今年も9月にiPhoneの新機種が3ラインナップ発売されました。発表された内容を見る限り、個人的にはあまりグッと来るものはなく、カメラが三つ目になっただけなの……なんて思いつつも、そのうちの1機種、iPhone 11 Proを購入することにしました。やはりなんだかだ言っても、iOSがDTMのプラットフォームの重要な1つであることは変わらないし、その状況をチェックするためには最新機種は入手しておかなくては、という考えからです。
というわけで、さっそくオーディオ周り、MIDI周りなどハードウェア的なチェックをすると同時に、DAWやソフトウェア音源、エフェクトなどDTM関連アプリが問題なく使えるのか、一通りチェックしてみました。またiPhone XSから搭載されていたステレオマイクが、DTM的に活用できるようになったのかも重要なチェックポイントだし、Bluetooth-MIDI関連も使いやすくなるのかも気になるポイント。1つ1つ見ていくことにしましょう。
買ったばかりのiPhone 11 ProのDTM環境をいろいろ検証してみた
今回発売されたiPhone 11、iPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro MAXのうちiPhone 11 Proを選んだ理由は単純でこれが一番小さいく軽いから。これまで使ってきたiPhone XSとほぼ同サイズであり、電車内などで普通に片手で使って支障はないだろうと判断したからです。だいぶ以前、iPhone 6 Plusを買ったときの1年間、片手で操作できなかったのが辛かったので、その反省からですね。
iPhone XS(左)とそのバックアップをリストアしたiPhone 11 Pro(右)
今年も近所のau取扱店で購入し、まずはバックアップしていたiPhone XSの環境をiPhone 11 Proへとリストア。すでにiOS 13.0がリリースされているようですが、あえてiPhone XSのほうはiOS 12.4.1のままにして比較できる状況に留めています。
iPhone XSとは大きさもほぼ同じなので、見た目の違いはカメラ部分くらい?
メール環境をはじめ、各種アプリのログイン環境、セキュリティー環境などの引っ越しに時間がかかり、DTM環境の検証に入るまでに時間がかかってしまいましたが、準備が整ったので、まずはアプリのほうのチェック。
もちろんRolandの新DAW、Zenbeatsは問題なく動作
Garagebandが動作するのは当たり前として、まずは2日前に「RolandがDAWへ再参入! Windows、Mac、iOS、Androidでも使える新世代音楽制作アプリ、Zenbeatsの実力」という記事で紹介したばかりのZenbaatsがしっかり動くのか、という点。これさえ動けば、いろいろ大丈夫だろうという気がしましたが、AUV3との連携も含め、使ってみて問題はなさそうです。
Jam StudioはIAA機能や読み込み機能も含め問題なく動作
また先週「オンライン録音スタジオ・アプリのJam Studioが機能強化。オーディオファイルのアップロードや音源、エフェクトと連動が可能に」という記事で紹介したJam Studioも大丈夫。Inter-App Audio連携もしっかりできていました。
そして多くのiOSユーザーにとって必須のツールとなっているKORG Gadget 2もバッチリ動作してくれます。もちろん、KORGの各種音源との連携も問題なく行うことができ、iMono/PolyのGadget版であるMontpellier、iMS-20のGadget版であるMemphis、同様にiPolysixのPompei、iWavestationのMilpitas……とどれも使うことができました。
FL Studio Mobileも問題なく使える
ほかのDAWとしてFL Studio Mobile、MultiTrack DAWも動かしてみて問題はなさそうです。ただ、オーディオインターフェイスなしでiPhone 11 Proで使ったときにiPhone 11 Pro搭載のステレオマイクがステレオで機能するのか……というのが大きな関心事だったのですが、これについてはiPhone XSと同様で変わらず。そう、せっかくのステレオマイク+1=3つもマイクを内蔵していますが、DAWアプリと連携するCoreAudioにおいてはモノラルマイクとしてしか機能しないのです。
MultiTrack DAWで見ると、モノラルの3つのマイクとして見えるがステレオデバイスとして捉えられなかった
MultiTrack DAWを使うと、これら3つのマイクのいずれかを選択できるようにはなっているものの、ステレオマイクとして2つ同時に使うことはできないんですよね。iPhone標準のビデオ機能であればステレオで録画できるのに、です。ここはぜひ、今後のiOSのアップデートで改善してもらいたいところです。
※2019.9.21追記
上記、bs-16iの開発者、bismarkさんからの連絡があって、気づきました。どのシンセアプリ(Apple製のGaragebandを含む)も、画面上で3本以上の指で弾くと、妙なポップアップが現れてしまい、うまく弾くことことができません。iOS 13.1で解決されるのでは…と期待しているところですが、現状大きな問題です。ただしMIDIキーボードから弾く場合はこの問題は発生しません。
