Rolandが6年ぶりにDAWの世界に帰ってきました。SONARを開発するCakewalkを手放して以来、DAW/DTMからは少し距離を持っていたような感じもあったRolandですが、まったく新たな音楽制作アプリ、Zenbeats(ゼンビーツ)を開発し、本日9月18日、ワールドワイドでリリースしました。このZenbeatsはWindows、Mac、iOSそしてAndroidでも同じように使える、まったく新しい考え方のアプリで、まずは無料で入手できるというもの。ループ素材や音色などのコンテンツを追加したり、機能制限を解除するのに料金がかかり、すべての機能・コンテンツを手に入れるには$149.99(約16,200円)かかりますが10月18日まではキャンペーン価格として99.99ドル(約10,800円;1ドル=108円換算)となっています。
※2019.9.19追記
価格は税抜きなので、ドル表記でも実際には消費税が別途かかります。また決済システムによって為替レートなどに多少の差がでることがあります。
もっともこのZenbeatsは、Cubase、Studio One、Ability、Digital Performer、Ableton Live……といった既存のDAWと真っ向勝負というよりは、スマホ世代の新規ユーザー、若年層、エレクトロニック・ミュージシャン、そしてDTMビギナーをターゲットに、これまでDTMを知らなかった層へもアプローチするというもの。そのため、手軽に、気軽に音楽制作ができるツールとなっていて、DTMのハードルを下げる役割も担っています。そして既存DAWとのすみ分けをすると同時に連携も図れるのがZenbeatsの特徴です。実際、そのZenbeatsとはどんなものなのか、チェックしてみたので紹介していきましょう。
RolandがマルチOS対応の音楽制作アプリ、Zenbeatsをリリース
今回リリースされたZenbeatsは、音のフレーズを並べていくだけで手軽にエレクトロニック・ミュージックをはじめとする音楽制作を楽しめる無料アプリです。従来のDAWとは一線を画しており、PCでもスマホでも同じように音楽制作できるとともに、クラウドを通じてデータのやりとりも可能というもの。従来のDAWのようにオーディオインターフェイスやMIDIキーボードが必須というわけでなく、スマホ1つですぐに音楽制作ができるというのも大きなポイントです。
Windows、Mac、iPad、iPhone、Androidで同じように動くZenbeats
そのため「通勤・通学の電車の中で曲作りを行い、自宅に帰ってPCを開いて、その続きの作業をする」、「自宅でオケの制作をし、友達の家に行ってスマホでボーカル録り」、「バンド仲間でデータ共有して、みんなで曲制作」……といったことが手軽にできるようになっているのです。どの環境であっても無料でダウンロード・インストールして使えるのも、とっても嬉しいところ。そんなZenbeatsの紹介イメージビデオがあるので、これを見ると、その雰囲気が分かると思います。
実際に使うためにはアプリをダウンロード、インストールして、起動し、Roland Backstageのアカウントでサインインします。このRoland BackstageとはRoland/BOSS製品のユーザー向けカスタマーポータルのこと。アカウントなしでもとりあえずZenbeatsを使うことはできますが、機能やコンテンツを追加する上で必須となるものです。無料でアカウントを作成することができますので、まずはこのアカウント作成をしててログインしてみましょう。
ログインすると、Zenbeatsのホーム画面が表示されます。ここで新規の曲を作成するか、保存しているファイルを開くか、レッスンをするかを選択します。DAWを使ってきたことのある方なら、おそらくちょっと触ってみれば、すぐに使い方を理解できると思います。もし、まったく初めてという方であれば、レッスンを利用することで、すぐに使い方を覚えられると思いますよ。
実際どんなことができるのか、少し見ていきましょう。新規の曲を作成すると、まず16ステップのドラムの打ち込み画面が表示されます。ここで適当にパターンを入力していけば、すぐにリズムを作成することができます。初めての人でも、ほとんどゲーム感覚で作れると思います。
ここでキックやSnareyNithgsなどと書かれた部分をクリックすると、それぞれのベロシティやパン、ピッチ……といったパラメータを細かく設定することもできます。またドラム音色はいろいろ用意されているし、予めパターンも多く用意されているので、これらを選んでみるのもよさそうです。
ここで一旦ドラムの打ち込み画面を閉じると、Loop Bulider画面に切り替わり、今作ったドラムパターンが小さく表示されます。その下の「+トラック」をクリックすると、いくつかの選択肢が出てきます。こここでは、まずオーディオ・トラックを選んでみましょう。空のパターンができるので、その中の+をクリックすると、画面右側に今インストールされているループ素材が表示されるので、気に入ったものを選んで、ここに入れてみましょう。
ここでプレイをすると先ほど打ち込んだドラムと一緒に演奏が始まります。この辺の考え方はAbleton Liveなどと近い感じですね。
作成したリズムパターンと選択したループ素材が同期して演奏される
ここで画面右上のボタンをクリックすると、画面が一般的なDAWやシーケンサに近いタイムライン画面に切り替わります。ここでオーディオトラックの●印を点灯させて録音スタンバイ状態にしたうえで、トランスポートパネルのRECボタンをクリックすれば、録音がスタートします。これでボーカルでも、ギターでもレコーディンディングできるわけです。
