやSound Forgeの開発者、Cakewalkの元副社長が生み出したソフト版モジュラーシンセ、Voltage Modularが面白い」という記事で紹介したVoltage Modularのミニマム版で22種類のモジュールが標準装備されているVoltage Modular Nucleusが付属しているのも大きな魅力。
Cherry AudioのVoltage Modular Nucleus
また、1800種類ものファクトリープリセットを持つ強力なシンセ音源、KV331 AudioのSynthMaster-Plyaerが付属しているのも重要なポイントです。
KV331 AudioのSynthMaster-Plyaer
フランスUVIからはModel Dという非常にリアルで高音質なアコースティックピアノ音源が提供されています。ホンモノのコンサートグランド同様のレスポンスと演奏間を持ったソフトウェアで、ピアノ音質を向上させたい人にとっては非常に嬉しいアイテムです。
さらに、Native InstrumentsからはREPLIKAというディレイ・モジュレーションのエフェクトが搭載されていたり、ユニークなところでは、Melodicsという、音ゲー感覚で鍵盤やパッドの演奏スキルを向上できるレッスン・ツールが付属しているほか、ついに、Studio One以外のDAWとしてAbleton Live 10 Liteがバンドルされるなど、とにかくソフトだけで圧倒される内容となっています。
Native Instrumentsのディレイ/モジュレーション、REPLIKA
このようにPreSonusのStudio USB-Cシリーズは、これからDTMをスタートしたいという人にとっても、2台目、3台目のオーディオインターフェイスが必要だという人にとっても、選択肢の幅の広いラインナップとなっています。
ゲーム感覚でキーボードやパッドの練習ができるMelodics
なお、PreSonusの現行オーディオインターフェイスはこのStudio USB-Cシリーズがすべてというわけではありません。用途に応じてほかにもいろいろなラインナップがあります。エントリー用としては以前「オーディオIF、コンデンサマイク、モニタヘッドホン、DAW、プラグイン一式をセットにしたオールインワンパッケージ、AudioBox 96 STUDIOは24,800円」という記事などでも紹介した24bit/96kHz対応のAudioBoxシリーズがあります。
AudioBoxシリーズのAudioBox iOne(上)とiTwo(下)
また、単なるオーディオインターフェイスにとどまらず、ミキサーと融合した製品があるのもPreSonusの大きな特徴。最新のStudioLive ARcシリーズは、USB Type-C接続で24bit/96kHz対応のオーディオインターフェイス機能を持ちつつ、Bluetooth接続、SDカードへのレコーディング機能なども備えたハイブリッド・ミキサー&オーディオインターフェイスとなっています。
ハイブリッド・ミキサー&オーディオインターフェイス、StudioLive ARcシリーズ
そしてフラグシップモデルとなっているのがThunderbolt接続で24bit/192kHz対応のQuantumシリーズ。以前「史上最小のレイテンシーを実現するThunderboltオーディオインターフェイス、QUANTUMの実力」という記事でも紹介したことがありましたが、その後さらにラインナップも充実してきています。
PreSonusのオーディオインタフェイスのフラグシップ、Quantumシリーズ
一方、私もすごく気になりつつまだ触れていないのが、コントロールサーフェイスであるFaderPortと24bit/192kHz対応のUSB-Cオーディオ・インターフェースを統合したioStation。これについては実物を入手し次第レポートしてみる予定です。
【関連情報】
Studio USB-Cシリーズ製品情報
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