※2019.9.25追記
本日iOS 13.1がリリースされたので早速アップデートして試してみたところ、3本指以上で弾くと発生するトラブルは無事解消されました。
その他各種ソフトシンセ関連、エフェクト関連も動かしてみましたが、とりあえず問題なく動作するようで、AudioUnits V3、Inter-App Audio、さらにはAudiobusも含めてこれまでと同じように動いてくれました。
MFi対応のRoland GO:MIXERはバスパワー駆動で動作
では、ハードウェア機器との接続性について見ていきます。まずはオーディオインターフェイスから。MFi(Made for iPhone/iPad)認証を受けているものは心配になく使えるはずですが、まずRolandのGO:MIXERを接続してみたところ、iPhoneからのバスパワーだけで何のトラブルもなく動いてくれます。当然Zenbeatsとの相性もバッチリですね。
同じくMFi対応のPreSonusのAudioBox iTwoもしっかり使うことができた
またPreSonusのAudioBox iTwoと接続してみました。こちらはUSBからの電源供給が必須となる機器ですが、こちらも問題なく使うことができました。
定番の2in/2outオーディオインターフェイス、Steinberg UR22mkIIもLighting-USBカメラアダプタ経由で使える
さらに、SteinbergのUR22mkIIにはLightning-USBカメラアダプタ経由で接続してみましたが、こちらも問題なく使えますね。
Rolandの4in/4outオーディオインターフェイス、Rubix 44も接続できた
マルチポートの入出力を持ったオーディオインターフェイスはどうでしょうか?ここでは4IN/4OUTのRolandのRubix 44を同じくLighting-USBカメラアダプタ経由で接続してみました。こちらもしっかり動作するとともに、Zenbeatsで見るとしっかり4in/4outとなっています。
Zenbeatsのオーディオ設定画面でも4in/4outとして認識されていることが分かる
ちなみに今回のチェックで気づいたのですが、このZenbeats、日本語の表示機能がしっかりできてないようで、オーディオインターフェイスが接続されていない状況だと文字化けしてしまいますね…。これはiPhone XSでも同様だったので、Zenbeats側の問題。大きい問題ではないですが、ぜひ次のアップデートでの修正をお願いしますね、Rolandさん。
オーディオインターフェイスが接続されていない状態だと日本語の文字化けが生じていることを発見
一方で、DTM的にはステレオで使えないながらもとりあえずビデオで使えるステレオマイクが搭載されたことで、最近出番が減っているものの、iPhone用Lightningマイクについても見ました。使ってみたのはIK MultimediaのiRig Mic FeildとShureのMV88。結論からいうと、どちらも問題なく使うことができ、DTMアプリを含めステレオでレコーディングできることが確認できました。
iRig Mic Fieldはステレオマイクとして機能し、ヘッドホン端子でのモニターも可能
3.5mmのヘッドホン端子がなくなったiPhone X以降でいうと、MV88はリアルタイムモニタリングできずやや不便に感じていましたが(そのために後継機であるMV88+が出たわけですが…)、その点、ヘッドホン端子を備えるiRig Mic Fieldはすごく便利にも感じるところでした。
ShureのMSマイク、MV88もこれまで通り使うことができた
続いてキーボードのほうに行ってみましょう。こちらもまずはMFi対応製品からということで、IK MultimediaのiRig Keysを接続してみたところ、もちろん外部電源不要のiPhoneからのバスパワー供給だけで動いてくれました。もう長期に使っているキーボードではありますが、WindowsでもMacでも何にでも接続できて便利で安心な機材です。
そしてKORGのnanoKEY2をLightning-USBアダプタ経由で接続してみました。こちらも問題なく接続することができます。
Lighting-USBカメラアダプタ経由でnanoKEY 2もバスパワーで動作
でも、現在のiPhoneにとってMIDIキーボードの本命はなんといってもBLE-MIDI(MIDI over Bluetooth Low Energy)、そうBluetoothを使ってのワイヤレスMIDI接続です。Lightning端子を使う必要がないですし、最近レイテンシーもグッと縮まって便利に使えますからね。
ただ、これまでBLE-MIDIの接続にはKORG Gadget 2やGaragebandなど、接続に対応したアプリを使って接続する必要がありました。1度接続してしまえば、他のMIDIアプリでも使うことができるのですが、それより問題だったのが、一度切れると再接続するのに、またKORG Gadget 2などのアプリを使わないといけないという点。Bluetoothイヤホンのように自動再接続してくれないのです。ぜひ、ここは改善してほしい点だったのですが、新型iPhoneおよびiOS 13になって、その辺の機能追加はされたのでしょうか?