録音したオーディオデータや、ループ素材を開くと、オーディオエディタが表示されます。シンプルな機能ではありますが、これでリージョンの設定やタイムストレッチ、ピッチシフトなどができるようになっています。
シンプルではあるが、タイムストレッチやピッチシフトも可能なオーディオエディタ
一方、インストゥルメントトラックを作成した場合、あらかじめ用意されている音源の一覧が表示されます。ベースやギター、オルガン、シンセサイザ……と、無料の標準状態で使える音色は限られているものの、いずれかを選択した上で、鍵盤を表示させればリアルタイムに演奏することが可能です。もちろんUSB-MIDIキーボードを接続すれば、外部のキーボードからリアルタイムに演奏することも可能です。
さらに、この演奏をレコーディングしていけば、ピアノロール画面に入力していくことができるし、必要に応じてエディットを行うのも自由自在です。
今度はミキサーを表示させてみましょう。これによって、各トラックのバランスをとることができます。また、各トラックにあるエフェクトボタンをクリックすると、トラックにエフェクトを追加することができます。無料の標準状態ではCompressor、Delay、EQ、Flangerの4種類を利用できるほか、後で紹介するUnlock処理を行うことで14種類のエフェクトを利用することが可能になっています。
このようにDAWとしての一通りの機能を備えつつ、Windows、Mac、iOS、AndroidとどのOS上でも同じように使えるのがZenbeatsの大きな特徴です。とはいえ、これだけでは音色が物足りないとか、ループ素材をもっとたくさん欲しい…と思うところですよね。それに対し、ストアというものが用意されており、ここでさまざまな音色やループ素材などを購入することができるのです。
各音色、各ループ素材集ごとに4POINT=3.99ドル(約430円)。高いと思うか、安いと思うかは人それぞれだと思いますが、ドラム系ならTR-808やTR-909をはじめクオリティーの高いものが用意されており、今後どんどん増えていくとのこと。
ACIDizedファイルやAppleLoopsを読み込んで利用することも可能
一方で、オーディオファイルであれば手持ちのものをここに読み込むことも可能で、ACIDizedループ素材やAppleLoops素材であれば、そのままループ素材として使えるので、これらを利用するのもありですね。
とはいえDTM経験のある方なら「VSTやAuudio Unitsのプラグインは使えないの?」と思うところですよね。そこはご安心ください。Windows版およびMac版に限られますが、機能制限を解除する「Unlock」というアップグレードを行うことでVSTやAudio Unitsのプラグインが利用可能になります。
このUnlockは前述の通り、VST、Audio Unitsが利用できるようになるだけでなく、プラグインエフェクトの数、インストゥルメントの数を増やすことができたり、1トラックに入れられるエフェクト数を2つから8つに増やせたり、さらにはSTEMファイルでの書き出しも可能にしてくれます。
Ultimate Unlockが10月18日までキャンペーン価格
Unlockの価格はWindowsおよびMacは49.99ドル、iOSおよびAndroidは14.99ドルとなっています。ただ、実はもうひとつUltimate Unlockというメニューも用意されています。これはWindows、Mac、iOS、AndroidのすべてのUnlockを実現してしまうもの。通常は149.99ドルとなっているのですが、10月18日までの1か月はキャンペーン価格として99.99ドルとなっているのです。しかもUltimate Unlockは機能制限解除をするだけでなく、前述の1つ3.99ドルのループ素材、音色のすべても入手可能となっているので、スマホとPCの両方で使いたいという場合は、これが有利なのではないでしょうか?
Google DriveおよびMicrosoft OneDriveでに保存することで、他の機材との連携が可能
ちなみに、冒頭でも紹介した電車の中ではスマホで作業し、自宅ではPCで作業するという場合、どうやってデータの受け渡しをするのでしょうか?実は、このZenbeatsでは、データの保存先としてローカル、つまり使っている機材内に保存できるほか、クラウドであるGoogle DriveもしくはMicrosoft OneDriveに保存する機能を装備しています。
VSTやAudio Unitsを使ったプロジェクトの場合、これをクラウド経由でスマホに受け渡しても、そこは機能してくれませんが、それを除けば、すべて互換性を持って、マルチOSでプロジェクトのやり取りが可能です。これまでMacとWindows間でのデータ互換性を持つDAWはありましたが、iOS、Androidも含めてやりとり可能というものはほぼ存在しなかったので、画期的ですよね。
Rolandによれば、まだ誕生したばかりのアプリであり、今後いろいろ機能強化を図っていくとのことですので、どう進化していくかも楽しみなところ。そして久しぶりにRolandが自社のDAWを持ったことで、これからハード側とどんなコラボレーションをしていくかも楽しみなところ。まずは、無料で基本的な機能を使うことができるので、一度試してみてはいかがですか?
【関連情報】
Roland Zenbeats製品情報
【無料ダウンロード】
◎Roland ⇒ Zenbeats for Windows
◎Roland ⇒ Zenbeats for Mac
◎App Store ⇒ Zenbeats for iOS
◎Google Play ⇒ Zenbeats for Android