なぜかKORG microKEY Airとペアリングできない
さっそく試してみたのが、BLE-MIDIのデファクトスタンダードともいえるキーボード、KORGのmicroKEY Airです。KORG Gadget 2のBLE-MIDI接続画面から見ると、すぐに確認できます。未接続となっているところをタップして、接続しようとするのですが、なぜかうまく接続できないのです。電池不足かなと電池を交換したり、KORGが出しているBLE-MIDI接続ためのアプリ、BluetoothMIDI Connectを使っても結果は同じ。
そこで、もう一つ手元にあるKORGのBLE-MIDI対応のデバイス、nanoKEY Studioを試してみたのですが、こちらもうまく接続できないのです。ここで、試しにiOS 12.4.1のiPhone XSにmicroKEY AirおよびnanoKEY Studioを接続してみると、こちらはうまくいきます。ということは、Bluetooth周りで何か不具合があるのでしょうか……。
※2019.9.23追記
microKEY AirやnanoKEY StudioのBLE-MIDI接続に関する問題、すでにKORGサイトで掲載されていました。
https://www.korg.com/jp/news/2019/0911/
引き続き情報があれば掲載していきます。
YAMAHAのBD-BT01、MD-BT01、QuccoSoundのmi.1も試してみた
次に試してみたのが以前「各社のUSB/MIDIキーボードをBluetooth化するヤマハのUD-BT01、MD-BT01はDTM革命だ!」という記事で紹介したYAMAHAのBLE-MIDIデバイス、UD-BT01およびMD-BT01。これを試してみたところ、あっさり接続でき、しっかりと動いてくれます。そのMD-BT01とよく似たデバイスでYAMAHAより先に出していたQuiccoSoundのmi.1も使えます。
これらはすべて問題なくBLE-MIDI接続でき使うことができた
さらに「MIDI、USB、CV/GATE、Bluetooth…すべてを橋渡しするゲートウェイ、Roland A-01の威力」という記事で紹介したA-01もBLE-MIDI対応なので、これを試したところ、こちらも問題なく使えてしまいました。
Roland BoutiqueのA-01でもBLE-MIDI接続できた
ということはどうやらKORG製品に何等かの問題がある模様です。今のところKORGサイトを見ても、この現象に関する情報はありません。iOS 13の問題なのか、iPhone 11 Proの問題なのかは、まだ把握しきれていませんが、これについては新しい情報が入り次第、掲載していく予定です。
一方で、懸案のBLE-MIDI再接続問題については、iOS 13でも解決しませんでした。要するにアプリではなくiOS側がこれに積極的に対応し、設定画面にBLE-MIDIを組み込んでくれる必要があるわけですが、そこには至っていないということのようですね。ぜひAppleには対応をお願いしたところです。
以上、ざっくりではありますが、新型のiPhoneであるiPhone 11 Proを使ったDTM環境について検証してみました。期待していたことは新機能は何もなく、KORGのBLE-MIDI問題以外はとくに何も変わらなかったというのが実際です。逆にいえば、すでに完成の域に入っているから、Appleとしては、とくに何もいじらなかった、ということなのかもしれません。CPU負荷の割り振りの方法など、開発者レベルから見ると違うところがあるのかもしれませんが、この辺についても何か新情報が入手できたら紹介していきたいと思っています。
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